アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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いよいよインハイ予選決勝です。

雪は千夏との約束を果たせるのか?


EP20 インハイ予選~雪サイド~②ー覚醒ー

 

ノボリさんと別れて集合場所に着くと既に皆揃っていた。

 

「珍しいな、鶴羽が最後なんて」

 

「確かに。いつもはほぼ一番乗りなのに、何かトラブルでもあったのか?」

 

「いや、途中で籠原のノボリさんに出会ったんで挨拶と宣戦布告をしてただけっすよ。

それと青木さんと水谷さんってノボリさんと仲良いって聞いたんすけど?」

 

「お前は一体どこでそんな人脈を作ってんだよ?

まぁ確かにライバルだが、いちプレーヤーとして尊敬してるし、試合外では普通に話したり連絡取り合って他県の強豪について情報交換したりって事はよくあるからな」

 

「俺もそんな感じだな。他のレギュラー陣も試合から離れたら普通に人当たりが良い奴らばかりだし、話していてタメになる事もあるし」

 

「つか、2人が俺の事褒めてたとも言ってたんすけど、俺そんな褒められる事やりました?」

 

「かーっ、コレだよ。こないだ皆が感謝してただろ?雪ちゃんよ。そう言った事を褒めてんだよ、部長たちは」

 

「お前はコート外だと自分を過小評価してる所があるな。バスケのプレイ中みたいにもっと強気で良いと思うんだが」

 

「そう言われてもなぁ。フラットに見て思った事を言ってるだけだから、自分を過小評価してるつもりは無いんだが」

 

「まぁ今はそれで良いだろう。だが鶴羽よ、お前は自分が思っているより遥かに周りに与える影響が大きいって事を覚えておいてくれ」

 

「んー、まぁ基本的に思った事言ってるだけなんだけど、頭の片隅にでも置いときます」

 

それより今日の試合の事だ。

 

籠原のスタメンは

 

4 PG 澤登 3年

5 PF 岩井 3年

6 C 花方 3年

7 SF 藍原 2年

8 SG 高科 2年

 

となっている。

 

これは去年のレギュラー陣がほぼ持ち上がっているし、ノボリさんは現状だと県ナンバーワンのPGだから連携もかなり高いレベルで回るだろう。

 

控えも県内の他の高校ならスタメン張れるメンツがちらほら居るから、交代されても大幅な戦力ダウンにはならない筈だ。

 

しかし我が栄明も、ベンチメンバーは相手にひけを取らないレベルだと思ってるし、意識を変えた上級生を始めテツの様な初心者含めた新入生もやる気に満ち溢れているから、インハイ以降も大丈夫だろう。

 

ウチのスタメンは

 

4 C 青木 3年

5 SF 水谷 3年

10 PF 鶴羽 1年

11 PG 鷹尾 1年

12 SG 陣 1年

 

の5人だ。

 

連携に関しては期間が短い割には良いと思うが、流石に向こうよりは劣る。

 

だから連携しつつも、個人をより活かして行くつもりだ。

 

「よし、もうすぐ決勝が始まる。相手は去年の県王者だから今までみたいには行かないだろう。だがこの数ヶ月、お前たちは誰よりも練習して来た自負があると思う。練習は裏切らない!持てる力の全てを絞り出して勝ってインハイに行こう!」

 

「「「「「おぉおおーーーーー!!!」」」」」

 

顧問の言葉に皆が雄叫びで応える。

 

さーて、皆さん気合い十分の様で嫌でも気分が盛り上がるな。

 

県王者だと?

だから何だ、俺の、俺たちの目標は「全国制覇」だ。

 

ノボリさんたちが強いのは分かってる。

 

だが、自分を奮い立たせる為にも俺は敢えてこの言葉を使う。

 

ー俺に勝てるのは俺だけだー

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

開始前のコートに入場すると、会場は観客で埋め尽くされていた。

 

「栄めーい、勝てーっ!」

「雪くん、鷹尾くん、陣くん、頑張れーっ!」

「今年こそ籠原に勝ってインハイ行ってくれー!」

 

と、ベンチ入り出来なかった部員からの応援が届く。

 

「こりゃあ皆の期待が重てぇなー、雪ちゃん」

 

