アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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朧気ながら千夏の気持ちに気付いた雪。

しかし親たちへの誓いや大喜の千夏への想いを知っている事が足枷となって、自分の気持ちに迷いが出てしまう。

そんな彼がスマホを取り連絡した相手とは?



幕間~報告と勘違いと気付き~

 

俺が熱出したあの日のナツ姉のあの行動は、少からず俺に対して恋愛的な好意があると見て良いんだろう。

 

それ自体は俺も同じ気持ちをこないだ自覚したばかりだから、素直に嬉しくはある。

 

あるんだが、親たちにした誓いや大喜のナツ姉への想いなんかを考えたら、中々どうしてそう簡単に想いを伝える訳にも行かないんだよなぁ。

 

1人で悶々と考えていても埒が明かないと思った俺は、スマホを手に通りある人にメッセージを送った。

 

ーナツ姉について話があるので、時間が取れたら返事下さいー

 

暫くして返信が来る。

 

ー千夏との間に何かあったのかね?ー

 

そう、俺がメッセージを送ったのは、他ならぬナツ姉の父親である冬樹さんだ。

 

ー単刀直入に本題を言いますと、恐らくナツ姉は俺に対して恋愛的な意味で好意を持ってくれてる気がしますー

 

ーそうかー

 

ってオィイイイーーー!またか、またここで“そうか”なのか!?

去年の話し合いの時と何も変わってないぞ、このオッサンは!

 

ーもし千夏が君を好きだとして、それを受け入れる気はあるのか?ー

 

おぉ、会話に戻ったか、やれやれだぜ。

 

ー少くとも今はありませんし、今後もどうなるかは分かりません。親たちにした誓いもあるし、ナツ姉との約束も果たせてませんからー

 

ー千夏との約束とは栄明バスケ部で全国制覇、それもアベック優勝だったか?正直、かなり難しく、しかも千夏の時間は君より1年短いんだぞ?

チャンスはあと4回、達成出来るかどうかの約束よりも高校生として適切な付き合いをしても良いのでは?ー

 

ー父親がその辺の馬の骨と娘の交際を後押しする様な事を言って良いんですか?(笑)

まぁ冗談はさておきアベック優勝が最大の目的だとしても、どちらかが全国制覇くらいしないと最低条件すら達成出来ないと思ってますー

 

ー最悪、千夏の在学中には叶わんかも知れんよ?それでも良いのか?ー

 

ーそうなったら、自分達にはその程度の力しか無かったと受け入れるしかありませんねー

 

ー君がそれで良いなら構わんが、1つだけ言わせて貰えば君が千夏の告白を断った場合、あの日君が言っていた“千夏に嬉し涙しか流させない”と言う言葉と矛盾する事が起きるのではないか?ー

 

その言葉を耳にして、俺は頭をぶん殴られた様な衝撃を受けた。

 

ー俺は自分の事しか考えてなかったかも知れません。もっとちゃんと考えてみます、すみませんでした。

それとありがとうございました冬樹さん、大事な事に気付かせて貰って。では失礼しますー

 

そう最後にメッセージを送る。

 

「そうだよな、誓いだ約束だと拘ってんのは俺の独りよがりでしかない。ナツ姉の気持ちも大喜の気持ちもちゃんと考えて、その上で俺がどうしたいのか、だよな。やっぱりまだまだ子供だよな、俺も。

流石に親ってのは大人だけあって、視点も違うし視野も広いわー」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふっ、何だかんだ言って彼もまだまだ子供だと言う事か」

 

雪くんとのやり取りを終えた私はそう呟く。

 

「あら、どうしたの貴方、そんな笑顔で?」

 

「いや、今しがた雪くんからメッセージが来たので少しばかりやり取りをね」

 

「いつの間に連絡先交換したの?」

 

「あの話し合いの翌日の朝に、“冬樹さん、連絡先交換しましょう。これから何かと報連相が必要になると思いますから”と言われて半ば無理矢理交換させられたんだよ」

 

「今までも何かやり取りしていたの?」

 

