アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
インハイ出場を決めた雪と千夏。
家に帰って祝杯を上げたが、翌日雪の調子が・・・
そして2人の関係に一石を投じるアクシデントが起きる。
インハイ出場を決めた俺とナツ姉は、それぞれ母さんたちに連絡した。
どちらも物凄く喜んでくれて、今日の晩は豪勢にしてくれるとの事。
部の皆とも男女問わず大いに喜びを分かち合い、インハイに向けてより一層気合いを入れた。
「あ~腹減った~。流石にいつもより疲れた~」
「本当に凄かったもんね、特に最終Qなんて独壇場だったし」
「あれが1試合通して出来ればなぁ。何せ疲れて仕方ねぇんだわ」
「そっか、雪くんでもそんなに疲れちゃうんなら、私には無理だなぁ」
「ナツ姉はサーカスプレーなんかせず、真っ当なプレーの質を上げる事を考えな。
特に試合終盤の疲労が溜まってる時に判断力やシュートの精度が落ちない様に、練習で疲れてる時にこそシュート練を1本ずつ集中して熟すとかな。
結局は“基礎が出来てるかどうか”に掛かってくるからよ」
「そうだね、疲れてる時にこそしっかりとしたフォームで撃つのと、敵味方の位置を把握してディフェンスが近いか遠いかにも気を配らなきゃ駄目だね」
「そう言うこった。まぁナツ姉は慌てなけりゃ大丈夫だろ。そう言うのは明日以降考える事にして、さっさと帰ってご馳走食べようぜ!」
「うん!優花さんのご飯、美味しいからね!」
「食べ過ぎるとふt」
「雪くん?それは女の子に言っちゃいけないワードの1つだよ?」
「アッハイ、ゴメンナサイ」
こっわ、この手のネタはマジで使わん方が良さそう。
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「ただいまー/帰りましたー!」
「お帰りなさい、2人とも!インハイ出場おめでとう。由紀子にも報告したら凄く喜んでたわよ!」
「お母さんも喜んでくれて、お父さんにも伝えておくって言ってました」
「さぁさぁ、先ずはお風呂入って汗を流してらっしゃい。その間に料理並べておくから」
「ハイ、ありがとうございます。雪くんどうする?先入る?」
「そうだな、シャワーだけにするから5分で上がるわ。ナツ姉はゆっくり入ってて良いぞ」
「なら私もシャワーだけにしようかな。余りお待たせするのも悪いし」
「そんな気にしなくて良いんだがなぁ、家族みたいなもんなんだしよ」
「え?」
俺の一言でポカンとしたナツ姉を見て
「あ、いや、他意は無いぞ?
同居して結構経つし、何だかんだ母さんは女の子が欲しかった感もあるから、ナツ姉が居てくれて嬉しいと思ってるだろうし。じゃあ先入ってくるわ」
そう言って雪くんは足早に浴室へ向かった。
「千夏ちゃん、まだ言ってないの?」
「インハイ行ける事で盛り上がっちゃって中々・・・」
「そう。まぁ今日くらいは素直にインハイ行ける事を喜びましょうか。告白もそう言うタイミングが来るでしょうし、焦らなくても大丈夫よ」
「はい、ありがとうございます」
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「あー、食った食った。余は満足じゃ」
「本当にビックリするくらい食べたよね、苦しくない?」
「ちょっとな。でもまぁ、母さんも嬉しかったんだろ、息子と親友の娘が母校で自分と同じ部活やってインハイ出場決めたんだから」
「優花さん、自分の事みたいに喜んでたよね。私たちは自分たちの約束の為だったけど、それで親も喜んでくれるのって不思議な感じだけど嬉しいよね」
「あぁ、次はインハイ優勝だ。それであの頃からの約束を果たす!」
「うん、そうだね・・・」
「ん?何か気になんの?」
「えっとね、もしインハイ優勝したら“栄明で全国制覇”って約束を果たした事になるよね?
