アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
文化祭準備での千夏と大喜の会話を書いていて、ふと思い付いたネタ。
ー鶴羽雪の独白ー
俺、鶴羽雪は栄明高校の2年生だ。
そしてよく一緒に居るのが、幼馴染みで彼女の鹿野千夏と、親友の猪股大喜にその彼女の蝶野雛だ。
大喜と雛とは中学からの付き合いで、初めはそんなに話もしなかったんだがウマが合うと言うのか、ちょっとした事で仲が良くなり今に至る。
最初は中1の夏に親睦を深める為に、花火大会に行こうってクラスの連中と話していて参加者を募った時、雛の挙げた手が後ろを通り掛かった大喜の顔面を叩いた形になったのが、俺たちが話す切っ掛けだった。
花火大会当日、雛が部活で遅れて楽しみにしていたりんご飴が売りきれていてショックを受けていたんだが、買い出し係だった大喜がラス1だったりんご飴を買っておいた事で2人の距離が縮まったと見ている。
と言うか、それから大喜を意識する様になったと、後々これでもかと言うくらいに本人から千夏と共に恋愛相談をされたからな。
俺も当時は千夏を幼馴染みとしか見ていなかったんだが、それが原因で異性として意識し始めた感がある。
付き合ってからそれを千夏に言ったら、「私は小さい頃からずっと好きだったのに、全然気付いてくれなかった鈍感さに困ってた」って言われる始末だった。
今思い返せば、確かに「あれは好きですアピールだったんだな」と思う事が多々あった。
いや、ホント千夏には悪い事したと思ってる。
けどな、小学生男子や中学入ったばかりの中学生男子なんて基本的に中身はガキなんだから、色恋より遊びに天秤が傾くのは仕方ないと同意してくれる男子諸君は多いと思う。
さておき、インハイに出場して激戦を制して優勝すると言う激動の夏休みを終え始まった2学期には、文化祭がある。
そして今日はクラスの出し物を決める為に、1~2時限目は、LHRだ。
去年は白雪姫の劇をやり、とあるハプニングイベントが起きた結果、大喜と雛が付き合う事になったんだよ。
あれからもう1年経つのか、懐かしいねぇ。
え?何があったのかって?
んー、ま、もう時効だし結果オーライでもあるから別に良いか。
早い話、所謂「事故チュー」があったんだよ。
本来最優秀クラスを称える為のくす玉が、白雪姫(雛)に向かって落ちちまってな。
位置的に雛に直撃コースだったから王子(大喜)が慌てて覆い被さったまでは良かったんだが、くす玉が大喜の背中を直撃した反動で堪え切れずに、フリの筈だったキスを本当にしてしまったって訳よ。
シーンとしては王子のキスで姫が目覚める所だったからタイミングとしてはある意味完璧だったんだが、流石にあれだけの衆人環視の前でのキスだったからなぁ。
あの状態でよくもまぁ、やりきったと思うよ俺は。
最後の挨拶ん時なんて、2人とも顔真っ赤になってたし。
で、その後に大喜の方から告白したのを雛がOKして、めでたく付き合う事になった。
それに触発されたのか千夏からのアピールが激しくなって、雛までそれに乗っかって煽ってくるから、もう良いかと思って千夏にお前が好きだと告白して、こちらもすんなりOKされて今に至るって訳よ。
お陰様と言って良いかは分からんが、俺と千夏、大喜と雛は校内で公認カップルになっている。
さて、それより今は今年の出し物だ。
流石に2年連続で劇ってのは遠慮願いたいし、楽するなら何か適当な研究を掲示して終わりでも良いんだが、千夏に雛、それとナギ辺りに「高校生活の大事な思い出の1ページを、そんな物で埋めるなんて本気!?」とか言われそうなんだよなぁ。
・・・良いじゃねーか、楽なんだし。
そう思っている間に「メイド喫茶」なんてもんが挙がる。
一部の野郎共には大好評だが、当然女子からはブーイングの嵐だ。
やれやれと思っていたら
「鶴羽!お前も男なら俺たちの気持ちは理解してくれるよな!?」
と言われ教室を見渡すと、男女で全く違う感情が乗った視線が突き刺さる。
ん~、どうすっかねぇ。よし、じゃあ野郎共の下心と女子の下心を嫌う気持ちを汲んで出した答えは
「あー、まぁ野郎共の気持ちは分かる。けどよ、女子が嫌がってんのに無理矢理押し通すのはどうかと思うぞ?」
「くっ、そんな。お前なら分かってくれると思ったのに・・・」
「流石鶴羽くん、その辺の男子とは一味違うわ!」
「そこでだ。メイドはともかく女子目線で可愛いと思うウェイトレスの制服借りるのはどうだ?
