アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
いきなりナツ姉に泣かれた時は、本当にマジでどうしようかと思った。
あの後タイミングを見計らって戻って来たナギちゃん先輩に「その内ジュース奢りね」と約束させてから話を聞くと、どうやらナツ姉は「栄明学園のマドンナ」と呼ばれていて学外にまでファンが居る程の人気者だと言う。
確かに昔から可愛かったけど、今はそれに綺麗さも併さり人柄も良いってんだから、そりゃあ人気者だわな、と納得しか無かった。
いやしかし本当に他に人が居ない時で良かったが、もし普通に部活や体育で人が居たと思うと洒落にならんとゾッとする。
現状友達はおろか知り合いが「ナツナギ先輩ーズの2人しか居ない俺」にとって、「栄明のマドンナを泣かせたフトドキ者」なんて2つ名が付いた日には灰色の学園生活になっていただろう、くわばらくわばら。
さて、もう1ON1をやる雰囲気でも無くなったし、これからどうしようかねぇ。
う~ん、ジャージも用意してないしナツ姉にも会えたし今日は帰るか。
「あ~ナツ姉?そんな訳でこれからちょくちょく顔出すから宜しくね」
「うん、分かった。家は昔と同じ所?あそこからだと通うには遠いよね?」
「いや、違う。昔の家だとここ通うには遠かったけど、新居はここから徒歩で20分弱分くらいかな」
「そうなんだ!じゃあ朝も一緒に登校出来るかもね」
と2人で話していると
「ちょっとちょっとお2人さん!妙に仲良く見えるんだけど、どんな関係なの?」
とナギちゃん先輩が聞いてくる。
「「幼馴染み!」」とナツ姉と声がハモる。
「ホント息ピッタリだね、本当にただの幼馴染みぃ~?」
と、からかう様に言ってくるナギちゃん先輩。
「え?そうっすよ。そもそも俺は6年アメリカに居て、その間全く交流が無かったんですから他に何とも言い様がありませんね。母親たちはたまに連絡取り合ってたみたいですが」
なぁナツ姉?と言葉を振れば、ナツ姉は少しむくれた顔で小声で何かを呟いていた。
「そりゃあ確かに6年ぶりだけどさ。少しくらい意識してくれても良いんじゃないかな?」
渚のからかう様な言葉を聞いても全く動じず、寧ろ淡々と答える雪くんの態度を見て、私は何故かムッとしてしまった。
そんな私を見た渚は
「ほほぅ~?あのバスケ一筋のナツが乙女の顔になってる様に見えますなぁ~w」
と、ニヤニヤして言う。
「で、実際雪くんは久し振りに会ったナツを見てどう思ったの?」
「ん~、そっすね、この人子供の頃から可愛いかったけど綺麗さが加わっててマジでビックリしました。さっき聞いた“学園のマドンナ”なんて呼ばれ方されてて学外にまでファンが居るってのも納得しかねーっすわ」
ゆ、雪くん!?
何恥ずかしい事を平然と答えてるの?
でも不思議と悪い気はしないと言うか、いやいやそうじゃなくて、って恥ずかしさで顔が熱い。
多分、今顔が真っ赤になってると思うしそれを渚に見られたら何を言われるか分かったもんじゃない!
案の定
「あれ~?ナツ顔真っ赤だけど、一体どうしたのかな~?」
とからかってくる。
「え、どしたナツ姉?熱でもあんの?」
と素で心配した雪くんが額に手を当ててくる。
あ、手がこんなに大きくなってたんだ、男の子って子供の頃と全然違うんだなぁ、とぼんやりと考えてしまう。
「(こういうのを恥ずかしげもなく出来るってのがねぇ)あ~、大丈夫だよ雪くん。ナツは違う事で赤くなってるだけだから」
とフォローにならないフォローを入れてくる。
「?まぁ体調に問題ないなら良いんですけど」
と言って手を離す。
名残惜しくてつい、「あ・・・」と声が出てしまう。
「ナツ姉?本当に体調悪いなら保健室まで付き添うぞ?」
「ううん、本当に大丈夫だから気にしないで良いよ、今日はこれからどうするの?」
「んー、ジャージも無いからバスケ部の人への挨拶はまた今度にして今日は帰るわ」
「そっか、これから宜しくね、雪くん」
「おう、ここで全国制覇するからな。ナギちゃん先輩もそのつもりで宜しく!」
「え、私も!?」
「当たり前でしょ、個人競技じゃ無いんだから1人だけ強くても勝てませんよ。とは言え1ON1で個の力を伸ばす為の協力なら男女問わずやりますんで、やって良い時はいつでも声掛けて下さい」
ーじゃ、今日はこの辺で。また直ぐ顔出すから宜しくな、ナツ姉にナギちゃん先輩ー
と言って雪くんは帰って行った。
突然の再会でビックリしたけど約束を果たす為に気合いが入ったのは確かだ。
これからはいつでも一緒にバスケが出来ると思うと、自然と口元が綻んでくる。
ー先ず最初の目標は夏のインハイ出場から、だよね雪くんー