アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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文化祭も終わり、新体制で臨む各部活。

そんな中、バスケ部とバド部に新しい顔が増える。


EP33 部活に新顔が来たけどクセが強そうな奴らだった件

 

「大喜、これ部費割り当て先輩に渡してって」

 

「サンキュー」

 

「ネット切れたの?」

 

「ガットな」

 

「うわ、人の無知を笑う奴だ・・・なんて愚かな・・・」

 

「笑ってないだろ!・・・まぁ雪なら、ここぞとばかりに笑い転げそうだけど」

 

俺と雛が話していると、周りでヒソヒソと話しているのが分かる。

 

文化祭の劇でのキスシーンが原因だ。

 

手を挟んでのキスとは言え、遠目からだと普通にキスしてるように見えた様で、色恋沙汰に興味津々な高校生には格好のネタを提供してしまっている。

 

「気にしなくて良いよ。私なんて噂の利用法、思い付いたもんね」

 

「利用法?」

 

「“大喜次第でいつでも本当の事に出来る”んだからね」

 

「なっ!?」

 

「はっはっはっ、効いとる効いとる。外堀は埋まったよーなもの!・・・しばらくはこの作戦で行くぞー!」

 

ー俺の心配は何だったんだ。ま、あれも雛なりの気遣いなんだろうけどー

 

ふと顔を上げると匡がこちらを見ていた。

 

「何も言うな」

 

「言ってないが」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「集合ーっ!」

 

考えないといけない事は沢山ある。文化祭も終わったし、改めて部活の事もちゃんとしないと。今度は公式戦で、遊佐くんに勝てるようにしないとー・・・

 

「それと、今日から部員が1名増える。と言っても選手ではなく・・・」

 

「こんにちはー。マネージャーになります、守屋菖蒲(もりやあやめ)です」

 

そう女子が挨拶すると

 

「か、可愛い」

 

「ついにうちにも女子マネージャーが!」

 

やったー!、ようこそー!ー、よろしくー!

 

等の声が飛び交っていた。

 

「あれ?マッシュくんがいない?」

 

「え?」

 

「先々週くらいに体育館で見掛けたんです。マッシュヘアのクール細マッチョな・・・」

 

「それ佐知川高校の人だよ。練習試合に来てただけで」

 

「え、じゃあ毎日会える訳じゃ・・・」

 

「他校だしね」

 

「マッシュくんのジャージ洗ったり出来るんじゃ」

 

「それやりたいの?」

 

「大変お世話になりまー・・・」

 

「待て!」

 

「健吾」

 

「花恋の言った通りだな。急にマネージャーやるなんて裏があるって・・・」

 

「だって顔がどタイプだったんだもん!!」

 

「針生・・・知り合いなのか?」

 

「彼女の妹」

 

「けどまた練習試合するだろうし、大会でも会えるよな」

 

「寧ろそこ以外で会いようないし」

 

「まぁ暫くお世話になります」

 

ー打算的な子が来たなー

 

部員全員がそう思っただろう。

 

「じゃあ大喜、仕事教えてやれ」

 

「はい」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

「ここが倉庫。それでこの水場でドリンクとか作って貰う。それでこっちが部室ー」

 

そう言って、お世話係?教育係?の「タイキ」と呼ばれた男子部員が開けたドアの先には、物や着替えでぐちゃぐちゃになっている部室の光景が広がっていた。

 

「ちょっと散らかってるけど

 

「これの何処がちょっと!?誰か掃除しないの!?くさっ。ありえないんですけどぉ・・・」

 

ー思ったことすぐ口に出す子だな。花恋さんの妹って言ってたし悪い人ではなさそうだけどー

 

そう思った時、椅子の影から蜘蛛が出て来た。

 

「キャーーー!くもくもくもくもーーー!!!」

 

と、叫んで抱き付いてきた。

 

「ちょっ!?、近っー・・・あ」

 

運悪くそこを通り掛かる千夏先輩。

 

「ちーちゃん!助けてぇー!」

 

ー俺が何かしたみたいじゃん!!ー

 

「猪股くん、何したの?」

 

ジト目で問い詰められる。

 

「いや、俺は何もーっ!ただ蜘蛛が出て・・・」

 

「きゃー、また来たぁ!!早く逃がしてよぉ!」

 

「おー、どうした?何か騒がしいな・・・ん?大喜てめぇ、この期に及んで新しい女にコナ掛けてんのか?この野郎」

 

「違う違う!蜘蛛が出てこの子が虫駄目だから騒いでるだけなんだって!」

 

