アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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部活完全オフの日に雪は1人で街中をぶらついていたが、ある人物に声を掛けられて・・・


幕間~飛び入りバイト~

 

今日は1日オフって事で、たまには1人であちこち行ってみようと思い立ち、街に繰り出してみた。

 

「今まで気にしてなかったけど、けっこう楽しめそうな施設ってあるんだな。今度は皆で来てみるか」

 

そんな事を思いながら気の向くままに歩いていたら、大きな川の河川敷が目に入った。

 

「何でか水場って心惹かれるんだよなぁ」

 

そう言いながら、何かデカい魚でも居ねーかなーと川を見ながら歩いていると、人だかりが出来ている。

 

「んー?何かやってんのか?」

 

野次馬根性が鎌首をもたげたのでそれに従って見に行くと、どうやら何かの撮影をしている様だ。

 

「水族館の時と違って写真撮影だけみたいだな。これなら巻き込まれる事ぁ無いだろ」

 

察しの良い人なら分かっただろうが、これがまた要らんフラグだったのは言うまでもなかった。

 

 

   ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「良いねー花恋ちゃん、こっちに笑顔頂戴!」

 

カメラマンさんの指示の通り、笑顔を向ける。

 

「うんうん、じゃあ次は物憂げな感じで少し俯き加減でお願い!」

 

そうやって次々と出てくる指示に応えて表情を作る。

 

これが私、「守屋花恋」の仕事、モデルである。

 

「はーい、一旦休憩入りまーす!」

 

「お疲れ様、花恋ちゃん。疲れてない?」

 

「大丈夫です!楽しいから疲れなんて感じません!」

 

「ふふ、頼もしいわね。でも、無理だけはしないでね?仕事も大事だけど、貴女が身体を壊したら本末転倒なんだから」

 

「はい、分かってます、マネージャーさん。本当に辛かったらちゃんと言いますから」

 

そんな話をしていると

 

「え!来れないって?事故で電車が停まって動く気配がない!?う~ん、原因が原因だからそちらに落ち度は無いけど、困ったなぁ。

まぁこっちは何とかするから、君たちは鉄道会社の指示に従って無理しない様にね」

 

「何かあったんですか?電車が停まったって聞こえましたけど・・・」

 

「そうなのよー。花恋ちゃんとカップル撮影する予定だったモデルの子が、電車の事故で間に合いそうにないって連絡があってね。本当にどうしようかしら」

 

カメラマンさんもスタッフの皆さんも困り切ってる。

 

カップル撮影だから、私1人でどうにかなるものでもないし・・・そう思ってふと周りを見渡すと背の高い男の人が居た。

 

ーあれだけの背丈ならドラマや映画と違って写真だけなら何とかなるかも、それにパッと見容姿も整ってる様だしー

 

そう思って近付くと、それはちーの想い人である鶴羽雪くんだった。

 

これはチャンスだ!そう思った時には鶴羽くんに話し掛けていた。

 

「ねぇ覚えてる?鶴羽くん!私よ、ちーの友達の守屋花恋!今って時間ある?あるよね?撮影見てたんだから!」

 

「お?おぉ、分かってるよ花恋さん。どうしたよ?何か切羽詰まってそうだけど?」

 

「訳は後で話すからちょっと来て!」

 

「え?ちょっ、オイ、何だってんだ!?」

 

 

何か写真撮影してんなーって見てたら、ナツ姉の友達の花恋さんが必死な顔して近付いて来て、有無を言わさず撮影スタッフが居る所まで拉致られてしまったでござる。

 

「ちょっと花恋、急にどうしたの?それにこの子は?」

 

「ほら、前に友達の文化祭で執事やってた子の写真と動画見せたでしょ?それがこの子なの!」

 

「え!?あの完璧なまでに執事になりきってた子?」

 

「うんうん、だから写真撮影だけなら、完璧に熟せると思うんだよね!」

 

「ちょっと聞いてみるわ。カメラマンさ~ん、代役この子でどうかしら~!」

 

「え!?でも素人なんでしょ?ただ背が高いだけじゃ・・・」

 

何か俺の理解の及ばん所で話が進んでるし、カメラマンも人の顔見るなり言葉無くしちまってるし、説明プリーズ花恋さん。

 

「なぁ、花恋さ「良い!」ん?」

 

「良いわー、アナタ!ちょっとこっちに来て、川をバックに適当にポーズ取ってみて」

 

「は?俺ぁ一般人だぞ?ポーズなんか簡単に思い浮かぶかよ」

 

「無理にモデルがやる様なポーズじゃなくて良いの!こういうところで普段やってる様な感じで良いから」

 

んー、そう言われてもなぁ。

 

どうすっかなー、と普通にポケットに手を突っ込んで空を見上げてたら、バシャッとシャッターが切られた。

 

「良いねー、君良いよ!その思案に耽っている表情!」

 

マジか。何も思い付かないから、ただボーッと考えてただけなんだが。

 

「じゃあ鶴羽くんでOKですか?」

 

「えぇ、花恋ちゃんとカップル撮影に入りましょう。衣装さん、彼に合う服あるわよね?うん、大丈夫ね」

 

 

 

何か大事になってきてねーか?

