アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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体育館で一悶着起こしてしまった雪。

日を改めて、謝罪と何故そうするに至ったかを説明する場を設けて貰う。

そこで語られる事とは・・・


EP11 謝罪と理由と悪ふざけ

 

昨日のやらかしについて、何故ああするに至ったのかを顧問に話して、改めて謝罪と理由を説明する場を設けて欲しいと言う事を各部活の顧問に話して了承を貰った。

 

さて、それは部活の時間で良いとして、もう1つ別の問題が絶賛発生中なんだよなぁ。

 

昨日ナツ姉が一緒に帰るみたいな事言うもんだから、同居の件が他の生徒にバレたらマズいと思って断ったら、帰って来てから頗る機嫌が悪いんだよ。

 

話し掛けたらちゃんと受け答えはしてくれるし、ウチの両親にはいつも通りの対応だから良いんだけど、俺に対する当たりが何かこう、“アイドルの塩対応”って感じ。

 

まぁ握手会とか行った事無いから知らんけど。

 

と言うか、バレたらマズいってのはナツ姉だって分かってるのに、何であそこまで機嫌が悪いのかが全く分からん。

 

分からんからこのまま謝ったとしても、「何が悪かったのか分かって謝ってる?そうじゃないなら謝罪の為の謝罪なんて要らないよ」って言われるのが目に見えてるしなぁ。

 

はぁ、ぶっちゃけ面倒臭い。

 

何か気に障る事を俺がしたなら直接言やぁ良いのに、「私怒ってます、察して!」的な、付き合ってそれなりの期間がある彼女ムーブされても、彼女いない歴=年齢の俺にはハードルが高過ぎなんよ。

 

幼馴染みとは言うものの、ずっと一緒だったんならともかく空白期間が6年、しかも小学校の高学年から高校1年と言う「男女を意識し出す多感な時期」は、離れていたから尚更ね。

 

そういやハリーさんは彼女(現役JKモデル)居るって話だから、ちょっと聞いてみるか?

 

でも俺たちの場合は彼氏彼女として付き合ってる訳じゃ無いから、参考にはならんか。

 

「まぁ、バレたらマズいと思ったとは言え、流石に突き放し過ぎた物言いだったかな?」

 

そう思ったのは確かだから、その線で行ってみよう。

 

駄目ならもう知らん。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昨日雪くんが早上がりすると言うから「私も」と言ったら

 

「は?何でだよ、ナツ姉は早上がりする理由無いだろ。じゃあまたな」

 

と突き放された感じで言われた。

 

よくよく考えてみれば雪くんの言う通りで、一部を除いて私たちの同居は知られていないんだから、幼馴染みとは言え早上がりして一緒に帰るのは不自然に思われてもおかしくない。

 

おかしくないんだけど、あの言い方はどうなんだと思う。

 

私が拗ねてるだけなのは分かってるけど、やっぱりもうちょっと言葉を選んで欲しかったと言う気持ちがある。

 

「付き合ってる人達は、しょっちゅうこんな気持ちになるのかな?」

 

恋人同士のちょっとした擦れ違いを私達2人がやってると考えたら、怒ってる筈なのに何だかにやけてしまう。

 

花恋に聞いてみようかな?

 

でも「そんな事は付き合ってから言いなさい!」って言われそうだし止めとこう。

 

駄目駄目、雪くんが「言い方が悪かった」とか「言い過ぎた」って謝って来ない限り、許してあげない事にしよう。

 

ピロン、とスマホが鳴る。

 

確認すると部長から「今日の部活前に昨日の騒動について鶴羽くんから改めて謝罪があるので、出来るだけ全員参加して欲しい」との旨が書かれていた。

 

「謝罪なら昨日ちゃんとしてたのに、まだ何かあるのかな?それにしても全員参加して欲しいって言うのはかなり大事な話みたいだけど」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後の体育館に部活前の生徒が集まって座っている前に、雪くんと先生方が並んで立っている。

 

「それでは鶴羽くんに改めて昨日の件の謝罪と、何故ああするに至ったのかの説明をして貰います。

これは鶴羽くんの希望であり、私達教師も貴方達に聞いて貰った方が良いと判断したので、この場を設けました。

では鶴羽くんお願いします」

 

