アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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自分の気持ちを自覚した大喜は、ついに雛の気持ちに応える事を決める。

そして雪も待たせていた千夏への思いを伝える事に。


EP36 BBQとキャンプファイヤー

 

「点火ー!」

 

その掛け声でBBQが始まった・・・のは良いんだが、我先にと用意されてる肉に群がり奪い合う野郎共。

 

いや、まぁバスケ部だけの時でもアレだったのに、流石に3つの部活が合同だと正に地獄絵図だな、こりゃ。

 

女子はともかく、男子のがっつき具合が本当に酷い。

 

明日で終わりだからほぼ打ち上げ状態だからとは言え、まぁ~見るに耐えない。

 

「男女別にしといて正解だな」

 

「あぁ、一緒だったら女子が全く食べられなくなってたと思う」

 

「とは言え、遅れてきた俺達も肉にありつけてないんだが、弱ったなこりゃ」

 

そう話していると

 

「おーい、お2人さん!コッチコッチ」

 

と呼ばれたのでそちらを向くと

 

「ここ空いてるからどうぞー」

 

「2人なら大歓迎!」

 

「・・・め、迷惑掛けたし、嫌じゃなかったらだけど」

 

おぉ、守屋妹までが招いてくれてる。

 

「でも良いのか?一応男女別で分けてんだし」

 

「先生たちにも、ありつけてない男子が居たら呼んでも良い、って言われてるから大丈夫!」

 

そう言うナギちゃん先輩の隣のナツ姉を見ると、うんうんと頷いていた。

 

「じゃ、お言葉に甘えますかね」

 

「なら俺もお願いします」

 

そう言ってナツ姉たちのグルーブに混ぜて貰う。

 

「いやー、しかし美味いなこの肉」

 

「雪、この野菜も美味いぞ!」

 

「お、確かに。自然な甘味が出ていて飽きが来ねーな。地元の契約農家や自前で育ててんのかも」

 

「あ、雪くん、これ」

 

そう言ってナツ姉が指差したのは、まだ袋詰めされたままのピーマンに貼られている写真だった。

 

「あ、これ、昨日のじいちゃんじゃねーか!そっかー、あのじいちゃんの野菜だったのか。ありがたく食べねば」

 

「昨日のじいちゃんって?」

 

「あぁ、昨日の夜ナツ姉が走ってる時に足くじいたばあちゃんが居てな、家まで送って行ったんだよ。

そのばあちゃんの旦那さんが帰りこの宿まで送ってくれたんだけど、それがこの野菜作ってるじいちゃんだったから驚いてな。人の縁ってどう繋がってるか分かんねーもんだよなー」

 

ーこの宿まで送ってくれたー

 

それを聞いて、車の後部座席で雪くんと手を繋いだ事を思い出してカ~ッとなる。

 

「ん?どしたナツ?顔赤いよ?」

 

「あ、近付き過ぎたかな、ちょっと熱いね」

 

そう言って誤魔化した。

 

 

 

「ねぇ大喜、これもう焼けてるよ」

 

「あ、本当に?じゃあ貰って良い?」

 

「だから教えたんじゃん」

 

おーおー、仲が宜しい事で。

 

そう思ってる所に匡が近付いて来る。

 

「大喜の奴、何か吹っ切れた様に見えるな」

 

「あぁ、あいつも腹決まったからな」

 

「そうなんだ、やっぱり蝶野さん?」

 

「まぁな」

 

そんなやりとりをしていたら、守屋妹が近付いてきて

 

「昼間の事は悪いと思ってるけど、やっぱりあの2人の友達みたいなカップル、憧れるんだよなぁ」

 

「・・・守屋さん、相手振り回しそうだよね」

 

「そんな事ないと思うけど。もしそうだとしても、それで良いって人と付き合ってるから。だから恋愛って、圧倒的に好かれる方が幸せだよね」

 

「じゃあ好いてる側はどうやって幸せになるの?」

 

「え?」

 

「守屋さんって、告白されても余り長続きしてないよね?失礼だけど説得力ないよね?」

 

「はぁっ!?」

 

言いたいだけ言って去っていくメガネくん。

 

何なの、横から口出しメガネ~!あんただって彼女居ないだろーっ!

