アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
評価に色が付いて小躍りしております。
読んで下さっている方々に感謝と、少しでも楽しんで貰える様に精進します。
さぁ、先ずはバド部の地区大会からです。
「大喜ー。明日から地区予選なんだってー?張り切りすぎてコケて恥かかないようにね」
「余計なお世話だ!」
「匡くんに動画撮っといてもらおー」
言うだけ言って去って行く雛。
「お前結局どっちが本命?」
「えぇ・・・何ですかその言い方」
「どっちが本命でも良いけど、あんま期待させたり思わせ振りな態度は取るなよ。
特に聖女(ちー)を泣かせたら間違いなく魔王(雪)が出て来るぞ」
「それは確かにそうなんですけど、自分でもハッキリと分からないんです。千夏先輩を尊敬していて好きな気持ちを嘘だと思いたくないし、親友だと思っていた雛が雪と仲良くしてるのを見るとモヤモヤするのも確かだし・・・」
「まぁ今直ぐ答えは出せないだろうけど、試合に影響出さない様にはしとけよ?こんな事で負けたら笑い話にもならないからな」
「はい、そこは切り替えてちゃんとやります!」
「まぁダブルスは俺が居るから負けないだろうし、来週のシングルスもペスト16に入れば良いんだから」
「大丈夫ですよ!俺だって針生先輩に鍛えられてかなり強くなってますから」
ーベスト8でも4でもー
「そうか、そりゃ心強いな。帰りにラケバ忘れてなけりゃ格好良かったんだが」
「何で言ってくれなかったんですか!?」
「いつ気付くかなって」
「取ってきます!」
ダッと駆け出して行く大喜を見て、溜め息を吐く。
「端から見てると大丈夫じゃないんだよなぁ」
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結果から言えばダブルスは拍子抜けする程、アッサリとベスト16に進出した。
俺の課題が浮き彫りになったと針生先輩に言われたし、実際に先輩に助けられた場面は多々あった。
「おりゃあ!!」
隣のコートから大声が聞こえたのでそちらを見ると、声の大きさに比例した豪快なプレーをしている選手が居た。
と思ったら冷静に状況判断をして、後ろで構えていると見るや、ネット際にドロップショットを落として試合を終わらせていた。
その後針生先輩に気付くと話し掛けてきて、「この詐欺師ぃ」と言うので事情を聞くと、針生先輩に試合で勝ったら千夏先輩の連絡先を教えるって約束をしていたらしい。
それが面倒になったのか、来週のシングルスで俺に勝ったら教えてやる(正確には教えて良いか聞いてやる)と勝手に約束してしまった。
それを聞いた彼、下富高校の岸祥一郎くんは、「勝ったな」と言って去って行った。
「勝手にあんな約束して良いんですか!?バレたらそれこそ聖女と魔王がタッグ組んで襲ってきますよ!」
「お前が勝てば済む話だろ」
針生先輩は簡単に言うけど、俺はまだそこまで自信が持てていない。
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そして翌週、岸くんとのシングルスに望んだ俺は何とか勝つ事が出来た。
「またやろう、今度栄明に行くわ、練習試合で」
「うん、是非」
「女バスの活動日確認しとけよ!」
「うぉい!そこは諦める所だろ!」
まぁ悪い人じゃないのは分かったけど、下手に千夏先輩に近付こうもんなら魔王が降臨するんだけどなぁ。
そんな事を思っていた裏で、まさかあんな話になっていたとは夢にも思っていなかった。
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北高で練習試合をしていた私達は、隣の体育館でバド部が大会をしていると知って応援に来た。
丁度大喜くんが試合をしている所だった。
