アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

48 / 85

最終日前の夜、遂に告白した雪と大喜。

お互いの想い人からOKを貰い、恋人関係になる事が出来た。

迷走していた恋愛模様に決着がついた今、部活で次の目標に向かって新しいスタートを切る。



EP38 秋合宿③ ~報告を添えて~

 

あ~、よく寝た。

 

昨日キャンプファイヤーで千夏に告白してOKを貰い、無事恋人関係になった。

 

大喜も雛に告白してOK貰って、こちらも無事カップル成立したので俺としても一安心である。

 

そんな事を考えていると

 

「おはよう雪、早いな」

 

大喜に声を掛けられる。

 

「おう、おはようさん大喜。どうよ?彼女が出来て最初の朝を迎えた気分は?」

 

「え、べ、別にそんな変わった事は特に無いけど」

 

「そりゃそうか。俺だって特別何か変わった感じはしてないからな、今んトコ」

 

「まぁ雪と千夏先輩の場合は同居してるんだから、俺たちより元々距離が近いってのもあるんじゃないか?」

 

「かもな。ただ同居してるからこそ、これから大変になるんだよなぁ・・・理性抑えんのに」

 

「な、成る程、確かにそれはあるかもな」

 

「考えてみろ、風呂上がりにシャンプーか何かの良い匂い漂わせて上気した顔して、部屋着でその辺歩き回ってる自分の彼女の姿を!」

 

雪にそう言われて、雛が俺の家でそんな感じで居る所を想像する。

 

「・・・ぐはっ!?」

 

「な、そうなるだろ?想像だけでそれなのに、現実で毎日それなんだそ?コッチは」

 

「雪のメンタルの強さの秘密が、1つ分かった気がする」

 

「と言う事で、少しでも煩悩捨てる為にひとっ走りしてくるわ」

 

「じゃあ俺も・・・」

 

そう口にした所で

 

「いや、お前はここに居ろ。

俺と千夏と違って多分雛は朝起きて“夢だったんじゃないか?”と不安になるだろうからな。

ここに居りゃあ直ぐ目に入るし、お前から声掛けてやれば安心すんだろ」

 

・・・成る程、確かにそうかも。

しかし雪って本当に面倒見が良いし、考えが同い年とは思えない時がある。

 

「分かった、そうする」

 

「じゃ、俺はその辺一回りしてくるわ」

 

そう言って外へ出て行った。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

朝が来て目が覚める。

 

ー他の誰よりも雛が大好きだ!ー

 

昨日の告白を思い出す。

 

大喜に告白されて嬉しくて、OKして恋人になった。

 

あれは夢じゃないよね?現実だったよね?

目覚めたばかりだからか、夢か現実か頭がハッキリしない。

 

もし夢だったらどうしよう、現実は千夏先輩と付き合ってたらどうしよう、そんな事を考えてしまう。

 

このまま布団の中に居たら余計な事ばかり浮かんで来そうだから、起きて着替えよう。

 

外の空気を吸えば少しは頭もスッキリする筈だ!

そう思って玄関に向かうと、ロビーに大喜が居た。

 

不意打ちの出会いに心臓がドクンッと跳ねる。

 

何を言おうか逡々していると

 

「おはよう雛・・・夢じゃないよ、俺の彼女さん」

 

「っ!おはよう大喜、私の彼氏くん」

 

良かった、夢じゃなかった。

 

しかもそれを1番言って欲しい人の口から聞かされて、私はまた嬉しくなった。

 

「・・・やっぱり雪って凄いな」

 

「え?どうして?」

 

「少し前に走りに行くって言うから、じゃあ俺もって言ったら、“多分雛は夢だったんじゃないか不安になってるだろうから、ここに居て安心させてやれ”って言われたんだよ」

 

「何かそれ、もう未来視かなんか?って言いたくなるくらいに怖いんだけど、一周回って“まぁ雪だし”で納得出来るのよねぇ」

 

そう話していると

 

「おはよう、雛ちゃん大喜くん」

 

千夏先輩改め、ちーちゃんがやって来た。

 

「おはよう、ちーちゃん!」

 

「おはようございます、千夏先輩」

 

「朝から仲良いね、2人とも。何の話で盛り上がってたの?」

 

「雪の怖いまでの洞察力です」

 

雛と話していた事を話した。

 

「んー、確かにそんな所あるよね。

多分だけど雛ちゃんや大喜くんの気持ちも、早いうちに見抜いてたと思う。大喜くんの場合はBBQの時には確信してたみたいだしね」

 

「そうですね、2人きりで買い出しに行かされましたから」

 

「私はたまたまそれを見たんですが、それを雪に相談した時にはバレてました」

 

考えれば考える程、雪の規格外っぷりが分かる。

 

ん?でもそれなら千夏先輩の気持ちにはいつ・・・?