 

「ムカつくっ・・・!」

 

「・・・匡があそこまで言うなんてな。あいつも恋愛絡みで何かあったのかねぇ?」

 

「鶴羽、くん。何か知ってるの?」

 

「あー、雪で良いぞ。いや、前に何かあったからあんな言い方したんじゃないか?って思ってな」

 

「ふーん、あの皮肉な言い方で嫌われたとかじゃないの?」

 

「さてな」

 

まぁ、いつか話してくれたら良いんだがな。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

始まってからそこそこ時間が経ち、皆お腹いっぱいになってきた所で先生の1人が、「はい、注もーく!今日は引率監督の先生の誕生日です!サプライズでケーキを用意しましたー!拍手ー!!」

 

その声を合図にケーキと何かが運ばれてくる・・・って、雪くん!?昼間姿が見えないと思ったら、こんな事してたの?

 

「さー、皆さんお立ち会い!先生の為に作った1品だぁ!どうぞご照覧あれぃ!!(ゴドリック感)」

 

そう言って蓋を開けた中から、見事なイチゴのショートケーキがホールで現れた。

 

「え!?これ、雪ちゃんが作ったのか!?」

 

「鶴羽くん、ケーキ作れるの?」

 

「お前、ホントに何でもアリだな・・・」

 

と、皆が驚きを口にする。

 

「まぁ流石に全員に行き渡るだけは無いから、代わりにコイツで我慢してくれ」

 

そう言って大喜くんと宿の人が持ってきたトレーに乗っていたのは、クッキーやマカロンだった。

 

「一応全種類、最低でも1つは全員に行き渡るだけ作ったから嫌いでなけりゃあ全種類食べても良いし、好きなのだけ食べてくれても良いからなー」

 

「キャー!鶴羽くんの手作りクッキー!」

 

「私、マカロンには一家言あるわよ?」

 

「でもケーキも食べてみたいし、余らないかしら?」

 

と、これには全女子が感動していた。

 

勿論、私もだ。

 

「ねぇ、昼過ぎから居なかったのって」

 

「あぁ、合宿中に引率監督の誕生日が来るって聞いてたから、ちょっとしたサプライズだ」

 

「言ってくれたら手伝ったのに」

 

「流石に副キャプテン且つエースが抜けたらマズいだろうと思ってな」

 

「む~、自分だってエースの癖に・・・」

 

「男バスは寧ろ俺抜きでの試合運びの連携高めた方が良いんだよ、まっつんも来た事だしな。俺ぁどうせマークがキツくなるのが目に見えてんだからよ」

 

「そのマークも居ないみたいに振り切るクセに?」

 

「はいはい、もう良いだろ。ほらハッピーバースデー歌ってさっさと食べてくれ」

 

俺の一言で皆で先生にハッピーバースデーを歌い、ケーキを切り分ける。

 

「じゃ、どうぞ召し上がれ~」

 

「うん!?これは美味い!鶴羽お前、こっちの道に進むのもアリだな」

 

「BBQ前に宿の旦那にも誘われたけど、俺の目標はあくまでもNBAだからってんで断ったよ。さて、後は早いもん勝ちだからなー」

 

そう言ってしれっと一切れ確保してから、その場を離れる。

 

「さて、デキはどんなもんかね?」

 

そう言ってフォークを入れて食べようとしたが

 

「美味しそう、自分だけ?私の分は?」

 

ナツ姉が現れた、ケーキを狙っている!

 

「いや~、先生たちの分と残り少ししかないから、製作者権限で一切れだけ確「私の分は?(ニコッ)」保」

 

あ、駄目だ、これ食べさせるまで続く奴だ・・・

 

「はぁ~、分かったよ。ほら」

 

そう言って皿ごと渡そうとするも、受け取ろうとしない。

 

「ん、どうした?ほら持ってけよ」

 

「全部は要らないよ?だから」

 

あーん

 

・・・またか!?またこのパターンなのか!!

 

しかもこんだけ人が居る場でかよ!

気付いた奴ら、特に野郎共からの視線が凄い事になってんだが・・・

 

ナツ姉、外堀も内堀も埋めに来てねぇ?

 

あ~~~クソ、分かった、もう知ったことか!

