アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

39 / 85

小中をアメリカで過ごした雪にとって学校挙げて行う文化祭は初めての体験なので、ワクワクが抑えられないのだった。


EP31 文化祭

 

さあ、ついに明日に迫って来ました文化祭!

 

向こう(アメリカ)じゃ小規模なイベントがちょいちょいあるが、日本の文化祭みたいに学校を挙げてってのは無かったから、実質初めての体験なんだよな。

 

「あ~、楽しみが過ぎる!」

 

「スゲー浮かれてるな、雪」

 

「お、大喜か。

そうなんだよ、アッチじゃあこんな学校挙げてのイベントって無かったから、俺にとって初めての文化祭なんでテンションもあがるってもんよ!」

 

「へー、そうなのか。なら目一杯楽しまなきゃな!ボソッ執事とかw」

 

「ほ~う、俺をからかうとは良い度胸じゃねーか大喜?」

 

「あ、じゃ、じゃあ俺は職員室に用事あるからこれで!」

 

そう言って、そそくさと出て行く大喜を見送る。

 

別に怒ってないんだがなぁ、まぁ良いか。

 

 

 

雪から逃げ出して職員室に来たんだけど・・・

 

「前日に言われても困りますよ!!」

 

「猪股、頼むよー。10分開演早めてくれれば良いだけだから。1-Bは15時半から、っと」

 

「皆の10分を何だと思って・・・」

 

ーちゃんと確認しろよなぁ。でもこの慌ただしさも文化祭前日って感じがするなー

 

そう思って歩いていると千夏先輩と渚先輩を見掛けた。

 

それを遠巻きに見てる2年生の男子が

 

「お前、明日鹿野さん誘うんじゃないの?」

 

「無理に決まってんだろー、俺なんか相手にされないよ」

 

「そもそも忙しそうだしな」

 

「そうそう。俺は眺めてるので十分だし、そもそも競争率ハンパない上に、今年はド本命が居るからなぁ」

 

「あー、1年のバスケ部の奴か。後輩に聞いた話じゃあ、普段は飄々としていておちゃらけてるけど、文武両道で面倒見も良いって言ってたからな」

 

「バスケ部が全国制覇したのも、アイツの影響が大きいらしいしな」

 

「居るんだな、そんな漫画の主人公みたいな奴」

 

「まぁ鹿野さんは無理ゲーとしても、気になる女子とはお近付きになりたいよなー」

 

うん、まぁそうだろうな。現状で千夏先輩に1番近いのは雪なんだし、他の男が割って入る余地なんてある訳がー・・・って、あれ?それだと俺もって事じゃないか?そう思った時

 

「あ、後は新体操部のインハイで3位になった子も可愛いよな!」

 

「あー、分かる分かる!あの子も彼氏居ないみたいだし、声掛けるだけ掛けてみるか?」

 

ーは?雛をナンパする気か?この人たちー

 

それを聞いて無性にイライラして腹が立ってしまう。

 

「でもこの前バド部の練習試合で、同クラの男子を応援してたって西田が言ってたから、チャンス無しかもな」

 

「そうだよなー、あんな可愛い子だし、彼氏が居てもおかしくないよなー」

 

ーえ!西田先輩何を言ってるんですか!?同クラだと俺か匡しか居ないってバレるじゃないですか!ー

 

俺の顔なんか知られてる筈も無いのに、その場から慌てて離れて教室に向かう。

 

「おっ、大喜。教室に入る覚悟は出来てるか?」

 

「教室に入るのに覚悟?」

 

「見たらびっくりするぞ!」

 

「わあっ、可愛いー!」

 

そこには白雪姫の衣装を纏い、髪を下ろしていつもとはまるで違う雰囲気の雛が居た。

 

「最高の仕上がりじゃない!笠原くん」

 

「何とか間に合ったな」

 

「リーダーも何とか言ってあげてよ」

 

「あ、えーと、うん、か、可愛いと思う」

 

「あ、ありがとう・・・そうだ!髪巻いたりしよーよ!」

 

「もう、折角褒めてくれたのに逃げなくてもー」

 

そう言って道具をバッグから出そうと近付けば、雛の顔は真っ赤だった。

 

ー見せる方も限界だったのか。猪股くんも人が居る所で素直に可愛いって言うのは雛を意識してるんだろうし、これは文化祭で何か起こりそうー

 

 

そして文化祭当日を迎える

 

 

 

『これより第53回、栄明祭を開催致します』

 

さあさあ始まりました、文化祭!

