藤真のバスケ   作:ドラマ・ドラマ

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39.藤真とvs.陵南高校(前半)

「海南大附属高校対陵南高校の試合を始めます!」

 

「しゃす‼」

 

陵南のスターターは、仙道をPGに配置した“ビッグラインナップ”。SG池上、PF福田、C魚住――高さを活かしつつ、攻守のトランジションでも破綻しない、田岡の意図が明確に見える布陣だ。観客席の声援が、空気を震わせ始める。

 

「陵ーー南!」「陵南!」「海南!」「海南!」「陵南!」「海南!」

 

迎え撃つ王者・海南は、牧、藤真、花形――盤石のメンバーで挑戦者を正面から受け止める。

 

「湘北のセンターに大分苦戦したみたいだな」

 

センターサークルで花形が魚住に声をかける。挑発というより、覇者の余裕を漂わせる笑み。

 

「俺達、海南なら100点取ってたぜ。神奈川No.1センター争いから、もう脱落か?」

 

「ぬかせよ、藤真の“腰巾着”が……。インサイドで勝負できない臆病者が」

 

両者の視線が至近距離で火花を散らす。視線同士が衝突する音が聞こえるほどの圧。

 

「そこ、私語は慎みたまえっ!!」

 

主審の一喝で口を閉じるが、その眼光に宿る怒気は消えない。神奈川最強の座を賭けた、静かで激烈な第一幕。互いの闘争心が極限まで高まった瞬間――ボールがトスアップされる。

 

ジャンプボールは魚住が指先で制する。だが、そのボールを掻っ攫ったのは、黒い疾風――牧だ。

 

そのままリングへ一直線。福田が身体を張って止めに入るが、牧は正面衝突を物ともせず、手首を素早く返して放り込む。笛が鋭く鳴り、観客の声を切り裂く。

 

「バスケットカウント! ワンスロー!」

 

「うわあああっ!!」「ダンプカーみてぇだ!」「牧が早くもフルスロットルだ!!」

 

一呼吸置いた牧は冷静にフリースローを沈め、完璧な3点プレイ。王者のエースが、試合の空気を一瞬で支配する。

 

仙道がゆっくりとボールを運ぶ。その前に牧が腰を落とし、重心を極限まで低くしたディフェンスで迎え撃つ。“天才”対“怪物”。練習試合から数ヶ月、再び公式戦の舞台で両雄が相まみえる。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「―――何故、陵南に行った」

 

花形の問いに、魚住は微笑を浮かべる。

 

「フッ……一番熱心に誘ってくれた。それだけだ」

 

「それが海南を選ばなかった理由か。……選択を誤ったな」

 

花形の声は氷のように冷たい。だが言葉に集中しすぎたのか、背後から池上が鋭い角度でスクリーン。魚住が花形を引き離す。

 

質量同士がぶつかり合う激しいコンタクト。池上の献身的なスクリーンで魚住がフリーになる。すぐにボールが入ると、魚住は一気に跳躍。

 

「させるかっ!」

 

花形がロングアームでダンクを阻止。ボールがバックボードに跳ね返った瞬間、福田が完璧なポジションでリバウンド。そのまま再ジャンプ――だが、ゴール下へ飛び込んだ牧がブロック。

 

―――ダンクを、容易く許すわけがない。

 

再びボールはボードに弾かれ、仙道が拾う。だが、わずかにボールを下げた瞬間を藤真が狙い撃つ。見事なスティール。場内が歓声で揺れる。

 

「キャーーッ!!」「すげぇっ!!」「藤真だっ!!」

 

藤真は一気に3Pラインへ到達し、プルアップモーションへ。しかし、その意図を完全に読み切った仙道が、タイミングを合わせてブロック。

 

「うおおおおーーっ!!」「仙道っ!!」「止めたーー!!」

 

攻防の応酬に会場の熱がさらに増す。牧は短く呟く。

 

「……仙道」

 

スピードについてくる脚力。速攻での3Pを読み切る戦術眼。ファウルを避けつつ上を押さえ込むブロック技術。そして“譲らない”という闘争心。

 

―――仙道は、間違いなく“自分たちの領域”に届いている。

 

「ふぅ……こりゃ、しんどい」

 

藤真の額を汗が伝う。シュートを止められても微動だにしない仙道の眼差しが、藤真の闘志を刺激する。スコアは、海南3-0陵南。まだ開始1分――しかし、すでに試合は異常な強度へ突入していた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

藤真の切れ味鋭いドライブが、陵南の守備を次々と揺さぶる。ペイントに切れ込む瞬間、魚住の股下へ滑り込むバウンドパス。花形が受けてダンクに行くが――池上が身体を投げ出し、オフェンスチャージを獲得。

 

「ナイス池上!!」「よくやった!!」「完璧だ!!」

 

仲間に手を差し伸べられ、池上はゆっくり立ち上がる。

 

―――正にチームの“陰の支柱”。ルーズボール、合わせ、ボックスアウト、ヘルプ……地味に見えるが、勝利に最も近い仕事を一つも怠らない男だ。

 

田岡は、練習試合後の池上を思い返していた。牧や藤真と比べて挫けそうになりながらも、己の役割を貫くことでチームを救う存在へと成長した選手。それが今、陵南を全国へ導いた“仕事人”だ。

 

「流石ディフェンス職人」

 

「へっ、俺は俺の仕事をする。ゲームメイクは任せたぜ、仙道」

 

仙道の意識も変わっていた。点を取るだけの1on1プレイヤーから、チーム全体を動かす創造者へと進化しつつある。池上はその変化を誰より近くで見ていた。

 

仙道からボールを受けた福田が、高い身体能力で鋭くアタック。花形のブロックをかわすフローターで初得点。乗り始めたら止められない、危険なスコアラーが火を噴く。

 

「いいぞ福田!! 攻めまくれ!!」

 

池上が声を張り上げる。

 

―――福田の成長こそ、陵南の未来を押し上げる鍵だ。

 

「まずはディフェンスからだ!!」

 

厳しい練習を誰よりやり抜いてきた池上が、チームを鼓舞する。多様な相手を守り切れる万能DFが、試合をロースコアに押し込み、陵南の望む展開へ持ち込んでいく。

 

序盤、拮抗する守備戦。海南の花形がコーナー3Pを狙うも、魚住のロングブロックが炸裂。福田の二本目のフローターで崩れかけた流れを引き戻すが、牧のペネトレイト→藤真の3Pという“王者の連携”で再び試合の流れは海南へ。

 

藤真は仙道のブロック以降、キャッチ後にボールを下げない“クイックリリース”へシフト。連続で3Pを沈め、主導権を掌握する。

 

海南は堅守速攻+藤真のオールラウンドオフェンスで試合を支配。だが前半残り5秒、花形の1on1を魚住が気迫のディフェンスでターンオーバーに誘導。福田が走り抜けて豪快なダンク。この一連の流れで膠着した空気を切り裂く。

 

前半終了。海南31−25陵南。

 

激烈なディフェンス合戦は、熱を増したまま後半へ突入する。

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