指輪の悪魔と持ち腐れの魔法使い   作:ケツアゴ

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「奴が【鏖殺】の弟か。皆殺しにされた同胞の無念,必ずや晴らして見せようぞ!」

 

 街中にてジェイル達を尾行する異様な風体の集団、一様に装着した道化の仮面が示すのは悪魔崇拝者集団『道化の下僕(クラウン・スレイヴ)』の証。

 

 フードを被り仮面を着けて、それでも隠し通せぬ人離れした美貌。透ける様に白い肌に艶のある金髪と、長く尖った耳。

 エルフ、本来ならばダークエルフ同様に人里には姿を見せない事が多い種族であり、人間よりも魔法に秀でた者が多い。

 

 閉鎖された世界で生きているからか排他的な思考の者が多いが、故にはみ出した者は外からの刺激が何よりも新鮮で、そして染まりやすい。

 

 その瞳はルシアを背負うジェイルにのみ注がれ、覗き込む際に指を掛けた壁の縁に先端が食い込みそうな程に力が籠り呼吸も乱れていた。

 

 生まれ育った場所から飛び出して、世間知らずの小娘達が路頭に迷い故郷に戻る方法すらも分からずに右往左往していた時に受け入れてくれた仲間達。

 教団の教えは生まれ育った地の教えとは全く違い、それを受け入れる事は新たな自分に生まれ変わる気分だった.。

 

「絶対に許せない。復讐してやる」

 

「私達と同様に大切な存在を失えば良いんだ」

 

 故にその憎悪の炎は激しく燃え上がる。あの時、あの場所にいられなかった事、誘ってくれた友人とは信仰の対象の違いから会う機会は少なくなったが、それでも現場に居合わせたとしたら命をかけて守ろうとしただろう。

 

 たとえそれが無駄だと分かっていたとしても、億分の1でも可能性があるのなら生きていて欲しかった。

 

 【鏖殺】本人には復讐する勇気は出ず、ならばと情報にあった副隊長のナナシを尾行している最中に()()()()()()ジェイル達。

 会話から憎き相手の家族だと知り、彼を殺す事で仲間の無念を晴らそうというのだ。

 

 背中には七つの派閥の一つである蠍の刺青を彫り、獲物を狙う目で舌舐めずりをする。

 これだけ目立つ存在でありながらも街中で騒ぎになっていないのはエルフが持つ才能故の物。

 

 風を操る事で音と匂いを遮断し、同時に悪魔の力が籠った魔道具の力で一時的に自分達以外に意識が向く様にしているのだ。

 

 そう彼女達はエルフだ。故に……。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても……エッロいな、あの少年。堪んねえ。生きてるエロ本でしょ。それも性癖ど真ん中の」

 

「デッケぇ魔力量を晒して誘ってんでしょ。ブチ犯してやるよ、オラァ!」

 

「殺る前にヤッても良いよね? 恋人の前で孕まされてやるよ! 【鏖殺】に教えてやるんだ。テメェは伯母さんになったってなあ!」

 

 魔力量が多い=性的に魅力的だと感じ、欲望に脳が支配されている彼女達が崇拝するのは『色欲』の魔王。

 

 涎を垂らし顔を真っ赤に染め上げながら下着を少しばかり不味い事にしながら復讐心のまま動く。

 

 エルフではなくエロフと化した三名は指先を己の股に這わせながら顔を見合わせて計画を練っていた。

 

「もしかしたら童貞の可能性もあるし,誰が最初にヤる?」

 

「そりゃ理想の相手を見つけた時の為に強力な精力剤を常備している私だろう?」

 

「まあ,命を奪うんだから童貞奪う相手を選ばせてやっても良いのでは? 我々は誇り高いエルフだ。その程度の慈悲は示そう」

 

 七割くらいは性欲に突き動かされていたが……。

 

「「「まあ、選ばれるのは私だろうが」」」

 