懸命にシャトルを追い掛け、点を取って取られてを繰り返す姿を見て応援にも力が入る。
そんな私の横を試合が近付いた笠原くんが通り掛かった時に、針生くんが勝手に私の連絡先を賭けていたと聞いて、とっちめてやろうと決めた。
「あの、俺と蝶野さんも雪から事情は聞いてますから」
「うん、聞いてる。“あいつらは信頼出来るから話した”って言ってたから、心配はしてないよ」
「さっきの賭けの話なんですけど、大喜には勝っても何のプラスも無いんです。だから先輩、あいつが勝ったら水族館にでもつれてってやってくれませんか?」
「え?」
「明日丁度部活休みなんで、それにあいつが頑張れるのは先輩の姿を見てきた影響もあるから」
「私にそんな影響力なんて」
「ありまくりですよ。あいつは良いとか凄いとか思った事や人に、とても影響されやすい奴なんです。それにここ最近の大喜は、友達から見てもよくやってるなと言いますか。
だからもし成果が出たなら、ちょっとくらい御褒美があっても良いと思うんですよね」
笠原くんが話し終わったタイミングでスマッシュを決める大喜くんの姿を見た私は
「そうだね、いいよ、大喜くんが勝ったら水族館。
そんなに尊敬してくれる後輩くんは、先輩として労ってあげなきゃね。
・・・普段から1番接してる後輩が、先輩を先輩とも思わない態度だから尚更ね」
「あー、それは何と言うか御愁傷様としか・・・」
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結局、決勝で西田先輩に負けて2位に終わってしまった。
試合が終わった後、皆で談笑している所へ
「あっ、2位のタイキでニイキくん!」
「変なあだ名つけんなよ・・・」
「でも一年生なのに結構健闘したらしいじゃん。大喜にしてはよくやったね」
「何で上から目線なんだ」
ピロン、とメッセージが届く。
ーもし良かったら明日水族館行かない?
ーつかれてると思うしムリそうなら断ってくれても良いからね
えぇーっ!?な、何で先輩からこんなメッセージが届くんだよ!
「大喜、いつの間にそんな仲良くなったの?」
「俺が頼んだんだよ。相手が勝ったら千夏先輩の連絡先が貰えるのに、大喜が勝っても何もプラスが無いからって」
「じゃ、初デートだ!!」
「いや、先輩は匡に頼まれたから仕方なく」
「いやいや、全く何とも思ってないなら2人で水族館なんて行かないでしょ!
人生初デートなんだから、ちゃんとした格好で行きなさいよ!」
ガンバレー、と言って雛は戻って行った。
・・・千夏先輩からのお誘いで天にも昇る気持ちなのと同時に、雛の全く気にしていない様な素振りに少し落胆もしている。
こんなんじゃ2人のどちらにも失礼だよな。
「俺が勝手に頼んだ事だけど、お前がどうしたいのか、どっちが本当に好きなのかを確かめる為にもって思ったんだけど、余計に惑わせたかも知れないな」
「匡・・・そうだな、先ずは明日の水族館を楽しむ事にする!」
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大喜が千夏先輩と水族館デートすると聞いて、ガンバレーと応援する風を装ってあの場から離れて来たけど、本当は胸が苦しい。
心の中では「嫌だ、行かないで。行くなら千夏先輩じゃなくて私と!」と言いたかった。
けど、大喜が千夏先輩が好きなのを知っているから、その想いを無理矢理曲げさせたくない。
ー本音は大喜が気になるってんなら、わざとらしくないレベルでサポートしてやるー
そうだ、雪に相談してみよう。
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ピロン、とスマホが鳴る。
「ん、何だ?雛からか。何々」
ー明日大喜と千夏先輩が水族館デートするって言ってた。ガンバレって言ったけど、本音は苦しくて仕方がない。私どうしたら良いんだろ?ー