 

「あの、それなら千夏先輩の気持ちにはいつ気付いたんでしょうか?

あいつは自分の気持ちを自覚した時に、俺に対して千夏先輩が好きだと宣言してましたし」

 

「それは多分、雪が熱出して休んだ日だと思う。

あの日雪の部屋で倒れそうになった彼を支えきれずに、ベッドに押し倒す格好になっちゃって・・・」

 

「えぇっ!それでそれで、どうなったんですか!?」

 

雛が恋バナ好きな、いち女子高生になっちゃってるよ・・・

 

「それで暫く見つめ合ってたんだけど、おでこの冷却シートが取れ掛かってたのを直すフリして手で目を覆って目隠ししてね、その、ほっぺにキスをした、時だと思う////」

 

「きゃ~~~っ!ちーちゃん、大た~ん!」

 

「な、成る程、それは流石に分かりますね」

 

「雪も呆然としてたし、流石に私も恥ずかしくなったからキッチンまで逃げたんだけどね」

 

そんな話に花を咲かせていたら

 

「お、2人とも起きたのか、おはようさん」

 

と、雪が帰って来た。

 

「おはよう雪、大喜に待ってろって言ってくれたんだって?ありがとね」

 

「おはよう雪、はい」

 

「ん?朝もやるのか?まぁ良いか」

 

と、昨夜と同じくハグをする2人。

 

「・・・大喜、はい」

 

「えぇっ、俺たちも!?」

 

「嫌?」

 

こてんと小首を傾げて、しょんぼりする雛。

 

何、この可愛い生き物ーっ!

 

「おいおい、彼女がこんだけしてくれてんのに、何やってんだ?彼氏くんよぉ」

 

「そうだよ?恥ずかしいのも分かるけど、まだ誰も居ないんだから雛ちゃんに応えてあげないとね」

 

「じゃ、じゃあ、はい」

 

そう言って、ぎゅっとハグをする。

 

昨日もそうだったけど、恥ずかしいけど堪らなく嬉しい。

 

あぁ、本当に雛と付き合ってるんだと実感する。

 

「や、やっぱりまだ恥ずかしいね////」

 

「ま、まぁ、まだ昨日から付き合ったばかりだし・・・」

 

「これからもっと、あーんな事や、こーんな事もするだろうかr痛っててて!」

 

千夏に耳を引っ張られる。

 

「もう、雪は少しからかいが過ぎるって言ってるでしょ!・・・ごめんね、2人とも」

 

「あ、えっと、まぁ雪ですから」

 

「そうそう、ちーちゃんがそうやって手綱握ってくれてたら大丈夫でしょ!」

 

・・・俺と千夏に対する、この扱いの差よ

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「帰りのバスは17時でー」

 

「それまで試合をー」

 

「荷造りは先にー」

 

等々、教師陣からの指示を受けて準備をする。

 

「匡、俺先に体育館行ってるわ」

 

「練習30分後だぞ」

 

「サーブ練したくて」

 

「そう」

 

 

 

 

誰も来てないコートでサーブ練をする。

 

昨日、雛に告白して受け入れて貰えた事を思い出す。

 

ー気持ちをハッキリさせた事で、余計な迷いが無くなってプレーに集中出来てる気がするー

 

徐にシャトルを打ち上げ、落ちてきた所を全力でスマッシュを打つ!

 

バチッ!と言う音を立ててコートに突き刺さる。

 

「インッ」

 

「針生先輩」

 

「最終日でも、動きは鈍ってなさそうだな」

 

「これしきの事でへばってたら、勝てないので」

 

「おっ、いいねぇ~。じゃあ、1試合願おうか」

 

 

 

 

キュッキュッとシューズの音が響く。

 

13-6

 

全然点取らせてくれない。

 

最近試合してくれないと思ったら、また強くなってる。

 

追い付きたい、負けたくない、針生先輩が強くなるなら、俺だってもっと上手くなれるはず。

 

もっと、もっと・・・

 

ポン、とシャトルがシングルスラインの外に落ちる。

 

