アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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あと2日で想いを伝える事を決めた雪。

未だ答えを見出だせない大喜。

対照的な2人の想いの先は・・・


EP35 秋合宿②

 

パァンッ!と、スマッシュが決まる。

 

「おおおお、ナイスプレー!」

 

「マネージャー、片方だけ贔屓するなよ」

 

「だって今の凄かったから!アタックも決まってて」

 

「スマッシュな」

 

「それに村岡くん、前は今みたいな所取れてなかったから、其の成長が嬉しくて!」

 

「マネージャー・・・」

 

「ファイト!!」

 

「気を付けろ・・・」

 

「あれで好意ないんだ、鵜呑みにするな・・・」

 

「魔性だ・・・」

 

「マネージャーもだいぶ馴染んだな」

 

「馴染んだと言って良いのか・・・?」

 

「村岡も本気にしてないって」

 

「なら良いけどさ」

 

ーうーむ、フォームはいのたが1番綺麗かも・・・ま、遊佐くんの方が上だけどね!ー

 

 

 

「お、やってるやってるー」

 

「お疲れ様」

 

「新体操部じゃん!練習は?」

 

「あとは筋トレだから戻ってきたの。そのついでにチラッと」

 

「何だ、また雛の忘れ物かと」

 

「聞こえてるよ!」

 

「やべっw」

 

そう言って笑う大喜に目を奪われる。 

 

「そろそろ行かないと」

 

「そだね」

 

「練習頑張ってね」

 

「ありがと~」

 

「よかったね」

 

「何が?」

 

「大喜くん見れて」

 

「はっあー?

別によく会うし、嬉しいとかそんな・・・」

 

 

ー正直文化祭の事があって、2人は付き合うかと思ったのになー

 

「そう言えばキャンプファイヤーのジンクス知ってる?」

 

「告白したらラブラブってやつ?」

 

「そうそう、胡散臭いやつ。けど折角だから言ってみたら?告白の返事ちょうだいって」

 

「言わない。大喜が私を好きになってくれるまで、返事はいらないの」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ー何かおかしいー

 

そう思ったのは、合宿が始まって少ししてからだった。

 

昼休憩や練習後の自由時間に、守屋さんが事ある毎に俺と雛を2人きりにしようとしたり、一緒に作業させようとしてくる。

 

思い過ごしなら良いけど、ここまであからさまだと俺と雛の曖昧な関係に気付いているのか?

 

マネージャーとしての仕事を教えている時に話しただけでも恋愛経験豊富なのは伝わってきたから、俺や雛の態度でバレたのかも知れない。

 

1度守屋さんと話した方が良いのかな?

 

そんな事を思っているうちに、3日目の昼が来る。

 

基本的に部活毎に席に着くんだが、その際もわざわざ俺たちと雛たちのテーブルを隣にするように仕向けている。

 

それだけならまだしも、千夏先輩と松岡さんを同じテーブルに着けようともしている。

 

この前の「お似合いだよね」って言うのも、千夏先輩と松岡さんをくっつけようとしての発言だったんだろうと気付く。

 

彼女にどんな思惑があるのかは分からないけど、合宿中に答えを出すって雪と約束したんだから、余計な事はして欲しくないと言うのが本音だ。

 

守屋さんより先に雪と話した方が良いのか?

 

「難しい顔してどうした?」

 

「匡・・・守屋さんがさ、俺と雛をくっつけようとしているっぽいんだよ。それと千夏先輩と松岡さんも」

 

「やっぱりそうか。この前から、何か変だなとは思ってたんだよ。雪は何か言ってるのか?」

 

「いや、寧ろ何も言わないのが逆に怖いんだよ、いつか爆発しそうで・・・」

 

「・・・逆じゃないか?」

 

「逆って?」

 

「雪としては、千夏先輩が選ぶのは“俺か大喜か”って事を信じて疑ってないんじゃないか? 

