アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
雪に盛大にからかわれた後、雛が雪に大喜と千夏を見掛けた事を話します。
そして雪にもまだ隠された本心が・・・?
本っ当に何考えてんの!?コイツ!!
自分の謝罪とその理由について話す為に体育館でやってる部活のほぼ全員が居る状況で、あんな大声で「美少女4人から想われてるなんてなー!」なんて言うかな、普通!?
他の3人も顔真っ赤にしてたし、真面目にしてたらコイツは自分がイケメンだって事を絶対に理解してない。
しているなら、あんな事を平然と言ってのける筈が無い・・・とも言い切れないか。
理解してたら、寧ろそれを利用してもっと性質の悪い事やりそうだし。
あ~~~、もう、どっちにしても皆に動揺してる所見られてるし、暫くはからかわれそう。
と、とにかく今はそれよりあの事を聞いてみないと始まらない。
千夏先輩から離れた所じゃないと聞けないし。
「雪、ちょっとコッチ来て」
「お、何だ?告白か?」
「馬鹿な事言ってないで、さっさと来る!」
「へーへー、分かりましたよ蝶野雛さま」
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「で、どうしたよ?本当のトコ」
「あのね・・・この前の土曜日、大喜と千夏先輩が一緒に買い物してたんだけど、何か知ってる?」
おっと?これはもしかして雛の奴、大喜の事が・・・(ニヤリ)
しゃーない、取り敢えずは安心させてから話聞いてやるか。
「おう、知ってるぞ」
「っ、本当に!?何か凄く楽しそうに笑いながら買い物してたから、大喜の想いが伝わって付き合った、とか?」
凄く不安そうな顔で聞いてくる。
・・・こりゃあマジだな。流石にふざけた受け答えは出来ねーか。
「これから言う事は嘘偽りの無い事実だ。それを聞いてお前がどう思ったのか教えてくれるなら話しても良いが、どうする?」
「聞きたい。それがどんな結果でも」
「じゃあ一先ずお前を安心させてやる。あの日は大喜んちでお呼ばれしてたんだよ、BBQやるってんでな」
「え、そうなの?じゃあ何で2人きりで買い物なんか」
「大喜の親父さんが焼きそばの麺を買い忘れたってんでアイツらに買いに行かせたんだよ。俺としては大喜がナツ姉に好意を持ってるって知ってたから、チャンスやろうと思って2人で行かせた訳だ。俺が居たらどうしても2人で話す頻度が減るからな」
「でも、そもそも何で千夏先輩と雪が大喜の家に呼ばれたの?」
「俺達3人の母親が栄明バスケ部OGなんだよ、その縁でな」
「そんな偶然あるの!?」
「俺とナツ姉は幼馴染みだから元から知ってたんだが、流石に大喜の母さんまでそうだとは知らなかったわ」
「でも、そうか、付き合ってるから一緒に居たんじゃなかったんだ」
あからさまにホッとし、安堵した表情を見せる雛。
「なぁ雛、お前大喜の事好きだろ?」
「へ?べべべべ別にそんな事無いし!?あんた何か勘違いしてない?」
「そうか。本当にそうならそれで良いし、もう何も言わねーよ。ただ今後俺は大喜のナツ姉に対する気持ちしかサポートしねーぞ?それでも良いんだな?」
「ぐっ!それは・・・」
「さっきの話じゃねーが、後悔する選択だけはすんなよ?もし本音は大喜が気になるってんなら、わざとらしくないレベルでサポートしてやるし、誰にも言わねーよ」
「・・・はい、本当は大喜が気になってます。あの日も2人の姿に嫉妬して凄く苦しくて涙が出てきた。それで調子崩して昨日あんな事に・・・雪にも迷惑掛けちゃったよね、ごめんなさい」
「謝る事じゃねーよ、そこまで影響出るくらいに大喜が気になってんだろ。ただ俺はあいつがナツ姉を好きな事も知ってるから、どちらも特別扱いはしない。だから後はお前と大喜次第だぞ」
「それで良い。全部雪におんぶに抱っこじゃ、この蝶野雛さまの名折れってもんよ!」
「へっ、いつもの調子が戻って来たじゃねーか。もう大丈夫みたいだな」
「自分の気持ちに気付けてあんたがサポートしてくれるって言うんだから、いつまでもヘコんでらんないでしょ!改めてよろしくね、雪!」
「おう、こちらこそな」
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雪と雛が何か話している。
特に雛は、最近の不調でおかしかった態度が嘘の様に笑顔になっている。
ボソッ「雪って凄いよな」
そう独り言の様に呟いた言葉を匡に聞かれていた。
「あいつは良くも悪くも裏表が無いからな。言われてヘコむ事もあるけど、後から思えば納得出来る事しか言ってない。それに本当に相手が傷付く事は口にしないから、皆何だかんだ言っても雪の事を本気で嫌いにならないんだと思う」
ーまぁ嫉妬は別にして、だけどなー
その言葉を聞いて、ふと気付く
ーあれ?雛と雪が仲良くしてるのを見てイラっとしたりモヤモヤするのは、もしかして俺、雪に嫉妬してるのか?ー
そう思うと途端に顔が熱くなってくる。
ヤバい、こんなに熱いと多分赤くもなってる。
匡に見られたら気付かれる!
