アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
やっと24話と25話を観る事が出来たので書いてみました。
心臓が痛い・・・
ホントそう言うトコやぞ、菖蒲ェ。
私は蝶野雛(ちょうのひな)。
元体操五輪選手を父に持ち、自身も新体操をやっている。
親の名前が大き過ぎて、周りからのプレッシャーが凄い。
どれだけ努力を積み重ねても、「蝶野選手の娘だから結果出して当たり前」みたいに扱われる。
そんな周りからの思いに潰されそうになっていた時、彼は現れた。
全中4位になり学校で公開インタビューを受けていた時また、「流石蝶野弘彦さんの娘さんですね、高校では全国優勝を期待してます」とか「お父さんが元五輪代表ですから、所謂サラブレッドですね」と言われた。
ーあぁ、まただ。私個人は二の次で、マスコミや学校も“蝶野弘彦”と言う、元体操五輪代表選手の名前が大事なんだー
そう思って唇を噛んで俯いた時、
「ふざけんじゃねーよ!何がサラブレッドだ!蝶野弘彦の娘だ!アンタらは全中4位の蝶野雛って選手のインタビューに来たんじゃねーのかよ!」
と言う怒鳴り声が聞こえてハッとして顔を上げた。
そこには他人の事なのに自分の事の様に激怒した同級生、鶴羽雪(つるばゆき)が立っていた。
「それなのに出てくる言葉が本人じゃなくて父親の名前ばかりなんてのは、本人を馬鹿にしてるだけって事も分かんねーのかよ!
それがどれだけ本人を傷付けてるかなんて考えた事も無いんだろ!
蝶野だけじゃねぇ、親がそう言った立場の選手全員にそんな事やってんだよ、アンタらは!
どれだけ練習して努力しても、“親が五輪代表だから、メダリストだから、結果出しても当たり前”で済まされる方は堪ったもんじゃねーんだよ!!」
あぁ、これだ。この言葉が私がいつも言いたくても言えなかった言葉だ。
彼はそれを理解してくれて、こんな場所でそんな事を言えば自分が悪者になるって分かっているのに、周りの大人に対して怒ってくれた。
思わず涙が零れそうになる。
先生やスタッフが慌てて止めに入ろうとする、が
「そうだそうだ!鶴羽の言う通りだ!」
「雛の努力も知らないで、お父さんが元五輪代表だからって簡単に言わないで欲しいよね!」
「学校だってそうだ!蝶野さんがどれだけ結果出してもいつも“流石蝶野弘彦選手の娘さんだ”って言い方してるよな!」
インタビューを見る為に集まっていた生徒の皆が、彼と私の為に怒ってくれたり擁護してくれたりしている。
収拾がつかなくなりそうになってきたその時、「スッ」と彼が両手を挙げて周りの騒ぎを止めていた。
「あ~、皆スマン。アタマ来たからって俺が怒鳴ったせいで場を壊しちまった。これ以上騒ぐと学校の評判にも関わるかも知れんから、原因の俺が言うのもなんだがもう納めてくれ。
先生方にマスコミの皆さん、処分は俺が受けるから、他の生徒はお咎め無しにしてくれ」
そう言って教師陣の元に歩いて行く彼。
「鶴羽くんっ!」
「あ~、何かスマン蝶野、折角のインタビューの場を壊しちまった。あ、それと雪で良いぞ」
物凄く申し訳無さそうな、それでいて不安を与えない様に笑顔で話す雪。
「なら私も雛で良い!本当にありがとう雪!私の為に怒ってくれて!!」
私の言葉に「気にすんな」とばかりに、ヒラヒラと後ろ向きに手を振って去って行った。
結果的に雪の処分は1週間の男性教職員トイレの掃除を1人でやると言う、比較的軽いもので済んだ。
雪の言葉に思う所があったのか、学校もマスコミも大きな問題にはしなかった。
当の本人も
「あのインタビューは動画サイトでライブ放送もやってたからな。それを邪魔した割には軽くて済んだわ。
どうやら動画視聴していた人たちのコメントの影響もかなり大きかったらしくてな、
“あの子の言う通りだ”とか“子供にあそこまで言わせる様なインタビューのあり方にも問題がある”って擁護の声が結構あったらしい。
勿論、“気持ちは分かるが生放送の邪魔したら駄目だろ”ってお叱りのコメントもあったけどな。