 

「なぁ花恋さん、結局何がどうなってんだよ?」

 

「今日一緒に撮影予定だった男性モデルが、電車の事故で来られなくなってね。それでどうしようかって話してた時にキミを見つけたって訳」

 

「いや、見つけたって言われてもなぁ。さっきも言った通り、モデルなんて何すりゃ良いか分からねーぞ?」

 

「それは指示されるから、その通りしてくれたら大丈夫!」

 

「こっちは素人なんだから、その指示通りにってのが難しいんだがなぁ」

 

「文化祭の執事みたいに、モデルになりきれば良いんじゃない?」

 

いやいや、簡単に言うけど、学生の遊びみたいなもんとプロの仕事じゃ大違いだろうに。

 

そうこうしているうちに衣装が用意出来たらしく、バスの中で着替えてくれと指示される。

 

渡された衣装は普通の(と言っても、お高い)服だった。

 

「ふむ、こんなもんかね?」

 

そう言うと衣装さん?スタイリストさん?が、色々と直してくれる。

 

撮影の為のメイクもしなきゃならんって事で、人生初のメイクもされてしまったでごんす。

 

で、準備万端整ったって事でバスから降りて花恋さんたちの所へ行くと

 

ん?何か皆ボケーっとしてるな。どうしたんだ?

 

「おーい、これで良いんだろ?さっさと撮って終わらそうぜー」

 

「ハッ!そ、そうね、アナタ名前は?」

 

「鶴羽雪です」

 

「じゃあ雪くん、花恋ちゃんと並んでくれる?」

 

「はいよーっと。って、花恋さんもどうした?まだボケッとしてるけど」

 

「え?あ、だ、大丈夫。隣来て」

 

「おう。で、どうすりゃ良いんだ?突っ立ってるだけじゃ駄目な事くらいは分かるぞ」

 

「それも今から指示されるから」

 

「じゃあ先ずは花恋ちゃん、雪くんと腕組んでみて」

 

「はい」

 

うーわ、マジか。ハリーさんに殴られねーだろうな?まぁ仕事だから、何かあったら花恋さんに頼もう。

 

「良いねー。次は雪くん、バックハグしてみようか」

 

「は?んな難易度高い要求すんなよ、こっちは素人だぞ?」

 

しかも相手は先輩の彼女だから、ただでさえ触れ合う事が憚られてるってのに。

 

「はいはい雪くん、お仕事だからモデルになりきって!」

 

「あーもう、分かったよ。ハリーさんが怒っても知らねーからな?ちゃんと説明してくれよ!」

 

そう言ってバックハグ、所謂「あすなろ抱き」で花恋さんを後ろから包み込む。

 

「や、やっぱり健吾より大きいね。感覚が全然違う////」

 

「良いね良いねー、花恋ちゃんの恥じらいの表情もいただき!じゃあ次はその木を使って壁ドンっぽく迫ってみて」

 

ふーん、じゃあこんなもんかね?

 

花恋さんを木に寄り掛からせ、俺の右腕をL字に曲げて頭の上辺りに押し当て、左手で顎クイで俺の方に向ける。勿論微笑は忘れずに、だ。

 

「~~~////」

 

おや?花恋さんの顔が赤い。

 

流石プロ、そこまで自在に出来るのか、スゲーな。

 

「こ、これは・・・素晴らしい!次号の表紙はこれで決まりね!」

 

・・・何かカメラマンさんがえらい盛り上がってんな。まぁ悪くないってんなら良いか。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後も指示通りに色々と撮影していき、何とか全工程を終える事が出来た。

 

「あー疲れたー、やっぱスゲーな花恋さん、いつもこんな事やってんだから」

 

「まぁ自分で決めた事だしね。でも鶴羽くんも素人とは思えないくらいだったよ?」

 

「そりゃどーも。いきなりモデルの真似事させられて堪ったもんじゃなかったけど、まぁ知らなかった世界を知れて楽しかったトコもあるからな」

 

「あ、雪くん良かったよー。本当に一般人?」

 

「そうっすよ。何処にでも居る、普通の高1です」

 

「いや、君みたいな高1は普通には居ないからね?鶴羽くん」

 

「何でこう俺の知り合いってのは、段々と俺に対して遠慮がなくなったり辛辣になったりすんのかねぇ・・・」

 

「日頃の行いじゃない?」

 

「ハイハイ、そーですね。じゃ、もう良いんなら帰るけど?」

 

「あ、鶴羽くん、これ」

 

そうマネージャーさんから封筒を渡される。

 

ん?と思って中を見ると、渋沢さんが数人いらっしゃった。

 

「え!何すかこの大金!?」

 

「今日のバイト代。本当に助かったし、少し色つけといたからね」

 

「いやいやいや、ほんの2時間程度でこんなに貰えないでしょ!