そんで男子も執事とまでは言わないにしろ、カッコ良く見えるウェイターの制服借りて一緒に給仕すりゃあ良いと思うんだが」
「「「「それだ!!!」」」」
・・・ってオイ、マジか?
クラス内に不和が起きないように適当な事を思い付きで言ったら、まさかの採用されてしまったでござる。
あ~あ、俺知~らね。
後はクラス委員(千夏)と実行委員(大喜)に任せて、高みの見物とシャレ込むかね。
そう思っていた時期が俺にもありました。
よくよく考えたら(考えなくても)、クラス委員と実行委員があの2人の時点で俺に逃げ場はなかったんだ。
「言い出しっぺの雪には、当然ホールを担当して貰うからね」
「雪はウェイターじゃなくて執事の方が良いと思うぞ」
「じゃあ雪の分だけ執事服用意しよう!」
・・・何でこの3人はそんなに息ピッタリで俺を追い込んでくるんだよ?
「・・・なぁ、俺も普通にウェイター服で良くないか?何で執事服なんだよ?」
「それはまぁ、似合いそうだから?」
「確かに、某あくまで執事な人?と似た様な背格好だし、良いんじゃないかと」
「うんうん、多分女子から絶大な人気が出そう・・・って、ちーちゃんにとっては面白くないか」
「へぇ~(ニヤリ)、そこまで言うなら本気で執事ロールプレイするかなー」
「オイ馬鹿やめろ雪、そんな事言ったらちーが・・・」
「ふ~ん、雪は女の子にちやほやされたいんだー、へー、私と言うものがありながら・・・」
「あ~、私知ーらない」
目が笑ってない千夏がにじり寄って来るのに恐怖を感じた俺は、「ごめんなさい」と謝ったのだった。
取り敢えず出し物は喫茶店で決まり、後は人員配置や諸々の振り分けをしてLHRは終わった。
後は両委員が時間調整して、細かい担当を決める事くらいかね。
「くぁ~、眠ぃ。昼イチの授業なんて拷問以外の何物でもねーな」
「まぁ言いたい事は分かるよ、俺も眠いし」
「ちょっとアンタたち、授業中に寝ないでよ!私とちーちゃんが起こそうとしても中々起きなくて、大体いつも怒られてるんだから!」
「そうだよ、2人とも。今日はその列が当てられる日なんだから、起きてないと怒られるの確定だし」
この会話が壮大なフリになってしまったのは、言うまでもあるまい。
5時限目、俺と大喜が仲良く船を漕いでしまっていると、俺の列が前から順番に当てられて行く。
大喜の番が近付いて来たが、船を漕いでいて気付いてない。
雛が先生にバレない様につついているが、全く起きる気配がない。
そして
「次、いのまたー」
「zzz」
「猪股っ!!」
ビクッ!
「はいっ」
「問1(3)の回答」
雛が回答を見せてくれた
「えーと、1/4X」
「間違いだバカタレ!居眠りせずにちゃんと聞いとけ!じゃあ次、鶴羽」
「へーい、3/4X」
「正解」
「おいおい大喜よぉ、居眠りなんかしてないでちゃんと起きて授業受けろよ?学生の本分は勉強なんだからよ」
「うぐっ」
「あんたも今まで寝てたくせに、よく言えたもんよね」
雛の言葉で教室がドッと沸く。
「雪は要領が良いから、大喜くんが当てられてる間に起きて問題聞いて考える時間作って、しかも正解するから性質が悪いと思う」
「正解したのにお前ら酷くね?」
「まぁ、お前が寝てたのもこっちはちゃんと分かってるからな、鶴羽。正解したから見逃してやるが」
「え、先生、じゃあ俺は?」
「親御さんへの通信欄を楽しみにしとけ」
「嘘でしょ!?慈悲は無いんですか!」
「諦めろ大喜、分かってないのに寝てたお前が悪い」
「くっ、それは・・・」
「ハイハイ、じゃあ次進むぞー」
と、先生は黒板に次の問題を書き始める。
前の席で雛と大喜が
「ボソッ 間違い教えるなよ!」
「ボソッ だって合ってると思ったんだもん!」
と話している。
ふと千夏と目が合い、目の前のやり取りを見て笑う。
ははっ、本当にこいつらと同じクラスで良かったよ。
ま、残念賞として今日の帰りはコンビニで大喜に何か奢ってやるとするか。
・・・雛が便乗して来そうだけどな(笑)
この4人が同じクラスでそれぞれ付き合ってたら、賑やかになるだろうなぁ。
最後のシーンは原作で隣同士の大喜と千夏が笑い合ってるシーンのオマージュで、前の2人がわちゃわちゃしてるのを見た雪と千夏が笑っているのを、あの構図で描かれていると思って貰えれば。