 

いやー初めての体験だし、オラ、ワクワクすっぞ!

 

ナツ姉んとこには11時までに行けば良いし、ウチの劇は15時半からって事だから15時には上がれば余裕で間に合うな。

 

「何はともあれ模擬店だよな!何食おっかなー」

 

たこ焼きと焼きそばは鉄板だよな。お?ベビーカステラまであんのか、買いだな。

 

たこ焼きそばを平らげて、ベビーカステラは歩きながら摘まむ・・・んだが、飲み物無いとちとキツいな。

 

「食らえっ、必殺バタフライリング!」

 

「ん?雛の声か、何やってんだ?」

 

声のする方を覗いてみると輪投げをやってた。

 

全部外してもう一回やってたが(笑)

 

校舎内をあちこち適当にぶらついてたら10時過ぎてたから、そろそろナツ姉んとこ向かいますかね。

 

 

「雛の輪投げ結局全部外れてたな。楽しんでるのは何よりだけど、緊張とかしないのかね?」

 

「いや、緊張してるからこそ、はしゃいでるんじゃない?

 

「それに劇が15時半からだし、15時には準備するとなると、それまでに遊び倒さないとって所だろ。

俺これから巡回なんだけど、大喜は何してんの?」

 

「取り敢えず翔たちのトコ行って、それからは特に何もないから適当にぶらつこうかと」

 

「そうか、じゃ時間に遅れない様にな」

 

「うん、分かってる」

 

匡と別れて歩いていると、見た事のある顔とすれ違う。

 

「ん?」

 

「あ・・・」

 

「岸くん?」

 

「いのまた大喜!!聞いたぞ!遊佐くんに勝ったらしいなっ!俺とも勝負しろ!」

 

「いや、今文化祭・・・」

 

「じゃあ!千夏さんのクラスまで案内しろ。迷った、友だちともはぐれた」 

 

「イヤだ」

 

「何だと!?お前のせいで連絡先も教えて貰えなかったんだぞ!」

 

「それは負けたからだろ」

 

「何だ?珍しい組み合わせだな」

 

「あ、針生先輩に花恋さん」

 

針生先輩がモデルの彼女と一緒に居るのに対し、俺たちは男同士で醜い争いを繰り広げている事が恥ずかしくなった。

 

「何でそんなに揉めてるの?」

 

「花恋姉さん。こやつが2-Bに案内してくれないのであります」

 

「なら丁度いくとこだから、着いてくれば?」

 

「良いんすか!」

 

「けど、刺激が強いから気をつけてね」

 

「「え?」」

 

2人について行った先には、メイド服を着て忙しなく動き回る千夏先輩の姿があった。

 

そして教室内に居る男性のほぼ全てが、千夏先輩に見惚れていた。

 

「かはっ!!」

 

「岸くん!!」

 

「お前、よく立っていられるな・・・さすが遊佐くんに勝った男」

 

「俺だってギリギリのところだよ」

 

ー「「可愛すぎるだろ!!」」ー

 

「面白い子たちだね」

 

「若けぇな」

 

「ふいうちだ・・・ウェイトレスはやらないって言ってたのに・・・あんな先輩の姿を見れて嬉しいけど、これはちょっと良くないんじゃ・・・」

 

そう思った矢先、やっぱり声を掛けられていた。

 

「ねーねー、君、彼氏とかいるの?連絡先教えてよー」

 

「えっ」

 

声を掛けられて困惑してる千夏先輩を見て

 

ー助けなきゃ!ー

 

そう思って立ち上がろうとした時

 

「大喜、大丈夫だ」

 

「えっ?」

 

「ここ、そういうお店じゃないんですけど。彼女に手ぇ出さないで貰えます?」

 

「渚っ」

 

ー良かった、守ってくれる人が居てー

 

「彼・・氏・・・?」

 

「いや、あの人は女バスの、」

 

「いやいや、君もボーイッシュ系で結構良いじゃん。2人とも連絡先教えてくれない?」

 

「いや、だからそういう店じゃないって」

 

あの席の男たち、しつこすぎだろ!

 

「針生先輩、やっばり助けに・・・」

 

そう言った時、暗幕で仕切られた裏から執事が出てきた。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

裏で休憩してたら何やら騒がしくなったのでそっと覗いたら、ナツ姉とナギちゃん先輩がチャラ男どもにナンパされていた。

 

よし、処すか!