何なの?この世界ってやっぱ金銭感覚バグってんの!?」

 

「あははっ、こんな慌てる鶴羽くんなんて中々見られないから、レアだね」

 

「鶴羽くん、これは貴方がした事に対する正当な報酬です。だから何も気にせず受け取りなさい」

 

マネージャーさんの真剣な眼差しを見て、根負けした俺は

 

「はぁ~、分かりました。有り難く頂戴します。

けど内訳みたいなの貰えます?

親にもちゃんと説明しなきゃならないんで」

 

「じゃあ今から用意するわね。

・・・それでなんだけど、やっぱりウチと契約しない?」

 

「だからバスケがあるから無理だ、って断ったでしょうが」

 

「う~ん、じゃあ今日みたいにたまに手伝うのは?」

 

「そうやって手伝わせといて、しれっと所属させるつもりじゃねーの?」 

 

「ソ、ソンナコトナイヨー」

 

「棒読みの時点でその気だったろ。まぁ今日みたいに本当にどうしようもないって状況で、タイミングが合えば手伝っても構いませんよ」

 

「本当に!?」

 

「あくまで“手伝いの範疇”な。

ま、割の良いバイトくらいに思っとくけど、そんなしょっちゅうは無理だからな?」

 

「うんうん、それで良いよ!それと今日撮影したのが載る雑誌が出来たら送るから住所を・・・」

 

「それは勘弁願いたいね。花恋さん経由でナツ姉に連絡してくれたら、取りに行ってくれるだろうし」

 

「くっ、残念!」

 

「なら鶴羽くん、連絡先交換しない?その方が早いでしょ?」

 

「・・・事務所関係に教えないってんなら、まぁ」

 

「分かった、約束する」

 

「じゃあ、はいよ」

 

「うん、ありがとね。じゃあ本出来たら連絡するから」

 

「なら今度こそお暇するわ。マネージャーさんもバイト代ありがとうございました。それじゃ」

 

そう挨拶して帰路についた。

 

「花恋ちゃん、彼の連絡先・・・」

 

「駄目です、約束したんですから。そんな事したら2度と手伝ってくれなくなりますよ」

 

「それは困る!」

 

「でもまぁ、何だかんだ言ってこっちが本当に困ってたら、彼の性格上助けてくれると思いますけどね」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あ~、参った。まさかモデルの真似事させられるとは思わなかった。

 

まぁ臨時収入もあったし、何か土産でも買って帰るかね。

 

そんな事を呑気に考えていた俺だったが、花恋さんが俺と絡んでる数枚の写真をナツ姉に送っていた事で、帰宅した途端に物凄い勢いで問い詰められる事になるのだった。

 

そして雑誌が出来たと連絡を貰ったので受け取りに行った時に聞かされたのが、かなりの反響があったらしく売り切れ続出で重版出来になっているとの事。

 

ほーん、まぁ花恋さんがそれだけ人気なんだろうし俺は関係無いだろ、としか思ってなかったが、これが後々の騒動の種になるとは微塵も思ってなかった。

 

序でに雑誌を見た全員、特にナツ姉とハリーさんから物凄い顔で見られた。理由もちゃんと話したのになぁ・・・解せぬ。

 





文化祭の話を書いてる時に思い付いたので、本編外でやってみたくて書いてみました。

オマケ
~撮影当日に花恋から写真を送られた千夏~

バスケ部は1日オフなので、雪くんは1人で何処かへ出掛けて行った。

「折角のオフなんだから、2人で何処か行きたかったのになぁ」

そう思いながらも1人で居る時間も余り無いから仕方ないし、今度のオフには付き合って貰おうと心に決める。

ピロン、とスマホが鳴る。

「ん?花恋からだ。・・・え、ナニ、コレ・・・」

そこには花恋と腕を組んで笑顔だったり、あすなろ抱きにしている雪くんの姿があった。

しかも花恋は「雪とデート♡」なんて書いて送って来ている。

「私を待たせておいてコレは無いよね。帰ってきたらオハナシしなきゃ・・・覚悟は出来てるよね?雪くん」

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