「あぁ、でもこれくらいの期待に応えられなきゃ、全国制覇なんて出来ねーだろ。勝ってインハイ決めるぞ、カズ」

 

「僕も微力ながら尽力するよ、雪」

 

「おいおいソーゴよ、お前のスリーは微力処かメインウェポンの1つだろ、謙遜し過ぎなんだよ」

 

「そうそう、隙があればドンドン回していくから頼むぜ陣よ」

 

「俺にも回してくれよ鷹尾?俺だってSFなんだから点取ってナンボだからな」

 

「分かってますよ、水谷さん。雪に対するチェックは厳しくなるだろうし、出番は山ほど来ますって」

 

「リバウンドは俺に任せろ。OFもDFも取りまくってやるからな」

 

「まぁリバウンドは基本俺も取りに行くから、気負い過ぎない程度で良いっすよ、青木さん」

 

「だからお前はもっと俺たちを信じろと言うのに」

 

ハハハハ!と笑いが起こる。

 

これだけリラックス出来てりゃ大丈夫だな。

 

そして遂に試合が始まる。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ビィーーーっとブザーが鳴り、ティップオフ。

 

ボールはノボリさんに渡り、速攻で藍原さんへパスが渡りレイアップを決められてしまう。

 

「さぁ、ドンドン決めていくぞ!」

 

「ノボリ、俺にもボールくれよ。同じポジションの向こうのスーパールーキーに負けちゃいらんねぇからな!」

 

「分かってるよ。だがまだ始まったばかりだ、焦らなくても良い」

 

栄明ボールからプレー再開。

 

カズがボールを受けて前へ運んで行く。

 

ディフェンスが寄ってくるが、上手くドリブルでかわして水谷さんにパス。

 

それを受けた水谷さんは、落ち着いてジャンプシュートを撃って決める。

 

立ち上がりからお互い手堅く攻めて、ファーストシュートを決めた。

 

俺も負けてらんねーな、そう思い集中する。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結局第1Qはシーソーゲームで、20-21で向こうにリードされて終了。

 

やはりノボリさんと藍原さんのホットラインは、対処に苦慮している。

 

とは言えそっちに気を取られ過ぎると、岩井さんや高科さんにボールを回されてしまう。

 

ウチのスタイルと似ているから、やり易い様でやりにくいと感じる。

 

チームとしての完成度は向こうがやや上なのは確かだから、俺が個人で切り崩した方が良いのかも知れない。

 

「皆、ちょっと良いか」

 

「どうした、鶴羽?」

 

「第2Q前半、俺はパスを出さずに個人で崩しに掛かるから、フォロー頼む」

 

「じゃあ、あのスタイルで行くって事だな?雪ちゃん」

 

「あぁ、出し惜しみしてる場合じゃないからな」

 

「分かった、俺たちを信じて全力で行け!」

 

「おう!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第2Q開始早々、俺だけじゃなく会場全体が驚愕に包まれている。

 

何故なら雪くんのプレーが今までと違うものになっていて、相手ディフェンスが全く対応出来ていないからだ。

 

今徹底的に基礎を叩き込まれている俺だからこそ、よく分かる。

 

今の雪くんの動きは基礎やセオリーから完全に外れていて、端から見れば滅茶苦茶やってる様にしか見えない。

 

それなのにドリブルは止められず、シュートに至っては100%決まっている。

 

「お、おい、栄明の10番どうなってんだアレ?」

 

「何であんな滅茶苦茶なフォームで撃ったシュートが全部決まるんだよ!?」

 

「ただでさえ速くて対応難しかったのに、不規則な動きが加わって止め様が無いだろ、あれは」

 

等と各所から声が上がっている。

 

本人に目をやれば

 

「はっ、楽しいねぇー、まだまだ行くぜ!」

 

と、物凄く楽しそうな顔でプレーしている。

 

対戦相手を見ると

 

「ははっ、まだ本気出してないとは思っちゃいたが、まさかここまでとはね」

 

「こりゃあヤバいな、止め様が無い」

 

と困惑していた。

 

「雪ちゃん!」

 

「ナイス、カズ」

 

カズからパスを受けた俺がドリブルで突破しようとした所に、高科さんが付く。

 

「そう何度も簡単に抜かれる訳にも行かないんでね」

 