そしたらどうするのかな?って」
成る程、確かに達成する事しか考えてなかったから、もし俺にとって最初のインターハイでそれが叶ってしまったら目標が無くなるし、モチベーションも上がらなくなるかも知れないって事か。
「・・・分かんねぇ。
ただ、別に消えていなくなる訳じゃないし、別に何回優勝したって良いんじゃねーの?」
「そうだよね、変な事言ってゴメン。先ずはインハイに集中だね!」
「そう言うこった・・・つか、何か暑くねぇ?」
「そう?。そんな事ないと思うけど」
「何だかんだインハイ決まったから、気持ちが昂ってんのかね?まぁ良いや、今日はもう気分良いまま寝るわ、お休みナツ姉」
「うん、お休みなさい雪くん」
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朝6時に目が覚めた私は、いつも通り朝のランニングに行こうと用意をしてリビングに降りる。
すると、いつも私より早起きして準備している雪くんの姿が見えない。
「優花さん、雪くんはまだ寝てるんですか?」
「そう言えばそうね、珍しい。千夏ちゃん、悪いんだけど声掛けて返事なかったら中入って起こしてくれるかしら?」
「良いですよ」
そう言って雪くんの部屋に向かう。
コンコンコンとノックをする。
「雪くん、起きてるー?」
返事がない。昨日あれだけのプレーをしたから余程疲れているんだろうか?
もう一度ノックをしても返事がないから、声を掛けて部屋に入る。
「雪くん入るね」
雪くんは布団をかぶって寝ていた。
「もー、寝坊助さんなんだから。もう朝ですよー、起きなさーい!」
ここまで声を掛けたら、やっともぞもぞと動き出した。
「ん~、あれ?ナツ姉?何で俺の部屋に?」
「もう6時半だよ?いつもならランニング行ってる時間だよ、流石に疲れたのかな?」
「あー、何か暑い?いや、でも寒い気もする」
え?もしかしてと思い「雪くん、ちょっと触るね」と言っておでこに手を当てる。
ー熱い、間違いなく熱がある
「あー、ナツ姉の手、冷たくて気持ち良い」
と、呑気に言う雪くんを尻目に
「優花さーん!雪くん熱があるー!」
とリビングに戻り報告する。
「38.4℃ね。咳とか身体に痛みは無いの?」
「う~ん、身体が重く感じてダルいくらいで他は別に」
「多分疲労のせいだと思うけど、一応朝イチで病院行きましょう。ただ私は今日、夕方からどうしても外せない用事があるから困ったわねぇ。那月さんも出張中で帰りは来週だし・・・」
「優花さんが帰って来るまで、私が雪くんを見てます」
「でも部活もあるでしょ?」
「今日はインハイ決まったからミーティングだけして後は自主練なんで、事情話せば大丈夫です。同居はともかく幼馴染みなのは皆が知ってますから」
「そう?ならお願いするわ、千夏ちゃん。もし熱を理由に変な事しようとしたらしばき倒して良いからね」
「え///は、はい、大丈夫です!」
「人の事を何だと思ってやがる。そもそも、そんな元気はねぇ、よ、オバハン」
「ハイハイ、蒸しタオル用意してやったからアンタは取り敢えず身体拭いて着替えなさい。こんな時の為に買っておいたゼリー飲料1つ2つ飲んだら病院行くからね!」
「へいよ」
「雪くん、本当に大丈夫?」
「あぁ、熱とダルさだけだからな。でも一応近付くなよナツ姉。万が一風邪とかインフルエンザならうつるかも知れんし」
「千夏ちゃんも体調には気を付けてね。このバカ息子と違って繊細なんだから」
うん、もう母さんの毒舌には慣れたもんだから気にしなーい。
「じゃあ私は学校に学校行くから、何かあったら連絡してね」
「分かった。まぁ何もないと思うし、連絡しないだろうけどな」
「じゃあ私に心配させない為に、大丈夫って連絡して」
「起きてたらな。じゃあ行ってら」
「行ってきます。早く帰るから、ちゃんと休んでるんだよ?」
