なんとかサウナから脱出したマダラと達也。作業車に移動した。
「司波君、篠村君、遅かったね。何かあったの?」
「聞くな、啓」
「なんでもありません」
明らかに何かありそうだけど、と首を傾げる。まぁ2人ともすごい速度で自分の仕事を終わらせてしまったが。
「達也、お前は四日目からだろ? 今日はもう休め」
「………解った」
マダラの目を見て達也は車から出る。向かったのは、
八偸戯の忠告に従うのは癪だが、それでも警戒していたが故に早々に気づけたのだ。
「拳銃に爆弾?」
拳銃で武装した3人組だったらしい。吉田幹比古と共に捕らえたのだとか。
人と機械双方で侵入者の監視、排除をしている軍の設備で爆弾すら持っていたらしい。
内部に協力者がいるからだろうが、軍に引き渡したらしい。警戒も上がり、今回の大会に限っては侵入など出来ないか。
まあ八偸戯がテロリスト側に付けば別だが。
恐らくは既に警備にも己の蜂を寄生させているだろう。
「どうする? 遥ちゃん呼んでみるか?」
「今のところ、騒ぎを大きくするつもりはない」
「そうだな。そもそも相手が解らねえし」
さて、そんな事があった翌日、九校戦は無事始まる。
昨夜の件は未遂で済んだので、高校生に要らぬ心労を与えるべきではないと隠されたようだ。
1日目はスピード・シューティングの決勝までとバトル・ボードの予選。
スケジュールの違いは両競技の所要時間が反映されている。
第1試合は七草真由美が参戦する。
スピード・シューティングのルールは簡単。30メートル先の空中に投射されるクレーを制限時間内に破壊する数を競う、魔法の発動速度と命中率を競うもの。
同時に4つのシューティングレンジを使い、6回の試技で予選を終え、上位8名が進む。
準々決勝以降は対戦型。100個ずつ用意された紅白のクレーと、自分の標的を破壊した数を競うもの。
予選では大規模破壊が行えるも、準々決勝以降は精密さを求められる競技である。
遠隔視系知覚魔法の『マルチスコープ』で多角的な視界を有する真由美のスコアはパーフェクト。それも一発も外さず。
男のみならず女子からも黄色い声が上がる。
「さっすがマダラ君! 去年と同じく、使いやすかったわ!」
「おう。次は渡辺か」
摩利もあっさり予選を突破した。
「流石ですマダラさん」
「真由美と渡辺と服部の腕がいいんだよ」
真由美は優勝、摩利も予選を通過し、服部もスピード・シューティングで見事優勝した。全員マダラの担当選手だ。
一応、マダラに理論で負けても自主退学せずに次こそはと奮起した今年の2年、3年のエンジニアは優秀ではあるのだが………。まあ、選手の差だ。
「確かに道具はそれだけでは意味はありません。ですが、使い手だって道具が優れているからこそ実力を発揮できるのです」
「素直に称賛を受け取っておけ、マダラ」
「どの口が」
達也だって似たようなことを言うくせに、とマダラ思ったが、逆だったら自分も達也のようなことを言うかとマダラは思った。
そして2日目。
真由美がクラウド・ボールで無失点で勝ち進み優勝するも、桐原達が男子クラウド・ボールで敗退するという結果に終わった。
九校戦の順位は各競技の順位によって与えられるポイントの合計で決まる。摩利達が優勝すれば、まだ十分合計点で優勝は狙える。
さて、そんなわけで三日目。摩利の試合、バトル・ボードの決勝戦。
マダラから調整を終えたCADを受け取る摩利。
マダラの腕は去年その身で知った。なのでそこに心配はないのだが………どうしても聞かなくてはならない事がある。
「……その子供達は?」
「遊びに来た餓鬼共。預かれと言われてたが、エンジニアの仕事もあってあまり構ってやらなかったから……」
現在、何故か子供達が控室にいた。
マダラの知り合いらしい。
「無関係の子供を呼ぶのは、どうかと思うが」
「俺は来るなと言った。九島烈の関係者だから、スタッフが役に立たねえ」
「九島の…………」
なんでそんな子供と知り合いなんだろう?
「なあ〜、屋台行こうぜ屋台〜」
「渡辺が優勝してからな〜」
サラリと優勝前提の言葉に面を食らうも、直ぐに笑みを浮かべる摩利。
「ああ、任せておけ」
「おお〜、はっえー!」
屋台につれて行けと言っていたカムイだが、一番楽しんでいた。
準決勝だが試合は実質七高と摩利の一騎打ち。海の七高と呼ばれる魔法科第七高校の選手に対してリードする摩利はやはり魔法師としてかなり優秀。
このまま摩利が勝つと、誰もが思った。その時だった。リュウがハッと顔を上げる。
「水の中に何かがいる!」
「凛! 俺とカムイを飛ばせ!」
判断は迅速。リンは困惑しながらも2人に手を向ける。
リュウが感じた異変は直ぐに現れた。
まず、七高選手。
明らかな過剰な加速。作戦ではなく、本人も酷く動揺している。それに気付いた摩利が加速を解除し180°回転。ボードを弾き飛ばし、選手の慣性中和と受け止めるための魔法を発動しようとし、水面が陥没する。
唐突な変化に魔法の発動にズレが生じた。ボードを弾き飛ばすも選手への魔法が間に合わず衝突。もつれ合うようにフェンスへ飛ばされ、悲鳴が上がる中…………大量の雪がクッションとなって二人を包む。
「ひゃー、あぶねー…………」
「よくやった、カムイ」
雪を出したカムイはふぅ、と一息。咄嗟でありながらPSY能力を発動できる辺り、カムイもサイキッカーとして相当な上澄み。
「………………」
「どーだ、マダラ?」
「後でリュウ連れてくるぞ」
と、その時遅れて鳴り響く中止の音。
「そっちは?」
「ぶつかった衝撃で肋骨に罅入ってんな。キレーに肩がぶつかった。運のねえ………」
とりあえずCUREを流し込む。マダラのそれは、本人の治癒能力を超向上させる類。『あの時』とは違う。完治するかは摩利の生命力次第だろう。
「……………俺達怒られる?」
走ってくるスタッフ達を見ながらカムイが尋ねる。
「烈さんいるから大丈夫だろ。権力万歳」
「おお、ケンリョクバンザイ!」