アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

37 / 85

突然のハプニングに見舞われた千夏の誕生日。

そして新学期と共に、最初のイベントが始まる。


EP29 文化祭の準備とちょっとしたトラブル

 

「じゃあ我がクラスの出し物は、蝶野雛主演で“白雪姫”に決まりました!」

 

「まー、まかせんしゃい!どんと箱舟に乗ったつもりで」

 

「箱舟?」

 

「ぶはっw、は、箱舟てお前、マジか雛。それを言うなら大船だろww」

 

「///ちょ、ちょっとしたミスよ!」

 

「ハイハイ。オイ、皆大丈夫かコイツで?不安しかねーんだが」

 

「まぁ、人の視線に耐えられる度胸と容姿を考えたら、雛が適任だと思うよ」

 

「それはまぁ分かるんだが、雛よ、セリフ覚えられんのか?」

 

「覚えるよ!大丈夫だよ!」

 

「まぁ最悪、舞台袖にカンペ用意しときゃ良いしな」

 

「雪!あんたちょっと失礼過ぎじゃない!?」

 

「いやぁ、だって、なぁ?お前もそう思ってんだろ?大喜よ」

 

「え!?俺に振るの!?・・・うーん、大丈夫だと思うよ?何だかんだ言っても、雛の集中力は凄いと思うし」

 

「・・・ほーん、ま、お前がそこまで言うんなら大丈夫なんだろ。頼むぞ主演」

 

「まっかせなさい!それと大喜!クラス代表なんだからしっかりリードしてくれるよう頼むよ!」

 

「そうは言っても俺は雑用だよ。劇は監督の島崎さんが仕切るし」

 

「何言ってんの。にいなちゃんに任せないで、問題が起こっても円滑に進むようにしてくれないと」

 

「その前に問題起こすなよ。まぁ俺も普通に楽しみだし、できる限りサポートはさせて頂きますよ」

 

「猪股ー。これ参加者名簿のプリント、2年の先輩に提出してくんねぇ?」

 

「分かった。ちょっと行ってくるわ」

 

「よろしくー」

 

「よく働くねぇ。雑用も体力作りと思ってそう」

 

「あのさ、別に大喜に聞いた訳じゃないんだけど、言ったんだね、告白」

 

「えっ?!?」

 

思わず大きな声が出て、それを聞いたクラスメートが何事か、とこっちを見てくる。

 

「声でか・・・」

 

「発声練習を」

 

そう言って誤魔化す。

 

「大丈夫?大喜は千夏先輩が好きで、保留にされてるのに」

 

「お節介さんだねぇ。心配してくれるのかい?ま、仕方ない。好きって気持ちに気付いちゃったんだもん」

 

「因みに雪も知ってる。返事保留しといて千夏先輩に対して頑張るってのを知って、ぶちギレてたし」

 

「えぇ!?大丈夫だったの、それ?」

 

「自分で怒り抑えてたから大丈夫とは思う。俺は蝶野さんの選択を尊重するけど、雪みたいに大喜に対して怒る人も居るって事は覚えといて」

 

「うん、そうだね。雪にも直接言っておく」

 

「雛ーっ」

 

「ほいほーい、じゃあね、心配してくれてありがと」

 

ーそれでも辛いもんは辛いだろー

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

2年の教室に参加者名簿を持って、千夏先輩のクラスに来た。

 

「失礼します」

 

「大喜くん、どうしたの?」

 

「佐々木先輩にプリントを提出に・・・」

 

「今文化祭の準備で、みんな出払ってるんだよね。名簿だよね?渡しとこっか?」

 

「お願いします」

 

「入らないの?」

 

「!あー、失礼します」

 

ー上級生の教室って緊張する・・・ー

 

「千夏先輩良い席ですね、1番後ろの窓側」

 

「今日ちょうど席替えをして」

 

「俺のクラスもしました。新学期で」

 

「大喜くんは何処の席なの?」

 

「あ、斜め前です」

 

「おしいね」

 

「因みに先輩の隣は雪で、前が雛です」

 

「1年違えば皆と固まってたんだ、楽しかったろうなー。雪くんと大喜くんは居眠りしてそうだよね」

 

「そんな事はー」

 

「それで列ごと当てられるのに、私と蝶野さんで起こしても2人とも起きなくて。先生に怒鳴られて飛び起きて答えるけど、間違って怒られるの」

 

「隣が雛だとなぁ、間違った答え教えられてどっちにしても怒られるのが目に浮かびます。

で、次に当てられるのは雪なんですけど、アイツは要領も成績も良いから俺が怒られてる間に起きて、しれっと正解するんですよねぇ」

 