「そんなにはしていないが、先日はインターハイに2人とも出られると報告してきたな」

 

「そう。それにしても貴方が無視せずちゃんと返信してるのね、驚きだわ。何だかんだ言って雪くんを気に入ってるのではなくて?」

 

「人として好ましいとは思っているよ。

ただやはり彼は、私たちにした誓いや千夏との約束に囚われ過ぎているな。

千夏から好意を向けられていると感じながらも、受け入れようとはしていなかった」

 

「千夏も全国出場決めたら告白すると言っていたって優花から連絡あったけど、今のままだと難しそうね。

私からも優花にこの事を話しておくわ」

 

「頑固なのか律儀なのか、もう少し高校生らしくても良いと思うんだがな」

 

「でも、そんな雪くんだから千夏も好きになったんだと思うわ」

 

「そうか、そうだな。あの2人の約束が、出来るだけ早く叶うことを願うばかりだよ」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

メッセージのやり取りを終えた俺は、冬樹さんのメッセージについて考えていた。

 

 

ー1つだけ言わせて貰えば君が千夏の告白を断った場合、あの日君が言っていた“千夏に嬉し涙しか流させない”と言う言葉と矛盾する事が起きるのではないか?ー

 

その通りだ。

 

俺は約束に拘る余り、その約束すら蔑ろにしていたんだ。

 

「それに気付けたのは冬樹さんのお陰だな。

でも考え方によっちゃあ、ナツ姉との交際認めてくれてると都合良く解釈して良いのか?

もしそうなら後の問題は大喜の想いをどうするか?だけになるんだが・・・」

 

ふむむむ、と頭を抱えるが何も浮かばない。

 

「駄目だ!茶でも飲んでリラックスしよう」

 

リビングに降りて麦茶をコップに注いで椅子に座る。

 

ひと口啜ってボーッとしていると

 

「あら、いつにも増してボケッとしてるわね、どうしたの?」

 

と、相変わらず雑な扱いをしてくるママ上。

 

「んー、ここだけの話、自意識過剰でなけりゃあ、ナツ姉が恋愛的な意味で俺に好意持ってそうなんだよ。で、それを冬樹さんに相談したんだけど、仮にそうだとして誓いや約束を理由に断ったら“嬉し涙しか流させない”と言った俺の言葉と逆な事になるんじゃないのか?って言われてさぁ」

 

「あんた、冬樹さんと連絡先交換してたの!?いつから?」

 

「驚くトコそこかよ。まぁ去年の話し合いした次の日の朝、報連相は必要になるからって押し切った」

 

「あんたの行動力はどうなってんの。まぁそれは置いといて、実際あんたは千夏ちゃんの事どう思ってんの?」

 

「親に恋愛事情話せっての?」

 

「親だから聞きたいんでしょ?それに千夏ちゃんからも色々相談されてるからね」

 

「・・・こないだ号泣した日あるだろ?

あの時ナツ姉に抱き締められて心ん中全部見透かされてる感じがして、あぁ俺はこの人が好きなんだなって自覚した」

 

「それを千夏ちゃんに言ってあげないの?」

 

「それなんだよなぁ。

冬樹さんとのやり取りで考えてたんだけど、インハイって事は全国大会に出る訳じゃん?

でも約束したのは全国制覇だからそれ果たさなきゃってのと、俺とナツ姉を信じてくれって啖呵切ったのが俺の中で引っ掛かってるんだよ」

 

「なる程、あんたの言い分は分かった。でもね、そもそもあんたはそこを勘違いしてる」

 

「は?何をだよ?」

 

「あんたがあの時言ったのは、端的に言えば”千夏ちゃんを悲しませない”って事であって、“好きにならない”とか“交際はしない”って事は言ってないのよ」

 

「・・・ゑ?」

 

「それに栄明で全国大会アベック優勝するって約束も、“出来なかったら告白も交際もしない”って条件なんか付けてないでしょ?そもそもが子供の頃の約束なんだし、まだ恋愛感情も無い頃の話だからね」

 

そう言われて、あの黒歴史とも呼べるクソ恥ずかしい宣言を思い出す

 

ー冬樹さん、いやここに居る皆に宣言する。俺は何があっても嬉し涙以外でナツ姉を泣かせたりしない。俺の魂と心に誓って絶対にだ!ー

 

・・・確かに嬉し涙以外でナツ姉を泣かせないとは言ったが、好きにならないとか付き合わないとは言ってない。

 

更に冬樹さんのそれをどう証明するのか?との問いに対しても、「俺と千夏を信じてくれとしか言えませんね」としか返していない。

 

あれ?