まぁ俺としては、雛がどれだけ新体操に向き合って取り組んで練習や努力してるのかを知ってるから、それを蔑ろにされた気がしてつい、な。
因みに“ヒナたんカワユスprpr”ってコメントもあったぞw」
最後のコメント何なの?普通にキモくてぞわっとしたんだけど。
しかし本当にコイツはもっと後先考えて行動しろ、と言いたくなる。
けど、そのお陰で私の心が救われたのも確かだから、複雑な気持ちである。
「雪ー、掃除手伝おうか?」
「3人でやれば早く終わるだろ」
と、同級生である2人、「猪股大喜(いのまたたいき)」と「笠原匡(かさはらきょう)」がやって来る。
「いや、もう終わるし気持ちだけ受け取っとくわ。それに手伝って貰ったら罰になんねーからな。それに大喜よ、お前はトイレ掃除やるより、体育館へ聖女様に会いに行く方が大事だろ?w」
「ばっ、ちょ、おま、何を言って///」
「何をってお前、ナツ姉が好きなんだろ?俺達にはバレバレだぞ、なぁ?」
「そうだね、雪の言う通りバレバレだな」
「高望みが過ぎるとは思うけどねー」
わいわいと騒いでいると、「鶴羽ー、掃除やってるかー」と先生がやって来る。
「へい、終わりやした、先生!」
「この3人は?」
「男子トイレなんで雛を除いて手伝いを申し出てくれました。けど、手伝って貰うと罰にならないから断りました」
「お前は変な所で真面目と言うか律儀と言うか。
ここだけの話、俺もああ言ったインタビューは好きじゃない。立場上文句も言えないから我慢してたが、鶴羽がああ言ってくれて胸がスッとしたのが本音だ。
あの後職員で話し合ったんだが、蝶野みたいなケースの場合、親の名前は極力少くして貰おうって事で纏まったから、今後は少しはマシになると思うぞ。」
ー力不足の先生でスマンなー
そう言って職員室へと戻って行った。
「改めて雪って凄いよな、先生たちの考えまで変えちゃうんだから」
「本当にそう思うよ。俺なんて腹立ったけど黙って見てるしか出来なかったし」
「私もこれからは少しでも気楽になりそうだし、ありがとね雪!」
「俺はただ、雛の練習や努力が正当に評価されてないと思ったから、感情任せに怒鳴っただけだからなぁ。そこまで言われるとこっ恥ずかしいわ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中学の時はそんな事もあったなぁ、と懐かしく思う。
今は高等部に内部進学して、それぞれ部活に勤しんでいる。
私は新体操、大喜と匡くんはバドミントン、そして雪はバスケット。
雪は相当な実力者で、部活でも試合でも大暴れしている。
何度か練習試合を見た事があるけど、アレを止められる高校生なんて居ないんじゃない?ってくらいに凄かったのを覚えている。
そして先程名前が出たナツ姉、鹿野千夏先輩の幼馴染みだ。
本人に聞いた所、大喜のお母さんも含めた3人の母親が栄明バスケ部OGだと聞いて、男2人と女1人の幼馴染みなんてどこの三角関係のラブコメ漫画だよ!って突っ込んでしまった。
ただ猪股家だけが少し疎遠になっていたらしく、大喜は幼馴染みじゃないらしい。
そして大喜はその千夏先輩が好きとの事。
女の私から見てもバスケが上手くて人当たりも良い、誰からも好かれる存在ってイメージがある。
・・・何か変な性癖でもあれば良いのに、と思うくらいに人として優れていると思う。
でも雪はどうなんだろうか?
同じスポーツをやっていて、誰からも好かれる人に1番近い幼馴染みと言う立場。
しかも雪本人も頭脳明晰・スポーツ万能・高身長色白イケメンだから、2人が並んでいるのを端から見ればお似合いのカップルにしか見えない。
更に雪は面倒見も良いから、実は女子人気が頗る高くて今まで何度も告白されている。
「好きな人が居るから」って全部断っているのは知ってるけど、それは千夏先輩じゃないか?って専らの話だ。
そう考えると、胸がキュッとなる。
あれ?何で今胸が苦しくなったんだろ?