「ふふっ、ありそう。それで“大喜よぉ、ちゃんと起きて授業受けなきゃ駄目だぞ?学生の本分は勉強なんだからよ”って言うんだろうね」

 

「うわっ、言いそう。そんな雪を見て雛が、“あんたも寝てたくせによく言えるわね”ってツッコんでクラス中が笑いに包まれると思います」

 

ーその場面が頭に浮かぶ。

叱られて頭抱えてる俺の後ろでヤレヤレと呆れ顔をする雪。それを見てツッコミを入れる雛と一連のやり取りを見て笑う千夏先輩。

あぁ、本当に楽しかっただろうなー

 

「皆が飛び級してくれたらなぁ」

 

「無茶言わないで下さい。仮に出来るとしても雪くらいのもんです!」

 

「鹿野ー」

 

「あ、じゃあ俺戻ります」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あー、今日も疲れたー、腹減ったー。

 

「たーだいまー」

 

ん?なんか話し声するな、お客さんか?

 

リビングのドアを開ける。

 

「雪くん、お久しぶり」

 

「あれ?春菜さん、何故日本に?・・・はっ!この前の旅館に一泊した件なら、ナツ姉には指一本触れてませんから!信じてください!!」

 

勢いのまま土下座する。

 

「あらー、それは千夏も残念だったわね」

 

「ちょっと、お母さん!////」

 

「春菜も余りからかわないの」

 

「ごめんごめん。千夏のおじいちゃんが倒れてね、飛行機に飛び乗って来たの」

 

「え、じっちゃん大丈夫なん?」

 

「命に別状はないんだけど、来月手術する事になってね。暫くこっちにマンスリー借りて住もうと・・・」

 

「だからね、千夏ちゃん暫く春菜と一緒に暮らすから」

 

「へ?」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ありがとね雪くん。荷物運びお願いしちゃって」

 

「問題ないっすよ。どうせ暇だし、母さんに手伝えって言われるのは分かりきってたしね」

 

「でも良かったわね、良いマンスリーマンション見つかって」

 

「そうなの。流石に鶴羽家よりは学校から離れちゃうけどね」

 

「おじいさんの手術までの1ヶ月だとしても、寂しくなるわぁ。ねぇ雪?」

 

「ん?あぁそうだな。寂しいよーナツ姉ー(棒)」

 

「おや、珍しく素直じゃないの」

 

「俺はいつでも素直だが?」

 

「「「え?」」」

 

いや、本当に何なのこの人たち?久し振りに会った春菜さんまで母さんやナツ姉と同じ反応するってどうなってんだよ・・・

 

「・・・酷くね?」

 

 

 

 

「さて、取り敢えず必要な物は運び終えたし私達は帰りましょうか、雪」

 

「ん、分かった」

 

「本当にありがとうね、2人とも」

 

「何か要るものがあったら遠慮せず言ってね、春菜。荷物持ちに最適なのがここに居るから」

 

「おい」

 

「何かあったらお願いするわ、優花に雪くん」

 

「じゃあ今日は帰るわね」

 

そう言って帰路に着いた。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

教室にて劇の練習が連日続けられている。

 

「思ったより様になってるな雛・・・脚本のアレンジが気になるけど」

 

「人前で堂々と出来るのも才能だよな」

 

「確かに。匡の作る衣装も期待出来そうだしな」

 

「人はやらないといけない状況におかれると、成長する事もあるんだよ」

 

ー皆役割を熟してて何より・・・ー

 

「誰か倉庫Bのカギ持ってないー?」

 

「それならさっき谷口が持ってたぞ」

 

「サンキュー」

 

「ガムテ余ってない?無くなりそう」

 

「買っとくよ」

 

「机何個要るんだっけ?」

 

「8つ!」

 

「あ、これから安全確認集会・・・」

 

「俺行ってくるよ」

 

 

 

「猪股くんって意外と頼りになるよね。直ぐ行動してくれるし」

 

「相談もしやすくて助かるわ」

 

そんなクラスの女子の感想を聞いて嬉しそうな顔をする雛を見て

 

「大喜くん、大人気ですねぇ?告白したからってうかうかしてられないんじゃないの?」

 

「なっ!大丈夫だもん。大喜は千夏先輩しか目に入ってないから!」

 

「それはそれでどうなんだ?とは思うがな。

ま、お前が待てるってんなら、俺もこれ以上言う事ぁねーよ。俺もアイツを焚き付けといたから、そんな遠くないうちに答え出すだろうよ」

 

