魔法科高校の落第生   作:超高校級の切望

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工藤

 その男には体の弱い孫がいた。

 その孫は体は弱くとも高いサイオン保有力を誇り、魔法師としてとても優秀。

 

 有事の際に、軍事に利用される可能性がある程。

 

 その男は魔法師が兵器として利用されない世界を望む。故に、必要なのだ。魔法に代わる力が…………

 

 

 

 

「久し振りだね。この子達も君が大好きだから、もっと頻繁に遊びに来て欲しいものだが」

「遊びには行ってますよ。貴方と会わないだけで、光宣ともゲームをしますし」

 

 尚、マダラが2ラウンド連続で取られて負けた。

 

 その前は貧乏神の王を押し付けられ負けた。

 

「ははは、そうだった」

 

 気のいい老人のように笑う男の名は九島烈。十師族の序列を確立した人物であり、本人も十師族『九島』の前当主。

 

 かつての世界最強であり、「最高にして最巧」と謳われ、「トリック・スター」の異名を持っていた魔法師だ。

 

「マダラ〜、遊ぼうぜ。ほら、森の中走ってさ」

 

 先程からグイグイとマダラの服を引っ張るのは()()カムイ。

 

「ん〜………」

 

 マダラの膝で勝手に寝ているのは工藤乃愛。お茶を入れているのは工藤凛。壁際で待機しているのは工藤リュウ。マダラに体重を預けゲームしているのは工藤エンリ。

 

 九島烈が見つけてきた()()()()()()()()()達である。

 

 日本で影響力の高い烈が、どの家の邪魔も受けることなく集め養子として引き取った超能力者達。

 

 流石に本家に入れられるわけもなく工藤の名を与えられたが。

 

「人工サイキッカーは造れましたか?」

「いいや、まだだね」

 

 PSIは魔法と異なり、人類全てが目覚めることの出来る力。その方法さえ分かれば軍人全てをサイキッカーにして、望まぬ者を戦わせる必要はなくなるだろう。

 

 まあPSIの強さにも差がある以上、結局は戦略級サイキッカーなんて枠組が生まれそうではあるが。

 

 旭とマダラの関係を考えれば、遺伝的な素養もあるのだろう。

 

「お茶です」

「ああ、ありがとう凛」

「サンキュー」

 

 出されたお茶を飲むマダラと烈。因みに緑茶だ。ほふぅ、と落ち着く。

 

「それで、要件は?」

「私もいろいろ忙しくてね、暇な時でいいから、この子達の面倒を見て欲しい」

「俺選手でエンジニアなんだけど?」

 

 とは言え、実際このカムイ達は烈か同じサイキッカーのマダラ、後は仲のいい光宣の言うことぐらいしか聞かない。

 

 世話係を付けても逃げるだろう。寝るのが好きな乃愛と真面目な凛、リュウは烈が世話を任せたと言えば大人しくするが、本当に大人しくするだけだろうし。

 

 屋台で食べたい物とかあっても話しかけすらしないだろう。

 

「この子達が楽しめるようにたのむよ」

「…………まあ、そのぐらいなら」

「よおし! じゃあ遊べ!」

 

 カムイが飛びつきお茶が溢れた。やべ、と逃げ出すカムイは窓から外に飛び出す。

 

「よぅし! いい度胸だ、覚悟しろ!」

「お前なに凛のお茶零しとんのじゃああ!!」

「……………」

 

 叱るために追いかけるマダラ。怒ってないので笑顔だ。

 逆にエンリは怒っている。リュウはペコリと烈にお辞儀してから凛のお茶をこぼさせたカムイを追った。

 

「ゆ、夕飯までには帰ってきてくださいね〜!」

 

 

 

 

 

 

 一色愛梨。

 名が示す通り、一色家のご令嬢。第三高校に所属し、常に上を目指す上昇志向を胸に宿す少女である。

 

 現地に来ても出来る限りの鍛錬を怠らない。

 彼女が参加するのはクラウド・ボール新人戦と………ミラージ・バット()()

 

 2年、3年を差し追き代表に選ばれるのは、流石数字付き(ナンバーズ)……それも十師族候補の師補十八家の一員ということだろう。

 

 現在練習しているのはミラージ・バット。

 

 空中に投影したホログラム球体を目掛けて移動し、スティックで破壊するというもの。ユニフォームは何やら妖精のようで、女子のみの競技。

 

 運営の趣味だろうか?