 

「おやおや、これは一体何の騒ぎです?」

 

その一言で場が静まり返った・・・直後、教室や廊下に居た女子から、一斉に黄色い声が飛ぶ。

 

「キャ~~~ッ、執事、執事よ~ッ!」

 

「文化祭の喫茶店とは思えないクオリティーだわ!」

 

「写真、いや、動画よ!」

 

等と大騒ぎである。

 

「いけませんねぇ、レディーがそんな大声を出しては。はしたないですよ?

それと写真や動画を撮るのは構いませんが、SNSには上げない様にお願いしますね、お嬢様方?」

 

そう言って唇に人差し指を当て、「しーっ」のポーズをとる雪・・・雪だよな?

 

「「「は、はい・・・分かりました////」」」

 

しかもウィンク付きなので、破壊力が半端ない。

 

事実、殆どの女子がへなへなと座り込んでしまっている。

 

「さて、先程から渚お嬢様が仰っていた通り、当店のウェイトレスには私的なお声掛けはご遠慮いただいております。オーダーがお済みではないようですので、私が代わりにお伺いしても?」

 

と、笑顔なのにとてつもない迫力で迫る雪。

 

「え、あ、は、はい。コーヒーお願いします」

 

「ホットとコールドが御座いますが、どちらがよろしいですか?」

 

「ホ、ホットで・・・」

 

ガタガタと震えているので、まだ暑さが残っているのにホットコーヒーをオーダーする男たち。

 

「畏まりました。ホットコーヒー3つお願いします。私がお運び致しますので、千夏お嬢様は花恋お嬢様のオーダーをお願いします(ウィンク)

(*^ー゚)」

 

「え、あ、うん、分かった////」

 

「あの執事の人が、千夏さんの本当の彼氏?」

 

「いや、あいつは千夏先輩の幼馴染みで・・・」

 

「本人は否定してるけど、周りからはそう思われてるぞ」

 

「え?針生先輩!?」

 

「分かってはいたんです。どんな運命的な出会いをしたとしても、結ばれるには距離が遠すぎるって。

けど見てください、あの笑顔。千夏さんはあの人が本当に好きなんだと思います」

 

ーえ?全然接点の無い岸くんにはそう見えるのか?

じゃあ千夏先輩の友達である花恋さんからはどう見えるんだろうか?ー

 

「そうか。まぁ失恋した時は飲むことだ。ほら飲め飲め」

 

針生先輩、しれっと稼ぎに走ってる・・・

 

「あ、ちー大変だったね」

 

「うん、渚が間に入ってくれてホッとしたけど、渚までナンパされた時はどうしようかと思ったよ」

 

「でもホント鶴羽くんはタイミングバッチリだったけど、出てくるのを見計らってたのかな?」

 

「雪くんはそんな事しない。裏で休憩してたから、騒ぎに気付いて出て来てくれたんだと思う」

 

「ちーがそう言うんなら、そうなんだろうね。しかしこの前会った時とは大違いだね、彼。

何て言うか完全に執事になりきってる感じがするし、こっち(芸能界)でもやってけそう」

 

「あー、雪ならやれるだろうな、何でもアリな奴だし」

 

「動画と写真撮っとこ。後で本人に許可取ってウチの社長に見せようっと」

 

「え?だ、駄目だよ!雪くんには栄明のバスケ部に居て貰わなきゃ」

 

「でも、約束だった栄明で全国制覇は果たしたんでしょ?」

 

「それはそうなんだけと・・・」

 

「ははぁ~ん?もし彼が芸能界入りなんかしたら女子人気が爆発して、“私だけの雪くんじゃなくなる”のが嫌なんだ~?」

 

「////ち、ちがっ!もう花恋なんか知らない!」

 

「まぁ待てよちー。花恋もからかい過ぎだ」

 

「そうだね。ごめんねちー、ちょっとからかい過ぎた。アイスティーお願い」

 

「・・・はい、承りました、少々お待ちください、花恋お嬢様」

 

そう言ってオーダーを出しに行った。

 

そう言えば、とちーに絡んできた男たちを見れば

 

「ですからナンパにも礼儀と言うものがありますので、話していて脈がないと分かれば潔く引いて次に向かうのが宜しいかと」

 