「千夏ちゃん、もう彼女かお嫁さんみたいね、おばさん嬉しいわ~」
「ゆ、優花さん、何言ってるんですか///」
「そうそう。ナツ姉はそれこそ姉が弟に対して世話焼いてる感じに思ってんだろうから、変な事言って困らせんなよ、母さん」
「本当にこの子は全くもう。コソッごめんね千夏ちゃん」
「コソッいえ、多分そうだろうなと。これから告白して意識させるにしても、雪くんの体調が良くなってからですね」
「私も春菜も応援してるからね。じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」
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何かこそこそ話してたなぁとは思うものの、俺は俺でボーッとするから深く考えられない。
「じゃあ病院行くからね。準備出来てる?」
「ん、OK」
タクシーで病院に着き、受け付けを済ませて暫く待っていると名前を呼ばれたので診察室に入る。
「今日はどうされました?」
「昨日の晩から身体が熱くて、朝起きたら寒気もしたので熱計ったら38度超えてました」
「他に症状は?」
「身体がダルいくらいで、咳や頭痛・腹痛、節々の痛みなんかはありません」
俺がそう言うと、医師は触診や聴診器で状態を調べて行く。
「身体的な疲労が溜まった事による一時的な物なので、今日1日安静にしてちゃんと食事を摂れば回復しますよ。解熱剤だけ出しておきますので、夜になっても熱が下がらなければ飲んで下さい。お大事に」
「ありがとうございました」
「さぁ薬も貰ったし、帰ったら寝てなさい。私も昼過ぎまでは家に居るからね」
「うい」
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帰宅してもう一度汗を拭いてから、着替えてベッドに横になる。
「久し振りだな、こんな体調崩したのは」
前に寝込むくらい体調悪くなったのはいつだったか思い出せないくらい、頑丈な身体に生んでくれた両親に感謝だな。
ん?でも小さい頃はしょっちゅう熱出したりしてた様な・・・?
そんな事を思っているウチに瞼が重くなってきて、俺は眠りに落ちた。
「雪ー、そろそろお昼だけどどうするー?」
と、息子に声を掛けるも返事が無い。
「入るわよ」と声を掛けてから部屋に入る。
ベッドには、落ち着いた寝息を立てて眠っている息子の姿。
「熱も下がってるみたいね。起こすのも何だからうどんのスープでも作って冷蔵庫に入れておこうかしら。麺は冷凍してあるからそれを使えば良いし、千夏ちゃんにも一言メッセージ送っておけば大丈夫でしょう」
そう思いうどんのスープを作ってラップを掛け冷蔵庫に、麺は冷凍してある旨のメッセージを千夏ちゃんに送る。
「分かりました」と返事が来たので、私も出掛ける準備を始めた。
15時少し前になり、出掛ける前に雪の様子を見に行くとまだ寝ていた。
額に少し浮いている汗を拭いて、「早く良くなりなさい、千夏ちゃんも心配してたわよ」と言って頭を撫でる。
いつまでこんな風に面倒見ていられるのかな、と思うと少し寂しく思ってしまう。
小さい時は余り身体が強くなく、しょっちゅう熱を出したり戻したりしていたこの子が遊びでバスケをやる様になってからは、健康過ぎるくらいになったのには本当に驚いた。
それも今では良い思い出だ。
「これからは本当に千夏ちゃんに任せる事になるのかしらね」
彼女は本当に良い子でウチのドラ息子には勿体無いくらいだと思う反面、親の欲目と言うのか2人で居る所を見るとお似合いだと思ってしまうのも確かだ。
ーお義母さん、雪を叱って下さい。また大人げなくこの子と張り合って泣かせたんですよ!ー
そんな未来が来るのかも知れないと、雪の寝顔を見て想像する。
「うん、悪くない!