「はい。先ずは昨日部活中に騒ぎを起こしてしまった事について改めて謝罪します。申し訳ありませんでした!」

 

「もう良いぞー」とか、「もうちょっと抑えてくれても良かったけどなー」等、批判的な声は余り出なかった事に安堵する。

 

「ありがとうございます。では何故自分があそこまで激昂してしまったのかについてお話しします。

 

知ってる人も居ると思いますが、自分は小3から昨年までアメリカに居ました。その時知り合った1つ歳上の友人が居て、お互いバスケ好きと言う事もあって仲良くなりました。

1人っ子の自分にとって兄とも言える存在でもあったその人はいわゆる“天才”と呼ばれる部類の存在で、自分は必死に食らいついて行くのがやっとでした」

 

「雪くんがやっとって、信じられない(千夏)」

 

「中学に上がってやっとまともに勝負出来る様になり、その年頃にありがちな2人で目指せNBA!って目標を持ってバスケを楽しみながら、でも本気で目指していました」

 

「そりゃあアメリカでそれだけ本気でやってたんなら、雪の尋常じゃない上手さにも納得が行くな(ハリー)」

 

「自分もその人も2人でNBAの舞台に立つ事を信じて疑っていませんでした。

それが自分が中2の頃、今から2年程前に全てが目の前から消えてなくなりました。

 

・・・不可抗力による怪我が原因で」

 

「だから昨日あれだけ怒ってたのか(匡)」

 

「校内の階段を話しながら自分が先に上っていて、踊り場に居る彼の方へ振り返った時、急いでいたであろう走ってきた生徒がぶつかった衝撃で自分が踊り場に向かって落ちてしまい、咄嗟に助けようと受け止めてくれた彼は膝を床に強打してしまい、右膝蓋骨骨折。

歩けても元の様にプレイ出来るかも分からないと言う、スポーツ選手として最悪に近い診断を受けました」

 

「っ!、それは・・・(大喜)」

 

「本人は“事故だからお前のせいじゃない”、“お前を助けられて良かった”、“俺も諦めるつもりは無い、必ず戻ってくるからお前は先に天辺で待ってろ”と言って笑っていました・・・表向きは。

それから暫くして退院すると聞いていた日に病院に行くと、彼は3日前に退院していたと聞かされ預かっていたと言う手紙を渡されました。

それには

 

“騙す形になってごめん、俺の膝はもう元には戻らないらしい。いつかお前と一緒にNBAでプレイしたかったけど無理みたいだ。

そんな俺が側に居ると、お前は気にしてない振りをしても自分の責任だと感じて何処かに影響が出ると思う。

だから俺はお前の前から消える事にした。

何処に行くかは誰にも伝えてないから、もしかしたら2度と会う事はないかも知れない。

でも俺はお前が必ずNBAに行くと信じてる。

恥ずかしながら“天才”と呼ばれた俺が唯一認めた男だからな!

最後に、2人でNBAに行くって約束を守れなくてごめん。でもお前と出逢えた事は一生の宝物で自慢になる、ありがとう”

 

そう認められていました」

 

その時、俯き少し震えている雪くんの顔から雫が落ちるのが見えた。

 

ーえ?涙?

 

そこで一度言葉を切って目元を指で拭い、

はぁー、と一息付いて天井を仰ぎ見る雪くん。

 

・・・もしかして涙を堪えてる?

 

いつも飄々としていて掴み所が無い彼が涙を堪えていると思うと、私にもこみ上げてくるものがある。

 

ースイマセン、ちょっと目から汗が出ちゃいましたー

 

無理矢理笑顔を作り、そう言う雪くん。

 

その顔を見てその言葉聞いた瞬間、

「無理しないで!皆ちゃんと待ってるから大丈夫だよ!」

と言ってしまった。

 

周りからも、「そうそう、いつもおちゃらけてる鶴羽くんのこんな表情滅多に見られないし、SSRだよね」とか、「話が長くなれば今日の部活は短くなって楽出来るし」とか、「お前いつもそうしてればただのイケメンなのに、勿体ねーぞー」とか、軽口の中にも心配が見える事を口にしていた。

