藤真のバスケ   作:ドラマ・ドラマ

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40.藤真とvs.陵南高校(後半)

「いいか……。これまで、いくつものチームが“王者”海南を引きずり降ろそうと挑んできた」

 

ハーフタイム、ロッカールームの空気を支配するように高頭監督が低く響く声で語り始めた。

 

「だが――お前たちは、その全てを弾き返してきた。理由はひとつだ。守りに回らなかったからだ。自分たちが全国屈指であるという慢心を一切許さず、常に主導権を握ろうと、“攻め続ける姿勢”を貫いてきたからだ」

 

監督は一人ひとりの眼を正面から射抜くように見据える。言葉ではなく、視線で鼓舞するように。

 

「周囲はお前たちを王者と呼び、最強と持ち上げる。しかし、その言葉に寄り掛かった瞬間に“勝利への飢え”は死ぬ。海南が海南たる所以は、どんな相手だろうと常に攻め切る姿勢を忘れなかったことだ」

 

そしてラストに火をつけるように言い放つ。

 

「相手は最強の挑戦者。実力は互角だ。勝敗を分けるのは――“どちらが勝ちを渇望するか”だ‼

さあ、後半も――いつもの海南で戦ってこい!」

 

「おうッ‼」

 

◆◆◆

 

後半開始。いきなりギアが上がる。

 

王者・牧が仙道とのアイソレーションから一枚殻を破るようにギアチェンジし、魚住の壁に真正面からぶつかりながらバスケットカウントを獲得。パワー、スピード、フィニッシュの全てが全国区のそれだった。

 

すぐさま仙道が完璧なポケットパスで福田を走らせ、強気のフィニッシュで4点差へ。

 

「うおおおっ‼」「仙道のパス、エグい‼」

 

藤真は藤真で、ディフェンスを一人吸い寄せてから的確にシュートクリエイト。プレッシャー下でもぶれない司令塔の手腕に観客席が沸き返る。

 

一方で陵南はテンポをやや遅らせるディレイオフェンスを採用。その意図は明確――“牧と藤真のトランジションを封殺すること”。その流れの中、花形がハイポストから美しいフェイダウェイを決めて38-30。海南が再びリードを広げる。

 

しかし仙道が続けざまに2本の3Pを沈め、2点差まで迫る。

 

「仙道っ‼ ナイスショット‼」

 

勢いを取り戻した陵南は、ここで切り札――2-2-1オールコートゾーンプレスを解禁する。

 

一線の池上・仙道がボールマンの進路を限定し、二線がスペースを埋めて“時間を奪う”配置。1-2-1-1の様に罠の数で勝負する攻撃的プレスとは違い、“遅らせて潰す”実戦的な戦術だ。

 

高頭が思わず田岡を見る。田岡は腕を組み、静かに頷くだけだった。

 

―――理解しているな。海南に勝つためには、“死ぬほど精度を上げた”このプレス以外にないと。

 

だが海南のボール運びに対し、陵南の四枚が完璧にダイヤモンドを保ち、フラッシュ役をバンプして無効化。

 

そして――

 

「ピーッ‼ 10秒バイオレーション‼」

 

「うわあぁぁっ‼」「海南がボール運べなかった……‼」

 

牧の悔しげな顔に、藤真が落ち着いた声で「ドンマイ」と囁く。ただ藤真の眼は“獲物を見定める狩人”のそれに変わっていた。

 

―――読まれている。ならば、その上を行くだけだ。

 

◆◆◆

 

海南はここで一年生シューター・神を投入。藤真がSFへ移行する変則布陣に即応し、神が入り端の3Pで挨拶代わりの一撃。41-36。

 

仙道のドライブを魚住の極厚スクリーンが自由にさせ、3点差に詰め寄る。しかし――ここからが“海南の本気”。

 

牧のワン・アンド・ツー、藤真のキックアウト、神のキャッチ&シュート。速攻でもセットでも一点の淀みもなく連動する。

 

そして極めつけは藤真。福田のブロックを誘い、空中で一瞬溜めて魚住を跳ばせ、左手を当てながら“右手”で放ったシュート。

 

リングに当たり一度高く跳ね――まるで運命に吸い込まれるように落ちた。観客が爆発する。

 

「キャーー‼」

 

「なんじゃそりゃあああ‼‼」

 

「藤真ぁぁーーーっ‼」

 

魚住はその光景に固まった。牧はその光景に“戦友の凄み”を思い出した。藤真がワンスローを沈め、44-38。陵南はタイムアウトを強制される。

 

◆◆◆

 

ベンチに戻る陵南の選手たちの顔は、疲労と動揺で揺れていた。魚住の視線は完全に虚空へと漂っていた。

 

「忘れろ魚住‼ まだ時間はある!ここからだ!ここから追い上げるんだ‼絶対に気持ちで負けるな‼」

 

田岡の怒声が響く。だが揺らいだメンタルはそう簡単には戻らない。

 

試合再開後も、仙道のドライブは牧・藤真の二枚壁に封じられ、パスは読まれ、リズムを奪われる。花形は完全にスイッチが入り、ブロックの度に魚住の自信を奪う。

 

そして海南のスローインからデザインされた藤真の“右手”クイックショット――

滞空、フォーム、リリース、軌道――どれも教科書の外にある異次元の技。

 

陵南の叫びも虚しく、ボールはネットを揺らした。暴力的なまでの才能。陵南の心を折るには十分だった。陵南は最後まで海南のディフェンスを突破できず、試合終了のブザーが鳴る。

 

◆◆◆

 

田岡はコートサイドに立ったまま動かず、目を閉じたままベンチに崩れるように腰掛けた。スタンドは大歓声。海南応援席は万歳三唱。高頭監督は選手たちに担ぎ上げられて宙を舞う。

 

表彰式。

 

MVP:藤真健司(海南大附属・2年)

ベスト5:牧、藤真、仙道、花形、魚住

 

王者・海南大附属は16年連続のインターハイ出場。陵南はついに初めての全国の切符を掴んだ。

 

――神奈川を制する戦いは、こうして幕を下ろした。

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