雪、千夏ちゃんは待ってるんだから、本音を言ってあげなさいね」
そう言って部屋を出て、家の中の安全確認をして外出する。
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今日はインハイ出場を決めた事で部活はミーティングのみで、後は各自で自主練と言う事になっている。
私は雪くんの体調不良と優花さんに頼まれた事を話して、即帰る事にした。
「雪くん大丈夫なの?ナツ」
「優花さん・・・雪くんのお母さんからのメッセージだと、お昼過ぎてもまだ寝てたって」
「いつも超人然としてる鶴羽くんが寝込むなんて、信じられないよね」
「それよりナツは雪くんが心配だから、早く帰りたいんでしょ?」
「うん。今雪くん1人だし、優花さんも遅くなるって言ってたから」
「そうなんだ。じゃあ早く1人で苦しんでる旦那のトコに行ってやんなさい、千夏」
「部長!だ、旦那って///雪くんはただの幼馴染みで、そんな関係じゃ・・・」
「あーもう、部長!ナツにそんな言い方したら真に受けてポンコツになるだけです!ナツもいちいち真に受けた反応しない!」
「はは、ゴメンゴメン、ついね」
「じゃ、じゃあ私はお先に失礼します」
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「ん・・・よく寝た。今何時だ?」
時計は・・・16時過ぎか、6時間近く寝てたのか。
「ただいま」
ん?ナツ姉帰ってきたのか。
コンコンコンとノックされる。
「雪くん起きてる?」
「おー。お帰りナツ姉、どうぞー」
「具合はどう?」
「今起きた所だから何とも。取り敢えず熱計ろうかと」
「ハイ、体温計」
「サンキュ」
ピピッ・・・37.2℃、微熱だな。
「微熱だね。優花さんからお昼も寝てたってメッセージ来たけど、お腹空いてない?」
「そういや腹の虫が大合唱仕掛かってるわ」
「うどんのスープは作ってあるって言ってたから、麺を解凍してうどん作ろっか?食べられる?」
「微熱だし、自分でやるから良いよ」
「だーめ、まだ本調子じゃないんだからお姉さんに任せなさい!」
「あー、じゃあ頼むわ、千夏お姉ちゃん」
「はい、任されました。ちょっと待っててね」
ー千夏お姉ちゃんー
懐かしい響きだ。
初めて会った時、優花さんに「この子は千夏ちゃんって言うの。雪より1つ上のお姉さんね」
と言われた彼は、「じゃあ、ちなつおねえちゃんだね」と、満面の笑みで言っていたのを思い出す。
それから暫くすると今と同じ「ナツ姉」に変わった。
仲良くなれたんだと思って、嬉しかった記憶がある。
でも今もナツ姉呼びなのは、彼の中では離れ離れになった小学生のままの私でしかないのかな?と少し寂しい。
雪くん、私はずっと「お姉ちゃんのまま」なのかな?
去年の話し合いの時、部活見学期間に1ON1をやった時、そして昨日インハイ出場を決めた時みたいに「千夏」と呼んでくれたら良いのに。
そんな事を考えながらキッチンに立つ。
それより今は雪くんにうどんを作るのが大事だと、思考を切り替える。
「お待たせ。具は適当にネギとかお揚げを刻んで乗せただけの簡単うどんしか出来なかったけど」
「十分だよ、ありがとなナツ姉。いただきます」
モノの5分で平らげてしまったが、かなり満足出来た。
「あ~、美味かった、ご馳走さん」
「まぁスープは優花さんが作ったから、美味しいと思うよ」
「そっか、じゃあ今度はナツ姉のお手製に期待だな」
「え?」
「ん?」
「私の料理、食べたいの?」
「出来ないなら無理にとは言わねぇけどな。まぁ、食べてみたいとは思ってる」
「そっか、じゃあ優花さんに教えて貰おうかな」
「いや、だからそこまでしなくても別n「私も雪くんに食べて欲しいな」ハイ、オネガイシマス」
なーんか妙に圧が強くなった気がするんだが、そんなに料理に興味あったっけ?
ま、いっか。何でもやる気があるのは良い事だ。
・・・空回りしなけりゃ、な。
じゃあ器を片付けますかね。
「さて、うどん食って満足したし、器片付けるか」
と言ってベッドから立ち上がる。
「私が片付けるから、雪くんはまだ横になってて」
「いや、もう大分回復したしナツ姉は用意してくれたんだから、片付けくらいは俺がやるって」
そう押し問答してると、不意にカクンと足の力が抜ける。
「あ、ヤベ」
フラつく俺を支えようとしたナツ姉だったが、支え切れずに倒れ込む。
「キャッ」
結果、ナツ姉が俺を押し倒した様な体勢になってしまい、顔が凄く近くにある。
やっぱキレカワだな、ナツ姉は。
等とボーッと思いながらも2人とも暫く固まってしまい、無言で見つめ合う事数秒。
「冷え冷えシートが取れ掛かってる」
と言いながら右手を伸ばして貼り直してくれるのかと思いきや、その手で俺の目元を隠した。
急に視界が塞がれて困惑していると
頬に何かが触れる感触がした。
え?何だ今の感触?ま、まさか!?