「でもさー、さっきの彼女みたいな可愛い子はそうそう居ないしさー、連絡先だけでも交換しとけばワンチャンあるんじゃないかと・・・」

 

「そう思いたくなるのも無理はありませんが、脈なしの相手の連絡先を手に入れたとして、連絡しても即ブロックや着信拒否されて終わりでしょうね。

若しくは手間が掛かっても番号自体を変えてしまうでしょうから」

 

「そうかなー?そうかも」

 

「貴方方も見た目は悪くないのですから、素行さえ良くすれば、ナンパなどしなくても彼女は出来ると思いますよ」

 

「本当か!?執事さん!」

 

「えぇ、勿論。栄明学園の執事たるもの、こんな事で嘘をついてどうします。皆さんは十分に魅力がおありですよ」

 

「「「分かった、ありがとう!素行を見直して彼女が出来るように頑張るよ!!ご馳走さまでした」」」

 

・・・うん、何か凄く簡単に言いくるめられていたわ。

 

それにしても鶴羽くん、何て恐ろしい子!!

 

「さて、お席も空いた事ですし、次のお客様どうぞこちらへ」

 

「「は、はい、お願いします!」」

 

「そんなに畏まらなくても結構ですよ(ニコッ) 

オーダーがお決まりになればお声掛けください、お嬢様方」

 

彼の素を知ってる私には衝撃なんだけど、健吾やちー、猪股くんは「あぁ、またか」って顔をしている。

 

ちーに至っては明らかに不機嫌な顔をしている。

 

「やっぱりちーは、鶴羽くんが好きみたいね、健吾?」

 

「花恋もそう思うか?」

 

「あの反応は間違いなく“そう”でしょ」

 

 

 

・・・花恋さんから見てもそうなのか。

 

だったら俺はどうすれば良いんだろうか?

 

報われないと分かっていて告白するのか、千夏先輩を諦めて雛の告白を受け入れるのか。

 

俺が本当はどうしたいのか、自分で自分が分からない。

 

そうこうしている間に14時になった。

 

そろそろ準備の為に体育館に向かおう。

 

「じゃあ雪、先に準備に向かうから!」

 

「えぇ、承知致しました大喜様。私ももう直ぐ上がりですので、終わり次第そちらへ向かいます」

 

この期に及んで人の目があると執事ロールプレイを崩さないのは、本当に大したもんだと思う。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さーてナツ姉んトコのヘルプも終わったし、劇の準備でも手伝いに行きますかね。

 

控え室に行くと何やら騒いでいた。

 

「何かあったのか、匡?」

 

「王子役の南山さんが、怪我して病院に行ったんだよ。それで代役をどうしようかって話をしてたんだ・・・って雪、執事服のままだぞ?」

 

「あ、着替えんの忘れてた。ま、後で返せば良いか」

 

「どうするの?王子役」

 

「誰か代役を・・・幸い台詞はそんなに多くないし」

 

「手空いてる人は?」

 

「皆遊びに出てるよ」

 

「ここにいる人は、演者か裏方で仕事が・・・」

 

そこに大喜が帰ってくる。

 

「あ」

 

「え?」

 

「代役確保!」

 

 

 

「いや、無理だって!」

 

「衣装まで着といて何言ってんの!」

 

「無理矢理着せたんだろ!」

 

「猪股くんしか居ないんだよ」

 

「観客がお前を待っている!だから頼む、代役を!?」

 

「そうだ、匡は!?台詞覚えてー・・・」

 

「委員会の方に呼ばれたわよ」

 

「じゃあ雪は・・・」

 

「あん?俺ぁ裏方だぞ?」

 

「でも雪なら台詞覚えて」

 

「確かに覚えてる。でも衣装のサイズ的に無理」

 

「お願い・・・猪股くんも見てきたでしょ。皆の練習を無駄にしないように引き受けてくれないかな?」

 

そう言われて今日までの皆の頑張りを思い出す。

 

そして雛の努力も・・・

 

ー大喜と本当にしたところ、想像しちゃったじゃんー

 

////今思い出しても恥ずかしくなる、がここまで言われたら俺も腹を括ろう。

 

「あー、もう分かった、やるよ!やってやるよ王子役!!」

 

「よく言った、大喜!」

 

「流石リーダー、愛してる!」

 

皆が喜んでくれてるし、これで良かったんだな。

 

「雛っ!台詞忘れてもフォローしろよ」

 

「うん!」

 

確かに練習で何度も見たし、一字一句は無理でも大体の台詞は覚えてるはず。

だから大丈夫・・・なはず無いだろ!

