アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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インハイ出場を決めた事を報告されたママーズの反応です。


幕間~母たちの思い~

 

雪からメッセージが来た。

 

「優勝した!ナツ姉もだ!2人揃ってインハイ行ける!」

 

良かった。2人とも勝ってインハイ行けるのか。

 

私たちも過去にインターハイとウインターカップ、どちらも本大会に出た事はある。

 

終ぞ優勝は出来なかったが。

 

今でも夢に見る事がある。

 

1点ビハインドで残り5秒、ここで決めれば逆転勝利で優勝が決まる!と言う所で放ったシュートがリングに嫌われ、コートに弾んだと同時に試合終了のブザーが鳴ったあの高校最後の試合を。

 

ー何でもっと落ち着かなかったのか?

 

ー何でもっと練習しなかったのか?

 

ー何でそこまで追い込まれる様な展開になったのか?

 

何で何で何で・・・そればかりが頭の中をグルグル回り、喜ぶ対戦相手を呆然と眺める事しか出来なかった。

 

春菜も由紀子も泣いていた。他の部員も全員が泣いていた。でも私は泣けなかった。

キャプテンと言う立場のせいなのか、皆に声を掛けて回り整列させる。

準優勝の盾と拍手を笑顔で受ける。

 

「皆、今日まで本当にありがとう、最高の3年間だった!優勝出来なかったのは悔しくて残念だけど、それは後輩の皆に託します、明日から頑張って下さい!

でも変にプレッシャーとして感じなくて良いからね!」

 

自分でも無理してるのは分かってるし、春菜と由紀子も分かっていて何も言わないで居てくれるのが、本当にありがたい。

 

その日は最後の宿泊をして、翌日朝イチのバスで学校に帰った。

 

片付けをして新キャプテンに引き継ぎを済ませ、私たちは引退した。

 

「優花、大丈夫?」

 

「無理しなくて良いんだからね!」

 

「ありがとう2人とも、私は大丈夫だよ。じゃあまた学校でね!」

 

そう言って走ってその場から離れ、河川敷をボーッとして歩く。

 

するとクラスメイト・・・であり私の想い人である鶴羽那月くんがベンチで読書していた。

 

私に気付くと

 

「お帰り、結果聞いたよ、お疲れ様。

君の事だから、皆の前だと我慢して無理に笑顔で振る舞ってたんでしょ?」

 

「そんな事ありませーん、普段通りでーす」

 

と、強がって見せた・・・けど、彼にはお見通しだった。

 

「良いんだよ、俺の前では無理しなくても。君がそう言う時は何かを我慢してる時だって分かってる。だから・・・」

 

ーもう泣いて良いんだよー

 

その言葉を聞いて、もう堪え切れなかった。

 

気付けば彼に抱き付いて号泣していた。

 

「皆が作ってくれた最後のチャンスだったのに」

 

「うん」

 

「これを決めて優勝だと思ったのに」

 

「うん」

 

「それが外れて負けちゃって」

 

「うん」

 

「でも誰も私を責めなくて」

 

「うん」

 

「それが苦しくて情けなくて、でも皆の優しさが嬉しくて、もう頭の中がぐちゃぐちゃで・・・」

 

「チームメイトの皆は君のせいだなんて思ってないと思うよ?寧ろ君が外したのなら仕方ない、くらいに思ってる筈。君がどれだけ練習して努力して皆を引っ張って来たかを知っているからね」

 

「でも、そんな事を知らない他の人に、私が外したから負けたって言われると思うと怖いよ」

 

「君のやってきた事を知らない誰が何を言おうが、俺は君を守るよ。それに俺より女バスの皆が、特に親友のあの2人が黙って見ているとは思えない(苦笑)」

 

そう苦笑混じりに言われた言葉を聞いて

 

ーあの2人なら、自分が言われたかの様に怒ってくれるだろうなぁー

 

と思ってしまい、つい笑いが漏れる。

 

「うん、少しは元気が出たみたいだね。憂い顔も素敵だけど、やっぱり君には笑顔の方が似合ってる」

 

「恥ずかしい事サラッと言わないで欲しいんだけど///」

 

「優花さん、最後の大会も終わった事だし近い内に返事貰えるかな?答えがどうであっても受け入れるからさ」

 

「え、え、あの、その////」

 

そうなのだ。

 

実は大会前に彼に告白されていて、大会に集中したいから、と保留にして貰っていたのだ。

 

私も彼の事は好きだったからその場で受けたかったが、恋愛にのめり込みそうで怖かったのだ。

 

ここまで譲歩してくれていた彼をこれ以上待たせたくない、と覚悟を決める。

 

「那月くん!私も貴方が好きです、付き合って下さい!」

 

「え?ほ、本当に?ありがとう優花さん、嬉しいよ!」

 