そう思った瞬間、目元からナツ姉が手を離して
「じゃ、じゃあ器下げて洗うね////雪くんはゆっくり休んでて」
と言って、慌ただしく部屋から出て行った。
その時ナツ姉の横顔と耳が真っ赤に染まっているのが見えて、「え?ナツ姉、今の・・・マジでか?」としか言えなかった。
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~~~////どうしよう、フラついた雪くんを支え切れず、私が押し倒す格好になったのが余りに衝撃的過ぎたから、つい雪くんの頬にキスしてしまった。
ー私はお姉ちゃんのままなのかな?ー
そう考えていたから、衝動的にしてしまったんだと思う
前におでこにした時は寝ていたから気にならなかったけど、今のは視界を塞いでいたとは言え完全に起きてたからバレちゃってるよね?
変な女とか軽い女とか思われてないよね?大丈夫だよね?そんな事を思いながら洗い物をしていると、「ただいま~」と優花さんが帰って来た。
よし、ここは大人の女性に相談だ!
「お帰りなさい、優花さん」
「あら千夏ちゃん、うどん作ってくれた上に洗い物までしてくれたの?ごめんなさいね」
「いえ、それは良いんですけど、折り入ってご相談が・・・」
優花さんに今しがた起きた事を相談した。
「まぁまぁそうなの!?告白前にやるわね千夏ちゃん。これは春菜にも報告しなきゃ!」
「待ってください!それはせめて私の居ない所でお願いします!」
「そう?春菜には何か進展あったら報告してね♡って言われてるんだけど」
「流石に母親に自分の恋愛事情を最初から話す気にはなれませんから」
「で、雪の反応はどうだったの?」
「呆然としてました・・・まさかこんな事されるとは思ってなかった、って顔してました」
「千夏ちゃん、それは意識しているからこそ呆然としてたのよ。第一関門突破したと思って良いわ。もう告白しても良いんじゃない?」
「今日は無理です!恥ずかしくて雪くんの顔が見られません!でも、インハイまでにはしようと思います」
「無理強いする事じゃないしね。千夏ちゃんのタイミングで言えば良いと思うわ」
「ハイ!」
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あー、参った。
流石にあそこまでされちゃあ、「幼馴染みだから」と考えるのにも無理がある。
思い返せば泣いてる時に抱き締められたり、決勝の朝にハグしたりってのは、幾ら幼馴染みとは言え異性に対して普通はやらんよな。
自意識過剰だろうが、ナツ姉は俺に対して少なからず恋愛的な好意を持ってくれてるんだと思う。
それはつい先日ナツ姉に対して同じ気持ちがある事を自覚した俺にとって、これ以上ない朗報ではある。
あるんだが、俺の中での拘りと言うかケジメを付けなきゃ告白するにせよされるにせよ、ナツ姉との関係を進める事は出来ない。
そのケジメと言うのは勿論、両親ズ+1への誓いと大喜の気持ちをサポートするって事についてだ。
前者は「インハイ決まったし両想いみたいだから付き合う事にしたわ、テヘペロ♪」なんて言える訳もないし、特に冬樹さんには合わせる顔がない。
後者は「ナツ姉と両想いだったから付き合う事にしたわ。お前の気持ちは知ってたけど悪りぃな」なんて親友と呼んで良いくらいの奴に対して、流石の俺でも言える訳がない。
はぁー、と溜め息をつきながら時計を見る。
「20時過ぎか・・・」と時間を確認して、俺はスマホを手に取った。
遂に千夏の気持ちに気付いた雪ですが、当初から親が話していた様に自分で立てた誓いが足枷になってます。
そして勿論、大喜への義理立ても同じく。
さて、この難局を雪はどう乗り越えるのか。