指輪の悪魔と持ち腐れの魔法使い   作:ケツアゴ

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反応は別として,こう言った馬鹿がノリ任せに動くのは楽しいです


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「……言ってくれるな、どチビ」

 

 ギリィと奥歯を噛み締める音を立てながら目付きを鋭くさせたマルギットが右手を高く上げるのに合わせ,タロス一号もまた魔力の鎖に繋げた状態の右拳を手首から分離させる。

 

「五月蝿い、男と縁が無さそうな顔している」

 

「殺す! おい、本体の防御は任せたからな!」

 

 高く掲げた右手の指を曲げ爪で切り裂く様な構えで振り下ろした瞬間、魔力の鎖の代わりに付け根から炎が噴き出してルシアへと飛来する。

 軌道上の全てを薙ぎ倒し、相手を叩き潰さんとする巨拳に対してルシアは数本の短剣を飛ばすも弾かれるか先端が突き刺さるだけ。

 

 瞬く間に迫った拳は地面と激突する音と共に土煙を舞い上げた。

 

「やったか!」

 

 土煙が上がる寸前、ルシアは確かに拳の前に立っていた。直撃により叩き潰したのだと確信したマルギットが鎖を繋いだ拳を引き戻し,次の獲物であるベアルコへと視線を向ける。

 

 恋人居ない歴=年齢なマルギットとリィズにとって昼間から人前でイチャイチャする姿を見せられて既に怒りは決壊寸前。トドメに本当の事を言われた暁には捕らえて身代金を奪う事など忘れ去り、続いて厨ニ病を指摘したベアルコを潰す前に軽く溜飲を下げていた。

 

「その頭,弾けさせてやるよ!」

 

 親指の腹に人差し指の先端を当てた構え、デコピン程度の威力でも金属の硬度とゴーレムの出力ならば常人の頭など熟れた果実を金槌で叩き潰すのと大差無い。

 

「二人を潰した後はたぁっぷりと……へ?」

 

 キスすら未だの未通女でも他人の行為の見学や本での知識はちゃんとある。本番では役に立たなくなるであろうそれらを総動員した妄想で脳内予行練習を行いつつジェイルへと視線を外した時、薄れ始めた土煙から五本の短剣が飛び出した。

 

「げぇ!?」

 

 咄嗟に左手が防御に回るが今度は一本も弾かれる事なく深々と突き刺さり、土煙の中から服を手で払いながらルシアが姿を見せる。

 その体には傷一つ無く、正面からタロス一号を見据えながら。

 

「馬鹿なっ!? 潰した筈だぞ!?」

 

「当たってない。だから潰れてない。当たる前に目眩ししただけ」

 

 手品の種明かしとでも言う様にルシアの周囲を舞う短剣の幾つかが地面へと激突,その瞬間に察せられる威力以上の勢いで土煙が舞い上がった。

 

「気が付かなかった? これだから馬鹿は困る。面白い物は造れても使いこなせてない。……ジェイル」

 

「あいよ!」

 

 名を呼んだ時,既に彼は走り出していた。ベアルコに向かっていた右拳が後ろから掴み掛かるも跳んで避け、落下が始まるよりも前に彼の足元に刃の腹を上に向けた短剣達が滑り込む。

 それを足場にした跳躍、そして再び短剣が足場になってタロス一号の元へと迫った。

 

「ひゃあっ!?」

 

 眼前に迫るジェイルの姿に慌てたリィズが左手を振るえば連動してタロス一号の左手も動き始め、更に飛来した短剣が次々に突き刺さった。

 

「構造は理解した。弱い所も……どうやったら壊せるかも」

 

 内部で金属部品が壊れる音が響き、関節から広がったヒビで指が折れ曲がり脱落する。

 後を追っていた右手も同様に上から脆い部分に突き刺さった短剣によって地面へと押し込まれ縫い付けられた。

 

「そんなっ!? 金貨五十枚も掛かったのに!?」

 

「金貨五十枚? 誕生日にお祖父様がお母様達には内緒でくれたお小遣いと同じ額」

 

 悲痛な叫びを鼻で笑い、勝利を確信した笑みを浮かべるルシア。両手に短剣を構えたジェイルがタロス一号の前へと降り立つなり宙を飛び交う短剣が球体関節へと次々に突き刺さって動きを封じ、ジェイルは魔法陣の中央を深々と切り裂いた。

 

 金属製の装甲は室温で放置したバターの様に容易に切り裂かれ、傷付けられた部分から次々に光が漏れ出る。その光は破壊された魔法陣に止まらず機体全体に広がり続けるヒビから次から次へと溢れ出す。

 

「あーあ、やられちゃった」

 

 魔力が溢れ出し暴走するかの様な音とミシュリルの残念そうな声。其はまるで少しだけ予定が崩れた程度のもので、それでもタロス一号の全身にヒビが広がり装甲が剥がれ落ち続けて……。

