魔法科高校の落第生   作:超高校級の切望

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父親

 寄生された生徒達を並べて、応急処置をする。一先ず動画見て熱のごとく熱を持っているので冷やしていく。

 

 その中で、ブランシュに協力していた者達は別の場所に移した。そして、ブランシュ構成員とともに図書館で秘匿情報を奪う手伝いをしていた壬生沙耶香は生徒の中で一番情報を持っている可能性があると優先的に治癒する事に。

 

 司甲も捕らえたのだが、何度も洗脳された形跡がありマダラのトランスで読み取るのは少々厳しい。なら、話す気がありそうな沙耶香を優先したのだ。

 

「よし、っと……調子は?」

「ええ、頭痛ももう治まったわ…………」

 

 七草真由美、渡辺摩利、十文字克人…………生徒首脳陣に加えエリカやレオ、達也と深雪もいる。

 

 そして早速話し始める。まずはどうブランシュと関わることになったか。

 

 去年、彼女が入学して直ぐに声をかけられたらしい。その時から既に剣道部には司の同調者が居り、なんなら剣道部以外にも自主的な魔法訓練サークルを装い思想教育が行われていたのだとか。

 

 存外、土台の構築はしていたらしい。それなのにこの雑な計画……スポンサーに急かされたのか、サイキッカーを雇い調子に乗ったのか。

 

「渡辺先輩に、相手するまでもないと言われるはずです。自分なら変えられるなんて、深く考えずに」

「んん? まて、何の話だそれは」

 

 聞けば沙耶香は剣道の試合を選び、しかし二科生というだけで断られたという。

 その言葉に摩利はますます困惑する。そんな記憶ないのだ。

 

「傷付けた側に傷の痛みがわからないなんて、良くあることです」

「エリカ。嫌いだからって邪魔するな」

 

 エリカの皮肉の効いた言葉をマダラはバッサリ切り捨てる。

 

「そもそも渡辺先輩は剣の腕に嘘はつかない。去年の時点で壬生の方が上だろ」

「そう、その通りだ。あたしはちゃんと言ったぞ、あたしの腕では到底、お前の相手は務まらないから、お前に無駄な時間を過ごさせてしまうことになる。それより、お前の腕に見合う相手と稽古してくれ………とな。違うか?」

「え、あの………そう、いえば……」

「まあ司が記憶や思考を書き換えられていたように、壬生も同じことされてたのかもな。蜂女か、司一に」

 

 心を弄んだと聞き、深雪を中心に部屋の気温が下がり始める。深雪だけでなく多くの生徒が怒りを覚えていた。

 

「そん、な………私、じゃあ………ずっと?」

 

 見当違いの逆恨みどころか、見て聞いて憧れた相手への気持ちすら書き換えられ、利用された。

 

「ひどい…………ひどいよ、こんなの………騙されて、変えられて、1年も…………」

 

 摩利や真由美、深雪達も………誰も何も言えなくなる中、達也が声を上げる。

 

「無駄ではなかったと思います」

「司波くん?」

 

 達也曰く、壬生の中学の強さを知るエリカが剣技が別人のように強くなっていると言っていたのだとか。千葉家の娘が言うのなら真実なのだろう。

 

 恨み憎しみでも、それすら偽物でも、彼女自身が鍛え、手にした力だ。恨みで凝り固まるでも、嘆きに溺れるでもなく、彼女は見返してやると己を磨いた。

 

 強くなる理由なんて様々。努力する理由なんて山程ある。その努力、時間、成果を否定した時にこそ費やした時間が無駄になる。

 

 その言葉に沙耶香は達也に近づくように頼み、胸を借りて泣いた。

 

 

 落ち着きを取り戻した沙耶香からやはりブランシュが関わっている事を聞いた。

 後はどう叩き潰すか。

 

 学外の警察に任せれば沙耶香達は捕まるだろう。

 

 尤も、そんな理由は達也にはどうでもいい。

 

「俺と深雪、そしてマダラの日常を損なおうとするものを、全て駆除します。これは俺にとって最優先事項です」

 

 エリカやレオもついてくる気だ。とは言えブランシュの拠点となっている場所が分からないと深雪がいえば、知っている人に聞けばいいと扉を開けると小野遥がいた。

 

 彼女はどうやら既に調べていたようだ。まさかの、ここから徒歩1時間もかからない廃工場であった。

 

 環境テロリストの隠れ蓑であることが判明して夜逃げ同然に放棄された工場に反魔法テロリスト。案外『根』は同じなのかもしれない。

 

 混乱を収めるために生徒会の真由美と、残党に警戒して風紀委員の摩利を残し、三巨頭からは克人が向かうようだ。

 

「んじゃ俺も」

「貴方は残りなさい」

 

 マダラも参加する意思を示そうとした瞬間、不意に声がかかる。ここにいる誰のものでもない声に振り返ると一人の男が立っていた。

 

 学生は勿論、遥にすら気配を悟らせず達也の『目』にも今この瞬間まで映らなかった。

 

「篠村さん…………」

 

 深雪が現れた人物の名を呼ぶ。篠村と呼ばれた男は、年は大学生ぐらいだろうか? 高校生にも見えなくもない。

 