考えに芯が通っていて揺らいでないから、ポッと出のよく分からん奴なんか眼中に無いって事なんだろうな。

そしてそれは千夏先輩も同じだと思う」

 

匡の話を聞いて納得すると同時に、未だに2人の間で揺れ動いてる自分が情けなく感じてしまう。

 

あと実質1日しか無いのに、どちらにも、いや雪も含めて3人に対して失礼だと思う。

 

そんな時

 

「んー、やっぱりちーちゃんと松岡さんってお似合いだと思うよねー」

 

って声が聞こえてきた。

 

そちらに目をやると、守屋さんが雛や新体操部の人たちに向かってそんな話をしていた。

 

「私としては、ひなっちといのたもお似合いだと思うんだけどぉ~?劇でも姫と王子だったし、最後のキスシーンだって本当にしてるみた「いい加減にして!」い・・・って、ひなっち?」

 

「文化祭の後、そうやって噂してる人も沢山居たよ!“本当じゃないこと”で噂されるのは嫌だったけど、我慢して気にしないフリして大喜ともいつも通りに接してたら噂も段々無くなったのに、何で今更こんな人の多い所で蒸し返すような事言うの!」

 

「え、でも私、そんなつもりじゃ」

 

「守屋さんにそんなつもりがあろうと無かろうと、私たちと関わりが薄い人の中には、“あ、やっぱりそうなんだ”って思う人が居るかも知れない。

貴女にとっては大した事がなくても、他の人には触れられたくない事だってあるんだよ!

何でそれが分かんないの!?」

 

雛があそこまで怒るなんて滅多に無い、処か初めて見る。

いや、それより今は止めないと。

 

「何で?ひなっちだって本当は・・・」

 

「いい加減にしてって言ったのが分かんないの!?分かんないならもう良いよ、私が出ていくから!!」

 

そう言って雛は食堂から出て行ってしまった。

 

その姿を見て俺も頭に来てしまい、守屋さんに一言言おうと詰め寄・・・ろうとした所で雪に止められる。

 

「大喜、こっちは良いからお前は雛を追え。今のあいつにはお前が必要だ・・・多分、お前にもあいつがな」

 

「あ、あぁ、分かった」

 

そう言って俺も雛を追って食堂を飛び出す。

 

 

 

 

はー、やれやれ。あんまり大事にならなけりゃあ、放っといてやったんだがなぁ。流石にこれは見過ごせねーわ。

 

そして守屋妹に詰め寄る。

 

「おい守屋妹、お前いい加減にしろよ?

あいつらの間に恋愛感情があるかどうかはともかく、それは外野がとやかく言う話じゃねーんだよ」

 

「それは・・・でもあんただってカンケー無いんだからクチ挟まないでよ!」

 

「大アリだっての。

大喜はまぁ、親友って位置付けなんでな・・・言わせんな、恥ずかしい(///∇///)

さておき、仮にあいつらの間に恋愛感情があったとして、だ。

それは当人たちでカタをつける話だろ?興味本意の面白半分で茶化していい話じゃねーよ。

だから雛はあんだけ怒ったんだろ?

初めて見たぞ、あんな雛」

 

「わ、私はただ、ひなっちを応援しようと思っただけ「あいつがそれを頼んだのか?」で・・・」

 

「誰も言わないし言えないだろうから俺が言ってやるよ。

独り善がりで突っ走って周りに迷惑をかけても、それに気付いてない・・・ハッキリ言ってお前、ウザいよ」

 

「っ!?」

 

「雪、今のは菖蒲が悪いとは思うがその辺にしといてやってくれ」

 

「ハリーさん。妹の躾はちゃんとやっとけって花恋さんに言っといてくれ」

 

「それは・・・そうなんだが」

 

「なぁ守屋妹。お前は悪意が無かったんだろうけど、

“悪意が無いからこそ性質が悪い事もある”って覚えとけ。じゃハリーさん、後は宜しく~」

 

雛がケガした時程じゃないが、空気を悪くしたと感じた俺も食堂を出た。

 

すると

 

「雪くん!」

 

と、ナツ姉が追って来た。

 

「お、どしたん、ナツ姉?」

 