しかし意に介さず横を抜けてシュートを撃つ、と見せかけて後ろから跳んだ高科さんが俺の背中に当たる様に仕向けると、ディフェンスファウルの笛が鳴る。

 

普通ならここでフリースローを貰う所だが、俺はボールを背中越しに投げてシュートを決める。

 

高科さんは当然、敵味方、下手すりゃ会場中が唖然としている。

 

こんな事が出来るのは、“あの人”を除けば俺くらいのもんだからな。

 

「さぁ、もう1本取るぞ!」

 

そう言いながら花方さんから岩井さんへのパスをスティール。

 

コート右から突っ込んでジャンプすると、ノボリさん、岩井さん、花方さんの3枚ブロックでコースを潰されシュートが撃てない。

 

・・・普通はそう思うよな。

 

俺はそこからエンドラインを超え、着地する前にバックボード裏からボールを投げる。

 

ボールは裏からボードを超えてリングに吸い込まれる。

 

これも暦としたゴールと認められている。

 

「う、嘘だろ、そんなんアリかよ・・・」

 

おや?向こうのベンチメンバーの中には、もう諦め掛かってる奴が居るのか。

 

まぁそろそろ5分経つから、普通のスタイルに戻すか。

 

それからは変則スタイルが頭に残ってる籠原が通常スタイルとの区別が付かずに後手後手に回ってしまい、第2Q終了時には52-38と14点差を付ける事が出来た。

 

さて、第3Qはどうしようかね。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

鶴羽雪、か。

 

青木たちから話には聞いていたが、まさかここまでの化物だとは思わなかった。

 

今までのデータと第1Qの時点でもかなりの、いや、現時点で県ナンバーワンと呼んでも良い選手だと感じていた。

 

それが第2Q開始直後、それまでのスタイルから一転、ストリートをベースにしたトリッキー且つセオリー無視の、全て予測不能な動きになってしまった。

 

ドリブルからフェイントのロールターンをすれば途中でボールを投げる

ジャンプシュートをブロックしようとすれば上体を有り得ないくらいに倒してシュートする

コート角に追い込んでシュートを防いだと思えばバックボード裏から投げてくる

等々、普通じゃ考えられないプレーのオンパレードで、全く捉えどころがない。

 

そして1番の問題が、それを目にした事によって通常のプレーと組み合わされると、どうしても後手に回ってしまうと言う事だ。

 

ウチのディフェンスは基本的にハーフコートプレスだが、これは俺が彼についてボックスワンで行くしかないと感じる。

 

それをハーフタイム中に話して意志疎通を図る。

 

確かに彼は飛び抜けているが、他の4人はウチのメンバーとも互角と言えるから、俺が彼をどれだけ止められるか、に掛かってくる。

 

ー責任重大だなー

 

インハイ出場が掛かっていて、しかも負けている状態だと言うのに不思議と落ち着いた気分になる。

 

「どうしたノボリ?そんな笑って?」

 

そうか、俺は笑ってるのか、こんな状況で。

 

「いや、あんな強い相手に勝ってインハイ行けるなら、全国制覇も夢じゃないって思ったらつい、な」

 

それを聞いた部員たちが驚き、そして声を上げる。

 

「そうですよ部長!強い相手に勝つからこそ、意味があるんです!」

 

「その意味でアイツはこれ以上無い相手です!」

 

「勝ってインハイ行きましょう、このメンバーで!」

 

と、全員が奮い立った。

 

「鶴羽くん、そして青木よ。君たちのお陰で俺たちは今まで以上に纏まる事が出来た。インハイには俺たちが行かせて貰う!行くぞ、皆!」

 

 

「オオオオーーー!!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いや~、何か妙に盛り上がってんなアチラさん。雪ちゃんのプレーで何人か気持ち折れてたと思ったんだけどなぁ」

 

「あぁ、実際折れてただろ。それをノボリさんが何か言って払拭したんだろうな。あ~、やっぱあの人スゲーわ」

 

「なら第3Qはどうする?またストリート主体で行くのか?」

 

「いや、アレは最後のとっておきにするから、普段通りで行こう。それでもリードは保てる、筈・・・なんだけどなぁ」

 

「何かあるのか?」

 