「はぁ、やっと自覚したのか大喜?」
「え、な、何が?」
「お前が蝶野さんを意識してるって事だよ」
・・・完全にバレてた。
「で、でも俺が好きなのは千夏先輩であって、雛は親友なのは匡も知ってるだろ?」
「あぁ、俺もそう思ってた・・・さっきまではな」
「俺達は下手に関わらない様にしようって話してたんだが、お前が蝶野に対する気持ちを自覚したんなら相談くらいには乗ってやるよ。変に調子崩されたらコッチも困るからな」
針生先輩にまでパレてたのか、どんだけ分かりやすいんだよ、俺ぇ!
「そうなると1番読めないのが雪なんだよなぁ。あいつは誰か好きな相手が居るのかね?」
「今までを見てると、1番仲が良いのは千夏先輩でしょうね。ただそれが恋愛感情なのか?と聞かれたら返答に困ると言うか・・・」
「だな。ただ大喜には悪いが、ちーは雪を意識してると思うぞ、幼馴染みじゃなくて1人の男としてな」
「それは・・・見ていて何となく分かります。
俺達3人の母親が親友同士って縁もあってこの前ウチでBBQしたんですけど、途中で買い出しに行く事になった時に雪が俺に気を遣ってくれて千夏先輩と2人で行かせてくれたんですが、その行き帰りの千夏先輩があからさまに落ち込んでましたから」
そこへ
「おーい、野郎3人で何の悪だくみしてんのー?変な事ばかり考えてたら、女子に嫌われるぞー」
なんて自分の事を棚に上げて雪が近寄って来る。
「いや、お前が言えた義理じゃねーだろ、雪。かわいそうにあの4人、暫く皆のオモチャにされるぞ」
「いやいや、元を辿れば俺をディスってきたのが悪いんだよ、“現役JKモデルの彼女”持ちのハリーさん?」
「ばっ、おま、今ここでそんな事言ったら・・・」
「ほぉ~?針生くんはそんなリア充だったのか~」
「そんな彼女持ちの針生くんは、さっきの俺達を見てさぞ面白かったんだろうなぁ~?」
「お、おい、お前ら落ち着け、雪に踊らされてるだけだって」
「あ、因みに俺はあの人達をからかっただけで口説いた訳じゃありませんからね!
ハリーさんと違って、ぜぇ~んぜんモテませんから・・・ケッ」
いや、それはお前の普段の言動に問題しかないからだろ、と言い掛けたが、下手に口を出すとコッチまでとばっちりを食うのが目に見えてるからグッと堪えた。
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あー、面白かった。
あの後ゆでダコみたいに真っ赤になってた4人は、
「ねぇねぇ実際どうなの、鶴羽くんの事?」
「本当にこのまま付き合っちゃうの?4人とも?」
「1対4のハーレムなんて、うらやまけしからん!」
等々散々からかわれていた。
うん、ディスられたからやり返した俺が言うのもなんだが、見ていて流石に同情した・・・けど、俺は悪くないよね?
まぁ帰りに捕まると酷い目に遭いそうだから、Bダッシュ(古い)で帰宅したんだが。
そうこうしてる内にナツ姉が帰って来た。
・・・何かいつもよりスゲー勢いで階段上がって来てるんだが、もしかして俺ヤバみ?