ふとバスケ部の方を見ると、雪と千夏先輩がシュートフォームについて話している様で、腕や膝の角度の確認をしている。
その姿を見ると更に苦しくなって、モヤモヤした気持ちが溢れてくる。
「どうしたの雛、ボーッとして?あ、あの2人か~、お似合いだよね」
「え?あ、うん、本当に絵になるよねー、美男美女カップルなんて二次元にしか存在しないと思ってたわ」
「ん~、でもビジュアルで言えば雛だって負けてないと思うけどなぁ。千夏先輩と入れ替わっても違和感無いよ?・・・身長差に目を瞑れば」
「それって遠回しにチビって言ってるじゃない!失礼な!」
「アハハ、ごめんごめん。でも並んで絵になると思うのは本当だよ。雛は可愛いんだから、もっと自信持ちなよ」
「この蝶野雛さまは自信しかありませんよ!」
「ほーん、言葉の意味はよく分からんが(分かる)とにかく凄い自信だな、ちみっ子」
その声を聞いてドキッとする。
「あああ、あんた何でここに?千夏先輩のフォームチェックしてたんじゃないの?てか、ちみっ子言うな!」
「んなもん終わったからここに居んじゃねーか。
元々そこまで狂ってた訳じゃないからな。
ナツ姉なら少しアドバイスすれば直ぐ修正出来たわ」
「ふーん、流石に幼馴染みだけあってよく分かっていらっしゃる様で?」
「・・・何か今日は妙に当たりが強くねーか?
何か知らん?にいなちゃんや」
「うーん、これと言って特には。
精々さっき千夏先輩のフォームチェックしてたのをボーッと見てたくらいかな?」
「ほうほう。つまり俺とナツ姉が仲良くやってるのを見てジェラってしまったと言う訳か、なる程ねぇ」
「はぁ!?そんな訳無いでしょ!変な事言ってるとひっぱたくわよ、このお馬鹿!」
「そっかー、違うのかー、残念だなー
(´・ω・`)ショボン」
「雪ちゃーん!雛っちばかり構ってないで続きやろうぜー!」
「はいよー、今行くー!・・・じゃあまたな、雛」
そう言って男バスのコートに戻って行く雪を見送る。
ー俺とナツ姉が仲良くやってるのを見てジェラってしまったと言う訳かー
実際その通りだった。
図星突かれてつい、怒鳴ってしまった。
もう認めるしかない、私は雪が好きなんだ。
もしあそこで軽く「そうだと言ったらどうする?ゆ・き・く・ん?」なんて言ったら、雪はどう返しただろうか?
動揺してキョドったりしてくれるだろうか?
いや、無い無い。寧ろ更に乗っかって来て、私が照れる事を言うに違いない。
でも、それが嫌だと思わない自分が居る。
「・・・ねえ雛。鶴羽くんって雛に脈アリなんじゃない?他の子にあんな事言ってるの見た事ないよ。それこそ千夏先輩にだって。告白断ってる好きな人が居るって言うのも、もしかしたら雛の事じゃ・・・」
「え?」
にいなの言葉を聞いて固まってしまう。
雪が私に対して脈アリ?それが本当なら私は・・・
あれ?何だか顔が熱い。
「あれぇ~?雛、顔真っ赤になってるよ。雛も実は鶴羽くんの事が・・・」
「・・・そうだよ、私は雪が好き。今やっと自覚した。中学の時の公開インタビューで怒鳴ってくれたあの時から、多分好きになってたんだと思う」
「あ~、確かに自分の事をあれだけ理解してくれる発言されたら、好きになるのも仕方ないかも。で、どうするの?」
「どうするって・・・」
「そりゃ勿論、告白しないのか?って事よ」
「それは、でも告白して断られたら、今までみたいな軽口も言えなくなると思うと・・・怖いよ」
「そうだよね、告白なんて凄くエネルギーが要ると思うし、簡単には出来ないよね。煽るみたいに言ってゴメンね、雛」
「ううん、今は無理でもいつか覚悟が出来た時には告白するから応援しててね、にいな」
「うん!」
「じゃあちょっと外の空気吸ってくるね」
行ってらっしゃーい、と見送られる。
「その前に演技の修正しなきゃね。先ずは県予選までに調整すれば全国にはー」
そう考えた時だった。
ドンッと言う衝撃で倒れてしまい、左足に痛みを感じた。
え、嘘?怪我しちゃった?捻挫?この大事な時期に捻挫なんかしたら全国処か県予選にすら間に合わないかも知れない。
そんな事ばかり考えてしまい、相手が謝っている事にすら気付けてなかった。
「オイ、雛!大丈夫か!?」
雪?
いつもの余裕綽々な顔が消えてるけど、そんな必死な顔してどうしたの?
でも真面目な顔してると、やっぱり格好良いなぁ。
「雛?本当にどうした?立てるか?」
「う、うん、ちょっと待って・・・痛っ」
「はぁ~、文句は後で受け付けるから、少し我慢しろよ」
何を?そう思った矢先、身体が浮きあがった。
周りから「きゃーっ///」と歓声が上がる。
え?え?私、雪にお姫様抱っこされてる!?
