アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
編入手続きの為に栄明へ向かう
果たして雪は、約束の地である栄明で約束の相手である千夏と再会出来るのだろうか
LAの空港から約半日の空の旅を終え、6年ぶりに日本の地を踏む。
ぐーっと伸びをして、凝り固まった身体を解す。
そして「日本よ、私は帰って来た!」とネタに走る。
すると「うるさい!周りに迷惑だし恥ずかしいでしょ!」と、母上からの有り難いお言葉と共にはたかれる。
痛い痛い、6年ぶりの帰国でテンション爆上がりしてんだから少しくらい大目に見てちょうだいな。
「で、今から新居に行ってお片付けですかね?」
「そうよ、今日と明日は最低限生活出来るくらいに片付けて、明後日は学校に編入手続きしに行くからね」
「父さんは1週間くらい後になるんだっけ?」
「ええ、社内の引き継ぎ自体は終わってるけど、主だった取引先へ帰国の挨拶も兼ねて後任との繋がりを作っておくって言ってたわ」
ふむ、流石わが父上はデキる男よ。
アメリカでの新規事業立ち上げに、30代前半の若さで抜擢されるだけの事はある。
何て事を考えていると
「あんたは制服が無いからって適当なジャージ着て、だらしない格好で行くんじゃないよ」
「そう言われましても母上、拙者ジャージの他はジーンズとTシャツに適当なシャツやパーカーくらいしかないのでござるが」
「まぁ母さんが恥ずかしくないコーディネートしてあげるから、それ着て行きなさい」
「ん~、ならバッシュとボール持ってっても良い?もし使わせて貰える様なら、挨拶がてら少し身体動かしたいんだけど」
「一通り手続き済んだ後なら学校側も見学くらいなら了承してくれるとは思うけど・・・あんたいきなり“腕試しじゃー”って勝負吹っ掛けて第一印象最悪にしないでよ」
酷い言われ様である。
この母親は自分の息子を何だと思っているのか。
そして2日後、俺はあの時1度は諦めた約束の地である「栄明学園」の校長室に居た。
「それではこれで諸々の手続きは完了です、お疲れさまでした。4月からは高等部での学校生活を楽しんでくださいね、鶴羽雪くん」
「はい、これから宜しくお願いします。それでお聞きしたいんですが体育館の見学って出来ます?」
「そうですね・・・もう少しで授業終了ですし今は体育館も使われてませんから、バスケ部の顧問に話はしてあるので軽くシュート練習くらいなら良いでしょう。ただ、誰か居たなら指示に従って下さいね」
と言われるやいなやソワソワしてきた。
「はぁ、あんたはもう・・・母さんはまだ話があるからもう少し掛かるけど、帰りはどうする?」
「大丈夫、通学路くらい覚えてるから1人で帰れるよ」
「まぁスマホもあるから大丈夫だと思うけど、迷ったら連絡しなさい」
「りょうか~い、では校長先生、1度職員室に顔出して顧問の先生に挨拶してから体育館に向かいます」
「はい、校内ですが気を付けなさい」
いやー、校長先生って良い人だなぁ、でも普段優しい人程怒ると怖いって言うし、悪目立ちして怒らせない様にしよう、等と詮なき事を思いながら職員室で顧問に挨拶して体育館に向かう。
するとダンダンとボールをつく音がする。
「あれ?まだ授業中の筈じゃ・・・それに体育館使ってないって話だったのに」
と思い、出入口の扉の窓からそっと中を見る。
そこにはバスケ部らしき女子生徒2人が、1ON1をやっていた。
んー、多分自習かなんかで通常授業が流れたから「どうせ最後の時限だしこの後は部活やるんだから、それなら体育館に行こう!」って脳筋思考の人たちなんだろうと推察した俺は名探偵だな(キリッ。
真偽はさておき、元々身体動かすつもりだったし女子ではあるが先輩に挨拶がてら混ぜて貰おうと考えるが早いか扉を開けて中に入る。