「あの、あんまり菖蒲ちゃんを怒らないであげて。TPOを考えてなかったのは確かだけど、蝶野さんの為を思ったって言うのは本当だと思うし、根は悪い子じゃないから」

 

「“だからこそ性質が悪い”って言ったんだよ。

ま、あいつがそれを自覚すんならそれで良いし、変わらなくてもまぁ俺には関係無いからな。嫌うも何もねーよ」

 

「それって、嫌うより余計に悪いんじゃ・・・」

 

「それよりナツ姉も言われてたけど、怒んねーで良いのか?」

 

「え?松岡くんはただの同級生だし、別に何とも?」

 

「・・・いっそ哀れだな、まっつん」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

雛を追って出たは良いけど、あいつ何処行ったんだ?

 

「雛が行きそうな所・・・あ~クソッ、学校ならともかく、合宿先だから分からん!」

 

走り回って体育館に来た。

 

「ここにも居ないか・・・ん?」

 

中二階の柱の影に、チラッとお団子が見えた様な・・・

 

思い切ってそこに向かうと、柱に寄り掛かって顔を伏せてる雛が居た。

 

「やっと見付けた~」

 

「え、大喜?何で!?」

 

「あ~、その、守屋さんに一言言おうとしたら、雪にお前を追えって言われてさ」

 

「そう、なんだ。ごめんね、折角ご飯食べてたのに雰囲気悪くしちゃって」

 

「いや、あれは守屋さんが悪い。文化祭の話を持ち出さなけりゃ、雛だってあんなに怒んなかっただろ?」

 

「・・・本当は劇の話はどうでも良かったんだ。ただ、私の大喜に対する想いが茶化されて軽く扱われてる様に感じたから、つい、ね」

 

「え」

 

・・・それじゃあ結局、「俺が雛を好きになるまで待ってる」って言って答えを待ってくれてる雛の気持ちに胡座かいて、のうのうと考えてた俺のせいでもあるんじゃないか!

 

そう思った時、ふいに今までの事が頭を過った。

 

中1で出会った時の事、夏祭りでりんご飴を買えずにガッカリしてた事、俺が買っておいたりんご飴を受け取って喜んでた事etc.・・・

 

そして高等部に入ってから今日に至るまでの、短くも濃密な俺たち4人の日々の記憶。

 

それら1つ1つを思い返す。

 

俺と雪、雛と千夏先輩、俺と千夏先輩、雪と雛、俺と雛、雪と千夏先輩・・・色んな思い出が、このたった数ヶ月に詰まっている。

 

そして練習試合で遊佐くんに勝った日の夜に見た夢・・・

 

「あぁ、そうか、そうだったんだ・・・」

 

「大喜?」

 

やっと雪が言ってた「憧れと恋愛は違う」の意味が俺なりに分かった、気がした。

 

「雛、今は取り敢えず戻ろう。本当は守屋さんにあそこまで怒る気は無かったんだろ?」

 

「・・・うん」

 

「じゃあさ、俺も一緒に居るから戻って話してみよう?あっちは雪が任せろって言ってたから、もしかしたら守屋さんかなり追い込まれてるかも知れないし」

 

「え!そうなの!?それはちょっと気の毒と言うか何と言うか・・・」

 

「行こっか」

 

そう言って手を差し出す。

 

「え・・・?」

 

驚きが隠せず、動揺する雛。

 

「ま、まぁ人の居ない間なら良いかな、って。あ、も、勿論嫌なら良いけど」

 

 

 

 

ー嫌なら良いけどー

 

照れながら手を差し出してくれて、そう言う大喜は顔が真っ赤になってる。

 

これが心配から来る行為だったとしても、私にはこれ以上無い気遣いだ。

 

だからー

 

「ふふっ、そんなにこの雛さまと手を繋ぎたかったのかな?大喜は。しょうがないなー、繋いであげよう」

 

わざとそんな天の邪鬼な物言いをして、そっと手を繋ぐ。

 

大喜の心の優しさを表すような暖かい手の温もりを感じて、頬が綻ぶ。

 