「ノボリさんがねぇ、なぁーんかヤバそうな感じすんだよ」

 

「まぁ、アイツは基本スキルが高レベルで纏まってるからな。それでもお前から見れば少し手こずるくらいじゃないのか?」

 

「んー、そうなんだけど、嫌な予感がするんだよねぇ」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第3Q開始して早々、嫌な予感が当たってしまった。

 

ノボリさんを中心とした連携が、速さも正確さも格段に良くなっている。

 

特にノボリさんからの配球が、こちらの動きも把握しているかの様に絶妙なタイミングでフリーの選手を作り出している。

 

14点差から始まったのに、第3Q終了まで2分残して3点差まで詰められている。

 

さーて、コイツはマジでヤベーな。

 

残り2分どう凌ぐか・・・そう思った時

 

「雪ぃーーーっ!」

 

と観客席から声が響いた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

インハイ出場を決めた私たちは男バスが第3Q終了間際と連絡を受け、急いで男子の決勝コートに向かった。

 

残り2分で3点差でリードはしているが劣勢なのは分かった。

 

しかも雪くんの表情にいつもの余裕が無い。

 

それを見た私は声の限りに叫んでいた。

 

「雪ぃーーーっ!」

 

そして腕を高く掲げて勝った事を告げる。

 

それを見て渚たちも

 

「私たちは勝ったよ、鷹尾くん!」

 

「次は男子が決める番!」

 

「一緒にインハイ行くよー!」

 

と、口々に声援を贈る。

 

男子が皆ビックリしてる、あの雪くんさえも。

 

そして第3Qが終わり、最後のインターバルに入る。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そうか、女子は勝ったか。

 

そう思った時、「鶴羽、皆に一言掛けてくれ」と青木さんに言われる。

 

「は?いやいや、普通部長がやるもんでしょ」

 

「普通はな。だがこんな状況で皆に力を与える言葉はお前の方が適任だ。だから任せる」

 

・・・そこまで言われちゃなぁ。

 

「よっしゃあ皆の衆!姫様方は勝ってインハイ決めてきた!

勝利の女神ご一行が声援贈ってくれてんだ、カッコ悪い所は見せらんねぇ!

最後の1滴まで力振り絞れ!限界なんか超えて見せろ!勝ってカッコつけるぞ野郎共!行くぞ栄明!ファイッ!」

 

「「「「おおおおおーーーーー!!!」」」」

 

ビィーーーッ!

 

最終Qが始まった。

 

あそこまで言った以上、俺も限界なんざ超えてやる。

 

イメージしろ、あの分厚い扉をこじ開けてその向こう側へ行くイメージを。

 

あの日、ナツ姉のお陰で完全にあの人の事を吹っ切る事が出来た後、居残り練習をしていてモノにした感覚。

 

所謂「ゾーン」と呼ばれる領域に、任意で至る事が出来る様になった。

 

1試合通しては無理だが、数分なら全開で行ける。

 

「さぁて、ナツ姉がインハイ決めたんだから俺も約束守らなきゃな」

 

「雪ちゃん、ここだろ!」

 

へっ流石カズ、分かってやがる。

 

「おうよ、流石相棒、ドンピシャだ!」

 

ドキャッ!と、リングが悲鳴をあげる程の勢いでダンクを叩き込む。

 

「さぁー、こっからだ!」

 

♪~Can Do/GRANRODEO ~

 

最終Qが始まってから、鶴羽くんの動きが明らかに変わった。

 

第2Qの様なスタンダードからトリッキーに変わったのではなく、その動き全てが1段上のステージに上がったと言うべきか。

 

何にせよ彼を止めない限りウチの勝ちは無い。

 

マークにつきながら動きを読もうとするが、読み切れない。

 

ある程度の読みと後は反射で対応するしかない、と思った矢先彼にボールが渡る。

 

「ふー、しんどいけど行かせないよ」

 

「お疲れ様です、俺も行きませんよ」

 

そう言ってあっさりパスを出して走り出す。

 

彼と11番の動きを追う余りに出来た、ほんの小さな隙。

 

彼らはそれを狙っていたのだと、後から気付かされた。

 

ーカズ、見えてるな?ー

 

ーあぁ、バッチリだぜ!ー

 

