アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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インターハイで勝ち進んだ雪と千夏は、「栄明でアベック優勝する」と言う、子供の頃からの約束を果たす事が出来るのだろうか。


EP27 インハイの結果と千夏の気持ち

 

インターハイを順調に勝ち進み、遂に男女揃って決勝の舞台に駒を進めた。

 

あと1つ勝てば、子供の頃にした「栄明でアベック優勝する」と言う約束を果たせる。

 

「ここまで来たら勝つしかねーな、元から負ける気も無いけどよ」

 

「でも相手も決勝まで来るチームだから、油断は出来ねーぞ?」

 

「そりゃ分かってるよ。どこが相手だろうが、油断もしなけりゃ侮りもしねーよ。その上で普段通りにやりゃあ俺たちが負けることは無いと思ってる」

 

「でも流石に全国大会の決勝だから、いつもより緊張して仕方がないよ」

 

「まぁ試合始まりゃ落ち着くだろうよ」

 

 

 

「さぁ、お前ら試合開始だ!整列!!」

 

相手は古豪と呼ばれる星煌学院だ。

 

近年は留学生やスカウト等で良い選手を集めているらしく、今年になって戦力が噛み合って県代表になったって話だ。

 

ま、俺たちが勝つからカンケーねーけどな。

 

 

ーティップオフ(試合開始)!!

 

おっと!?

 

青木さんがジャンプボールで負けた。

 

まぁ、相手は留学生の2m超えだから仕方がない。

 

相手のPGもハンドワークやパスを捌くのが上手く、仲間を上手く使っている。

 

「へぇ、こりゃあ中々手強いかもな」

 

「どうする、雪ちゃん?コイツら結構やるぜ?」

 

「そうだな、一先ずこのまま様子見で良いだろ。手強いけど、正直ノボリさん達程の圧は感じないからな。なぁ?青木さんに水谷さんや」

 

「あぁ、正直お前らが居なかったら、アイツらがここに立っていてもおかしくなかったからな」

 

「そんなアイツらに勝って俺たちはここに居るんだから、優勝旗の1つくらい持って帰らないとな!」

 

「んじゃ、バンバンパス回しますんで宜しく、水谷さん」

 

「任せとけ!いつもいつも鶴羽にばかり負担掛けられんし、良いトコ持ってかれ過ぎてるからな!」

 

「じゃ、俺は今日ラクさせて貰おっかなーw」

 

「フザけんな!お前が1番働かなきゃ勝てるモンも勝てないだろ!」

 

「あれ~?俺が良いトコ持ってって良いのか?水谷さんや」

 

「言葉のアヤだよ、分かって言ってんだろオマエ!」

 

「冗談だよ、インハイの決勝戦だぜ?全力全開の本気でやんねーでどうするよ!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ビィーー!

 

第2Q(前半)が終了した時点で54-51と3点リードで後半を迎える。

 

「ふぃー、何とかリードは保ってるけど、中々突き放せねーな、雪ちゃん」

 

「あぁ、後半アタマからは出し惜しみ無しで行くわ」

 

「分かった。ボールは鶴羽に集める、で良いな?」

 

「おうよ、フォロー頼むぜ皆の衆!

じゃあちょいとばかり用足しの序でに、外の空気吸ってくるわ」

 

 

 

 

 

「あ~、日陰で風が来ると涼しいねぇ~」

 

そう言って、人気の少い日陰のベンチに座っていると

 

「あれ、雪くん?」

 

「お、ナツ姉もハーフタイム休憩?」

 

「うん、ちょっと風に当たって気分転換しようかと」

 

決勝は男女同時に開始だったので、応援に行くタイミングが無いと思ってたから丁度良い。

 

「3点リードしてる。そっちは?」

 

「4点ビハインド。でも実力差は感じないから、後半は攻めて絶対逆転する」

 

 

 

ーだから、力ちょうだい、“雪”ー

 