「じゃ、じゃあ食堂戻って守屋さんと話してみよう」

 

「うん!私も怒り過ぎてごめんねって謝んなきゃ」

 

「そこが雛の凄い所だよな。俺ならそう思っても、素直に謝れないと思うから」

 

「ふふん、この蝶野雛さま、自分に非があると思ったなら、素直に謝ることが出来るのだよ」

 

そう話しながら食堂の近くまで戻ると、数人が出てくるのが見えたので慌てて手を離す。

 

 

「お、猪股とひなっちじゃん、少しは落ち着いたみたいだな」

 

「あ、鷹尾くん。あれから守屋さん大丈夫だった?雪が詰めようとしてたけど」

 

「あ~、まぁ言い返せなくはなってたけど、雪ちゃんもそこまで追い込もうとしてなかったし、針生さんも助け船出してたから、多分大丈夫だろ」

 

「そうだね、守屋さんも、蝶野さんの気持ちを考えないで少し無神経に言い過ぎた、って反省してたし」

 

「蝶野さんが帰ってきたら謝んなきゃ、とも言ってたよ」

 

陣くんと鳴瀬くんもそう続ける。

 

「そっか・・・じゃあ雛も怒り過ぎた事を謝って、それで仲直り出来そうだな」

 

「うん、変に長引かないならそれが1番良いし」

 

「ありがとう皆。俺たちは食堂に戻って守屋さんと話してみるよ」

 

そう言って3人と別れた。

 

食堂に入ると、俯いたまま落ち込んでる姿の守屋さんが目に入った。

 

「ほら、雛」

 

そう言って促すと

 

「守屋さん!さっきは感情的になりすぎちゃった、ごめんなさい!」

 

雛が開口一番そう言うと

 

「何でひなっちが先に謝んのよ~、私が余計な事言ったから怒ったんじゃん~、ごベんなさい~」

 

と、涙を浮かべながら謝る守屋さん。

 

そんな守屋さんに近付いて手を取り

 

「うん!2人とも謝ったし、これで仲直りね!これからも宜しく!守屋さん!」

 

「菖蒲で良いよぉ、ひなっちぃ~」

 

「分かった、宜しくね、菖蒲ちゃん!」

 

「!・・・うん、宜しく、ひなっち」

 

 

「どうやら上手くいった様だな、大喜」

 

「針生先輩。はい、雪が雛を追わせてくれたお陰です・・・で、雪は?」

 

「多分春先のあの件と同じで、自分が空気悪くしたと思ったから出て行った」

 

「そうですか、後でお礼言わなきゃ」

 

それにやっと分かったこの気持ちについても、話さないといけないしな。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

実質最終日の今日は、少し早めに午後練を切り上げてキャンプファイヤーの準備に入る。

 

しかし雪の姿があれから見えないんだよな、どうしたんだろ?

 

辺りを見回すと陣くんが居たので声を掛ける。

 

「陣くん、雪知らない?」

 

「あ、猪股くん。雪ならやる事があるからって先生に許可貰って午後から宿の人と何かやってるって聞いてるけど、何をしてるのかまでは知らないなぁ」

 

「じゃあ宿に居るのか・・・ありがとう、ちょっと行ってみる」

 

陣くんに聞いたままに宿に戻るも、部屋にも姿は無い。

 

そこに通り掛かった宿の人に聞いてみると、厨房に居るとの事。

 

お礼を言って厨房に行ってみると

 

「よーし、メインはこれで完成、後は人数分より多めに焼いた小さい菓子類もこれでOK、と」

 

「いやー、それにしても鶴羽くん凄いね、ケーキやクッキーその他諸々作れるんだから。卒業したらウチ来ない?調理師学校の費用はこっちで出すからさ」

 

「んー、ありがたいっすけど、今は会えなくなった友達で兄貴分との約束でNBA目指してるんで、謹んでお断りさせて貰います」

 

「そっかー、残念。じゃあNBA行ったらウチの宿の宣伝お願いね」

 

「抜け目ねーなーw、了解っす。この宿の風呂と飯のお陰でキツい合宿にも耐えられました!ってねw」

 

