アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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千夏に誘われた水族館で、思いがけない光景を目にした大喜の心情や如何に。


幕間~揺れる想い~

 

今日は千夏先輩に誘われた水族館に来ている。

 

普段は目に出来ないワンピース姿に、館内を回る間ずっと目を奪われていた。

 

こんな人が彼女なら、毎日が楽しくて仕方がないんだろうなと思った時、ふいに雛の顔が頭に浮かんだ。

 

え?あれ?千夏先輩と居て嬉しくて楽しいのに、何故だか雛が居なくて寂しいとも思ってしまう。

 

いやいや、今は千夏先輩と一緒なんだから他の女性の事を考えるのは失礼だろ!、と頭から雛の事を追いやる。

 

「私と2人で来て良かったの?」

 

「蝶野さんと付き合ってたら悪いかなーって」

 

そう言われて慌てて否定する。

 

「雛とは親友です」、と。 

 

「本人がそう言うならそうなのかなー?」

 

「そうなんです!」

 

そう言いながらも、雛の事を考えてしまう。

 

館内を見て回り、ペンギンの水槽前で話ながら眺めていると、子供が走ってきて千夏先輩とぶつかってしまう。

 

その衝撃で、身体が揺れた千夏先輩の手の甲と俺の手の甲が触れる。

 

ドキッとして千夏先輩を見ると、子供に大丈夫と聞いて手を振りながら見送っていた。

 

意識してるのは俺だけで、千夏先輩はそうじゃないのかな?

 

そう言えば部活中でもフォームチェックの時、腕の角度なんかを修正するのに雪が触れてたりするから、手の甲が触れるくらいだと、大したこと無いのかも知れない。

 

雪と言えばこの前の帰り道、雛とかなり親しい感じだったよな。

 

千夏先輩も暴走してたし、本当にアイツのやる事は予想出来ない。

 

でも本質が良い奴なんだよなぁ。

 

そもそも千夏先輩との連絡先交換だって、雪がそれとなくそう仕向けてくれたから出来たんだし。

 

それはそれとして、雛とのやり取りを見ていたら何と言うかモヤっとしたと言うか、上手く言葉に出来ない感情が俺の中に生まれたのを感じた。

 

端から見てると、学校から来てコンビニに入ってからあげさんを食べるまでの流れは、付き合ってる人たちのそれにしか見えなかった。

 

俺はそれが羨ましいと思うと共に、嫌だとも感じたんだ。

 

千夏先輩が好きな筈のに、雛のそんな表情を見たくないと思ってしまう俺は傲慢なのかも知れない。

 

何でこんな苦しいんだろう、自分の感情が分からない。

 

今は中等部の頃からの憧れで好きな人が隣に居て、デートっぽい事をしているのに。

 

そんな事を考えながら水槽を眺めていて、ふと時計を見たら夕方近くなっていた。

 

「先輩、そろそろ帰りましょうか」

 

「大喜くん、ごめんね」

 

「え?」

 

ごめんね、とは?

もしかして告白する前にフラれてしまうのか? 

そう思って手に汗をかいてきた時

 

「実は昨日帰ってから雪くんにも行かないか聞いたんだ。そしたら

 

ーナツ姉、それは余りに大喜に対して失礼だー

 

って言われたんだ。私は笠原くんの言葉とBBQの事もあって労いとお礼のつもりだったけど、言われてから端から見れば世間一般で言うデートに誘ったんだ、って気付いて。無神経だったな、って謝りたかった」

 

あぁ、そうか。

千夏先輩は針生先輩が岸くんにした勝手な約束から守った事への御褒美と、先日のBBQのお礼として今日誘ってくれたのか。

 

そして雪は俺と千夏先輩とのデートのつもりでいたから、そう言ってくれたんだろう。

 

それを聞いてストンと腑に落ちた。

 

「あ~、そう言う事かぁ。

まぁ何で急に誘ってくれたんだろうとは思ってたんですよ。

先輩の真意がどうあれ、俺は誘って貰って嬉しかったから気にしなくて良いですよ。

大体先輩は色々と考え過ぎです、少しは雪のいい加減さを分けて貰っても良いと思います」

 

「それはちょっと(苦笑)」、と返す千夏先輩。

 

うん、言っといてなんだが雪のメンタルの強さが無いと、あのいい加減さに自分が耐えられないだろうな。

 