 

 

そう言って真剣な目で俺を見つめるナツ姉。

 

俺もテンション上がった時には千夏と呼ぶ事はあったが、ナツ姉が俺にくん付けしないってのはそれだけ本気になってるって事だよな・・・なら

 

「分かった。おいで、千夏」

 

ベンチから立ち上がり、そう言って両腕を広げる。

 

ぎゅっと抱き付いてくるナツ姉に対して

 

「大丈夫だ、千夏も俺も、いや俺たちだけじゃねぇ、栄明の皆は強い。だから自分と皆の力を信じろ!」

 

「うん、分かってる。でもリードされてるからちょっと不安になっちゃって・・・」

 

「俺の知ってる千夏は、そんな不安すら乗り越えて行けるだけの努力をして来てる。だから俺は千夏が負けるなんてこれっぽっちも思ってない。一緒に勝って母さん達に報告しようぜ!」

 

「うん、ありがとう雪、もう大丈夫」

 

そう言って離れるナツ姉。

 

そこにタイミングを見計らったかの様に現れるナギちゃん先輩。

 

「もう大丈夫みたいだね、ナツ?」

 

「うん、心配させちゃったね、渚・・・よっしゃー!勝つぞー、栄明!」

 

「ありがとね、雪くん。やっぱりナツに元気出して貰うには、キミに頼むのが1番だね!」

 

「ナツ姉にとっちゃあ、ナギちゃん先輩達だって同じだよ。さてそろそろ戻るか。やろうぜ、アベック優勝」

 

「そうだね、1番最初に巻き込まれんだし、最後まで付き合うとしますか!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お、帰って来たか」

 

「おう、第3Qから突き放して勝つぞ!」

 

ナツ姉は俺に力ちょうだいと言っていたが、俺の方こそナツ姉から力貰ったわ。

 

 

ーだから後は“勝利”を掴み取るだけだ!ー

 

 

ーおーっと、また栄明高校の#10、鶴羽選手が決めたー!!これで40点目、第3Q開始から得意のトリッキーなプレーで星煌学院を翻弄しているーっ!ー

 

ーいやー、彼は県予選の頃からあのスタイルで戦って来ましたが、当初は“ふざけている”とか“真面目にやれ”等の声もかなりあった様ですが、それらの声を全て実力で黙らせて来たメンタルの強さもありますからねー

 

ーそうですね、そしてそのトリッキーなプレースタイルから、“変幻自在のトリックスター”と一部のバスケットファンから呼ばれていますー

 

ー実際、彼と対峙している相手はやりにくいでしょうね。通常のプレーだけでも高校最速クラスだと言うのに、そこに変則プレーが混ざるんですから、どうしても主導権は彼に取られてしまいますし、彼に拘っていると見透かした様にパスを出しますからねー

 

ーそしてそれを受けてパスを供給する司令塔の鷹尾くんも俯瞰でコート全体を見渡せる「バードアイ」を持っていますから、バスケやサッカー等に於いてはかなり有利ですねー

 

 

さぁて、残すは最終第4Qだけだ。

 

残り10分、全てを出し切る!

 

 

  ♪~Anything Goes! 大黒摩季~

 

 

俺がドリブルからシュートに跳ぶと、相手もブロックに跳ぶ・・・が、俺はそれを空中で360°回転して躱してシュートを撃ち、決める。

 

ドリブルで突破しようとする前に3人が立ちはだかる所謂トリプルチームだが、そうなると当然人数のミスマッチが起きる訳で、フリーの水谷さんにパスを出す。

 

水谷さんも良いトコ見せると言っただけに、ここぞとばかりにダンクを決める。

 

「へへっ、俺にばかり良いトコ取りさせないって言ってただけあって、やるじゃん水谷さん!」

 

「おお、インハイ最後の試合だからな!県大会決勝でお前が言ってた様に、ここで全部出し切ってカッコつけなきゃな!」

 