「楽しみにしてる。お、そろそろ焼き上がるよ」

 

「おっと、それじゃあ準備しますかね・・・って大喜?」

 

「雪、デザート作ってたのか?」

 

「おう、責任監督の先生がこの合宿中に誕生日だってんでな。で、ウチの顧問に話して許可貰ったんだよ。お前こそ何してんの?」

 

「いや、話したい事があったんだけど、雪の姿が見えなかったから探してたんだ」

 

「話って、あの件か?」

 

「うん、雛を追い掛けて話した時に、やっと分かった気がするから」

 

「分かった。じゃあキャンプファイヤー始まる前に話すか・・・と、その前にこれの準備手伝え」

 

「え、どうすれば・・・」

 

「メインのケーキは俺がやるから、お前は焼き菓子を種類別に皿に盛り付けてくれりゃ良いよ。1人全種類行き渡っても余るだけは作ってあるから、ツマんでも良いぞ」

 

そう言われたので、シンプルなクッキーを1枚食べてみる。

 

「何コレ、うっま!」

 

「おー、そりゃ良かった。後で好きなだけ食べてくれや」

 

そう言って2人で準備を済ませて、後はBBQの最後にサプライズで出すだけになった。

 

「じゃ、BBQ終わる前くらいに取りに来ますんで、後お願いしまーす」

 

「はいよー、鶴羽くん、俺たちの分までありがとうね」

 

「場所提供して貰ったんだから当たり前っすよ、それじゃまた後で」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

皆が準備をしている場所から、少し離れた宿の裏手に来た。

 

「で、腹は決まったって?」

 

「・・・うん、まぁ」

 

「何だ歯切れ悪いな、まだ迷ってんのか?」

 

「あぁうん、何と言うか、本当に好きなのはどっちか自覚したんだけど・・・」

 

「けど、何だ?」

 

そう聞かれて顔を上げ、雪の目をじっと見つめる。

 

これは雪の言う所のけじめだ。

 

ここで俺の「憧れ」に対してけじめをつけなきゃ、告白する資格なんてない。

 

「雪が言ってた“けじめ”を俺もつけなきゃな、って。

“憧れ”に対して踏ん切りつけなきゃ、俺を好きだと言ってくれてる人に告白する資格なんてない、と思うんだ。

雪にとっては面白くないかも知れないけど、だからこそ雪には宣言しないと駄目だと思って」

 

「・・・そうか、覚悟は決まったみてーだな。

気にすんな、結果はどうあれって言っただろ?

どうする?呼んできてやろうか?」

 

「うん、頼む。俺が直接声を掛けると変に思われるかも知れないし、ここなら人も居なくて丁度良いから」

 

「分かった。俺は少し離れて内容は聞かないから安心しろ」

 

「別に聞かれても大丈夫なんだけど、折角気を利かせてくれてるんだからお言葉に甘えるよ」

 

 

 

そうか、大喜は雛を選んだか。

 

俺としてはありがたい事ではあるが、中学から想っていた相手を憧れと割り切るには、どれだけの葛藤があった事か俺には想像もつかない。

 

肝心のナツ姉は・・・と、居た居た。いつものメンツが揃ってら。

 

「おーいナツ姉ー、ちょっと良いかー?」

 

「どうしたの、雪くん?」

 

「ナツ姉と話したいって奴が居るから、ちょっと来てくれ」

 

「え、今?皆BBQの準備やってるよ?」

 

「そんなに時間掛かんねーから頼むよ。そいつにとってのけじめでもあるんだからよ」

 

「けじめ・・・うん分かった、行こう」

 

「じゃあちょっとナツ姉借りるなー」

 

「おやおや?これはもしかして?」

 

「もしかするのかな?」

 

「2人が思ってる様な事じゃねーよ。また後でな」

 

 

 

宿の裏手近くまで来たが俺はここまでだ

 

「この先で待ってるから、話聞いてやってくれ」

 

「分かった、行ってくるね」

 

  

 

雪くんに案内された先で待っていたのは、大喜くんだった。

 

「千夏先輩、来てくれてありがとうございます」

 

「ううん大丈夫、それで話って?」

 

 

すー、はーっ、と息を整える。

 

「俺は千夏先輩が好きでした!