「ったく、たかが蜘蛛一匹に騒ぎ過ぎだ。ホラどけどけ」

 

そう言って蜘蛛を手のひらで掬って、窓から捨てる雪。

 

「ま、今度からはちり取りでも用意しとくんだな。あれなら殺さずに掬って放り投げれば良いからな・・・って何だこの部室?きったねーなー。掃除と整理整頓位しろよ。強いトコは大体部室もキレイなもんだからな」

 

ーさー手を洗ってくるかー

 

そう言って雪は去って行った。

 

「ーで、何で菖蒲ちゃんが男バドの部室に?」

 

「なんかマネージャーやることになっちゃってぇ」

 

「マネージャー」

 

「だからこの人に仕事教わってたの、って名前なんだっけ?」

 

「猪股大喜」

 

「じゃあ“いのた”ね」

 

「はっ?」

 

「行くよ、いのた!ゴミ袋持って掃除しないと」

 

「ポ○モンみたいに呼ぶな」

 

「じゃ、ちーちゃんまたね!」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「重い~!」

 

ーバド部のマネージャーになった子だー

 

「ったく、暑いなぁ」

 

そう言って背筋を伸ばす彼女の胸部装甲は、私を遥かに超えていた。

 

「・・・勝てないよ」

 

「何処で戦ってんの」

 

 

 

 

「ドリンク作って来ましたー!」

 

そう言うと我先にと群がってくる。

 

「いのた次はー?」

 

「スコアの書き方教えるよ」

 

「え~、どれどれ」

 

「あの・・・言いづらいんだけどさ」

 

「?」

 

「少し距離近いかも。変な噂立つと悪いし、少し離れて貰った方が・・・」

 

「うわさ・・・?あー君、白雪姫の王子役かぁ!」

 

「今更?」

 

「友達も話してたよー。色々言われて大変でしょ、キスしたとかしてないとか。皆キスくらいで騒ぎすぎだよね」

 

「キスくらいで?」

 

「まっ、気にしなくて良いんじゃない?自分のこと大切に思ってくれる人の言うこと以外、ガン無視でも支障ないよ」

 

「・・・それはそれとして、もう少し離れて頂けると・・・」  

 

「ごめんごめん。癖でさー・・・って、また蜘蛛ぉぉお!!」

 

「ちょっ、言った側からー・・・」

 

ふと振り返るとそこには雛と千夏先輩がジト目で、雪がピキりながらそれはそれは素敵な笑顔でこっちを見ていた。

 

「違うんだー!!」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねえお姉、ちーちゃんって彼氏作らないのかな」

 

「部活で忙しいってさ。人のベッドでくつろぐな」

 

「えー、勿体無い!女子高生だよ!?恋して輝くお年頃だよ?ここ数日見てるだけでも、ちーちゃんに気がありそうな人、何人か居たのに。菖蒲だったら順番に声掛けちゃうのに」

 

「あんたが普通じゃないのよ」

 

「好きな人でも居るのかな」

 

「・・・・・」

 

「お姉が黙る時って、図星の時だよね」

 

「!?」

 

「だれだれだれ!?菖蒲の知ってる人!?」

 

「知らないわよ」

 

「ちーちゃんが好きになるなら、よっぽど素敵な人だろうなぁ。もしかして体育館内に居るとか!」

 

ーまずい。鶴羽くんとのことバレたらこの子絶対口に出す筈。ここは誤魔化した方が・・・ー

 

「ちーが好きなのは、バスケが上手くて背も高いワイルド系イケメンで海外に居るのよ!」

 

「お似合い~。そのくらいじゃないと釣り合わないよね~」

 

ー嘘だけど、バレるより良いでしょー

 

 

 

 

「えー、アメリカに留学してた2年の松岡一馬(まつおかかずま)が帰国した」

 

「よろしくどーぞ」

 

ーバスケ上手い高身長、帰国子女イケメン!この人だー!そんな超人みたいな人居ないと思ってたけど、あの人ならちーちゃんとお似合いだ!応援してるよ、ちーちゃん!ー

 

「マネージャー」

 

「私には菖蒲って言う、可愛い名前があるんですけどぉ」

 

「守屋さん、ここ記入漏れしてるってよ」

 

「え?確認したのになー」

 

「あれ?あんな人、男バスに居たっけ?」

 

「1年間留学してたらしいよ。だから英語ペラペラ高身長イケメン。バスケもすっごく上手いらしいし、かっこいいよねぇ」

 