  

安全確認集会を終えた俺は、必要なものを買い足そうと購買部に行くと千夏先輩が居た。

 

「千夏先輩のクラスは喫茶店でしたっけ?」

 

「うん。ウェイトレスの衣装とか凝ってるんだよ」

 

「ウェイトレス・・・似合いそうですね」

 

「まぁ私はクラス代表だから接客はしない予定だけど。ただ、何故か体格の良い人が着るような執事服も用意されてたんだよね」

 

「雪くらいのサイズですか?」

 

「あ~、そうかも。うちのクラスにそんな大きい人居ないのになぁ」

 

「どっかから紛れ込んだんじゃ?」

 

「そうかも。大喜くんのクラスは白雪姫だっけ?蝶野さん主役で」

 

「俺も全体見る役なんで、劇には出ないですけどね」

 

「え、王子役なのかと思った」

 

「まさか!俺には無理ですよ」

 

「そうなんだ。相性的にも良いと思ったんだけど」

 

「王子なら雪の方が・・・」

 

「うーん、雪くんは王子様と言うより、王様だよね。しかも暴君」

 

 

ーあ~ん?誰に向かってそんな口利いてんだ?この愚民が!!ー

 

 

「何か今、物凄くしっくり来るイメージが浮かびました」

 

「あー居た、大喜!先生が探して・・・あ、こんにちは」

 

「こんにちは。じゃあ頑張ってね」

 

「千夏先輩も」

 

 

 

 

それからは準備に追われ部活もやってと、目まぐるしく日が過ぎて行った。

 

 

 

「雛、これコピーしてきて」

 

そう言われて進路資料室に向かう。

 

「失礼しまーす。あ、こんにちは千夏先輩」

 

「こんにちは、蝶野さん。コピー機?」

 

「あ、ゆっくりで大丈夫です。先輩のクラスは喫茶店やるんですよね」

 

「うん」

 

「大喜が言ってました・・・そう言えば私、大喜に告白したんです」

 

「そうなんだ!大喜くんは何て?」

 

「いきなりだったからちょっと待って欲しい、って言われて保留中です」

 

「そっか・・・じゃあ、“あんまり待たせると他の人のトコに行っちゃうかもね”って脅かしてみたら良いかも」

 

「えぇ?千夏先輩も結構言いますね」

 

「まぁ同居してる幼馴染みがあんな人だから、その悪影響かも(苦笑)

でも一時的に今は別の所に住んでるんだ」

 

「え、何でですか?」

 

「私のおじいちゃんが手術する事になってね。その為にお母さんが一時帰国してて、手術が終わるまでの1ヶ月間だけだけど・・・」

 

「へぇ・・・そうだったんですね。おじいさんの手術、無事成功すると良いですね!」

 

「うん、ありがとう。蝶野さんも良い返事貰えると良いね!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

ーそうか、蝶野さんは大喜くんに告白したのかー

 

「待ってるからね、雪くん」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「集合ー。前から調整してたんだが、土曜日に練習試合が決まった」

 

「相手は何処っすか?」

 

「佐知川高校さんだ」

 

「マジ?」

 

「やった」

 

「でも兵藤さん居ないしなー」

 

「3年生が抜けたとは言え、層は厚い。来年のインターハイも、佐知川さんに勝たないと出場出来ないと思え」

 

「はい」

 

「丁度良かった。あのマッシュくんと戦ってみたかったんだよね」

 

「遊佐くん?」

 

「そう。あの冬場はタートルネック着てますみたいな顔の」

 

「どんな顔だよ」

 

「大喜、何緊張してんだよ。どうせ1回負けてんだから、捨て身で向かって行けよ」

 

「頑張ります」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「大喜、聞いたよ。土曜日練習試合だって?」

 

「走るか台本読むか話すかのどれかにしろよ」

 

「この方が効率良いでしょ。運動しながらの方が暗記には良いって聞くし」

 

「器用な奴だな・・・」

 

「土曜日は新体操部休みだけど劇の練習で学校来るし、その時間だけ応援来たげるよ」

 

「良いよ、ただの練習試合だし」

 

「でも重要な相手なんでしょ?」

 

「そうだけど」

 

「前に大喜が負けた相手だって・・・」

 

ーそう言や雛、見に来てたんだったー

 

「そんな相手だったら黄色い声援が必要でしょ?」

 

「言い回しが古いな、黄色い声援て」

 

「それに、好きな人の頑張ってる姿は見たいもん」

 

「いきなり何を言ってーっ!!」

 