 

細かいところはアドリブで乗り切るとして・・・問題は・・・<王子(キスをする)>の場面だよなぁ。

 

分かってる、フリをすれば良いだけだ。

 

だけど意識するなって言う方が無理で、ぎこちなさを出さない様に・・・

 

そう言えばさっき千夏先輩が花恋さんや針生先輩と一緒に見に来るって言ってたな。

 

「あ~~~~~、どうしよう」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ちー、こっちこっち!」

 

「席ありがと」

 

「けっこう人が入るんだね。ウチだとステージ発表はガラガラで」

 

ヴヴッとスマホが震える。

 

「クラスの奴が新体操部の子目当てで来るって言ってたぞ」

 

「へぇー、そんな可愛いんだ。私とどっち可愛い?」

 

「花恋様デス」

 

「ちーは鶴羽くんに言われたいよね?」

 

「え?////それは・・・」

 

「まぁそれは置いといて、そんな理由でもなけりゃあ知り合いが出てないとなかなか劇なんかは見に来ないよな」

 

「健吾の知り合いは出ないの?」

 

「出てないけど、リーダーと衣装を・・・」

 

「出るよ。大喜くん、王子役やるんだって。雪くんからメッセージ来た」

 

「大喜が!?」

 

「王子役っ!!?」

 

「俄然楽しみになってきたな」

 

「カメラの準備しとけよ」

 

ニヤニヤと悪い顔で何かを企んでる2人を見て

 

ー大喜くんも大変だなぁー

 

と思った。

 

 

 

 

「おい今本ー!お前くす玉設置したか?最優秀クラス発表の」

 

「しましたよぉ!今朝ギリギリに完成してぇ、急いで吊るしたんですからぁ」

 

「なら良いけど」

 

 

 

 

「本番も何が起こるか分からないけど、楽しんで乗り越えよう」

 

「ファイトー」

 

「「「「おーっ!」」」」

 

劇が始まると観客の視線は雛に釘付けだった。

 

人に見られる競技をしているだけあって舞台度胸は満点、台詞の覚えも良く、全く飛んだり噛んだりしていない。

 

一方の俺は緊張感で動きはギクシャクするわ、台詞はカタコトだわで散々だった。

 

「いや、酷いな大喜の奴」

 

「でも頑張ってるのは伝わってくるわね。ん?あれ?白雪姫ってこんなシーンあったっけ?」

 

 

「結構アレンジしてるらしいよ。何でもぽっと出の男と結ばれるのが納得いかないって奴が居たらしくて。だから序盤で王子と出会うシーンを追加して、その時白雪姫は王子に恋をしていて、最後は好きな人からのキスで目覚めるようにしたって」

 

 

 

 

「素敵なアレンジだよね。私も知らない人からのキスで目覚めたくないし」

 

「ずっと想ってた人と結ばれるのって良いなぁ」

 

「え~、菖蒲(あやめ)逆に嫌かもぉ~。そう言う長年の想いが美化されるのって少し重いってゆうかぁ。もっと軽く恋愛した方が楽しくない?」

 

「菖蒲が奔放だから・・・」

 

「皆が真面目すぎなんだよぉ」

 

「駄弁ってばかりいないで、少しは手伝え」

 

 

 

「劇も後半か。大喜はキスシーンに向けて必死だな・・・」

 

「1番の見せ場だから」

 

「そういや異性の友達と恋人の違いって、ズバリ“キスできるかどうか”って兄貴が言ってたわ」

 

ーん?キス!?ー

 

「少しボリューム落とそうか。今大喜に聞かせると余計な緊張させてしまうし」

 

「お、そうだな」

 

 

さぁ、後はキスシーンからラストだけだ!

 

横たわる雛に近付き顔をマントで隠して、キスをしている風に装う。

 

そして姫が目を覚ます。

 

「王子さまっ!」

 

目を開けて驚く表情を見せた後の笑顔に、俺は完全に目と心を奪われてしまった。

 

「寝込みを襲うとはどういう了見で?」

 

「えっ!?」

 

その台詞に会場がドッと沸く。

 

何にせよこれでほぼ終わり、後はエンディングー・・・

 

その時、吊られていたくす玉が雛に向かって落ちてきた!!