「ふーん。でもそれなら雪の方が凄いけどな」

 

「え!?誰それ?」

 

「この前、蜘蛛捕まえてくれた人」

 

「あー、あの人同級生だったんだ、大きいから先輩かと思ってた。確かにあの人も高身長の色白イケメンだけど、バスケと英語はどうなの?」

 

「あいつは小3から6年間アメリカに住んでたから英語は当然ペラペラ、バスケに至ってはインハイ優勝したのはあいつのお陰って言えば分かるだろ?」

 

「ふーん、そうなんだ。ま、わたしは遊佐くん派だけど」

 

「一目見ただけでしょ・・・あ、雛っ!この前の練習の時さー」

 

「何?」

 

ー新体操部のかわいこちゃんだー

 

いのたと話している新体操部ちゃんの笑顔を見て、ピンと来た。

 

ーおやおやおや、これはもしかして・・・ー

 

 

 

「もー、ゴミ捨てなんて可愛いくない仕事だわ・・・あ、こんにちはー」

 

「え、あ、こんにちは」

 

「あの~」

 

「はい」

 

「一応バド部のマネージャーで、関わっちゃうから確認したいんだけど。もしかして、いのたの事好き?」

 

「なっ!・・・んでこう、すぐバレ!?」

 

「あ、やっぱりー!さっきも女の子って顔してたからそうかなって!」

 

「してないです」

 

「いのたも隅におけんなぁ。こんな可愛い子に好きになってもらえるなんて。あ、安心して、私はタイプじゃないから。えーっと、名前は・・・あ、私は守屋菖蒲!」

 

「蝶野雛です」

 

「蝶野さんなら、いけるって!あぁいうタイプは押せばいける!気持ち知ったら、すぐ付き合おうってなるよ!」

 

「あ。もう気持ちは伝えてて」

 

「え?告白したの?」

 

「はい・・・でも返事は保留して貰ってるの。大喜に好きな人が居るって知ってて告白したんだから」

 

「え、じゃあ返事はまだ貰ってないの?」

 

「うん」

 

「返事はまだ良いって言われたから?」

 

「・・・多分」

 

「あ"ぁ?なにそれ!?告白する方だって勇気いるのに、女の子にだけ頑張らせてるじゃん!それって蝶野さんの好意に甘えてるでしょ!」

 

「ふふっ」

 

「え?何で笑うの!?」

 

「ごめんなさい、雪と同じ様な事言ってくれてるな、と思って」

 

「雪っていのたが言ってたあの大きい人だよね?蝶野さんが告白したことも知ってたの?」

 

「うん。インハイから帰って来てから聞いたらしくて、私への返事を保留しといて好きな人に対して頑張る、って言ってたのを聞いて“何様だあの野郎!”ってぶちギレてたって聞いた」

 

「それで喧嘩になったとか?」

 

「ううん。一先ず落ち着いて冷静になってから話しに行って説教したらしい」

 

「そうなんだ。でもその状況しんどいでしょ」

 

「けど、私は大喜を好きなことが楽しいから」

 

「健気ぇ~・・・よしっ任せて!蝶野さんの恋が成就するように協力するから」

 

「え?協力?」

 

ーこの守屋菖蒲、頑張る女の子の味方よ!待ってろ!いのた!ー

 

  

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「秋合宿?」

 

「そう。創立記念日と土日祝の3泊4日で」

 

「今年はバド・バスケ・新体操の体育館競技の部活合同で合宿するんだよ」

 

「宿も結構言い宿でさ。練習は地獄だけど」

 

「へぇーーーー」

 

ー何そのワクワクイベント!皆でお泊まりとか楽しそーじゃーん。合同だから他の部も同じ宿・・・って事は、ちーちゃんとグラデ髪先輩をお近づきにさせるチャンスもあるだろうし、いのたとひなっちをくっつけるチャンスじゃーんー

 

そんな事を思いながら歩いていると、パンッと音が響く。

 

そこには真剣な顔でラリーをしているいのたが居た。

 

近くに西田部長が居たので聞いてみる。

 

「もしかしていのたって、そこそこ強い?」

 

「部内じゃ強い方だぞ。1年の中じゃ1番じゃないかってくらい」

 

ーふぅーん、意外とやるんだー

 

「マネージャー、職員室にシャトル取りに行って」

 

「えぇー・・・」

 

ふと見るといのたの試合が終わっていた。

 

「いのたっ!職員室にシャトル取り行こー」

 

「俺休憩を・・・」

 

「急に止まると良くないって言うでしょ!」

 