「鷹尾!鶴羽!俺にもパスを寄越せ!リバウンドだけじゃあ、俺も満足出来んからな!!」

 

おーおー、普段は気迫はあってもそこまで攻撃に色気出さない青木さんまでパスの要求かよ。

ま、後半までラクする為にも俺もパスメインでやるとしますかね。

 

「カズ、暫く俺もパスメインでやるからダブル司令塔って事で宜しく。ソーゴもいつでもスリー行けるように頼むぜ!」

 

「はいよ、雪ちゃんがパス回してくれんなら、俺もちょっとは楽出来るわ」

 

「僕もいつでもスリーが撃てるポジション取りをしてるし、いつでもどうぞ」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「渚っ!」

 

「ナツっ、ナイスパス!」

 

ナツからのパスを受けてレイアップを決める。

 

これで75-68、7点リードになる。

 

ハーフタイム休憩で雪くんと抱き合ってる姿を見た時は驚いたし、からかってやろうとも思った。

 

けど2人の話が聞こえて来るとそんな気持ちは無くなって、私も聞き入っていた。

 

そして2人が離れた所を見計らって声を掛けた。

 

前半ビハインドで折り返した事で、ナツはプレッシャーもあって硬い表情をしていた。

 

が、それが雪くんの抱擁と言葉で消え去って、いつもの、いや、いつもより良い表情に変わったのを見て、もう大丈夫、この試合勝てると確信した。

 

最終第4Q残り5分、このまま逃げ切るなんて考えず、もっと点を取って勝つ!

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

青木さん、水谷さん、ソーゴの3人を軸に攻めてくれたお陰で体力の温存が出来た。

 

残り時間3分。

 

ー十分行けるー

 

俺は意識を集中してゾーン状態に入る。

 

「カズっ!」

 

「はいよ、ここだろ雪ちゃん!」

 

ペイントエリアでジャンプしながらパスを受ける。

 

星煌の2mが「止メル!」と言ってディフェンスに来るが、「ハイ、ご苦労さん」と言ってバックボード裏からシュートを撃って決める。

 

「ソ、ソンナ・・・」

 

とショックを受けていた。

 

ーコイツ今までの俺たちの試合見てねーのか?ー

 

と思ったが、チームはともかくコイツは体格と身体能力で勝って来たから、“相手なんか知らなくても勝てる”と思って舐めてたんだろうな。

 

スコアは102-91。

 

もう優勝は確定だが、手も気も緩めずに攻める。

 

 

 

 

そして残り10秒、カズから最後のパスが来る。

 

それをジャンプしながら受け取り、リングに叩き付ける様にダンクを決める。

 

これで108-93、そして着地すると同時に

 

 

ビィイイイーーー!!!

 

 

と、試合終了のブザーが鳴る。

 

 

ー試合終了ーーーっ!今年のインターハイ、男子バスケットボール優勝校は、栄明高校ーーーっ!!ー

 

 

「~~~っ、よっしゃぁああーーーっ!!!」

 

「やったぜ、雪ちゃん、優勝だぁーーー!!!」

 

「皆が力出し切ったから勝てたんだよーっ!」

 

「うおぉおおおー、勝ったぞー!水谷ー!」

 

「お互い辛くて辞めようと思った時もあったけど、辞めなくて良かったな、青木ーっ!!」

 

「雪くん、鷹尾くん、陣くん、優勝おめでとうーーーっ!!!俺もいつかそこに立って一緒に喜ぶからねーっ!」

 

皆がそれぞれ喜びを口にする。

 

 

「はぁ、優勝か・・・これで約束は半分果たした。後は女子の結果だな」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

残り30秒、スコアは85-77。

 

子供の頃にした“2人で全国制覇”と言う約束は、半分達成できる。

 

でもここで手を抜いたりはしない。

 

雪くんなら間違いなく「終わるまでは手も気も緩めねーよ」って言う筈だ。

 

だから私も最後まで攻める!

