何かと達也達にとって恒例となったカフェ。
カンパーイとテンション高く叫ぶエリカにレオは思わず酒を疑う。
「私達も来てよかったのかな?」
「もちろん。来てくれてうれしいわ」
「……………」
二科の顔ぶれだけでなくほのかと雫もいた。雫は少しずつ慣れてきて入るのだが、時折マダラを見て唇をそっと撫でる。
「賑やかだねぇ。今日は何の集まりなんだい?」
「お疲れ会のような──」
「達也君のお誕生日会だよ!」
「「「え!?」」」
「…………?」
マスターの質問に応えようとした達也の言葉に被せるようエリカが叫ぶ。衝撃の事実とばかりに驚く他のメンバーにマダラは首を傾げた。
「エリカちゃん、なんで教えてくれなかったの!?」
「いやー、正確な日付は知らないよ?」
「え?」
大事な事なのにと叫ぶ美月に、しかしエリカは悪びれる様子も無く日付は知らないと言い困惑させる。
「どうせ4月中でしょ。誤差の範囲かなって深雪に昨日──」
「そう、
「…………ん?」
クスクス笑う深雪。エリカは聞き逃せない言葉に反応した。
「まさか、本当に今日だったの?」
「ああ、おどろいたよ。ありがとう」
達也に確認すればあっさり肯定される。何も聞いてない。
謀られたと気づいたエリカが深雪を睨むが深雪は否定はしてないはずよ、と悪戯っぽく笑う。
「マダラ君も教えてくれていいじゃん!」
「いや、俺は深雪に誕生日会やるとしか聞いてないぞ」
昨日、深雪はエリカにマダラに連絡していないことを聞くと自分が伝えておくとエリカに切り出したのだ。情報の漏洩をさせないためだろう。
「しまった、プレゼント」
「うん……」
「お二人とも気にすること無いですよ。って、私達が言ってもいいのか………」
「俺等も全く知らなかったわけだしな」
「当然俺は知ってたぞ。深雪、達也、ほらよ」
「私にもですか?」
「祝えてなかったからな」
達也に渡すのはシルバーのブレスレットと最新式ディスプレイ型携帯端末。深雪にはラピスラズリのネックレスと料理本。
「2つずつ?」
「あ〜……入学祝い」
因みに他の皆はマスターが作ったケーキをプレゼントということにしよう、とマスターがザッハトルテを出してくれた。
「マダラさん、このネックレス、付けていただけませんか?」
「ん? ああ、わかった。じゃあ後ろ向…………」
深雪はニコニコとマダラを見つめる。後ろに回っても変わらないだろう。
マダラは仕方なく、腕を深雪の首の後ろに回す。
サラリと流れる艷やかな髪をかきあげ、親指の付け根あたりが深雪の白い肌に触れると深雪はピクッと僅かに震え、抱きしめるように首の後ろを確かめるマダラの横顔に目だけ向ける。
その光景にほのかと美月がアワアワと赤くなる中、カチリと留め具が止まる音が聞こえた。やっと終わったと俯いていたほのかと美月が顔を上げれば、深雪は引き戻そうとしていたマダラの手に己の手を重ねていた。
暫く見つめ合った後、マダラは深雪の横顔を撫でる。深雪は目を細め首を傾ける。
「ほのか………駄目だ。刺激が強すぎた」
「美月も駄目ね。茹で上がってる」
雫とエリカは尊い犠牲に涙は流さなかった。
「いいの達也く〜ん? 深雪取られちゃうわよ? シスコンとして、お前に妹はやらん! って怒らなきゃ」
「何度もいうが、シスコンじゃない。それに、マダラなら深雪を任せられるだろ」
「そ、そんなお兄様。マダラさんに
任せたいとは言ってない筈だが。
「あんたら本当に初対面は仲悪かったの? なんかもう、出会った瞬間運命感じちゃったんじゃない?」
「それはないわ。今のマダラさんなら兎も角、出会って向けられた第一声が『キャンキャンうるせえ。吠えるな犬女』なんて言ってくる人と仲良くできないもの」
「どういう状況!?」
因みにその後旭にボコボコにされた。
「確か達也との試合中に興が乗ってきたあたりだったか………深雪が止めようとしたんだよな」
「お前のせいで俺も熱くなってしまったからな」
具体的には深雪の制止により、やる気のなくなった達也に有線テレパスを繋いで闘争心を共有するというやり方で。
その際の有線テレパスの形は互いの手首を鎖と枷で繋いだ遥か昔の決闘の如き。
互いにボルテージが上がり、使える全てを使おうとした時に、マダラが当時軍医をしていた父に拳骨を喰らい地面にめり込んだ。
「まあその後色々あって家族ぐるみの付き合いになったんだが」
「本当に色々あったな」
「ありましたね……」
3人は昔を懐かしんだ。
「そういや、俺の初恋もあの時だったな」
「え、やっぱり深雪の事が!?」
「いや、深雪の母ちゃん。すげえ美人なんだよ」
確かに深雪の母親なら、絶対物凄い美人なのだろうな、と誰もが思った。深雪はなんとも言えない顔をしていたが。そりゃそうか。
「はい、気分はどうっすか?」
時間を少し遡り、深夜がマダラの家に訪ねに来た当日。
マダラは深夜に向けていた手を下ろす。
