あの強欲の幼馴染になったのだが、どうにか生き残りたい 作:ウカンムリ
異世界に転生した。幼女にTS付きで。
....改めて口にしても何を言っているのだろうかと自分に突っ込みたくなる、そんな文言。
しかし、ここに来てからもう一か月。いい加減に認めなければならない。それが事実であると。
「...はぁー」
もう何度ついたか分からない溜め息を今日も鏡に向かって吐き出す。
そこに映るのはピンク色のまんまるなおさげをぶら下げた、ツインテールの少女。
どこぞの美少女戦士物にでも出てきそうな見た目である。それとも百合アニメか?
とまぁそんな事を考えていると、聞き慣れたドアのノック音が耳へ入る。
「ルマちゃーん♪ 朝ごはん出来たわよ~~~♪」
「...はぁい」
はぁ~あ。と気だるそうな欠伸と共に自室のドアを跨ぎ、俺....いや、私はカーペットも何もない、質素な階段を降りていく。
その下にはいつもと変わらない、私にとってもそろそろ日常といえてくるような光景が広がっていた。
「おぉ~~。ルマ~~。僕の娘は今日も相変わらず可愛いね~~!! うんうん!! 本当に、僕たちの宝物だよ!! ルマは!! こらからも!! そのかわいい顔を毎日パパに見せておくれ!!」
「もうそれ60ぺんは聞いたって父さん。しかも毎日寝起きと寝る時に言うのやめて。夢含めて一日中その気持ち悪い顔が頭ん中でぐるぐるして気分悪くなるのよ」
「ご、ごめんルマ!! また...ついうっかり...」
申し訳なさそうに両手を合わせ、謝罪をする私の父。
まぁ、別に――と言葉を続けようとした瞬間、私の肩にそっと優しい触感が来たのを感じた。
「ルマちゃん。お父さんね、ルマちゃんが元気になって、本当に嬉しいのよ。この興奮状態もそれが理由なの。だから許してあげてとは言わないけど....まぁ、理解はしてあげて」
私の肩をそっと離し、母はゆっくりと父の方へと歩み寄せる。父はどうやら母の言葉に感動したようで、涙を浮かべながら彼女の顔を見上げていた。
「か...母さん...」
「とは言っても流石にそろそろ私も気持ち悪いと思うから治して欲しいけど」
「がーん!!」
...上げて落とす。中々鬼畜な女である。
効果は抜群だったようで、父は鼻水を垂らしながら泣き顔でトイレに駆け込んだ。
うえーんうえーんとへそくりがバレた時のような漢のガチ泣きが耳に浸透する。そこまでショックなものなのか...._?
――とまぁ馬鹿親二人によるここまでの三文漫才は置いといて、区切りの良い一か月だ。自分の中で一度改めて状況を整理しよう。
私は元日本国で働いていた普通のサラリーマンだ。最近流行りのノベルを夜に見てそこから突如目が覚めると、周りには俺の部屋にあるはずのゲーム機やエアコンが無くなっていて、代わりに等身分を写す鏡や木造の机が現れていた。 ...一人暮らしで貧乏だから机は買ってねぇんだよ!! 悪いか!?
