藤真のバスケ   作:ドラマ・ドラマ

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12.藤真と飛翔

県選抜の選考会―――体育館の空気は張り詰め、照明がコート全体を白く照らしている。藤真はボールを手に立ち、深呼吸をひとつ。150㎝の小さな体だが、その眼はコート全体を俯瞰していた。

 

試合序盤、ボールを受け取ると、藤真の頭の中で即座に計算が走る。

 

―――左サイドのCが少し前に出てる……ここはドリブルで引き付けて、オープンのSGにパス。OK。

 

藤真は瞬間的にドリブルを開始。相手のディフェンダー2人が反応する。しかし藤真は一瞬のフェイントで左手にボールを移動し、相手をかわす。

 

―――一瞬遅れたな…この角度なら次の動きが見える。

 

オープンになった味方にピンポイントでパスを供給する。味方はそのままジャンプシュート。ボールは吸い込まれるようにリングへ。

 

藤真は冷静に次の状況を確認する。相手のボール。Cがボールを保持し、ゴール下を狙ってくる。

 

―――リバウンドポジションを先読み…右側にスペースが空いてる。ここに移動すればセカンドチャンスが狙える。

 

藤真は素早くステップを踏み、ゴール下の空間を確保。相手がシュートを放つ瞬間、藤真はジャンプしてリバウンドを確保する。

 

―――小さな体でも位置取りとタイミング次第で170cmのCに勝てる。経験値が物を言う瞬間だ。

 

続く攻撃。藤真のチームがボールを保持。ハーフコートからのオフェンスが始まる。

 

―――左サイドPGがダブルチームされる……自分がスペースを作ってやれば逆サイドのSGがフリーになるな。

 

藤真は一度ドリブルを切り、ディフェンスを引き寄せる。次の瞬間、右手で素早くクロスパス。オープンになったSGがレイアップを決める。

 

藤真の動きを見た選考委員のバインダーに「無駄な動き一切なし。最小の力で最大の結果」と最大限の評価が書き込まれる。

 

残り2分、3点差はとなった相手はフルコートプレスで逆転を狙う。しかし、藤真は努めて冷静に相手を観察する。

 

―――相手のフォーメーションは2-2-1。左ウィングが少し前に詰めている……ここは右側のドリブル突破が有効だな。

 

藤真は右に切り込み、ディフェンダーをかわす。味方のCがダブルチームでフリーになった瞬間を見逃さず、絶妙なロブパス。Cがジャンプシュートを決め、点差は再び2点に広がる。

 

代表監督が大きく頷いていた。

 

―――判断速度と精度が勝利を呼び込んだか。間違いない……彼は本物だな。

 

◆◆◆

 

試合終了のブザーが鳴る。藤真の頭の中には、全てのプレーのリプレイが走査されていた。どこでパスを出し、どこでドリブルで引き付けたか。リバウンド位置の計算、ディフェンスの動きの先読み。

 

―――戦術眼と判断力は、数字や理論ではなく、コート上でリアルタイムに鍛えられるものだということをつくづく実感する。

 

結果、藤真は圧倒的な存在感を示し、県選抜メンバー入りを果たす。小柄ながらも、戦術IQと身体操作の融合で同年代以上のプレーを実現したのだ。

 

◆◆◆

 

選考会の試合を観戦していたコーチは試合後、藤真の冷静な判断と正確なプレーを称賛する。藤真は主将として県選抜の練習に参加していたチームメイト達に向かって、短くまとめて話す。

 

「俺ができることは、最小の動きで最大の結果を出すこと。みんなも、自分の強みを活かしてプレーしてほしい」

 

チームは藤真の後に続き、全国大会への準備を進めていく。

 

◆◆◆

 

全国ミニバスケットボール優勝大会。埼玉県代表として出場した藤真のチームは準々決勝で惜しくも敗退。しかし、チームを4年生から牽引した主将として、藤真はチームメイトへの感謝を述べ、未来へとバトンを託した。

 

―――あとは後輩たちに託します。

 

藤真の作った戦術ノートや練習メニューは、チームを去った後もメンバーに活用され、やがて全国制覇へと繋がっていく。

 

◆◆◆

 

4月。藤真は中学に進学すると、身長は161cmにまで成長していた。叔父が入学祝に自宅へ訪れるが、甥っ子は嫌な気配を察知する。

 

玄関先で叔父から入学祝の紙袋を手渡されるが、藤真はそのまま母へと渡し、自室へと戻っていく。日頃から鍛えている観察眼が事故を未然に防ぐ。思春期に突入する甥へのプレゼントを入れた紙袋の中身(■■な本)が露見した瞬間、母の目が紅く光ると、叔父は脱兎のごとく、藤真家からの逃亡を図る。

 

叔父の断末魔を自室の扉を閉める間際で聞きながら、藤真は新たなカテゴリーへと移ることへの期待感に胸を高鳴らせていた。

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