「ええ、楽になったわ。診てもらうまでの期間も延びて、完治まであと少しかしら。でも、そうしたらマダラさんと会う口実がなくなってしまうわね」
クスリと微笑む深夜。四十を超えてるとは思えぬ美貌は、娘である深雪と並べても姉妹にしか見えないだろう。
変な髪型のせいで年よりは若く見えるが、同じ様な見た目の筈なのに深夜より老けて見える真夜とは偉い違いだ。なお、それを口に出したら旭に叱られた。
「俺は怪我とか治すのは得意ですけどね。体にガタが来ていたり病気は、やっぱり親父の方が…………」
傷や病を癒すライズを他人に付与するCURE。しかしそこはやはり思念の力………本人のイメージが強く関わる。
ただ回復力を強めるだけから四肢や内臓に至るまでの再生、寄生蜂の様に強制的にライズを使わせたり、変わり種では他生物の生命力に干渉し逆に吸収するものまで。
喧嘩ばかりしていたマダラは高い再生能力で傷を癒すイメージは強くとも、病気などを治すイメージが出来ない。なので傷のない深夜にやっていることと言えば、生命力の譲渡に近い。
まあ、受け取ったライズエネルギーは確かに深夜の肉体を癒していってはいるのだが。
医師免許も持つ旭なら病気だろうと毒だろうと癌だろうあっという間に癒すだろう。
「あの男の力が体に入ってくるなんて、死んだほうがマシよ」
しかし深夜は旭の事を嫌っている。
深夜からすればますます嫌う理由にしかならなかったのだろう。
壊すことでしか救えなかった。あれしかないと思って、己の心を傷つけてまでやったそれを否定されたのだから。
「…………ところで、そろそろあの子の誕生日ね」
「ああ、はい。深雪のと一緒に」
「……………そう」
「………?」
「マダラ君。その紙袋の中身、お二人に渡しておいてもらえますか? 奥様からだというのは、ご内密に」
と、穂波が紙袋を指差す。
「…………自分で渡せばいいのでは?」
「今のあの子達は『司波』だもの。他人の私が渡すわけには行かないでしょ?」
「家に来た時にでも」
「奥様はその、お二人と顔を合わせられなくて…………」
「穂波?」
余計なことは言うなと、深夜が美しい笑みで牽制する。
「まあいいや。じゃ、次は穂波さん」
「はい、よろしくお願いしますね。最近深雪さんとはどうですか?」
何の脈略もなく切り出してきた。その目はキラキラと期待に満ちている。
「深雪と? 受験があるだろうから、去年はあまり関わってなかったっすね」
まあ深雪なら余裕で合格できるだろうとは思っていたけど。達也とは仕事の関係上関わってたが。
「う〜ん。じゃあ、好きな女の子とか出来ました?」
「いや別に。俺好みのタイプ大人の女なんで」
そういえば穂波も大人の女。それも、顔立ちも可愛らしく、何事もそつ無くこなせるかっこいい女性。
「ふふ。じゃあ、マダラ君が結婚できる年齢になって、誰とも付き合ってなかったら立候補しようかしら」
「え、いいの?」
「え、いいの?」
微妙な沈黙。
コホンと深夜が咳払い。
「う、う〜ん。そういうのは、ちゃんと考えてからにしましょうね」
「まあ性癖と好きな人が一緒になるとは限らないしな」
「性癖って言わないでください」
なんてやり取りがあった4月24日を過ぎ、達也の誕生日の4月25日を終えて………やがて5月。壬生沙耶香の退院日ということで達也達が病院に向かうのを見送り、マダラは一人山の中。
「さて、と…………やるか」
その言葉とともに周囲が淡く光る。
バーストストリーム。達也とマダラ、旭が考案した強力なバーストを扱う際にPSIエネルギーを外へ逃し脳への負担を減らす技術。
「とはいえ、必要以上に出るなと出来てもなあ」
野球ボールほどの
感知すれば直ぐ様プログラムに従いPSIを貪り喰らうために動くだろう。
PSIさえなければ自分で動かせる。
バーストストリームがなかったら、それこそ書物に記されていた使い手同様無作為に暴れるのだろうが。
「…………しっ」
バーストエネルギーを地面に流し、隆起させる。早速反応する
「いぎ!?」
脳内に逆流するバーストエネルギーで頭が潰れそうになる。集中が乱れ、自由になった
「はぁ、はぁ…………くそ、うまくいかねえ。一度起動したプログラムだからなあ」
そもそもなんでプログラムされているのか。
「魔法式みたいに、事前に起こす行動をプログラムして………そうなると避けられるか?
事前にある程度の動きはプログラムしておくべきか?
「
去年の九校戦。紆余曲折ありエンジニアとして参加することになったのだが、その際どこぞの家か国に雇われたサイキッカーが優秀な魔法師の卵を攫うために現れたのだ。
真由美と仲良くなり始めたのもあの事件からだったか。まあ最悪
「達也に相談……いや、今はやめとくか」
確か今は飛行魔法の作成をしているらしい。達也なら………まあ、作れるだろう。
新しい魔法を、新たな難問を超えていく親友。
「俺も負けてられねえなあ」
新しく