そう思った瞬間、ガチャっとドアが開き
「雪くん!アレは流石にやり過ぎだよ!他の子達から散々からかわれたんだからね!」
「え~?皆して俺をディスるからじゃん、因果応報じゃね?」
「ディスってないよ!雪くんの普段の行いが悪いからでしょ!全くもう、アメリカでの話をしていた時の感じで居れば格好良いのに」
そう言った瞬間、雪くんから表情が消えた。
「そうか、じゃあ今後はそうするかな。ナツ姉、着替えた方が良いんじゃないか?俺は風呂入るから後でな」
「え?」と言う間に雪くんは部屋から出て行き、私は1人彼の部屋に取り残された。
ーそれなら吹っ切るしか無いだろー
そう言って平気そうにしていたけど、やっぱりそんな簡単には割り切れてないんだ。
私は彼がまだ触れられたくない所に土足で踏み込んでしまったんだ、と気付いた。
「どうしよう、怒らせちゃったのかな?」
そう思っていると
「あれ?千夏ちゃん、雪の部屋でどうしたの?」
と優花さんが入ってきた。
「実は・・・」
と、昨日からさっきまでの事を話した。
「・・・そう、まだ吹っ切れてなかったのね。
まぁ、兄と慕っていたあの子が選手生命を断つ怪我をしたのが自分を助けた為なんだからそう簡単には割り切れないとは思ってたけど、ここまで根が深かったとは思わなかったわ」
「優花さんどうしよう、私、雪くんが吹っ切れたと思って無遠慮に踏み込んじゃって」
「大丈夫よ、千夏ちゃん。久し振りにあの話に触れてちょっとナーバスになってるだけで、本気で千夏ちゃんが悪いなんて思ってないわよ。どうしても気になるなら、夕飯の後にでも話しなさい、あの子にも言っとくから」
「はい、そうします」
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コンコンコン
「へ~い、どうぞー」
「お、お邪魔します」
「どしたんナツ姉?何か暗いぞ」
「あの、夕飯の前に言った事なんだけど・・・」
「あ~、アレなぁ。自分では吹っ切れてると思ってたんだけどなぁ。まだ吹っ切れてなかったみたいで態度悪かったよな、ごめんな」
「ううん、私が無遠慮に触れられたくない所に踏み込んだのが悪かったから、こちらこそごめんなさい」
「ま、立ち話もなんだしここで良けりゃ座んなよ」
と、自分が座ってるベッドの隣をポンポンと叩く。
ちょっと恥ずかしいけど、「じゃあ」と言って隣に腰を下ろす。
「何から話したもんかねぇ」
「じゃあ、その人と出会った時の事から教えて」
「分かった。あれは向こう行って1年ちょっとした頃だったかな。母さんに連れていかれたイベントでストバスにハマってた俺は、暇があればあちこちのストリートを回って子供からプロじゃねーの?ってくらいの大人に混じってバスケ三昧だった」
「確か“リトルモンスター”って呼ばれてたんだっけ?優花さんが言ってたよ」
「本当になぁ。どうせ付けるならもっと格好いい2つ名にしてくれって思ったよ。で、そんな時メインで通ってるフープのある所に行ったら妙に盛り上がってんのよ。
馴染みの奴に何かあったか聞いたら“とんでもなく上手い奴が来た、お前より凄いかも知れない”って言うんだよ。
見たら俺より少し年上くらいだったから、俺はこの辺の大人にだって負けない位なのに、子供のこいつがそんな上手いのか?ってのが第一印象だった」
「実際どうだったの?」
「俺はリトルモンスターなんて呼ばれて調子乗ってたけど、こいつはマジのモンスターじゃねーか!って、上には上がいるって事を思い知らされたよ。
それからは向こうが迷惑してるだろうってくらいにしつこく1ON1を挑んでたわ」
「ふふっ、何か想像つくなー。昔も私に負けたら“もう一回もう一回!”って勝つまで止めようとしなかったもんね、雪くんは」
「それを言うなし。まぁお互いウマが合って友達になって、一緒にあちこち回って色んな奴らとバスケして勝って負けてを繰り返してたら、いつの間にか俺達より強い奴らは近隣には居なくなってた。
それで噂を聞いたその辺りでは名門と呼ばれる学校から声が掛かってあの人が先に行って1年後に俺もそこに行ったんだが、それから1年程してあの事故があってあの人が居なくなった、ってのが今日した話」
そう言ってまた顔を伏せる雪くん。
その寂しさと悲しさが入り混じった顔を見た私は、思わず彼の頭を引き寄せて抱えていた。
「え?ちょ、ナツ姉!?俺も一応男だから、こんな事されると嬉しいと言うか困ると言うか・・・」
ふふっ、雪くんが嬉しいと言ってくれてると思うと、私も頬が綻ぶ。
「心臓の鼓動って気持ちを落ち着ける効果があるんだって。
今日話していた時、泣くの我慢してたでしょ?
良いんだよ、雪くん。私の前では我慢せずに泣いて良いんだよ?私には貴方の本心を話して欲しい」
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トクントクンと、一定のリズムでナツ姉の鼓動が聴こえて来る。
暫くその心地よさに身を任せていると、自分の心が落ち着いて来たのが分かる。
ー泣くの我慢してたでしょ?ー
あぁ、駄目だ
「・・・あの人は事故だから俺のせいじゃない、気にするな、と言ってくれた。
でも!
俺がよそ見しなけりゃ走ってきた奴に気付いてぶつかる事はなかった筈だ!