「スイマセーン、4月からここの高等部でバスケ部に入る事になったんで俺も混ぜて貰えませんか、先輩方」と明るく挨拶をする。
誰も来ないと思っていた所に現れた急な訪問者に2人ともビックリしているのを見て、ついつい笑ってしまう。
「あっはっは!誰も来ないと思って油断してたでしょ。ちゃんと周りにも意識割かないと直ぐボール取られますよ」
「え、キミ4月からって中等部は?」とショートカットの先輩が訪ねてくる。
「あぁ、俺こないだまでアメリカに住んでて一昨日帰って来たんですよ。向こうは大体5月末から6月頭くらいが卒業時期なんで、日本とはかなり時期がずれてるからここに慣れるって意味でも、図書室で中学の復習と高校の予習、部活の先行参加を認めて貰ってるんです。引っ越しの絡みで色々とやる事があるので、毎日じゃありませんけどね」
「へー、そうなんだ、なら折角だし1ON1やろうか?」
「お願いします、先輩方!」
「渚、私が先にやりたい」
今までずっと黙ってた先輩が口を開いた。
何かスゲー可愛い人だな、と素直に思う。
「じゃあその前に軽くアップするんで少し時間貰いますねー」と言いながらストレッチを始める。
5分程身体を解して身体も暖まったしそろそろ良いかとさっきの先輩に目を向けると、こちらを真剣な目で見つめていた。
「こんな偶然、都合良過ぎてまさかとは思う。でも本当にそうなら1ON1をやれば気付いてくれる筈、期待、しても良いよね?」
小声で何かを呟いている彼女を見て、疑問を持ちながらも
「さて、お待たせしてスイマセンでした、先攻はどっちが?」
「私から行くね」
「OK」
そして始まる1ON1
へー、この人上手いわ、と思いながらフェイントを織り混ぜたドリブルについて行く。
あれ?でもこの連続技、どこかで見た覚えが・・・と思考の海に入り掛かった一瞬の隙をつかれ、右脇を抜かれてシュートを撃たれそうになる。
でも甘い。
ただでさえ身長差があるのに、俺の身体能力を知らない以上そのシュートはリングまで届かないし、そもそも撃たせない。
ブロックされた時の呆気に取られた顔と先程の連続技が相まって、このクソカワ先輩と記憶の中の「彼女」が完全に合致した俺は転がったボールを拾い上げ攻守交代で擦れ違う時に囁いた。
「ナツ姉、凄く上手くなったね。でも俺もかーなーり上手くなったから負けてやんないよ」
さてどう攻めてやろうか、と思いナツ姉を見るとポロポロと涙を零していた。
「「えぇーーー!」」と渚と呼ばれた先輩とハモってあたふたしてしまう。
「え、え?キミさっきナツに何言ったの?セクハラ?」
「いやいやいや、何言ってんすかナギちゃん先輩、人聞きが悪い。俺がそんな事言う人間に見えますか?つかそれで見えると言われたら立ち直れないんすけどね!」
「でもだって、じゃあ何でナツはあんなに泣いてるのよ」
「そりゃあこっちが聞きてぇですよ」
2人でコントじみたやり取りでギャーギャー騒いでいると
「2人とも初対面なのに、もうそんなに仲良くなったんだね?私も嬉しいよ」
と、笑顔なのに目が笑ってないナツ姉が目の前に居た。
ヒエッ、と声にならない声を2人であげてしまう。
「あ、じゃあ私は先生に用事あるから」と体育館から去って行くナギちゃん先輩。
ーおっふ、アイツこの状況で俺を生け贄にして逃げやがったー
あー、まぁ良いか、どうせナツ姉とは話さなきゃならんし。
♪~「三原色」 YOASOBI~
「ナツ姉、ちょっと不穏な空気醸し出してるけど一言良いか?」
「何かな?女たらしの鶴羽雪くん」
ウチの母上と同じく酷い言われ様である。
「約束、守りに来た・・・ただいま」
雪くんはスゲー可愛い人だなと思った時点で「ん?」とは思ってます。
が、確証が持てないので取り敢えず1ON1やれば分かるだろー的な適当さです。
千夏との温度差がもうね。