 

「ホラよ、ナツ姉、あーん」

 

「あーん。ん~、美味しい!」

 

「そりゃようござんした。お陰で周りからの視線が凄い事になってんだがな?俺が明日の朝日拝めなかったら、どうしてくれんの?」

 

「え?あ、美味しそうだったからつい・・・」

 

「“つい”でやって良い事じゃねーだろ、全く」

 

 

 

「ねー雪くん。キャンプファイヤーのジンクス知ってる?」

 

そうナギちゃん先輩が聞いてくる。

 

ん?キャンプファイヤーのジンクス?何のこっちゃ?

 

「それが何の事かは知らねーけどよ、キャンプファイヤーで火事でも起きた事でもあんのか?

ジンクスって縁起が悪いとか不運を招くって意味だぞ?」

 

「え!そうなの!?」

 

「あぁ、英語だとそうだな。

日本でもプロ野球とかで1年目に活躍しても2年目が鳴かず飛ばずだと“2年目のジンクス”って言うだろ?」

 

「確かに・・・え、でも今まで言われてきたのに・・・」

 

「何で無駄に英語使うのかねぇ。

言い伝えや伝説とか伝統にすりゃあ良いものを。

で、そのジンクスって何よ?」

 

「キャンプファイヤー中に告白して成功して付き合ったら、ラブラブになれるって話」

 

「それってキャンプファイヤー関係無く、告白が成功したら普通はラブラブになんじゃねーの?」

 

「そう言われたら確かに・・・」

 

「ま、高校生の青春の1ページって奴かね?

それにこんなイベントでもなけりゃあ、告白する決心がつかないって奴も居るだろうしな。

そう考えたら悪い話でもないと思うから、やりたい奴はやりゃあ良いと思うわ」

 

「雪くんは?」

 

「俺ならそんなもんに頼る気はねーな。全然関係無い所で告白するわ。ま、相手がそれを望んでんなら構わねーけどな」

 

「だそうですよ、千夏さん」

 

「え!////な、何でそこで私に振るのかな?渚」

 

「え~、そりゃあだって、ねぇ?さっきの“あーん”なんて見せつけられたらさぁ。あ、結局ケーキの残りはどうしたの」

 

「ん?食べたけど?」

 

「フォークはそのまま?」

 

「そりゃそうだろ?変える必要無いしな。それがどうかしたか?」

 

そう言うとナギちゃん先輩は、部活関係無く集まってる女子ーズの方へと歩いていく。

 

「今の発言どう思う?」

 

「アレは“全く女性として意識してない”か、“2人にとっては当たり前だから気にしてない”かの、どっちかでしょ」

 

「私は後者と見た」

 

「幼馴染みだし、鶴羽くんは半分アメリカ育ちだから前者かなぁ」

 

何こそこそ話してんだ?

 

そう思った所で、裾を引っ張られる。

 

「けじめ、ついたんでしょ?」

 

「あぁ、俺も大喜も気持ちの整理はついた」

 

「じゃあ、もう良いよね?」

 

「俺は合宿が終わったら、って言った筈なんだが?」

 

そう話していると歓声が聞こえたのでそちらに目をやると、キャンプファイヤーの前で告白してる男子が居て、告白された女子がそれを受け入れていた。

 

・・・あれを俺にやれと?

 

俺の裾をつかんだまま、それをじーっと見つめるナツ姉。

 

そして

 

「いいなぁ」

 

と、ポツリと零す。

 

はぁ~~~、どうすっかなぁ・・・・・

 

 

 

   ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さみぃ」

 

「上着どうした?」

 

「あー、体育館に置きっぱだわ。取りに行ってくる」

 

匡に聞かれた俺は、そう答えて上着を取りに体育館に戻った。

 

 

 

あれ?嫌みメガネと話していたのに、いのたが1人で体育館に入って行った?

 

・・・昼間ゆっきーに怒られたけど、これはひなっちにとってチャンスだよね?また怒られるかも知れないけど、ひなっちを応援したい気持ちは嘘じゃない。

 

だから

 

「ひなっちひなっち。音響の機材が不調みたいで、予備が体育館にあるみたいだから取ってきてくれない?2階の資材置いてある所にあるみたい」

 

「いいよ!」

 

「ごめん、お願いね。それとまだ時間に余裕あるみたいだから、慌てなくて良いからね!」

 

「?うん、分かった」

 

 

 

菖蒲ちゃんに頼まれて体育館に機材を取りに来たら、大喜と出会した。

 

「どうした、雛?」

 

「何か機材の調子が悪いらしくて予備を取りに、って菖蒲ちゃんに頼まれて」

 