 

 

 

 

 

「造って良かった第二形態~!」

 

 外側の装甲が全て剥がれ落ちた下から新たな装甲が姿を見せる。巨大な魔法陣が一つだけあった第一装甲と違い小さな魔法陣が幾重にも重なりながらボディ全体で光を放ちながら存在していた。

 放つ魔力も大幅に上昇、まるで今の今まで余計な荷物を持っていたとばかりに軽い動きで空へと上昇して行った。

 

 

「熱っ!? おいおい、熱が装甲貫通してるぞ!? だから足場は耐熱処理しておこうっつったじゃんか!」

 

 そして靴の裏が焼ける音に合わせて上がる煙。靴を挟んでも感じる熱に三人は慌てふためきパニック状態だ。

 

「だ、だって外部装甲は搭乗性能を上げる為の物で,第二形態に直接乗る事なんて大分後の予定だったから想定してないし材料費も足りなかったし……」

 

「ちょっとマルギットとリィズ!? 人に掴まって登ろうとしないでよ。押し付けられるでしょ!? 鉱山の重労働が終わった後で毎日息抜きの酒盛りは流石に不味かったわね……」

 

 絡繰を組み込んだ影響かタロス一号のボディが発熱しているらしく、その上に乗る三人は熱せられた砂浜に素足で踏み込んだ時と同じ状態になってしまっている。

 激しく足踏みをした挙句に左右の二人に乗られて悲鳴を上げながらも口にするのは聞いていて呆れそうな内容。

 

「あはははははははははははは!」

 

 無表情で大笑いするベアルコの足下では自我が存在するかの様な勢いでパンダが転げ回っている。

 

 ジェイルとルシアも新たな姿を見せたタロス一号に警戒しながらも三人の醜態には呆れ果てるしかない。

 あれだけのゴーレムを造り出せるにも関わらず,何故彼処まで見苦しいのか全く理解出来ないのだ。

 

「ええい! さっさと倒してかっ攫うぞ! 足場が熱いのは我慢だ我慢! 熱い夜が待ってるんだぞ!」

 

「う、うん! もう少しだけ頑張れそう……」

 

「だったら私の上から退きなさいよっ!?」

 

 タロス一号のボディ一面に存在する魔法陣,それが一斉に発行するなり全てから管状の魔力が放たれる。直ぐ近くのジェイルやルシアを囲うように放出を続け、避けても直角に曲がりながら追い続ける。

 

 

「無駄無駄ぁ! タロスビームはターゲットを追い続けるんだよ!」

 

「諦めて捕まりなさい。大丈夫,変な事するだけだから。痛くないよ? 貫通されて痛いのは私達だけで、絶対気持ち良いと思うから」

 

「熱っ!! マジで熱っ! さっさと倒さないとこっちがヤバいわよ!?」

 

 魔力の管は属性を持たない単純な物。速度もそれ程迄に高くは無く、数と追尾性能にだけ注意を放てば、なんか相手は勝手に発熱に負けて勝てそうだ。

 

 避けるだけの余裕はある。登場時のセクハラ発言の時には既に関わっては駄目な相手だと判断されたのか人の姿は無く、それこそ騎士団が騒ぎを聞き付けて姿を見せるまでそれほど長くは掛からないのは明白。

 

 ならば今のまま避け続ければ良いだけ。その筈ではあるのだが……。

 

 

「ジェイル、あの三人腹が立つ」

 

「同感。自分の手でぶっ飛ばしたい気分だ」

 

 迫り来る攻撃を回避し,時に短剣で弾き飛ばしながら二人は背中合わせの状態でタロス一号を睨む。

 売られた喧嘩を人任せにする事はどうにも気に入らない、その様な感じだ。

 

「だぁああああああっ!? どーして当たらねえんだ!? しかも目の前でイチャイチャしやがって!!」

 

「どう見たらイチャイチャしてる風に見えるんだよ」

 

「ジェイル、言っちゃ駄目。きっと異性との接点が凄く薄い人生だったから私達程度でも刺激が強いんだと思う。なんて言ったっけ? ……喪女?」

 

 熱さとは別の理由で足を踏み鳴らしていたマルギットの……いや、エルフ達全員の顔から表情が抜け落ちる。

 

「フッ」

 

 鼻で笑う音に続いて何かが切れる音がした。魔力を放出し続けていた魔法陣の光が収まり、その代わりに巨体を浮遊させていた竜巻の勢いが増して周囲に散らばった物が吸い込まれる程の回転数へと達し、それを推進力にしてジェイル達へと突っ込んだ。

 

 

 

「こうなったらヤケクソだぁああああああああああ!!」

 

 




そろそろ次の応募キャラ出す頃かな?
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