「……………」
「ふぅむ、去年一高を圧倒的な優勝に導いたという腕前…………さっそく見れるのか」
選手入場ゲートから選手を見つめる男の姿が僅かに映る。
「枷だらけの獣じゃのう」
「まあ、サイキッカーは
通常のBS魔法師同様に念じるだけで発動できる現代魔法以上の発動速度に加わえ、BS魔法以上の多様性。絶対数は少なくほぼ都市伝説であった彼等の存在証明は実は割と最近。
研究者にして軍医の篠村旭が自らがサイキッカーであることを明かした。なぜ急に明かしたか、理由は不明。何らかの取引があったのは確実。それを知るのは十師族や
とはいえ広めるような話ではないが、顔はともかく存在は事前に知っていた一色愛梨はあの後改めて話した。
因みに一条将輝も警戒すべき相手として戦士達に通達していたらしい。
「この前の子供達も、今も思えばサイキッカーだったのね。ここ数年数を増やしている、とは聞いていたけど」
「ただ、それは今回には関係ない」
と、栞が見つめるのはあくまで選手の少女の持つCAD。
去年は観客として来ていた彼女が見たのは、学生が施したとは思えないCADのプログラム。七草、十文字とした十師族を始め渡辺摩利など優秀な魔法師が居たのは確かだ。だが、お世辞にも抜きん出ているとは言えない者達まで勝ち星を挙げたのは、CADの差。
大会用のスペックが決まっているCADで大差をつける。栞は彼こそ正体不明の天才魔法工学科技師、トラース・シルバー、あるいはトレース・ブロンズなのではないかと疑っている。
「始まる」
雫に渡した魔法は、いわば待ち伏せ型。
任意機雷と言ってもいいだろう。
得点有効エリアに入った物体の内部に疎密波を発生させ砕く。
一片15メートルの立方体のなかに10メートルの立方体を設定し、各頂点と中心に震源を設置する。
各ポイントは番号で管理され、展開した起動式に変数を入力することで仮想波動を展開し、標的に振動を与える仮想的な振動が現実の振動へと変わる。
「この競技は選手の立ち位置から特典有効エリアの距離、方向、エリアが常に同じだからな。座標を毎回入力する必要もなく、実質引き金を引くだけで標的を破壊可能だ。大規模な魔法を処理できるが細かい制御が増えてた雫によく合わせている。俺もそうしただろう」
「そういえば師弟だもんねえ。やっぱり発想も継ぐ感じ?」
「知識の出力を発想と呼ぶなら、そこに師弟の関係はないよ。彼奴は自分が下、みたいな言い方をするが、俺は彼奴を対等と思ってる。発想が似るのも、ただの偶然だ」
「確かに、達也さんとマダラさんってオーラが似てますね」
美月の言葉に達也は考え込む。自分と深雪が似ているとも言っていたが、マダラとも?
血縁だけでなく性格などでも似るようだ。見ることの出来ない達也には想像しか出来ないが、まあ、悪い気はしない。
と、話している間にパーフェクトを叩き雫。会場が歓声に包まれる中、達也の携帯が震える。
「……………メールだ、マダラから」
「噂をすればってやつね。なんて?」
「今の魔法の名前を一緒に考えてくれ、と………」
因みにマダラは『
「………………『
「無難だな」
こういうところに男の子を見せるマダラと無難な達也は、たまに意見がずれる。まあ、そういう時はたいてい自分のネーミングがあれなのを自覚してるマダラは登録名はそちらにした。
「ん?」
不意に雫が袖を引いてくる。
「次の選手、気になる。見に行こ?」
「そうだな」
あ、あの時の女。そう呟いた瞬間周囲の温度が下がった。深雪はとても笑顔だ。涼しそうという理由でバトル・ボードを選んだマダラは使える、と確信した。
「懇親会でも思いましたが、随分と仲がよろしいのですね?」
「そうでもない。名前を知ってる程度だ………向こうは俺のこと知ってたみたいだけど」
「去年のマダラ君、大活躍だったものね。今年の達也くんと同じで」
「その理屈で言うなら来年は達也がモテるな」
「まさか。ただのCADエンジニアがモテるわけないだろう。後、その理屈はお前もモテるままだからな」
「ふふふ、お二人共、おモテになる予定なんですね?」
「ちょっと涼しすぎるな。達也、深雪の頭………2回撫でろ」
「人の妹を冷房器具に使うな」
などと会話している間に始まる。
「へぇ………」
破壊されたクレーの破片が移動魔法で他のクレーを破壊。その破片が別のクレーを…………破壊が連鎖していく。破片が増え、鼠算式に破壊が連鎖していく。
人並み外れた空間把握能力と演算能力。
彼女にしか使いこなせないであろう、まさに固有魔法と呼ぶべき代物だ。
「いいな」
「あら、マダラ君ったら本当にああいう感じの子が好みなの?」
と、エリカがからかう様に言う。
「マダラは俺と違って汎用より、個々人の特性にあった魔法を好むところがあるからな」
「達也は誰でも代替可能な、『全体的』な技術の引き上げが好きなだけだろ。汎用とは、言い方だな。俺だって別にそっちが嫌いなわけでもないしな」
事実『
「でもほら、俺ってばサイキッカーなわけで。個々人の特性を伸ばす方に意識がいきやすいんだよな」
得点が出た。パーフェクト。
新人戦で出るなんて珍しいそれが、2人目。周囲の喧騒が増した。
「じゃ、そろそろ次の準備に行こう、マダラさん」
「そうだな。次の準々決勝からは違うCADを使うし、チェックしとかねえと」
雫とマダラが歩いていると、不意に声を掛けられた。
「第一高校の北山さん? こんにちは、第三高校の
先程の試合から戻るところらしい。隣には一色愛梨。
「予選を拝見しました。大変良い腕をされていますね。貴方とは準決勝で対戦するのが楽しみです」
準々決勝以降は対戦式。勝ったほうが先に進む。
そして栞と雫が当たるには、互いに準々決勝を勝つ必要がある。
「次の試合、当然勝つ自信があるって事なんだね。分かった、私も準決勝楽しみにしてるよ」
感想待ってます