そう言いながら笑いながら帰ろうとして、出口に向かうと人だかりが出来ていた。

 

何だろうと思い2人で人混みを抜けると、テレビのインタビューをしていた。

 

リポーターのお姉さんが、「長身イケメンと小柄な美少女カップル」と言ってるのを聞いて、まさかと思って目を向けると、そこには見知った顔の2人が居た。

 

ーじゃあ別々に来ていたのに偶然出会ったと?それは寧ろこれからそう言った関係になると言う運命なのでは?ー

 

ーそう言う展開好きな人って多いですよねー

ーまぁ、彼女が可愛い事には同意しますが(ニッコリ)ー

 

ーえ、あ、ありがと////ー

 

照れずにサッとこんな言葉を笑顔で言える雪って凄いなと思うのと同時に、それを聞いて真っ赤になってる雛を見ると嫌だと感じてしまう。

 

ふと隣を見ると、千夏先輩も笑顔で固まっているが、目が笑っていなかった。

 

ふとこちらを向いた雛と目が合うと、「あちゃ~」って顔をしている。

 

「さて、今度こそ帰るか、雛」

 

「あ~、あはは、雪、後ろ」

 

「Oh,my gosh」

 

と、やたら良い発音で零した雪に対して千夏先輩が詰め寄って、近くのカフェに連行して行く事になった。

 

俺はいつもと違う、「いかにもデート」って装いの「ピンクのワンピースを着た雛」に目を奪われていた。

 

え?雛と雪は今日デートしてたのか?しかも俺たちと同じ場所で?何で?

 

と、頭の周りを疑問符が飛び回っている。

 

呆然としている俺をみかねた雪が、「大喜、どうした?行くぞ」と声を掛けてくれた事で我に返った。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カフェに移動してそれぞれオーダーした所で、千夏先輩の尋問が始まった。

 

「さて雪くん、これはどういう事かな?朝はバッシュ見に行くって言ってたよね?何でここに居るのかな?それも“蝶野さんと2人”で」

 

「あ、あの千夏先輩、雪は私の用事に付き合ってくれただけで、特に深い意味はないんです」

 

「蝶野さんの用事?」

 

「はい最初は大喜に頼むつもりだったんですけど、今日千夏先輩と水族館に行くって聞いたから、予定がなかった雪に頼んだんです」

 

ー雛は最初に俺を誘ってくれる気だったのに、たまたま日程が被ってた俺が無理だから雪を誘ったのか。

そう思うと少し気持ちが軽くなったー

 

「そうなの?雪くん」

 

「あぁ、昨日の晩メッセージが来たから、序でにバッシュでも見に行こうかな~、と思ったんだよ」

 

「そうなのか。でもそれなら何で水族館に居たんだよ?」

 

「思ってたより早く用事が済んだんでな、お前らが水族館行くって事を思い出して土産話にでもしようかと“たまたま”近くにあったここに来たら、テレビのインタビューに捕まってあのザマだったったってワケ」

 

「じゃあ、蝶野さんとデートしてた訳じゃないの?」

 

「俺たち自身はそう思ってねーよ。端からどう見えてたかは知らんけど」

 

「いや、でも雛だって雪の事を嫌いな訳じゃないんだろ?」

 

「え!?そ、それはそうだけど・・・」

 

「おいおい、嫌いじゃないと好きはイコールじゃねぇぞ、大喜よ。その理屈だと嫌いじゃない相手と出掛けると全部デートになるじゃねーか」

 

「そう言われたら、返す言葉が無いんだけどさ」

 

ー確かにその通りなんだけど、雛の楽しそうな顔と雪に“可愛い”と言われて照れて真っ赤になった顔を見たら、“好きな相手にそう言われたからじゃないのか?”って思ってしまうー

 

「で?お前は今日は1日楽しめたのかよ」

 

「え?う、うん、楽しかった」

 

ー色々と考えてる所に急に話を振られたので、キョドってしまったー

 

「そうか、なら良かった。俺と雛が“たまたま”居合わせて、中途半端に切り上げさせたカタチだからな。ナツ姉も悪かったな」

 

「・・・うん、そんな事情があったんなら仕方ないよね」

 

「本当にごめんなさい、2人とも。邪魔しちゃって」

 