 

「ナツッ!」

 

部長から渚を経由して私にボールが渡る。

 

残り10秒、マークに着いたDFを躱してシュートを撃つ、と見せ掛けて部長にボールを戻す。

 

「最後は部長が決めて下さい!」

 

その言葉を受けて部長が撃ったジャンプシュートが決まる。

 

87-77

 

そして遂にその瞬間が来る。

 

 

ビィイイイーーーッ!

 

ー試合終了ーーーっ!インターハイ女子バスケットボール優勝校は、栄明高校ーっ!ー

 

ーおっと?今第1体育館の結果が入って来ましたが・・・何と、男子も栄明高校が勝って優勝との事です!栄明高校アベック優勝達成ーーーっ!ー

 

それはベンチ外の男子部員からも伝えられ、整列を終わらせてベンチに戻った私たちはこれ以上無いくらい歓喜に包まれた。

 

「あれ?ナツ、それ・・・」

 

渚が指差す方を見ると

 

「あ」

 

足首のミサンガが切れていた。

 

ー約束果たせたね、雪くんー

 

 

 

ふと違和感を覚えて足元を見る。

 

「あ、切れてら」

 

ナツ姉に貰ったミサンガが切れて足首に引っ掛かっていた。

 

「後でナツ姉に見せてやんねーとな」

 

ー願いが叶ったぞー

 

ってな。

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

閉会式も恙無く終わり、宿に帰って風呂に入って一休みしていた。

 

これから男女混合の祝勝会と言う事で、宿からもお祝いとしてかなり豪華な食事になるらしい。

 

育ち盛り食い盛りの高校生男子にとっては、これ以上無い朗報である。

 

女子はまぁ男子の目を気にして、そこそこで我慢する人も居るかもな。

 

まぁ、“食いしん坊のちなつ”は、当てはまるかどうか分からんけどw

 

そんな事言ったらまた怒らせるから、面と向かっては言わん様にしよう。

 

 

「あ~、腹へった~。メシまだかよ~」

 

「何か優勝祝いって事でグレードアップするって話だし、時間掛かってんじゃねーの?」

 

「そうだね、男女合わせて結構な人数だし仕方ないと思うよ」

 

「ん~、売店で何か買って食うのも勿体ないよなぁ。しゃーない我慢すっか」

 

「「「鶴羽ぁ!」」」

 

「おおぅ、どーしたよ?先輩方。そんな大声出して」

 

「春まで強豪の肩書きに甘えて惰性で部活やってた俺たちがインハイで優勝出来たのは、お前が来てくれたからだ。本当にありがとう!」

 

「俺もそう思ってる。俺たちの少し上の世代は全国に出ていたが、俺たちは県ベスト4止まりってことが続いていたけど“次は勝てるだろ”くらいの甘い考えだった。それをお前が言葉とプレーで俺たちの意識を変えてくれた」

 

「いやいや大袈裟でしょ。前も言ったけど先輩方は元から実力あるんだから、ちょいとやる気出せば同じ結果になってたろうよ」

 

「それでもだ。特に俺たち3年はこれで引退する奴も多い。ユニフォームを貰えなかった奴らも、最後に優勝したチームに居たと言う思い出が出来たからな」

 

「・・・んじゃまぁ、素直に受け取っときますよ、その言葉」

 

「じゃあ少し待つかも知れんが、そろそろ宴会場へ行くか」

 

 

 

「それでは、栄明高校男女バスケ部のインターハイアベック優勝を祝して!」

 

「「「「カンパーイ!!!」」」」

 

いやー、こりゃあ本当にご馳走ばかりだわ。

 

九州の名産を使った料理の数々がコースで出されるが、どれも美味い物ばかりだ。

 

しかもバイキング形式で軽食やデザートもあるので、物足りない奴らはそれにも群がっている。

 

「しかしまぁ」

 

「気持ちは分かるけど」

 

「がっつき過ぎだろ(呆)」

 

運動部の高校生男子の食欲舐めんなとは思ってたけど、流石にこの絵面はなぁ。

 

しかも試合出てない奴らの方が食ってるってのは、どうなんだよ?