「それ陸上だろ」

 

 

 

ー蝶野さん大喜くんに告白したって言ってたのに、大喜くんは菖蒲ちゃんと仲良くしてる様に見えるけど・・・ー

 

そう思って2人を眺めていたら

 

「ナツ!新しい顔よ!」

 

と顔の前にバスケットボールを翳される。

 

「松岡くん」

 

「相変わらず、ぼーっとしてんな」

 

「そんな事ないよ」

 

「いや、してたね。ほっといたら石像化して栄明名物美人女バス像として、讃えられてたよ」

 

「また適当言ってる」

 

「ははっ」

 

 

 

 

「・・・なぁナギちゃん先輩や」

 

「何かな、雪くん?」

 

「あの松岡って奴、あれナツ姉の事好きだろ?」

 

「そうだと思う。留学前からそれとなくナツにアプローチしてたけど、肝心のナツの方がそっち(恋愛)方面に興味無さ過ぎて全く気づかれてなかったけどね」

 

「成る程ねぇ。そこまで行くと、逆に哀れに思えてくるな」

 

「で、どうなの?本当の所は?」

 

「と言うと?」

 

「インハイ終わってからナツが妙にスッキリしたと言うか、迷いがなくなった感じがしてるんだよ」

 

「あー、詳しくは言えんが春先からの懸念事項にカタが着いたからだろうな」

 

「そっか、悩み事が無くなったんなら良かった」

 

ー流石に告白云々は言えんからなー

 

そう思いながらシュート練に戻った。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「もー、マネージャーって雑用ばっかり。本当なら遊佐くんにドリンク渡してる筈なのに」

 

「だから手伝ってるだろ。何が本当はだよ」

 

そう話しながら歩いていたら、守屋さんが複数の男子生徒に声を掛けられていた。

 

「知り合い多いね」

 

「あー、どっちも元カレ」

 

「どっちも!?」

 

「あ、どっちも円満に別れたから」

 

「宇宙人大会レベル・・・恋多き事で素晴らしいですね(俺にはわからん世界だ・・・)」

 

「恋多きっていうかー、私のこと好きって行ってくれる人が居たら、取り敢えず付き合うでしょ」

 

それを聞いて、雛に告白されたされた身としてはドキッとする。

 

「でも遊佐くんのことは・・・?」

 

「それはそれ、これはこれ。

だってさ、単純に私のこと好きって言ってくれるのってありがたいじゃん?その時は好きじゃなくても付き合ったら好きになるかも知れないし。

仮に私に好きな人が居てもその人に振り向いて貰うのと、私のこと好きって言ってくれる人を私が好きになるのだったら、後者の方が早そうだし」

 

「・・・確かに、告白されると意識するよな」

 

ーえっえっ!?ちょっとそれって、そういう事なんじゃないの!?!ー

 

いのたの反応を見て、にいっと笑いが込み上げてくる。

 

「こりゃ行けるぞ、ひなっち!」 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「今年も来たかー、秋合宿」

 

「きついんだよな」

 

「いきなり山ダッシュから始まるし」

 

「折角良い宿なのに、全然満喫出来ないよね」

 

「あの宿、OBが経営してるんだよね」

 

「そうなの?」

 

「だから大人数でも安く泊まれるんだって」

 

「あとさ、知ってる?キャンプファイヤーのジンクス」

 

「ジンクス?」

 

「最終日の夜にキャンプファイヤーやるじゃん。その時告白すると2人の火も燃え上がり、ラブラブカップルになれるって話」

 

「上手くない言い回し!」

 

「去年女バドと男バレの先輩がくっついたやつ!」 

 

「たまたまでしょ」

 

「その前の年も居たって!」

 

「てか、そもそもあんた好きな人居んの?」

 

「・・・・・え?」

 

「ダメじゃん!」

 

「さみしー」

 

 

そうやって盛り上がる皆の話を聞きながら、私は彼の事を考えていた。

 

ーきっちりケジメつけたら、そん時は俺からナツ姉に伝えたい事がある。我儘だってのは分かってるけど、もう少しだけ待ってて欲しいー

 

本当にいつまで待たせるんだ、あのお調子者は!

 

こんなイイ女を待たせるなんて何様だ!

 

・・・って優花さんなら言いそうだなぁ。

 

でも、本当に余り待たせないでね、雪くん。

 

 





合宿入ると長くなりそうだから、何とか合宿前で纏められた。

多分、雪も大喜もキャンプファイヤーで告白はしない・・・と思う。

キャンプファイヤーでは、ね。

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