「もう良いよ蝶野さん。じゃあここの払いは雪くんって事で終わりにしよう!」

 

「はい!そうしましょう!」

 

「悪いな雪、そういう事らしいからゴチになります!」

 

「は?お前らマジか、オイ。

・・・はぁ~分かったよ。但し追加は無しな」

 

そう言って、カフェ代は雪の奢りと言う事で話が付いた。 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最寄り駅で雪たちと別れて雛と並んで帰る。

 

雪から「帰りは雛を送ってやれ」と言われたので、家の近くまで送るつもりだ。

 

隣の雛に目をやると、いつもと全く違う装いのせいもあり、ドキッとする。

 

「・・・何か言いたい事でもあるの?」

 

「え、い、いや、いつもとイメージが違うなーって」

 

「そう。今日は何かごめんね、デートの邪魔しちゃって」

 

「どっちにしてももう帰る所だったから、別に良いんだけど」

 

「けど、何?」

 

「いや、雛は今日やっぱり雪とデートしてたのかな、と思って。幾ら用事に付き合って貰ったとは言え、何とも思ってない相手だったら雛なら用事が終わったら直ぐ帰ると思うから」

 

「・・・もしそうでも関係無いでしょ?

大喜だって今日は千夏先輩とデートだったんだし」

 

「!っ、それはそうだけどさ、何か今までそんな素振りも無かったから驚いたって言うか」

 

「まぁ雪には色々と助けられてて時間もあったし、アンタたちが水族館に行くって話を思い出したから行ってみようって話しになっただけ」

 

少し不機嫌そうな声音でそう言う雛を見て、デートじゃなかったんだとホッとする。

 

ーホッとするって何でだ?

 

俺は雛が雪と「恋愛的な意味でデートした訳じゃない」事に安堵してるのか?

 

千夏先輩を好きな俺が、雛と雪の関係に対してそんな事を思う資格なんかあるのか?

 

千夏先輩が好きなのは間違いないけど、それなら雛に対してのこの気持ちは何なんだ?って思う。

 

「大喜?」

 

雛が黙り込んだ俺の顔を心配そうに覗き込んでくる。

 

「え、な、何?」

 

「何か急に黙り込んじゃうから、どうしたのかなーって」

 

「今日は色んな事があったなぁって思ってさ」

 

「そうだねー、流石にテレビのインタビューされるなんて思いもしなかったよ(笑)」

 

「あれって生放送されてたって雪が行ってたから、休み明けに学校で何か言われるかもな、“雛と雪が付き合ってたの!?”とか」

 

「えーっ、そうだったの!?絶対勘違いしてる人居るよー、説明するの面倒臭いなぁ」

 

「まぁそれは雪が上手く説明すると思うから大丈夫だろ。・・・悪ノリするかも知れないけど」

 

「それよ!それが有り得るから怖いのよ!アイツはその場の勢いと思い付きで、然も本当の事かの様な発言するから性質が悪いのよ!!」

 

「それはあるな、御愁傷様」

 

「アンタはひと事だと思ってるけど、そうなると間違いなく“アンタと千夏先輩がデートしてた”って事まで、面白おかしく吹聴して回るわよ、アイツは」

 

「いぃっ!それは勘弁して欲しい。千夏先輩と2人で出掛けたなんてバレたら、学校の男子からのヘイトが凄い事になる!

それで平気な顔してしてられるのは、雪くらいのもんだぞ!」

 

「まぁそうならない様に祈ってる事ねw」

 

ーあぁ、いつもの雛とのやり取りは、こんなに気持ちが楽になるのかー

 

そう思うと、千夏先輩と居ると嬉しくて楽しいけど、どうしても緊張が先に立ってるのが分かる。

 

「じゃあもう直ぐ着くからここで良いよ、送ってくれてありがとう大喜」

 

「うん、じゃあまた学校で・・・それと」

 

「うん?」

 

「その格好、凄く似合ってて可愛いと思う。そ、それじゃ!」

 

「え、ちょっ、本当に!?」

 

と言う雛の声を振り切る様に走ってその場から去る。

 

 

ー雛と千夏先輩、俺が本当に好きなのはどっちなんだろうかー

 





はい、大喜が自分の気持ちがよく分からなくなってきました。

アニメの25話相当まで引っ張るか、夏祭りから公園のブランコの流れでカタを着けるか思案にくれてます。
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