「これからは彼氏彼女としてお願いしますね、な・つ・き・く・ん」

 

「こちらこそ、優花さん!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

懐かしいけど恥ずかしいわね、今考えたら。

 

夏でも冬でも、全国大会出場決めたら告白するって言ってたけど、どうするのかしら千夏ちゃん。

 

私としてはさっさと告白してくっついてしまえば良いと思ってるし、それは春菜も同じ筈。

 

ただ、告白される当の本人である雪が変に約束に対して拘ってなきゃ良いんだけど。

 

あの子は自分の気持ちより、約束事や他人の気持ちを優先する傾向がある。

 

例えば大喜くんが千夏ちゃんを好きだと知ってからは、彼と千夏ちゃんが上手く行くようにそれとなく誘導したりね。

 

ただ、そこには大喜くんとの友情はあるけど、現状では大喜くんに対して恋愛感情を持っていない千夏ちゃんの気持ちは考慮されていなかったりする。

 

その千夏ちゃんの好意が自分に向いてる事を理解しているのかいないのか。

 

「何とも思っていない異性を抱き寄せるなんて、普通はしない」、と少し考えれば分かる筈なんだけどなぁ。

 

本人に聞けば、「ナツ姉から見れば、異性とは言え年下の幼馴染みなんて弟くらいにしか思ってないだろ。恋愛対象?俺はともかくアッチには無い無い(ヾノ・∀・`)」って素で言いそうなのよねぇ、困った事に。

 

それに冬樹さん含めた、私たちへの誓いがある。

 

それが1番の足枷になりそうな気がしている。

 

「春菜も千夏ちゃんから報告受けてるだろうし、1度話した方が良いわね」

 

春菜に連絡してみよう。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「2人ともインハイ出場決まって一安心だわ」

 

「千夏から連絡来た時、やったー!って叫んで周りに驚かれちゃったわよ」

 

「それで前にも話したけど、インハイ出場が決まったから、千夏ちゃんは雪に告白するのかしら?」

 

「あの子の性格を考えたらすると思うけど、今はタイミング図ってるんだと思うわ。それより雪くんよねぇ。話聞く限りだと、あの子まだあの誓いに拘ってるみたいだし」

 

「そうなのよ、どう考えても両想いにしか見えないのに、自分から一線引いて誤魔化してるとしか思えないわ。

それに由紀子の息子さんの大喜くん。

あの子も千夏ちゃんが好きみたいで、下手すると大喜くんと千夏ちゃんの仲を取り持とうくらいの腹積もりで居そうなのよ」

 

「あらあら、ウチの娘は罪作りね」

 

「冗談抜きで千夏ちゃんは人気あるのよ。

雪から聞いたんだけど、“栄明学園のマドンナ”って呼ばれていて、校内外にファンが居るんだって。

春菜も当時男子人気は凄かったけど、千夏ちゃんはそれ以上だわ」

 

「そんなに!?我が娘ながら末恐ろしいわね。

変な方面に目覚めなきゃ良いけど」

 

「話を戻すけど大喜くんについては、由紀子は中立で居るって。

今の千夏ちゃんの気持ちは雪に向いてるけど、それが大喜に向かうならそれはそれで息子を祝福してやりたいから、って言ってたわ」

 

「こればっかりは、親がどうこう言って纏まる話じゃないしねぇ」

 

「まぁ千夏ちゃんが誰とくっつくにしても、雪には自分の気持ちに素直になって欲しいわ。その上で千夏ちゃんが大喜くんを選ぶなら、それは仕方の無い事だし」

 

「そうね。私の気持ちとしては前にも言った通り、千夏には雪くんとくっついて貰いたいんだけど、千夏の選択を尊重してあげなきゃね」

 

「冬樹さんはこの件について何か言ってるの?」

 

「“私はあの子たちを信じているから、もし付き合う事になっても節度ある交際になる筈だ”、ですって」

 

「あらまぁ、冬樹さんも交際する事自体は認めてるのね。尚更雪の気持ち1つじゃないの」

 

「そうねぇ、インハイ出場が決まった今なら、雪くんの気持ちも揺らぐと信じたいわ」

 

「私からもそれとなく仄めかしてみるわ。それじゃあまたね、春菜」

 

「えぇ、進展あったら報告お願いね、優花」

 

そう言って電話を切る。

 

「本当にもう、あのバカ息子は人の気も知らないで。

色んな人に迷惑と心配を掛けてる事に気付きなさいよ。それに千夏ちゃんの好意だって、今後どうなるか分からないんだから」

 

ー人の気持ちなんて、ちょっとした切っ掛けで引っくり返る事なんかザラにあるんだからねー

 





優花さん、原作千夏のオマージュで回想入れました。

そして雪くんは、親の心子知らずの極みですね。
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