 そして空中分解寸前である。この会話は真面目な顔でしているので見ていたナナシは腹を抱えて笑いを堪えていた。

 

 

 

 尚、喪女を拗らせた結果,ここまでの会話内容にも関わらず三名揃って処女である。

 書物と他人の行為の見学で知識と自信はあるがキスすら未だであった。

 

 

 

 

 

 

「カップル専用メニュ〜? 俺とお前の何処がカップルなんだよ……」

 

 街中でルシアを背負いながらカフェに向かう最中、告げられた目当ての物に対してジェイルは不満を漏らす。

 親戚の上に幼い頃からの付き合いなだけあり、側から見た時の目線を忘れての感想にルシアも同意の表情だ。

 

「詐欺のようで気が引けるし、カップルの振りとか気持ち悪い。でも、此処のケーキは美味しいから限定メニューは食べたいと思う。協力して」

 

「お前に頼まれたんだから別に良いけれど他の連中に見られないと良いんだけれどな」

 

 スロースと通う例のカフェについては秘密なので変装用の魔道具も当然ながら知らせていない。

 だから恋人設定でルシアと目的の方のカフェに行くのは抵抗があったが嫌と言っても聞いてくれないのが背負っている少女だ。

 

 そもそも嫌と言って通じるタイプなら疲れたからと背負ったりしないだろう。

 

 つくづく自分はルシアに甘いと呆れつつ歩いていると目当てのカフェが見えて来て、見知った人物が外の席で寛いでいた。

 

 

「イチゴショートと生チョコとチーズの三段重ねラブラブウェディング風ケーキお待ちしました」

 

「待ってる間に寝てましたー!」

 

 テーブルに運ばれた三段重ねケーキを前にテーブルの上でフォークを持ったパンダが踊る。

 そう,その人物とはベアルコだ。普段通りの袖余りの白衣姿で手足をバタバタ動かす姿は見た目相応の少女にしか見えない。

 

 

「回れ右して帰って良いか?」

 

「駄目」

 

 あんな小っ恥ずかしいケーキを注文するのか、どう見ても一人なのにカップル用のケーキ頼んでいる知人に会いたくない。

 そんな少年の願いは背中の少女が無慈悲にも切り捨てて儚く消え去る。

 

 心底嫌そうな顔をする彼の耳を引っ張ってカフェへと向かうとベアルコのパンダが二人に気が付いて手を振って,それを見たベアルコも二人に気が付いた。

 

「やっほー! 街中でラブラブのお二人さん,こっちに来なよー! ここのカップル限定ケーキって凄く美味しいよ。いい年した大人が床に身を投げ出して駄々を捏ねたら一人でも出してくれたんだ!」

 

「ベアルコ先生,恥って知ってるか?」

 

「え? 知ってるに決まってるじゃないか。アタシがベテランの先生だって忘れてるだなんてジェイル君は馬鹿だなあ」

 

「俺か? 本当に俺が間違っているのか? おい、ルシア。カフェは後にしないか?」

 

「却下。限定ケーキは直ぐに売り切れるらしい」

 

 ベアルコのせいで他の客の注目を浴びてしまう現状はどうにかしたいが空席はベアルコの近くだけ。その理由を探して周囲を見れば同行して来たとは思えない組み合わせがチラホラと。

 

 ベアルコの近くが嫌で相席にしたのだろうと、彼女と同類に思われたくないジェイルは時間を置きたかったが敢えなく却下だ。

 

「……へいへい。文句言える立場じゃねえしな」

 

 ベアルコを非難する前に偽装カップルで限定商品を注文しようとした身だ。

 ルシアに断られた事もあって少しでもベアルコと離れた席を選ぼうとして、数秒の間に謎の着ぐるみ集団と一人の黒子に席を占領されていた。

 

「全員先生の関係者か?」

 

 キレース以外にも見るからに不機嫌そうな灰色のウサギや狐にヒトデ、周囲の目を気にして居た堪れなさそうな黒子がペコペコ頭を下げる中、ベアルコの席の空席が引かれた。

 