「あのマネージャー、誰でも直ぐこき使うな」

 

 

 

 

ー協力するー

 

ー遅くなってもいいよー

 

あー、これはわざとだな、菖浦ちゃん・・・

 

そう考えてると

 

「何の機材?手伝うよ」

 

と言ってくれる。

 

2Fの資材の置いてあるであろう場所に来てみたが

 

「ん~、なくね?」

 

ー菖蒲ちゃんが適当言った可能性があるな・・・ー

 

ふと窓の外を見るとキャンプファイヤーが見えた。

 

「あ、ここからもキャンプファイヤー見えるんだね」

 

「ホントだ。離れてるから逆に幻想的だな。あ、西田先輩踊ってる」

 

「ちょっと、ここで見ていこうよ!」

 

「確かにちょっと疲れたな。ゆっくりして行くか」

 

「年がら年中走り回ってる大喜でも、疲れるとかあるんだね」

 

「ふん、バス移動のお嬢ちゃんとは消費エネルギーが違うんだよ」   

 

「私たちも朝ダッシュしたもん!」

 

「と言うか、俺たちより走ったり跳んだりしてるのに、時間貰ったとは言えデザートまで作る雪って何なんだろうな」

 

「あいつは正真正銘、人の皮を被った化物だと思う」

 

「・・・だよなぁ」

 

「それより大喜は中3の時、修学旅行中なのにホテル抜け出して朝走りに行ってさ」

 

「日課なんだよ」

 

「でも怒られてたよね」

 

「皆がいじるから先生にバレたんだろ」

 

「あとあと、中2のキャンプの時、皆でケイドロしてさ」

 

「あぁ、俺だけ逃げ切ったやつね(ドヤ顔)」

 

「大喜、華麗なステップ見せてて、あれは笑った」

 

「褒めてないな。それなら俺も見てたぞ、雛が真っ先に捕まって暇そうにしてたの。逃がされても直ぐ捕まって」

 

「あの時は靴紐がっ!」

 

「はい、言い訳ー」

 

「能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ!」

 

「2回目も序盤に捕まってただろ。しかも逃がされてんの気付いてないし」

 

 

 

そんな他愛のない話をしていて改めて思う。

 

 

ーあぁ、やっぱり私は大喜が好きだー

 

 

告白した時の鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔はとても愉快だったし、私が大喜振り向かせ大作戦で何か言って大喜が赤くなってくれたりすると、“ぶわぁぁぁっ”てなって、心の中でチビヒナが小躍りする。 

 

文化祭の白雪姫だって大喜が王子役だったらって、妄想したりもした。

 

本当にそうなった時は緊張でどうにかなりそうだったけど、私はあの光景を一生忘れない。

 

大喜は知らないだろうな。

 

あの時ー・・・“本当にしてくれてもいいのに”って、思ってたこと。

 

あの静かな教室で、私の身体は熱を持って、心臓が痛いくらい脈打ってたこと。

 

「雛?」

 

「え?何?」

 

「いや、何かボーッとしてたから」

 

「ねぇ大喜、ちょっと聞きたい事あるんだけど」

 

「何だよ?」

 

「王様ゲームの時、本当は何て答えるつもりだったの?」

 

「それは・・・」

 

「私一瞬、千夏先輩が好きって言っちゃうのかと思った!

でも大喜意外とヘタレで真面目だしなぁ。

あんな状況で告白するようないい加減な奴じゃないもんね。

あ!別に告白しても良いんだよ?最初からそう言う約束だったし。

私は全然平気だから、大喜以上に頑張れば良いんだもん。正直ズキッとくる事もあるけどさ・・・」

 

そこで一度言葉を切る雛。俺はそれをただ聞く事しか出来なかった。

 

そして

 

「そんな事がへっちゃらなくらい、大喜のこと大好きだから!」

 

 

改めて雛から好きだと言われて凄く嬉しい。

 

でもそれに応える前に、ちゃんと話さなきゃいけない。

 

「雛」

 

「ん?」

 

「ごめん」

 

「ごめんって、何が?」

 

少しの間をおいて大喜が口にした言葉を聞いて、私は頭の中が真っ白になった。

 

 

 

ー千夏先輩に告白したー

 

 

 





さて、雪と大喜共に少し面倒臭い感じになってます。

が、4人とも不幸にはなりませんので。
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