ぶつからなけりゃ俺が階段から落ちる事も無かった!
そうすりゃあの人は怪我もしなかった!
俺でも勝てるか分からないくらいの天才だから、今でもNBA目指してプレーしてたんだ!
俺の不注意があの人から夢も希望もバスケも奪ったんだ!
全部、全部俺が、俺のせいで・・・!」
ー我慢せずに泣いて良いんだよ?ー
この女(ひと)には全部バレてる。
今までずっとひた隠しにして堪えて来たのに、ここまで本音を見透かされてしまうと無理矢理蓋をして抑えていた感情が溢れ出てしまう。
「っく、ふぅっ・・・あ、あぁ、うわぁああああーーー!!」
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ー全部、全部俺が、俺のせいでー
そう言って雪くんは私に縋り付く様に腕を回して抱き付き、暫くの間ただ嗚咽を漏らして泣き続けた。
「・・・落ち着いた?」
「うん・・・ごめんナツ姉、服汚しちまった。
「服なんて洗えば大丈夫!
それより雪くんの気持ちが知れて嬉しかった。他の人が誰も知らない本心を私だけが知ってるのって特別感があるしね」
「謝りついでにナツ姉、もうちょっとこのままで居て良いか?流石に顔が上げらんねぇ」
「・・・良いよ////」
ちょっと強く彼を抱き締める。
「ナツ姉はいつも俺たちが居てくれて良かったって言ってくれるけど、俺の方こそナツ姉が居てくれて良かったと思ってる。
親にも言いにくい事でも、こうやって本音を言える相手は俺にはナツ姉しか居ないから。
本当にありがとう、日本に残ってくれて、ウチに来てくれて、俺は心から救われてる。もし叶うなら・・・」
そこまで言うと雪くんから力が抜ける。
「え?ちょっと雪くん!?」
彼の身体を支えきれずに横倒しになる。
「え?え?どうしよう、もしかしてこのまま・・・」と思っているとスースーと言う寝息が聞こえてくる。
「色々あったし精神的に疲れたんだよね、ゆっくりお休み、雪くん」
そう言って髪を撫でながら彼のおでこにそっと口づける。
そこへガチャっとドアを開ける音がしたのでそちらを見る。
「あらあらまぁまぁ、お邪魔だったかしら?千夏ちゃん」
「ちちち、違います優花さん!雪くんが疲れて寝ちゃっただけで何も疚しい事は・・・」
「え~、でも抱き合って横になってるとしか見えないわよ~」
「そ、それは雪くんが悲しそうだったからつい落ち着かせようとしただけで」
「冗談よ、ごめんね千夏ちゃん。それとありがとう。この子は良くも悪くも何でも1人で出来る分、人に頼ったり甘えたりするのが苦手なの。
そんなこの子がここまで心を許せる相手が居て、それが貴女で本当に良かった」
ー母親としては巣立つまでのもう少しの間、まだまだ頼って欲しいんだけどねー
と、少し寂しそうに笑う優花さん。
私の身体に回された雪くんの腕をそっと外して、優花さんに向き直る。
雪くんの頭をそっと撫でながら
「雪くんは優花さんの事は頼ってると思います。
ただ、子供には親には言えなくても友達には言える事もあるから、今回はそれがたまたま側に居た私だっただけです」
「そうね、でも千夏ちゃんは“友達”で良いの?」
「“今は”友達で良いんです。この人が私を1人の女性として意識してくれるまでは」
「そう。私もそんな日が早く来て欲しいわ~。千夏ちゃんが娘になってくれたら嬉しいのは本当だからね」
そこまで言われると流石に恥ずかしい。
「でも1番の問題は“雪くんがそう思ってくれるか”なんですけどね」
「この子は本心では分かってると思うけど、千夏ちゃんとの約束を果たすまでは、って思ってそうなのよ。
全国制覇じゃなくても出場くらいで思い告げるくらいしても良いと思うんだけどねぇ」
そうか!お父さんとの約束は約束としても、普通の恋愛をするかしないかはまた別の話だ。
「優花さん。IHでもWCでも全国出場決めたら私、雪くんに告白します!その時の答えがどうであっても私を意識させる事は出来ると思うので!」
「そう!その意気よ、千夏ちゃん。このバカ息子に貴女がどれだけ良い女なのかを分からせてやりなさい!貴女がそこまで覚悟したなら、私も春菜も由紀子も全面的に協力するわよ!」
「はい、お願いします優花さん!」
あれぇ?今回もどうしてこうなった?
何か思いの外、長くなっちゃったし。
ま、まぁ千夏的には良かった・・・のかなぁ。
最後、「優花さん!いえ、お義母さん!!」にしようか迷った・・・