「相席オッケーだよ。さあさあ、座りな。楽しいお話をしようぜ」

 

「ん」

 

 此処でルシアの悪い所が出た。実力のある者、己が持つ責任を果たすべく努力を続ける者、そういった相手であれば関心を向けるが、逆を言えばそうでない者に興味を向けず、深く関わらない……関わる筈のない見知らぬ者達が何方か判断出来る筈もない。

 

 結果、努力の面では十割否でも実力は示しているベアルコとの相席に不服を示す事も無く言われるがままに座る。

 ジェイルの不満? 胸を壁扱いされたから却下だ。顔から突っ込んで来たのは気にしていないが固い壁と言ったのは用意には許されない。

 

「噂では巨乳派撲滅拳なる技も持っているとか」

 

「何言ってるんだよ? 先生」

 

「地の文読んでの発言だから気にしないで。許されるのはアタシ達だけだから」

 

「……おう」

 

 達,それが複数人を示す事に気が付いたが絶対にコメントしてはならない,それがジェイルの判断だ。

 地の文が何の事なのか、メタ発言にツッコむのはメタ発言が許された物だけだから気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

「そっか。ジーク君、魔力の使い過ぎで知能が本来に戻っちゃったんだ」

 

「ちゃんと血を舐めさせてはいるから数日中には戻るんだろうけれど、今の彼奴は頭が三つあって可愛いだけの子犬だからな。俺の靴下を咥えて、取り上げようとしたら唸って抵抗するのは困った」

取り上げようとしたら唸って抵抗するのは困った」

 

「ケーキ遅い……」

 

 諦めてベアルコとの相席を受け入れるといつの間にか着ぐるみ集団は消えておりしてやられたと悔しがりながらもベアルコと話す中、ルシアはメニュー表を見ながら会話には加わらない。

 

 

 

 

「何か来る!」

 

 不意に空気を切り裂きながら飛来する巨大な何かの気配を察しジェイルが立ち上がる。

 聞こえたのは頭より高い位置、右前方の建物の屋根の上辺りから巨大な金属の拳が噴き出す炎を推進力にして向かって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ロケェエエエエエエエエトッ! パァァァァンチ!!」」」

 

 超重量の物体が高速で飛来する。それは抵抗する術を持たない物からすれば小規模な災害に等しい。

 そう,その災害はジェイル達の居る方向へと向かい……そのまま大きく狙いを外して地面に激突した。

 

 

 

 

「あ〜! 外したー!?」

 

「そもそもロケットって何?」

 

「知るか。思い付いた言葉を使っただけだ。……お前も叫んでただろうが」

 

 整備された石畳を破壊して地面を大きく陥没させた鋼の拳。それが飛来した方を見れば立っていたのはエルフの三人組。

 妙な物体を背後に浮かせ、何やら揉め事をしていたのが視線に気が付いてか止まって向き直る。

 

「ミシュリル!」

 

「マルギット!」

 

「リィズ!」

 

 

 

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 彼女達は自分達に気が付いたと判断するや否や決めポーズらしきものを取る。全員バラバラで纏まりが無く、どう見ても練習不足なポーズを。

 

 

 

 

 

「三」

 

「人」

 

「揃……」

 

 更にバラバラのポーズを重ね分割した名乗りを上げて行く。最後を担当したのはリィズで……。

 

 

 

 

 

「クィーン・ザ・エルフ!」

 

「ビューティースリー!」

 

「って! リリス・オブ……って、打ち合わせの時と違ってるじゃない!」

 

「そうだっけ?」

 

「私のが採用案じゃなかった?」

 

 そして息もチーム名もバラバラだった。

 

 

 

 

 

 

「あはははは! ジェイル君、馬鹿だ、馬鹿がいる!」

 




三馬鹿が今回限りの死にキャラか何度も挑んでくるのか、チーム名の正式案も未定
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