 

 

「あはは、凄いね男子って」

 

「いやー、こんな姿を見せられたら、芽生えかけてた恋心も引っ込むって子も居るんじゃない?」

 

ナツ姉とナギちゃん先輩である。

 

「そう言いなさんなって。これが高校生男子、特に運動部のあるべき姿だから生暖かい目で見守ってやってくれw」

 

「うるせー、鶴羽!お前みたいなモテ男には俺たちの気持ちなんか分かってたまるかー!」

 

「そうだそうだ!学校でも鹿野さんや船見だけじゃなく、1年の蝶野さんや島崎さんとも仲良く話してる様な奴に、俺たちみたいな非モテの気持ちが分かるもんかー!」

 

「私だけ呼び捨てなのかい!」

 

・・・優勝したテンションか知らんけど、何かここぞとばかりに日頃の鬱憤をぶつけられてる気がするんだが。

 

「あのさぁ、先輩方も真面目にしてりゃあ並以上ではあるんだから、非モテってのは普段の言動のせいじゃねぇの?」

 

「え?そうなの?」

 

「まぁ、ちゃんとしてれば見てくれてる人は居ると思うけどな・・・多分」

 

「多分かよ!」

 

「そりゃそうだよ。ま、頑張んな」

 

「と、いつもフザけ倒してる雪くんが言ってますが、どうですか、千夏さん?」

 

「はい。本当にキミがよく言えたね、としか言えませんね」

 

「うわ、ヒデェ言い方。ナツ姉俺に何か恨みでもあんの?」

 

「それは雪くんが1番よく分かってるんじゃないかな?(ニッコリ)」

 

「あー、喉乾いた。何飲もっかなー♪」

 

「あ、逃げた」

 

「コソッ ナツ、雪くん1人になったから声掛けるなら今だよ」

 

「う、うん、行ってくる」

 

 

「ねぇ雪くん」

 

「どした?ナツ姉も何か飲むか?」

 

「今は要らないかな。それより話したい事があるから後で会えないかな?」

 

「ん?今じゃ駄目なん?」

 

「うん、余り聞かれたくないから。OKなら後で場所と時間メッセージで送るけど、どうかな?」

 

「良いよ。じゃあ祝勝会終わって一息ついた頃にメッセージくれな」

 

「分かった!じゃあ後でね」

 

そう言ってナギちゃん先輩の元に戻って行った。

 

 

 

ー・・・インハイでアベック優勝決めて約束を果たした。このタイミングで2人きりで話したいってのは、俺の勘違いでなけりゃあやっぱりそう言う事、なんだろうなー

 

でも、今はまだ駄目だ。

 

もしナツ姉がそれを言いそうになったら、ストップ掛けなきゃならない。

 

「普通は飛び上がって喜ぶ所なんだろうけどなぁ。何で自分の気持ちより先に、アイツ(大喜)の気持ちに気付いちまったかねぇ、俺も」

 

 

 

 

 

「22時に4階の展望デッキに、か」

 

時計を見れば21時50分

 

「そろそろ行くとしますかね」

 

 

 

 

ー全国出場決めたら私、雪くんに告白しますー

 

優花さんにはああ言った物の、インハイ出場決めてから色々と慌ただしくて、そんな機会が中々無かった。

 

それが今日、約束だった全国大会アベック優勝を果たした事で、やっとその時間をつくる事が出来た。

 

「もう直ぐ22時、雪くんなら少し早目に来る筈だからもうそろそろ・・・」

 

と思った時

 

「お、やっぱナツ姉もう来てたか」

 

「あ、雪くん来てくれた」

 