んで、その鏡に自分を写すと、なんとまぁ可愛らしいピンクツインテール美少女に大変身。
興奮している場合じゃねぇ!! と出勤の二文字が頭に浮かんだが、まぁこんな状態では出勤しても誰ですかと聞かれて終わり。おまけに携帯も無いので会社の事自体考えることを辞めた。ある意味スッキリした。
そんでそっからはまぁーあれです。転生した村で、馬鹿親二人と平和に暮らしながら過ごしていますよと。
ちなみにこの身体には元々持ち主が居た様で、その意識や人格がどこに行ったかは分からない。私は私のままだし、私の中に誰かいるなんて感覚も無い。ただ、敢えて言うなら元の身体の持ち主のものだったであろう、くっっそおぼろげで途切れ途切れな記憶は頭の中に辛うじて残っている。元のこの身体の持ち主、以下「こいつ」の名前は「ルマ・ルリエスタ」。私が転生してくる前の「こいつ」は特殊な髪色をしているという理由で、村で不気味がられ、そのせいで一家ごと村八分を喰らっていたらしい。そんで自責の念に苛まれて、一か月前までの私は2階にある自室の布団で寝たきりだったとさ。
ちなみに私は村の判断は間違っていないと思う。ピンク髪の女キャラは信じるなとよく言われているからな。
...っていうのは流石にブラックジョークが過ぎるか。
「ルマちゃーん♪ ご飯机に置いたわよ~♪ さぁお座り?」
母の誘導にそのまま乗り、私は目玉焼きとベーコンの皿の前で椅子に腰掛ける。
父はまだトイレで泣きわめていた。いつまでやってんだ。
「あっ!! ち、な、み、に♪ ルマちゃん、今日はね♪ 久しぶりにあの子がお見舞いに来てくれるのよ♪ ルマちゃんが元気になったって聞いて、とっても嬉しそうだったわ♪」
「....」
....あーそうだ。大事な事を整理し忘れていた。というか整理せずに忘れようと人の精神の8割を占めるらしい無意識が勝手に働いた。
「こいつ」の残滓のような記憶を辿ると、一つ俺にとって、とても不都合な物がある。
まず大前提、俺は今の暮らしを気に入っている。何もせずとも一日三食が出る暮らし。文明利器は現代日本と比べ程遠いものの、ガスがまき散らす一酸化炭素とは無縁の澄んだ空気。何より責任に追われない自由気ままな生活スタイル。どれをとっても残業続きの終電ぐった寝暮らしだった頃には無い物だ。
人にはよるだろうが、少なくとも俺はこちらの方が気に入っている。多少不便はあるものの、こちらの方が余程人間らしい生活を営めるといえるだろう。
――ここが平凡な世界であれば。
どういう意味かと言うと、それは先程も言った通り記憶の残滓の内の一つに映る物について。
そこに映るのは中背中腰、顔は中の上といった所のある一人の少年だ。これがとても特徴的で、ねっっっとりとした声で「あのさぁ」と初動を置いて、そこからぺらぺらと長く自分の世界に浸るよう喋り続ける。その内容は一見論が通っているようで、実際は自己中心的なゲロを催すような物。
そんな奴でも「こいつ」にとっては両親を除いて唯一自分に差別無く話し掛けてくれる人物みたいで、中々印象は良いみたいだ。あったまおかしーんじゃねーの?
...で、だ。私にとって今居る世界というのは、私の知っている創作物の異世界なのか、それとも私の知らない完全オリジナルな異世界なのかは分からない。当然だ、私は今ある情報はこの一カ月の引きこもり生活と微かな「こいつ」の記憶のみなのだから。
ただ、さっき言ったペラペラしゃべり続ける少年。こいつは心当たりがある。というかこんな奴は現代日本全ての創作物を漁っても多分二人目は居ない。あんな奴が創作とは言えぽんぽんと何人も居て堪るか。
もし私のこの推測が当たっているとすれば、この世界は私の知っている方の異世界となる。
――あぁ、うるさい。私の思考の邪魔をするな。
コンコン!! コンコン!! と先程から無容赦に玄関の扉が叩かれている。母は何故か今ここに居ない。ベランダに服でも干しに行ったのか。
まぁいい、もうすぐだ。この音を無視すれば、すぐにでも答えは出る。
――私はすなわち
「あのさぁ!! 僕がこれだけノックをしているのに、誰も返事すらしないってどーゆーこと!? 僕がノックをしているって事はさぁ!!――――」
――死亡ルートまっしぐらな、リゼロのレグルスコルニアスが居る村に転生した。って事みたいだ。
レグルスの鬼畜度は?
-
原作通りノミ以下、幼馴染にも容赦しない
-
基本原作通りだが、幼馴染にだけ少し甘い