 篠村という苗字からしてマダラの兄だろう。

 

()()………!!」

「え、おや…………え?」

 

 だからマダラが彼を呼んだ呼称に、彼を知らない者達は驚愕で目を見開く。

 

「お久しぶりですね真由美ちゃん、克人君。達也君に深雪ちゃんも、合格おめでとうございます。それから、はじめての方ははじめまして。マダラの父親の篠村旭です。47歳、現在は東京で脳科学の研究をしています」

「「お父さん!?」」

「「47!? 若っ!!」」

 

 見た目はどう見ても大学生までにしか見えない。

 よく言えば優しそうな、悪く言うならのほほんとしてそうな優男はニコリと微笑む。

 

「マダラ、あの力を使いましたね?」

「…………う」

「使わないと約束をしましたよね?」

「…………はい」

 

 ダラダラと冷や汗を流すマダラ。あのマダラが………。

 

「待ってください篠村のおじ様。マダラさんは、私達を守るために………」

「ええ、あれは強力な力ですからね。必要があったというのなら、仕方ないと認めましょう」

 

 使う必要があった………嘘でもそういえば、それで終わりなのだろう。深雪は不安そうに見つめる。

 

「………使う必要はなかった。でも使いたいから使った」

「貴方は馬鹿ですか」

 

 ドゴッ! と旭の拳がマダラに叩きつけられる。壁をぶち抜き廊下に飛び出し窓を割り外に落ちる。

 

「お、おじ様! どうか落ち着いて、今は先に治療を!」

「そんなもの、この部屋に訪れた時に済ませていますよ」

 

 真由美の言葉にあっさりと言い放つ旭。そのまま廊下に出ると、マダラが飛び上がってきた。

 

「いってえなこの!」

 

 怒りや憎しみという情動を削られたマダラは、しかし旭にだけはそれを向けることが出来る。旭が、マダラが自分を憎めるようにしたからだ。

 

「しかしそれはそれです」

 

 再び振るわれた拳に叩き落される。

 

「父の愛の拳です」

「マダラさん!」

 

 深雪が窓から飛び出し、慣性制御で着地するとマダラへ駆け寄る。

 

「あれは貴方も周りも飲み込み破壊する力。必要ないのに使ってはならないと言ったはずです」

「ですが、あれはそもそも勝手に………!」

 

 深雪が旭を睨みつける。

 

「貴方こそ、抑えるだけ抑えさせて、それだけではないですか。これ以上の乱暴は許しません………たとえマダラさんの父であったとしても、ならばその縁を絶ってみせます」

「……………………それは遠回しにマダラを婿に迎えたいと僕に伝えているのですか?」

「むっ!? ち、違います!」

 

 まさかの言葉に真っ赤になって叫ぶ深雪。

 

「ですが、深雪ちゃんの言うことにも一理あります。プログラミングなく存在するPSIプログラム………再び現れたというのなら、僕のやり方が間違っていたのでしょう」

「………………………」

「使いこなしなさい。貴方が力を使うことがあっても、貴方が力に使われる事はあってらならない。それは、あなたの周りの何もかもを消し去るという事なのだから」

「………………うん」

「それから、居残りは変えません。限定的とは言え数年ぶりに暴王の月(メルゼズ・ドア)を使用したのです。大事を取って休みなさい」

「………………………………はい」

 

 落ち込むマダラに、旭は仕方ありませんね、と微笑む。

 

「お友達が心配なら、私が代わりに行きましょう」

「それは…………心配事がなくなるな」

 

 

 

 

 

 その後ブランシュの拠点に特攻した達也達は邪眼(イビル・アイ)という光の明滅パターンで人を操る魔法の使い手である司一含む構成員を無力化した。

 

 死者はなし。旭はマダラの大好物のリンゴを置いて帰っていった。

 

 襲撃から帰還の間に買う暇などなかったろう。つまり、最初から用意していたのだ。

 

 夜月にリンゴパイにしてもらおうと思いながらマダラは帰路についた。

 

 ブランシュに加担していた生徒は兎も角、サイキッカーに操られていた生徒達はその日のうちに帰れた。

 

 

 

 

 北山雫もその一人である。

 

「……………ほのかは、覚えてなかった」

 

 それは良かった。あんな苦しそうに操られていたのだ、記憶なんてない方がいい。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 つまり雫は覚えていた。

 

「〜〜〜〜〜〜!!」

 

 枕を顔に押しつけ悲鳴を殺し、抱きしめゴロゴロと転がる雫。

 

 初めてだったのに!! 舌まで入れて!

 

「うう………」

 

 自分も忘れられたらよかったのに。

 自分の意志じゃないから、そしたらノーカンだったのに。

 

「明日から、どんな顔して会えば…………?」

 

 ふと、枕の一部が赤く染まっているのに気付く。

 

「……………ぁ」

 

 ボタボタと鼻血を流し、視界が歪む。

 

 目の奥が痛い。頭に靄がかかる。

 夕食の時間に現れない雫を心配して様子を見に来た黒沢が見たのは高熱を出して息も荒い雫の姿だった。

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