と、振り向いた先に居た雛の顔は真っ赤だった。

 

そんな恥ずかしく感じるのに、わざわざ言ってくれるのか・・・

 

「急に振り返らないでよ!前見て走らないと事故るでしょ!」

 

そう言って台本で叩いてくる。

 

「痛っ痛っ、分かったって」

 

そんな事を言いながら、俺は悪い気がしなかった。

 

 

「なぁ、針生よ」

 

「どうした西田?」

 

「あの2人、あれで付き合って無いんだよな?」

 

「まぁ今んトコはそうらしいな」

 

「これからどうなるかは分からん、と?」

 

「そーだな」

 

「大喜め、戻ってきたら筋トレ倍にしてやる!」

 

「そんな事やるからモテないんだよ、お前は・・・」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「このりんごの艶、いいじゃん!」

 

「100均で勝ってきたやつに、雛が色塗り直したんだよ」

 

「色に深みがない、とか言って」

 

「そう言えば雛は?」  

 

「教室で劇の練習してると思うけど」

 

「そっか」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「雛ー、何か手伝ー・・・」

 

そこには机を並べてベッド代わりにし、その上で横たわる雛の姿があった

 

「召されてー・・・」

 

「ないわ」

 

ギロっと睨まれる。

 

「劇の練習してたの!」

 

「あぁ、最後の目覚めるシーンか」

 

「このシーンだけ、どんな顔していいのか分かんなくて」

 

「練習付き合ってやるよ」

 

「え」 

 

「相手が居た方がイメージしやすいだろ」

 

「そうだけど・・・」

 

台本を手に取り、場面の確認をするとそこには

 

ー王子(キスをする)ー

 

と書かれていた。

 

「しねーよ!?」

 

「わかってるわよ!!」

 

「・・・それで、何がわからないんだよ?」

 

「死の淵から蘇る時の表情って何?」  

 

「それは確かに。しかも王女に騙されて毒林檎食べさせられてる訳だしな。白雪姫がその事知ってたとしたら・・・」

 

「許すまじ王女。そなたの首いただくぞ、刀を持てい」

 

「殺意が高過ぎる。分かった!目覚めたら王子が居たんだから、ときめいて・・・」

 

「・・・あんた誰?」

 

「うーわ、ゴミを見るような目・・・警戒心も高い」

 

「分かってる、これじゃ駄目だって事は・・・どうしよう、大切なシーンなのに。ラストで1番良い演技しないと」

 

「雛ってやっぱり凄いよな。そんなに考えなくても出来ちゃう事なのに。そこまで真剣に悩んでさ、台本もいつも持ち歩いて読み込んでるし」

 

「引き受けたことは、全力でやりたいもん。大喜だってそうでしょ?」

 

「え?」

 

「教室で劇のことやってると思ったら、次の瞬間には体育館で部活してるんだもん。大喜もホント良くやってるよ・・・って、みんなも言ってたよ!

そんな事より練習しよ!こういう事は流れでやった方が良いかも」

 

「じゃあ前のセリフ読むよ」

 

ー自分的にはいっぱいいっぱいだったけど、役割を熟せてたなら、良かったー

 

「白雪姫、どうか、目を覚ましてくれ・・・はい、キスされました」

 

 

 

しぃんとした教室。

 

 

 

「雛・・・?そういう演技?」

 

「・・・ダメだ、大喜と本当にしたところ、想像しちゃったじゃん////」

 

「はあ!?////」

 

 

 

 

ー大喜と本当にしたところ想像しちゃったじゃんー

 

雛にそう言われてドキドキが止まらない。

 

言った雛自身も真っ赤になって心なしか目も潤んで見える。

 

・・・でも

 

「しないよ。雛の告白に応えてないのに出来る訳無いだろ」 

 

「分かってるよ、するって言われた方がドン引きだわ!

けどドキドキはしたでしょ?これも雛様の戦略なんだから!」

 

そう言って笑顔を作り、教室から出て行く雛

 

 

 

「あーっ、もーーー・・・もう・・・」

 

こんな事が続くと思うといつまで堪えられるか、答えを早く出さないとと思う。

 

「雪だっていつまでも待ってくれないだろうしな」

 

 

 

 

一方その頃の雪

 

 

「おーし、大道具担当諸君!当日は自由時間を楽しむ為に、ちゃっちゃと終わらせるぞー!」

 

「「「「おぉー!」」」」

 

「さて、にいなちゃんや、背景の森や小屋はこんなもんで良いか?」

 

