藤真のバスケ   作:ドラマ・ドラマ

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11.藤真とNBAファイナル

青い空、白い雲、照らす太陽。ロサンゼルスの街は全てが日本とは違っていた。タクシーのドライバーは陽気に話しかけ、街を行き交う人々は大きく、歩くたびに独特な匂いが漂う。ネオンの看板は刺激的な配色で光り続け、どこを見ても目が離せなかった。

 

―――これがアメリカか……来て良かった。

 

膝にサポーターを巻きつつ、藤真は嬉しさで体が浮くような気分になった。ホテルに着くと、母が流暢にフロントとやり取りする。

 

―――さすが翻訳家だ。母が頼もしく見えるのは今までになかった感覚だ。

 

代わりに同行した叔父は、サングラスをかけて美女ウォッチに余念がない。小学生の藤真を相手に肩越しに「オイ健司、あの子のクビレ見たか。流石ガイジンだぜ。その上のパイオツもビーチボールみたいだったぜ……」と言われても、内心は苦笑い。

 

―――叔父さん、俺恥ずかしいよ。

 

◆◆◆

 

NBAファイナルの会場は熱気で包まれていた。レイカーズvsセルティックスの第5戦。互いに2勝2敗で並び、シリーズの流れを決める重要な一戦だ。藤真はバルコニー席からではなく、コートに近い座席で観戦できる。

 

目の前で憧れの選手たちが縦横無尽にコートを駆け回る。マジック・ジョンソンがボールを持つと、観客は息を飲む。藤真の目は自然とプレーの分析に向いた。

 

―――まず、マジックの位置取り。ピックアンドロールに入る瞬間の肩の角度、味方とのアイコンタクト……あ、あれがトリガーだ。

 

ジャバーがペイント内でボールを受ける。藤真はコート全体の動きを頭に描きながら考える。

 

―――カリームはセンターでも、単独でポストアップするよりも、マジックとのワンツーでスペースを作った方が効率が良いと……そういうことね。

 

更に試合は白熱する。

 

―――おお、バードのスクリーン回避の動きも見逃せない。ディフェンスのギャップを瞬時に計算してる……なるほど、だからマクヘイルのカットがスムーズに入るんだ。

 

藤真はボール保持者だけでなく、味方とディフェンスの位置関係、スペースの変化、カットやスクリーンのタイミングを全て頭に描き、ノートに記録するかのように理解していく。

 

―――あのパスはただのアシストじゃない。マジックが意図的にディフェンスを引き寄せて作った“2秒の空間”を使った計算されたアシストだ。

 

彼の目は自然とチーム戦術のパターン分析に移る。

 

レイカーズのカウンター攻撃の起点、セルティックスのヘルプディフェンスとカウンター時の穴、シュートセレクションとスクリーンの連動など。

 

すべてを頭の中で再現し、膝のサポーターの重さを忘れるほど熱中する。

 

―――こういう局面で俺なら左利きのドライブで、あのディフェンスを崩す……いや、右手でフェイクを入れてスクリーンを使えば……

 

試合中、藤真は身体の負荷を避けつつ、戦術シミュレーションを繰り返していた。ジャンプやダッシュはしないが、頭の中で全速力で動き回っている。

 

◆◆◆

 

ジャバーのダンク、マジックのアシスト、バードのクロスコートパス。

 

―――それぞれが単独技術じゃなく、チーム戦術の一部として最適化されている。俺もこの感覚を再現できれば……膝に負担をかけずに戦術理解だけで試合に貢献できるはずだ。

 

試合終了後、藤真は決意を固める。

 

―――怪我が治ったら、絶対に戦術でチームを支えられる選手になる。右手も左手も両方使えるプレーヤーになって、あの舞台で通用する戦術眼を手に入れる。

 

叔父が横で熱く語る。

 

「いやぁ、正直バスケはよく分からんが、凄い試合だったな。正に死闘と呼ぶに相応しい試合だったんじゃないか?なぁ、健司?」

 

―――叔父さん、それも観察ポイントだよ。素人目線で何を熱心に見ているかも、時に戦術分析には役立つんだ。

 

藤真は帰国後、個人練習に没頭する。右手・左手両方でのシュート・ドリブル練習、膝に負担をかけない体幹・筋トレ、戦術ノート作成、選手の動き分析、チーム戦術の立案サポートなどなど。

 

試合に出ずとも、頭の中でコートを動き回り続ける藤真の戦術IQは急速に成長した。

 

桜のつぼみが膨らむ頃、藤真は小学6年生に。身長は150cmを超え、怪我からの復帰も近かった。膝の痛みが完全に消え、頭の中にはNBAの選手たちの動きが鮮明に焼き付いている。

 

―――あの舞台に立つ。今度はコート上で、俺の目で、俺の判断で動くんだ。

 

藤真が飛翔する時は、もう間もなくと迫っていた。

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