パスを出した後、コート右に向かって走る俺と左に走るカズでアイコンタクトを取る。

 

俺に2人、カズに1人、3年の2人に1人ずつマークがついた。

 

ここでもう一押しする為にペイントエリア内に走りながら、「ヘイ!」とパスを要求する。

 

それに反応したカズがパスを出す。

 

俺にではなく、3ポイントラインの外で完全フリーになったソーゴに。

 

パスを受け取ったソーゴはシュートモーションに入る。

 

籠原のディフェンスが慌てて向かうが間に合わない。

 

会場に居る者全てを魅了する綺麗なフォームから放たれたボールは、リングに触れる事なく「ザッ」と言うネットの音を出して床に落ちる。

 

ワーーーーッ!と応援席が沸き立つ。

 

「よっしゃあー!ナイッシュー、陣!」

 

「鷹尾くんからの最高のパスだから決めなきゃね!」

 

「鷹尾くん、ナイスパス!」

 

「陣くんも凄い!ナイッシュー!」

 

と、女バスからも声が掛かり、カズとソーゴも照れている。

 

へー、こりゃあ良いネタ提供して貰ったわ。

 

試合終わったらからかってやろう。

 

「さぁ、まだ終わってねーぞ、気を引き締めろ!」

 

残り5分で10点差、逆転される目もある微妙なラインだ。

 

流れが変わると一気に持って行かれかねないから、ここは止めておきたい。

 

ノボリさんから藍原さんのホットラインを最警戒、次いで高科さんのスリーって所か。

 

そう考えていた所で、カズがノボリさんから岩井さんへのパスをカットする。

 

「雪ちゃん!」

 

「任せろ!」

 

ここだ、ここで気持ちをへし折る。

 

ドリブルでペイントエリア手前まで来た所で、ノボリさんが立ちはだかる。

 

「ここで君を止めて流れを変える!」

 

「ここで決めて止め刺してやる!」

 

勢いそのままにジャンプしてダンクを狙う。

 

ノボリさんもブロックに跳び、ボールに手を伸ばしてくる。

 

ボールをお互いの右手で挟む形で押し合う。

 

「おぉおおおーっ!」

 

「はぁあああーっ!」

 

ダァアアーンッ!と音が響く。

 

ノボリさんのディフェンスをはね除けダンクを決めた。俺の勝ちだ!

 

「ぃよっしゃあぁああーーっ!」

 

両拳を握り締めて叫ぶ。

 

それに呼応する仲間と揺れる会場。

 

ノボリさんが1ON1で負けた事で籠原は完全に勢いを失い、後はウチの独壇場だった。

 

ビィーーーッ!と終了のブザーが鳴る。

 

114-93で栄明高校が勝ちましたー!

 

今年の県男子代表は栄明高校ーーー!

 

 

スタンドに向かって叫ぶ。

 

「勝ったぞ千夏ーーーっ!一緒にインハイ行くぞーーーっ!!」

 

「っ!うん、うん!お母さんたちにも報告しなきゃねーっ!!」

 

暫く喜びを爆発させていると

 

「はぁ、やられたよ鶴羽くん。君たちの勝ちだ、おめでとう。インハイでも頑張って来てくれ」

 

そう言って手を差し出してくるノボリさん。

 

「こちらこそありがとうございました。ノボリさんたちの分まで大暴れして来ますよ!」

 

ガッシリと握手して言葉を交わす。

 

「俺はここで引退だ、次やるなら大学かBリーグだな」

 

「え!?冬までやんないんすか?」

 

「あぁ、推薦は貰えるかも知れないけど、選択肢は多い方が良いからね。これから勉強漬けの毎日だよ(苦笑)」

 

「そっすか、冬もやりたかったんすけど、残念です。受験頑張ってください!」

 

ーありがとうー

 

そう言って去って行く際、目に光るモノがあったのは気のせいじゃ無いだろう。

 

「取り敢えず最低ラインの約束は守れたな」

 

そう、本番はこれからだ。

 

あの頃した約束は「全国大会でアベック優勝」だからな。

 





はい、多少の無理矢理感はありますが、何とか県大会優勝して、インハイ出場を決めました。

全国大会どうしよ・・・

多分ダイジェストになると思います。
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