中学の最後の試合に負けた翌日から朝練に来て、悔しくて泣いてる姿を見て、凄い人だと尊敬しました!

見た目も可愛くて綺麗で、それでいて人柄も良くて、俺から見れば“憧れの存在”です!

正直付き合えたら幸せなんだろうなと思っていました!」

 

 

大喜くんからの告白を聞いて、「あぁ、この人は見た目より先に私の内面を見てくれてたんだ」と、素直に嬉しく思った。

 

・・・でも

 

「好きでした、って事は今は違うんだね?」

 

「え、あ、いや、人として先輩としては好きですよ!?」

 

「でも恋愛対象としては違うって事だよね?」

 

「はい、俺が好きなのは雛です。

・・・でも、それに気付いたのは雪と千夏先輩のお陰です」

 

「え?」

 

「俺は千夏先輩を目で追ってたから千夏先輩が誰を見ているのかが分かったし、何より他の人に見せる顔とは全然違って輝いて見えましたから。

それを見て悔しいと思うより、不思議としっくり来ると言うか、収まるところに収まっている、って感じがしました」

 

「そ、そうかな?」

 

「はい。初めは嫉妬もしましたけど雪の人柄を知って、あいつが心底千夏先輩を大切に思ってる事も分かったので諦めがつきました。

でも千夏先輩を好きだと思った気持ちを無かった事にもしたくなくて、自分の気持ちにけじめをつける為にも告白しました!」

 

「じゃあ私もちゃんと返事しなくちゃね。

大喜くん、私を好きだと言ってくれてありがとう、そう言ってくれる気持ちは本当に嬉しい。

でもごめんなさい、私には他に好きな人が居ます。

だから私はその気持ちには応えられない」

 

 

一瞬の静寂の後、ザァーッと風が吹き抜ける。

 

 

「突然の告白なのに、丁寧に返事してくれてありがとうございました!

これからも先輩後輩として、仲良くしてくれたら嬉しいです!」

 

「うん、それは勿論だよ。蝶野さんも待ってると思うから、余り待たせないであげてね?じゃあ私は皆の所に戻るから、大喜くんも遅くならない様にね」

 

「はい、分かりました」

 

 

 

 

「これで良かったんだよね?」

 

「あぁ、ありがとなナツ姉。これであいつも未練無く雛と向き合えるだろ。俺は大喜とちょっと話してから行くからよ」

 

「分かった。大喜くんのケアお願いね」

 

その言葉に手を振って応える。

 

 

 

「・・・スッキリしたか?」

 

「うん、自分で決めた事だしこうなると分かっていたから耐えられるけど、フラれるってこんなキツいんだな・・・」

 

そう言いながらも、振り返った大喜の表情は晴れ晴れとしていた。

 

「お前はスゲーよ大喜、素直に尊敬するわ。俺ならビビって無かった事にして雛に告白してただろうからな」

 

「何言ってんだよ、今までの雪の言動見てきたからこそ、千夏先輩に今までの気持ちを伝えられたんじゃないか」

 

「・・・そうか。ま、これで後は雛の気持ちに応えるだけだな」

 

「うん、今日中に告白する!」

 

「そうか、じゃあ気合いとエネルギー溜める為にメシ食うぞ!」

 

「おう、その後は雪特製のデザートもな!」

 

「へっ、元気出てきたじゃねーか!その意気だ!」

 

「雪こそちゃんと千夏先輩に告白しろよ?先輩も待ってるんだろ?」

 

「あぁ、分かってるよ!」

 

 

そう言って俺たちはBBQの準備をしている所へ戻った。

 

 





漸く大喜は、千夏への思いに踏ん切りをつける事が出来ました。

後はそれぞれ、千夏と雛に告白するのみです。

それと菖蒲のやらかしについては、あれくらいで収めないと長くなりそうだったので短くしました。
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