 

 まあ、それは置いておいて彼女のスタイルは跳躍。

 ミラージ・バットにおける使用魔法と言えば跳躍、静止、移動だろう。

 

 突き出た円柱の足場以外に落ちれば失格。他の選手が先に降りれば狙っていた足場にも降りられなくなるので、移動先も飛び上がる時に狙った場所に降りれるとも限らない。

 

 膨大なサイオンと体力、駆け引き、反射神経が必要な華麗な見た目に反して頭を使い続けるフルマラソンのような苛烈な競技でもある。

 

「愛梨、そろそろ………あまり根を詰めすぎても、本番で動けなくなる」

 

 そう言って止めるのは彼女の親友である十七夜栞。数字落ち(エクストラナンバーズ)の家に生まれながら数字付き(ナンバーズ)十七夜家に養女として引き取られた少女である。

 

 因みに選手でありながらエンジニアも務めている。

 選手として優勝はもちろん、エンジニアとして昨年1年でありながら七草真由美、十文字克人など有力な選手のエンジニアを務めたとある生徒を超えることも目標の一つだ。

 

「うむうむ。流石じゃのお」

 

 古風な喋り方をする少女は四十九院沓子。

 神道系古式魔法を受け継ぐ由緒正しい家系の娘で、そのルーツを辿るとかつての神道の大家「白川家」に通ずる水のスペシャリスト。

 

 ホログラムの代わりに水を浮かせていたのは彼女だ。

 

「まだ油断はできないわ。相手は短くても1年の差があるのだもの」

 

 逆に言えば、1年の差がなければ負けないつもりらしい。その態度に2人は微笑む。と…………

 

「うひぃ! やっべー、やべぇ!」

 

 子供が走ってきた。なんで子供? というか、自己加速術式でも使っているのか途轍もなく速い。

 

「悪いごはいねぇがあああ!!」

「ぴゃああああああ!!」

 

 今度は第一高校の制服を着た男が走ってきた。背中には女の子を乗せている。

 

「捕まえなさい子分1号!」

「はっはー! 逃さねえぞ! それからエンリ、お前は後でケツ叩く!」

「!?」

「子分なんて言うから………」

 

 また子供が現れた。

 

「へ、へーんだ! まだ捕まるかよ!」

 

 雪の神(ウパシカムイ)

 

「魔法!?」

 

 無数の雪玉が生まれる。

 CADの操作をしている様子はなかった。BS魔法師? けど、あれだけの水分を何処から?

 

「いけぇ!」

 

 移動魔法でも使ったのか一気に加速して放たれる雪玉。

 生成からの移行が早い。減速させた分子運動エネルギーを個体エネルギーに変化した?

 

「………………」

「……………」

 

 まあ少年達には回避されているが。しかし、反射神経が人間のそれではない。まさか、自分と同じような魔法を?

 

「ちょっと! ぴょんぴょん暴れんじゃないわよ!」

「あ、こら」

「うびゃ!?」

「「「あ………」」」

 

 左右に揺らされ、文句を言えるように身を乗り出し耳元に口を寄せた少女の顔に雪玉が当たる。肩に乗せていた手を放し地面に落ちた。

 

 サッと顔を青くする2人の少年と、こちらに気付く青年。

 

「……………やってくれたのお」

 

 バチバチと破裂音が響き、オゾン臭が漂う。

 

「やっべ!」

「落ち着けエンリ!」

「チッ」

 

 雪玉を放っていた少年が飛びのき追いかけていた少年が止めようとして、青年は愛梨達の前に移動する。

 

「おまんら全員焼き殺したらぜよおおお!!」

 

 眩い光が周囲を包み雷が暴れまわる。愛梨達へと迫る雷を、青年は()()()()()()()()()

 

「エンリ! この馬鹿、落ち着け! バーストストリームだ!」

「ジジ様に怒られるぞ!」

「っう! わ、解っとるわい!」

 

 キン、と空気が変わる。

 エンリと呼ばれた少女の周りの想子(サイオン)が乱れる。放電が勢いを失っていき、やがてバチバチとスタンガン程度の出力になり消えた。

 

「恐ろしや恐ろしや…………あだ!」

 

 ふぅ、と安堵しながら冷や汗を流す少年は、青年にゲンコツを食らう。そして少女のおでこを指で弾く。

 

「カムイ! 追いかけっこで力使うな! エンリも周りを見ろ! 巻き込んでたろ!」

「うう、だって…………楽しくなってきて」

「カムイのばかすったれが悪いんじゃ!」

「反論は許さん! 罰として、お前達の今日の夜のデザートは抜いてもらう!」

「いやあああああ!!」

「のおおおおお!!」

 