「じゃ、ちょっくら保健室まで行って来るから、先生たちに報告頼むわ~」
と、そのまま体育館を出て保健室に向かう。
途中すれ違う人たち皆が見て来るから、恥ずかしくてしょうがない。
しょうがないけど、好きな人に抱えられてると思うと恥ずかしさより嬉しさの方が上回ってしまい、ついつい顔がニヤけてしまう。
だから顔を隠す為に、雪の胸に顔を埋めてしまうのは仕方ないんだ。
「せんせー、急患でござる」
相変わらずふざけた物言いをしながら保健室の引戸を足で開ける雪。
「鶴羽くん、足で開けな・・・って、あらあら蝶野さん大丈夫?顔も真っ赤になってるし」
「あ、あの、顔じゃなくて左足が」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「特に異常ないわね」
「い じょう ない?」
「転んだ時にぶつけちゃったみたいね。青アザ出来てるけど、数分で元に戻るでしょう。大会前で痛みに神経質になってたんでしょうね。一応冷やしときましょう、はい氷」
「はぁ~、人騒がせな・・・」
「だ、だってあの時は本当に痛かったんだもん!」
「はいはい、良かった良かった」
「君たち、騒ぐなら帰りなさいよ」
氷で5分程冷やしてから先生にお礼を言って保健室を出て体育館に戻る際、私が雪の後ろを歩く形になった。
ーそりゃ勿論、告白しないのか?って事よー
にいなの言葉を思い出す。
ーいつか覚悟が出来た時には告白するからー
“いつか”って、いつ?
そんな時が本当に来るの?
いつかいつかと言い続けている間に時間が過ぎて、何も言えずにあやふやな関係のまま卒業して会えなくなるかも知れない。
そんなのは嫌だ!
覚悟なんか今すぐしてやる!
「ゆ、雪!」
「おぉう、どうした急に大声出して?」
「ちょっと来て」
そう言って体育館からも校舎からも、人目に付きにくい裏手に来た。
ドクンドクンと心臓の音がうるさい。
振り返って雪を見る。
高い身長、精悍な顔付き、いっそ羨ましいとさえ思う白い肌。
頭にハテナマークを浮かべて私を見ている。
言うんだ、今断られても良い、1度断られたらもう駄目だなんて決まってないんだから、何度でも言ってやる。
「鶴羽雪くん、私、蝶野雛は貴方が好きです」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー鶴羽雪くん、私、蝶野雛は貴方が好きですー
思いもしなかった雛からの突然の告白に、俺は頭が真っ白になった。
え?雛が俺の事を好き?マジでか!?
俺が呆けていると
「返事は今じゃなくて良い。でももし断られても私は諦めない。雪が私を選ぶまで何度でも告白するから!」
そう言って立ち去ろうとする。
「雛」
出来るだけ優しく名前を呼ぶ。
振り返った雛の顔は真っ赤に染まっていた。
どれだけの勇気を振り絞って告白してくれたのかと考えると、愛おしくて堪らなくなる。
「俺もお前が好きだ、雛」
俺の言葉を聞いて驚いて見開いた目に、涙が溜まって行く。
「・・・本当に?」
「あぁ、マジだ」
「友だちとしてじゃなく?」
「1人の女として見てる」
「じゃ、じゃあ」
「恋人として俺と付き合ってくれ」
「~~~うん、雪、大好き!」
そう言って飛び込んでくる雛をしっかりと抱き締める。
そして見つめ会うと雛が目を閉じる。
またしても先んじられてしまったと思いながら顔を寄せる。
「ん・・・ふっ」
唇が重なり吐息が漏れる。
少しの恥ずかしさと、言い表せない歓喜が入り交じった不思議な感覚に陥る。
いつまでもこうしている訳にもいかないので、名残惜しいがゆっくりと離れる。
「はぁ~、まさか雛の方から告られるとは、夢にも思ってなかったわ。いつ言おうか迷ってた自分が情けねーわ」
「告白を断ってた理由の好きな人って、わ、私だったの?」
「そうだよ。ただ、告白して断られたら今の関係すら保てなくなると思ったら、ビビって言えなかった」
「私も雪の好きな人って千夏先輩だと思ってたから、半分諦めてた。でも雪の隣に居る千夏先輩を見て、そこに立つのは私だ、と思ったら覚悟が出来た」
「流石蝶野雛さまだわ、度胸が半端ねー。でもそのお陰で俺も気持ちを伝えられた、ありがとな。それとこれから彼女として宜しくな、雛」
「こちらこそ宜しく、雪」
想いを伝えてそれを受け入れて貰えた私には、もう怖いものは無い!
インハイだって制してやるんだから見ててよね、雪、私の大好きな人!
書き始めたは良いが、クソ難産だった・・・