 

最後のは余計だけどね。

 

雪くんは目を見開いて周りを見渡した後、「ありがとな、ナツ姉、皆」と言って続きを話し始めた。

 

「正直ショックでした。

 

兄とも師匠とも親友とも思っていた人が急に目の前から消えて居なくなってしまった。 

それも結果的にとは言え自分のせいで、と。

 

まだ中学生だった自分には到底受け入れる事が出来ず、プレイで八つ当たりして畏怖の目で見てくる相手に対して、

 

ーあの人が居ないんだからー

 

“俺に勝てるのは俺だけだ”

 

なんて、中二病全開の物言いをしたりで周りからも疎まれつつありました。

 

まぁ実際に中2だったんですけどね(笑)

 

そんな時母に、「あんたいつまでそんな情けない顔して周りに当たり散らかしてんの!怪我したあの子だってあんたのそんな顔が見たくてあの手紙残した訳じゃ無いでしょ!」と言われてハッとしました。

 

そうだ、あの人は俺のこんな情けない所を見たくて姿を消した訳じゃ無い。俺がいつかNBAの舞台に立つと信じてくれていたからこそ、あんな手紙を残して去って行ったんだ。

俺がその想いを踏みにじってどうすんだよ!、ってね。

 

それからは今までの態度の悪さを改めて、今と同じ様に頭下げて回って何とか許されて受け入れて貰えました。

 

これが昨日ぶつかって倒れた蝶野さんを見て過去の自分と重ね合わせた結果、激昂して騒動を起こしてしまった原因です。

 

スポーツに怪我は付き物とは言え、不注意が原因で自分と同じ思いなんかして欲しくないし、出来るなら誰一人として怪我無く競技や試合に臨んで結果を出して欲しいと心底思ってます。

 

改めて本当に申し訳ありませんでした!」

 

 

「そんな事が」、「そりゃ激怒するのも仕方ないわ」、「俺なら耐えられなくて辞めてるかも」、「こんな辛い話、よくしてくれたよね」、等々の声が上がる。

 

女バスの監督が教師陣を代表して、

 

「皆さん、鶴羽くんは本当は話したくなかったかも知れません。それでも自分の行動の責任を取り、こうやって過去にあった事が原因で昨日の行動に繋がった事を話してくれました。確かにいきなり怒鳴るのは良くありませんでしたが、それは人を心配する気持ちから来ていた事だけは理解して下さい。それでは各自部活を始めましょう」

 

その言葉で緊張を解き、各々が自分の部活の準備を始めて行く。

 

「ねぇ、ナツは知ってたの?今の話」

 

「ううん知らなかった、雪くんにあんな事があったなんて」

 

「流石に重い話だから、千夏にも言えなかったんでしょう」

 

部長にそう言われたけど私には話して欲しかったし、それを聞いたからって私が雪くんを見る目を変える筈がないのになぁ。

 

「あ、ナツ姉、丁度良かった。昨日は言い方がキツかったよな、ごめん。(コソッ)同居がバレたらマズいと思ってな。

それとフォローしてくれて助かった。あのままだとマジ泣きしてたかも知れん」

 

「私こそごめん。あんな事があったから、私も焦ってついあんな事言っちゃったんだ」

 

「ならこれでお互い許すと言う事でお願いします、鹿野先輩!」

 

「仕方ないな~、分かったよ鶴羽くん!」

 

「部長・・・」

 

「ナギ・・・」

 

「「良かった、変に拗れなかった!!」」

 

「ん?ナギちゃん先輩とキクちゃん部長、何漫才やってんの?M-1目指してんの?」

 

「「あんな重い話した直後に、もう平常運転してる!?」」

 

「あー、まぁ自分の中で折り合いは付いてるからな。俺が自責の念に駆られてやさぐれた所であの人の怪我が無かった事にはならねーし、それなら吹っ切るしか無いだろ」

 

そう話して居る所に、「てててっ」と言う効果音が付きそうな感じで雛が小走りに寄って来る。

 