「そうだね。後は・・・鏡をどうしようか。本物は万が一倒れたら危ないし」

 

「検索してみたら50cm✕100cmのミラーシールってのが2000円くらいだけど、わざわざ買うのもなぁ。いっその事ダンボールをカラースプレーでシルバー塗装して、鏡と会話する時は黒子役が引っ張って鏡役が顔出すってのはどうよ?」

 

「それが1番簡単かな?取り敢えずそれでやってみて他に良い案があったら、適宜変更すれば良いと思う」

 

「おっし、そんじゃあやりますかね!」

 

パァンと手を叩く。

 

「やっぱり鶴羽くんも猪股くんと違う意味で頼りになるよね」

 

「そうそう、基本的に何でも率先してやってくれるし」

 

「でも、競争率高いんだよね~」

 

「しかもあの鹿野先輩と仲良いし、付き合ってるのかな?」

 

ーやっぱり雪は人気あるんだなー

 

そんな事を思っていると

 

「あ、笠原くん、雪くん居るかな?」

 

と、今話に出ていた千夏先輩に声を掛けられた。

 

船見先輩も一緒なのは部活絡みだろうか?

 

「居ますよ。おーい、雪!お客さんだぞー」

 

「あーん、客ー?って、ナツ姉にナギちゃん先輩?」

 

「あのね、雪くんって当日クラスでしなきゃ駄目な事ってある?」

 

「いや、一応今やってる大道具作りが終わったら、基本的には自由時間だけど?」

 

「お願い雪くん!当日少しでも良いからウチのクラスを手伝ってくれない?」

 

そう言って手を合わせて頭を下げるナギちゃん先輩。

 

「落ち着け、ナギちゃん先輩。先ず何がどうなってんのか教えて貰わねーと、手伝うも何も無いだろ」

 

「えーっとね、連絡の行き違いがあってクラスと部活の担当が被った子が数人出ちゃったの」

 

「それで私と渚がカバーする事になったんだけど後1人どうしても足りなくて、担任に言ったら誰かに複数回入って貰うか最悪時間短縮しても良いから、とは言われたんだけど」

 

「なら短縮すりゃ良いんじゃねーの?クラス処か学年違う俺んトコまで来なくても良いだろ」

 

「だって皆頑張って準備してるんだよ!?高2の文化祭は今年だけだし、来年は違うクラスになる子も居るんだから、やりきったって思い出が欲しいじゃん!」

 

「いや、そりゃ分かるけどよ・・・にいなちゃんや、当日俺抜けても大丈夫なん?」

 

「うーん、大道具が完成すれば後は本番で設置と撤去だけだから他の大道具担当の人たちだけで大丈夫だけど・・・一応いつでも連絡取れる様にしてくれてればよっぽどの事が無い限りは大丈夫だと思う」

 

「だとよ」

 

「じゃあ今から衣装合わせしに行こう!一着だけ執事服が混じってて、それも大きいサイズだから他に着られる人が居なくて困ってたんだ」

 

「はぁ?執事服だぁ?」

 

それを聞いていた女子が

 

「先輩方!それは今手が空いてる私たちも見に行って良いんでしょうか!?」

 

と訪ねると

 

「勿論!迷惑掛けてるのはこっちなんだし、当日も来てくれたらちょっとくらいサービスするし。ね、ナツ」

 

「うん、そうだね。じゃあ行こうか、雪くん」

 

「ま、しゃーない。ちょっと行ってくるからその間頼むわ皆。戻ってきたらまたやるからよ」

 

そう言って興味深々な女子数人も着いて行った。

 

 

 

 

暫くして、女子たちが這々の体で帰って来た。

 

蝶野さんが

 

「ちょっとあんたたち大丈夫!?何があったの?」

 

との問いに

 

「こ、これ・・・」

 

とスマホを見せる。

 

それを見た女子全員が、顔を赤くしてへたり込んでしまった。

 

それを後から帰って来た雪が見て

 

「そんなに腰抜かす程変だったか?

ヘコむなー(´・ω・`)」

 

と、しょんぼりした顔で言っていたが、多分違うんだろうな。

 

 





普通に考えたら、他学年どころか他クラスにすら、人の貸し出しなんか頼まんよね。

まぁ文化祭だし、楽しけりゃ良いんじゃね?って事で。


オマケ

女子からスマホを見せて貰うと、これでもか!ってくらいに執事服が似合ってる上に、カメラに向かって笑みを浮かべて流し目で撮られている雪がそこに居た。

「え、何これ?◯執事?そりゃあ女子が腰砕けになる訳だ・・・」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。