藤真のバスケ   作:ドラマ・ドラマ

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10.藤真と受難

春の陽光が差し込む体育館。キャプテンとして2年目の藤真は、小学5年生になった身長142cmの体で、今日もチームの練習を見守っていた。4年生秋から春にかけて、チームも個人もあと一歩の成長に届かなかったことを思い返す。

 

地区選抜に選ばれたが、インフルエンザによる選手の欠場でグループリーグ敗退。自チームも冬季県大会で準々決勝まで進むも、準決勝当日、藤真は風邪で高熱を出し、キャプテンを欠いたチームは善戦するも力及ばず敗北した。

 

―――子どもは大人より熱を出す。体はだるく、寝ているだけでも辛い。それでも、あの“神様”は出場したけどね……。

 

1997年のNBAファイナル第5戦、ジョーダンは高熱で38得点。競技人生を考えれば無理は出来ないと思いつつ、神様の勝利への執念やその精神力の凄さを学ぶべきところだと感じていた。

 

◆◆◆

 

練習時間も残り30分。コーチの声が体育館に響く。

 

「キャプテン、皆に集合を!」

 

藤真は号令をかけ、チームをホワイトボード前に集める。5分の休憩後、5対5のミニゲームを行う。紅白ゼッケンはマネージャーが配布。

 

「よし、一本じっくり」

 

ジャンプボールに競り勝つと、藤真はセンターサークルでドリブルをキープ。味方がオフェンスポジションに入るのを確認し、右手でハンドサイン。右からスクリーンを呼び込み、ドライブを仕掛けた瞬間――

 

ボールが弾かれ、コート外へ転がる。味方が主将のミスを珍しそうに見つめるが、すぐにコーチが駆け寄ってくる。藤真は床に倒れ込み、膝を抱えて悶えていた。ミニゲームは開始数十秒で中断してしまった。

 

◆◆◆

 

「オスグッドですね」

 

医師は淡々と告げる。オスグッド・シュラッター病は、成長期の子どもに多く、膝蓋靭帯が脛骨粗面から剥がれることで痛みが生じる。運動時に悪化しやすく、膝下の痛み・腫れ・熱感が典型。重症では脛骨が突出する。

 

「成長期の痛みと軽視されがちですが、放置すると成人になっても後遺症が残ります。今は安静第一。専用サポーターやストレッチでリハビリを……」

 

耳に届く医師の言葉は遠く、現実感はない。レントゲンに映る自分の膝、冷たい医療器具、母の涙。膝の痛みが現実を突きつける。

 

―――俺、怪我したんだ。

 

◆◆◆

 

夜の車内。ヘッドライトに照らされる景色を見つめながら、藤真は頭の中で練習プランを描く。

 

まずは、基礎トレーニングの維持だな。自重スクワット、軽いジャンプで膝への負担を管理。後は、左右両手でのドリブル強化も必要だな。ボールハンドリングの反復練習(壁打ち・片手ドリブル)なんかは今のうちにやっておかないと。それと戦術IQの向上もやらないと。試合映像を分析し、ポジショニング・スクリーン読み・相手ディフェンス予測を理解するのは体を動かせない今がやる時だ。それに、パスルート、カットのタイミング、フェイクの使い方をノートに書き込んで、頭で反復しないと。

 

体力維持・リハビリ、プールでのジョグで膝への負荷を最小化、体幹トレーニングでバランス能力向上、食事管理で回復を促進、利き手・非利き手のスキル拡張、右手ドリブル・シュート精度強化、左手でのジャンプシュート反復、試合で左右手を自然に使い分けられるようにする。やらなきゃいけない事は山積みだ。怪我したからと言って、立ち止まっている暇はない。

 

―――怪我を言い訳にせず、両手を磨き、頭を使って強くなる。

 

NBA選手の例を思い返す。田臥勇太は骨折で利き手を失った期間に左手ドリブルを習得。マジック・ジョンソンは入部テストで利き手禁止の制約を課され、左右手で同等のプレーを実現。ラリー・バードも左手だけで20得点を記録した。

 

―――俺もできる。怪我を成長の機会に変えるんだ。

 

◆◆◆

 

母が車の中で「気づいてあげられなくてごめん」と謝罪する。それに、藤真は力強く答える。

 

「大丈夫だよ、母さん」

 

母は涙をぬぐいながら、優しく微笑む。

 

「グスッ……強いのね、ケンちゃん。男の子だもんね。もう泣かないから。ママにできることがあれば言ってね」

 

―――元気づける物は要らない。でも、一緒に気分転換できることがあれば……。

 

「それじゃあ……NBAの試合を見に行きたい!」

 

藤真の目は真剣だった。怪我に屈せず、知識・技術・体力を磨き上げ、次のシーズンで必ずチームを勝たせる。成長期の試練は、彼の戦術IQと精神力をさらに鍛える糧となった。

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