「雪、昨日はありがとう。お陰様で怪我も何も無く1日休養で済みました!」

 

「お、そうか、それは何よりだ。期待してるぞ、新体操部期待の星(自称乙w)」

 

「今、期待の星の後に“自称乙w”って思ってたでしょ!口に出してないだけで目がそれを語ってんのよ、あんたの場合!」

 

「あ~」

 

「それは確かに」

 

「雪くんなら」

 

「「「あるかもね!!!」」」

 

何なのこの人達?俺をディスるの息ピッタリ過ぎなんだけど。

一体俺を何だと思ってんだよ。

よーし良く分かった、そっちがその気ならこっちも盛大にからかってやろうじゃねーか!

 

「あ、雪の奴何か企んでんな、あの顔は」

 

と言う針生先輩の言葉を聞いて、雪の方を見る。

 

そこには雛・千夏先輩・渚先輩・部長の菊池先輩の4人が居た。

 

雪を見ると、確かに何か碌でもない事を思い付いたとしか思えない、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「嫌な予感がしますね、針生先輩」

 

「変な事にならなきゃ良いが、無理だろうな」

 

そう話していた矢先に

 

「へー、そうなんだぁ、4人とも俺の事よーっく分かってくれてんだなぁ?“男冥利に尽きる”わー!

 

そうかそうか、皆そんなに“俺の事が好きで堪んねー”んだなぁ!

 

いやー参ったなー、学校の男子全員から恨まれちまうなー、“こんな美少女4人から想われてる”なんてさー!!!!」

 

あ、あいつやりやがった!

 

何てデカい声で特大の爆弾落とすんだよ!

 

ここに居る男子のほぼ全員が、「鶴羽テメェ、さっきの感動返せやコラ!」とか、『ここの男子人気上位に入る4人を口説いてんじゃねーぞ、この野郎!!」って叫んでるぞ、雪ぃ!!

 

ん?

 

「え!?////」(部長)

 

「ちょっ!////」(雛)

 

「は!?////」(渚)

 

「~~~////」(千夏)

 

あれ、何か4人とも何か満更でもなさそうな・・・

 

その中でも顔を真っ赤にした雛と笑顔でからかってる雪を見て、何故だかイラついてしまった。

 

あれ?千夏先輩と雪が一緒に居る時より、雛と雪が居る時の方が嫌な気持ちになる。

雛は親友の筈なのに、何でこんな気持ちになるんだろう?

 

「どうした、大喜?愛しのちー先輩が口説かれてるの見て、イラついたのか?」

 

「ちち、違いますよ針生先輩!何でそうなるんですか!?」

 

「いやだってお前、この前笠原とそんな感じの話してただろ?」

 

あれやっぱり聞かれてたのか、針生先輩も面白がってるな。でも・・・

 

「いえ、それが何でだか雛と雪が笑顔で話してるのにイラついたと言うか。あれですかね?親友が新しい友達と仲が良いと疎外感があって寂しいって奴ですかね?」

 

「マジか、お前・・・笠原、ちょっとコッチ」

 

「ハイ・・・言いたい事は分かります」

 

「大喜の奴、アレは蝶野の事を無自覚に意識してるだろ?」

 

「そうだと思います。あれだけ千夏先輩と騒いでた奴が、まさか蝶野さんを意識するとは思いもしませんでしたけど。でもそうなってもおかしくない程、あの2人の距離は近かったですから」

 

「まぁ、下手につついても良い事は無いだろうから、成り行きに任せるしかないか」

 

「俺達はそのスタンスで行きましょう」

 

「それより雪だよ。アイツおふざけが過ぎるけど、基本的に自分がイケメンだって自覚あんのか?あの4人マジで顔真っ赤になってるぞ」

 

「雪の場合、何故か自分を全く考慮してないんですよね、何事に於いても。だから平気であんな事が言えるし、周りから何を言われても全く気にしてません」

 

「「・・・はぁ、本っ当に性質が悪い!!」」

 





あれ?

シリアス話で終わらせようと思ってたのに、何でこんな事に。

しかしそのお陰?で、大喜の心境に変化が・・・?
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