 ショックをうける少年少女はコイツラがいなければ、という視線を愛梨達に向けまた殴られた。

 

「悪いな………あ〜。すいませんでした」

 

 と、頭を下げる。

 

「ごめんなさい………」

「すいませんでした」

「お騒がせして申し訳ありません」

 

 青年に続き少年少女達も頭を下げた。

 

「あ、いえ………弟さん達ですか?」

「クソジジイから面倒を押し付けられたクソガキです」

「誰がクソガキだぁ!」

「やかましい! 烈や光宣みたいに甘やかしてもらえると思うなよ」

「怒らないんじゃなかったのかよ!」

「その通り、だが叱れる!」

 

 レツとミノル? まさか、烈と光宣?

 彼は九島の関係者なのだろうか………。

 

「お気になさらず。幸い、こちらに怪我人はおりません。幼いとは言え、感情の高ぶりであそこまで現実を改変するのは優れた魔法師の資質をお持ちなのでしょう」

 

 と、愛梨が代表して前にでる。

 

「一色愛梨と申します。宜しければ、お名前をお伺いしても?」

「篠村マダラです」

「マダラの敬語って変な感じ」

「な〜」

「朝飯のパンに塗る黒ごまクリームとピーナツバター抜かせたる」

 

 少年少女は土下座した。

 

「篠村………貴方が」

「? 知ってるのか?」

「去年、1年生ながらエンジニアに抜擢され貴方の担当の選手は好成績、もしくは優勝」

「選手の腕が良かったのもある。俺だけの成果じゃねえさ」

「でも貴方は、多くの生徒を担当していた。それだけ信頼されていた、違う?」

「あ、うん。それは違う。自主退学者や辞退者が増えて空いた枠に入れられただけ」

「………………そう」

「まあ、穴を埋められると思われるだけの実力はあるのじゃろう?」

「原因が俺だから」

「「「………………」」」

 

 数秒の沈黙。

 

「貴方が担当する新人選手が参加する競技は?」

「………………」

 

 それぐらいなら、どうせ後から調べられるか。

 

「新人はアイス・ピラーズ・ブレイクとスピード・シューティングだな。本戦だとバトル・ボード…」

「そう………私はスピード・シューティングとアイス・ピラーズ・ブレイクに出ます」

「? おう」

「負けるつもりはありません」

「……………選手に言って………いや」

 

 マダラはそこで言葉を区切る。

 

「そうだな。彼奴等が負けるとしたら、エンジニアの俺のせいだ」

「…………貴方は、選手としては参加するんですか?」

「ん? ああ、まあ落第生なんで新人戦の方にだけど」

 

 

 

 

「珍しいのう、栞があそこまで強く出るなど」

「そう?」

 

 栞はデータでしかマダラを知らない。去年の選手等を調べる時にたまたま知ったのだ。

 確かに九校戦に選ばれるだけあり優秀な選手だった。だがそれは他校も同じ事。全ての試合がそうではないが、勝敗を分けたのは間違いなくCADの差。厳密に言えば大会委員にCAD本体のスペックは決められているから、エンジニアの差。

 

 そのエンジニアが篠村マダラ。

 

「会ってみたかった………のに、なんで落第なんて」

 

 落第するということは成績不良だったということ。対抗心と、敬意を持っていただけあり勝手ながら裏切られたような気分になる。

 

「でも、まさかここで会えるなんてね。ついてるなあ」

 

 ポツリと、その呟きが溢れる。

 

「? 今何か妙な気配がせんかったか?」

「? なんのこと?」

「沓子の何時もの勘? 何か起きるのかしら………」

 

 

 

 

「マダラさん、ご無事ですか?」

「ああ、知り合いだからな。ちょっと面倒事押し付けられたけど」

 

 帰ってきたマダラに駆け寄る深雪。達也は信じていたので特に慌てない。

 

「あの子供達は………」

「まあお察しの通り。だが俺を狙ったサイキッカー集団………では、あるのか? 九島烈の集めてるサイキッカーだ」

「九島烈の? また随分な大物が」

 

 サイキッカーを保有していることに驚きはない。あの九島烈なら、まあ、やるだろう。

 

「夕方までに戻れたのは幸いだな」

「?」

「立食パーティーがあるだろ。忘れたのか?」

「………………!」

「忘れてたんだな」

「忘れてたんですね」




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