はー、成る程ねぇ。大喜の奴も自分からナツ姉をデートに誘えるくらいの度胸が付いたか。
成長したのは良いが、俺も内心複雑なのは確かだ。
「さて、どうすっかねぇ。大喜の気持ちは分かってるけど、ナツ姉の気持ちがいまいち分からないんだよな。仮に大喜に好意があるってんなら、これを切っ掛けに付き合う事も有り得るから、俺や雛の感情を除けば万々歳なんだが、流石に俺もハイそうですかとは言いたくないんだよなぁ」
ーお前は何か考えあんのか?ー
ーあんまり良いとは言えないけど、尾行してみようかとー
確かに余り誉められた行為じゃないのは確かだが、自分が好きな相手が他の女とデートする事を考えたら、仕方ないのかも知れん。
ーあー、なら一緒に行くか?ただ俺は身長的にバレやすいから、その時は覚悟しといてくれ。それとお前はいつもの特徴的な髪型はやめとけよー
ー分かった。10時頃に駅で待ち合わせってのは言ってたから、私達は9時半頃に駅前でー
「了解、と。さてさて、どうなる事やら」
そう思いながらも今日出された宿題を消化していると、「ただいまー」とナツ姉が帰って来た。
「雪くん、明日って休みだよね?何か用事とかあるかな?」
「いんや、何も。精々今やってる宿題が終わらなかったら、明日やろうかと思ってるくらいだわ。何かあったか?」
「そうなんだ。そ、それでね、明日大喜くんと水族館に行く事になったんだけど、雪くんも一緒にどうかな、って」
「デートじゃねえの?」
「え、あ、いや、そうみたいなそうじゃない様な。
あのね、針生くんが他校の生徒に大喜くんと試合して勝ったら私の連絡先を教えるって言ったみたいで、笠原くんが
“大喜が勝っても何のプラスも無いんです。だからもし成果が出たなら水族館につれてってやってくれませんか?”って言うもんだから、BBQのお礼も兼ねてつい良いよって返事したんだけど」
ふーん、成る程ねぇ。匡のナイスアシストのお陰だったのか。だとしても、だ。
「ナツ姉。それに俺が一緒に行くのは、大喜に対して余りに失礼だ」
「・・・そうだよね、ごめん」
「まぁ、俺としても複雑っちゃあ複雑ではあるが」
「え?」
パッと顔を上げで驚く表情を見せるナツ姉。
口には出せんが自分が意識してる相手が、これまた自分の親友と呼べそうな相手とデート?するってんだから、流石に平成を装えない。
すまん間違えた。平静を、だ。俺も動揺してるらしい。
「ま、まぁ今回は後輩の労いって面もあるんだろ?たまにはそう言うのも良いと思うぞ」
「そう、だね。そうだよね。笠原くんの言葉が切っ掛けとは言え、私から提案したのに他の人が一緒なんて失礼過ぎるよね」
「そんなにヘコまなくても良いだろ。栄明のマドンナ様と水族館行けるんだから、大喜だって文句は言わねーだろうよ。それに」
「それに?」
「こないだ言ったお願い、まだ使ってないだろ?
余りに変な事でない限り、俺はナツ姉のお願い何でも聞いてやるからよ」
「!うん、分かった。考えとくね」
そう言って部屋に戻って行った。
「はぁ~、これでまぁ現状だとナツ姉は大喜に対して、まだ恋愛感情は持ってなさそうってのは分かった」
ーつー訳なんだが、どうする?それでも一応行くってんなら付き合うぞ?ー
ーう~ん、行くだけ行ってみる。だから一緒に行って欲しいー
ー分かった、じゃあ明日な。言い出しっぺが寝坊すんなよ?万が一に備えて8時半に連絡するから、俺から連絡無かったら逆にメッセージくれなー
ー分かった、おやすみ。それとありがとうー
ーどういたしまして、おやすみー
さて、明日はどうなりますかねぇ。
母親同士の事もあって、雪を除けば千夏が1番信を置いているのが大喜です。
だからって水族館(デート)OKするかなぁ?とは書いてて思いますが、そこは作中で言及した様にBBQのお礼も兼ねて、と言う事で1つ・・・(言い訳)