「いや、そりゃ来るだろ、呼ばれてんだから」

 

「あ、そ、そうだね。私が呼び出したんだもんね」

 

どうしよう、ドキドキして見慣れた雪くんの顔をまともに見る事が出来ない。

 

でも、黙ってる訳にはいかない

 

「子供の頃にした約束、果たせたね」

 

「おう、まさか最初のインハイで出来るとは思わなかったけどな。

あ、それとホラこれ」

 

「ミサンガ切れたんだね。私のも、ホラ!」

 

「マジか!?こんな事有り得んのかよ、出来過ぎで怖えーくらいだな」

 

「ホントだよね・・・ねぇ雪くん」

 

「んー?」

 

「しつこいかも知れないけど、蝶野さんとは本当に付き合ってないんだよね?」

 

「またそれか。確かに雛の見た目は可愛いと思う。でもそれだけだ。何よりアイツは大喜の事が好きだからな」

 

「大喜くんはどうなのかな?」

 

「それは分かんねぇ、けど意識はしてる、筈」

 

「そっか・・・ねぇ雪くん。私、キミに伝えたい事があるんだ」

 

ードクンっ!と鼓動が跳ねるー

 

「私は雪くんの事が、す「ごめん、ナツ姉」」

 

 

 

ー私は雪くんの事が好きー

 

 

 

そう言い掛けた時

 

「ごめんナツ姉」

 

そう遮られた。

 

あ、あはは、告白する前に断られちゃった、のかな?

 

手を繋いでくれたりハグしてくれたりしたから、雪くんも同じ気持ちでいてくれてると思ったのは、私の勘違いでしかなかったんだ・・・

 

彼はただ子供の頃にした約束を守る為に帰って来ただけで、私の事をそう言う対象とは見てなかったんだ。

 

1人で勝手にそう思い込んで舞い上がってたと思うと、恥ずかしさと同時に悲しさが込み上げて来る。

 

「ご、ごめんね変な事言おうとして。雪くんは約束守る為に栄明に来ただけなのにね」

 

 

 

そう言うナツ姉の目には、見る間に涙が溜まっていく。

 

ーやっべぇ、完全に手順間違えた。嬉し涙しか流させないって誓い破っちまってんじゃねーか、バカか俺は!ー

 

 

「そ、それじゃ疲れてるし戻って寝なきゃね、おやすみ」

 

そう言って無理矢理笑顔を作り、泣き笑いの顔で戻ろうとするナツ姉。

 

「ちょっと待てって、ナツ姉!」

 

その手を掴んで止める。

 

「何?もう用事も無いし、戻らなきゃ皆に変に思われるから離して!」

 

「だから話を聞けって!」

 

「聞く事なんかないよ。雪くんが私の事なんて何とも思ってないって分かったから、もう良」

 

そう言い掛けた時、ふいに抱きしめられた。

 

「そうじゃない。ケジメつけなきゃ駄目な相手が居るんだよ。そうしなきゃ俺は前に進めない。きっちりケジメつけたら、そん時は俺からナツ姉に伝えたい事がある。我儘だってのは分かってるけど、もう少しだけ待ってて欲しい」

 

ーえ?雪くんから私に伝えたい事がある?それって・・・ー

 

ぎゅっと抱きしめ返す。

 

「本当に我儘・・・でも待っててあげる。けど、そんなに長く待たされると、他の人のトコに行っちゃうかもね」

 

「そんな事させねぇ」

 

「分かった。なるべく急いでね?」

 

「あぁ、あっち帰ったら直ぐにな」

 

「待ってるから、ね」

 

 

 

 

 

翌日インターハイから帰った俺が聞いたのは、雛が大喜に告白したと言う事実だった。

 





千夏の告白(未遂)シーンは別の機会にしようと思ったけど、差し込む所に困るので長くなるけど今回入れました。

そして雛が大喜に告白したと聞いて、雪が取る行動は・・・
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