そうすると何か?

俺は“自分で言った言葉を拡大解釈した上に、過剰な縛りを勝手に掛けてた”って事か?

 

「・・・完全に馬鹿じゃん、俺。

自分で自分に無駄な縛り掛けてただけじゃねーか」

 

「分かった?あんたの約束を守ろうとする姿勢は良い事だと思うわよ。でもね、それに対して固執する余り、もっと大事な事を見落としてたのも確かなの。

それに気付けたんだから、後は自分がどうしたいかをちゃんと考えなさい。私からあれこれ言うのはそれこそ筋違いだしね」

 

「分かった、ありがとう母さん。人の顔見ていきなりいつもよりボケッとしてるなんて酷い言い方するだけの人でなしじゃ無く、ちゃんとした母親だったんだな」

 

「あんた本当にひっぱたくわよ・・・ま、いつもの調子になったみたいだし、今回は見逃してあげるわ」

 

「あぁ、取り敢えず俺の中での踏ん切りは付いた。

後1つだけケジメ着けなきゃならない事があるから、それをキッチリ終わらせたらナツ姉との関係もハッキリさせる」

 

「そう。千夏ちゃんも色々と考えてるみたいだし、余り待たせ過ぎないようにね」

 

「分かってる」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ようやくあのバカ息子も自分と千夏ちゃんの気持ちとちゃんと向き合う覚悟が出来たみたい、冬樹さんのお陰ね」

 

「そう、あの雪くんがやっとそう思える様になったのね」

 

「あの子の話聞いてたら、冬樹さんが遠回しに後押ししたくれてる様に思えるんだけど、そこの所はどうなの?」

 

「なんだかんだ言って父親として心配してるのは確かだけど、それはそれとして娘の悲しむ顔は見たくないって感じかしらね」

 

「反対してる感じじゃないなら大丈夫かしらね?

それと雪が言うにはあと1つケジメを付けなきゃならないって話だけど、多分大喜くんの事でしょうね」

 

「私は直接会ってないからよく知らないけど、どんな子なの?」

 

「由紀子の息子だけあって礼儀正しい良い子よ。

以前BBQに呼ばれた時も、率先して準備や片付け手伝ってくれてたし。

千夏ちゃんに好意があるのも確かだけど、私から見ると“年上のお姉さんに憧れてる”様に見えたのよね」

 

「つまり“好きではあるけど、本当の意味での恋愛感情じゃない”って事?」

 

「まぁ私にはそんな感じに見えたってだけで、本当に女性として好きなのかも知れないけどね」

 

「なる程ね。でもそれは私たちが口を挟む事じゃなくて、あの子達が決める事だしね」

 

「そうね、でも雪が覚悟を決めた以上、遅かれ早かれ答えは出るでしょうから、私達はそれを待ちましょう」

 

「本当に両片想いと言うのも、端から見ると面倒臭いわよね」

 

「何にしてもあの子達にとって、良い結末が訪れる事を祈ってましょうか」

 

「私達にとっても、だけどね」

 

ー子供達にとって、1番良い未来になります様にー

 

私達は、そう願わずにはいられなかった。

 

まぁ雪なら

 

ー気に入らねぇ未来なんざ願い下げだ!俺たち皆が楽しく幸せになる未来を掴み取ってやらぁ!!ー

 

って言うだろうけどね。

 

 





雪くんは約束の中身を誤認していた事に気付かされたので、色々と抱え込んでいた物から解放されました。

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