 

「危ないっ!」

 

「え?」

 

キャーッ!と会場からも悲鳴が上がる。

 

気付いた時には身体が勝手に動いて雛を庇っていた。

 

衝撃に備えて踏ん張っていたが、痛みも衝撃も無いことを疑問に思い顔を上げるとそこには

 

「王子に姫、気付くのが遅れてしまい申し訳ありません、執事としてあるまじき失態です」

 

と、くす玉を抱えた執事が居た。

 

 

 

 

劇もラストに向かおうとした所で、頭上のくす玉が落ちてくるのが見えた。

 

瞬間、大喜は雛を庇い、俺は飛び出しジャンプしてくす玉を抱え、トンボを切る。

 

あっっっぶねー、もう少しで大喜に直撃だったぞ、このくす玉。

 

運営何やってんだよ、ちゃんと仕事しろよ。

 

と思った所で

 

「大丈夫ですか!」

 

「ケガはー・・・」

 

ー申し訳ありません、一旦劇を中断しますー

 

と騒ぎだした。

 

折角ここまで良い流れだったんだ、止めさせてたまるかってーの。

 

スッと手を前に翳して言葉を発する。

 

「皆さんお静かに。まったくあの王女にも困ったものですね、最後にこんな悪あがきを残して行くとは」

 

 

 

 

劇を見ていた私たちは、雪くんの行動を見て

 

「雪の奴、このまま続けるつもりだ」

 

「でも、そもそも執事なんか白雪姫に居ないだろ、どうするつもりだよ」

 

「ここからアドリブで繋げるのは、プロでも大変だよ?」

 

皆が次々に心配と不安を口にする・・・が、私は

 

「雪くんなら大丈夫。

話も元々アレンジされてるし、逆にプロじゃないからそこまで気にしなくて良いと思う。

それに皆が頑張って来た事を壊すような事は絶対にしないから、私たちは信じて観ていよう」

 

「・・・そうだな、アイツなら何とかするだろ」

 

「ま、鶴羽だしな」

 

信じてるからね、雪くん。

 

 

 

 

雪の台詞を聞いた運営が

 

「え、いやそれは」

 

と言い掛けるが

 

「おや?貴方たちは王宮警護の方々ですね。

王女に掛けられた魅了の魔法が解けたからここまで来ていただけた、とお見受け致しますが?」

 

「は?ちょっ、何を?」

 

「どうやらこちらの方はまだ魔法が解けきっていないようですので、この呪いを掛けられていた魔法の玉を持って貴方たちはお帰りいただいた方が良さそうです。あぁ、勿論呪いは解いてあるのでご心配なく。

ボソッ (もう終わりも終わりだからこのまま続ける)」

 

「あ、はい、そうします。ありがとうございました。

ボソッ (分かりました、本当に助かりました)」

 

「いえいえ、王子の傍付きである執事たる者、呪いの1つや2つ解除出来なくてどうします」

 

さて、後は雛と大喜だな。

 

「ざっとお見受けした所、お2人とも大事無いようですので私も先にお城に戻り、お迎えの用意を致します。では」

 

そう言って去り際に雛に

 

「ボソッ 後は何とかなるだろ、任せたぞ」

 

と囁くと

 

「ボソッ ありがとう、任せて!」

 

と自信に満ちた返事を貰った。

 

 

「あぁ、王子さま!2度もあの王女の呪いから助けていただけるとは!」

 

「え、あれはゆ・・・執事がやった事で」

 

「確かにあの呪いの玉から直接守ってくれたのはあの方ですが、王子は私を身を挺して庇ってくれたではありませんか!!」

 

 

ーこれは感謝と王子をお慕いしている気持ちですー

 

 

そう言うと雛は俺の口に手のひらを当て、その上からキスをした。

 

 

 

~~~~~っ!/////直接じゃないにしても、恥ずかし過ぎる!

 

クラスメイトも会場も一斉に沸き立つ。

 

ふと舞台袖を見ると、雪がサムズアップしていた。

 

アイツには助けられたけど、これ終わったら絶対皆からからかわれるじゃないか!

どうやって収拾付けるんだよー!!

 

 

 





書いてるうちに、段々とあーしたいこーたいってネタが浮かんで来て、結果こんだけ長くなっちゃった。

劇終了後の話は次回に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。