「アウトッ、ゲームセット。ありがとうございましたー」

 

「えっ!!もう1ゲーム!!」

 

「言うと思った。終わり終わり。一応合宿最終日で疲れてんだよ、こっちは」

 

「勝ち逃げだ・・・」

 

「俺さ、正直お前と試合するの、怖かったんだよね。」

 

「え・・・(針生先輩が?)」

 

「ダセェよな。兵藤さんには結局勝てず終いで勝手に引退しやがったから・・・練習試合とは言え1年の遊佐くんにも負けて、その上大喜にまで負けたら流石の俺も自信無くしそうだったから・・・ま、俺が勝つんだけどな、結局のところ」

 

「あー、そーですか」

 

「試合して良かった。いつまでも逃げてる方が情けねぇしな。負けるのが怖いとか、やっすいプライドがズタズタになるのとか、そういうの全部受け止めて噛み締めて、血肉にして這い進む。

それが強さだって、俺は思ってるから」

 

「みんな強いですね」

 

「何言ってんだ、お前もだろ。それにそんな強さを体現してる奴が傍に居るから、尚更そう思う」

 

「確かに。あいつの過去を知ったら、どれだけ甘えていたかって思い知らされましたし」

 

「ま、お互いまだまだ強くなれるって事だ」

 

「はい!」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さー、合宿も終わりだ、お世話になったホテルの方にお礼を言ってからバスに乗り込めー!」

 

「「「「ありがとうございましたー!」」」」

 

「鶴羽くん、次来た時は最初から何か作る?前もって教えてくれたら食材用意するよ?」

 

「そうですね、その時はお願いします」

 

「じゃあ連絡先交換しとこうか?」

 

「なら、お願いします。親にもこの宿はオススメって言っときますね」

 

「お、ご新規さん獲得だ!ありがとうね」

 

「いえ、それじゃあお世話になりました」

 

「うん、彼女さんと仲良くね」

 

「あら、知ってました?」

 

「そりゃあキャンプファイヤーでの告白は、栄明の伝統みたいなもんだからね。

OBとしてはやっぱり気になっちゃってちょっとだけ覗いてみたら、丁度鶴羽くんが告白する所だったんだよ。しかしキミ本当に凄いね、あれだけの人の前で、まったく動じない処か逆に煽るくらいだったし」

 

「ま、あれくらい言わなきゃ寄ってくる虫が多いんでね」

 

「おーい、そろそろ出るぞー」

 

「はいよー!じゃ、また来年お世話になります」

 

「はい、お待ちしてます」

 

そう挨拶を交わしてバスに乗り込む。

 

「さて、これで全員揃ったな?ではお願いします」

 

バスが走りだし、都合4日お世話になった宿が小さくなって行く。

 

 

本当に色んな事があったなぁ、この4日間。

 

1番の変化は、やっぱり千夏と恋人関係になった事だよな。

 

それと大喜と雛が付き合う事になった事もか。

 

大喜に言った通り、ちょっと落ち着いたらウチでパーティーやろうかね。

母さんもノリノリでやってくれそうだし、何なら由紀子さんも呼んで雛を紹介させるってのも良いかもな。

 

そんな事をあれやこれやと考えているウチに、バスは学校に到着した。

 

 

 

「ではこれで合宿を終了する。気を付けて帰宅する様に」

 

「「「「ありがとうございましたー!」」」」

 

最後の挨拶を済ませて、各々帰路に着く。

 

 

 

暫く歩いて立ち止まり

 

「ん~、流石に疲れたぁ~」

 

と伸びをしていると、トンッと背中に衝撃がある。

 

「おぉっと、何だぁ?」

 

振り返ると千夏が抱きついていた。

 

「もー、何で彼女を置いて1人でさっさと帰るかなぁ?」

 

「そりゃあ、同居バレしたらマズいからだよ」

 

「・・・もう良くない?」

 

「いや、付き合ってるから邪推されてヤな思いするかも知れねーだろ?」

 

「それはそうなんだけど」

 

「ま、それは今後考えるとして、代わりと言っちゃあ何だが次の休みどっか行くか?」

 

「ホントに!?じゃあ行きたいカフェがある!」

 

「ん、OK。その後の事はカフェで話して決めるか?」

 

「うん、やった!なら次の土曜は?午前練だし」

 

「決まりだな。じゃあ帰るか」

 

スッと手を差し出せば、迷わず繋いでくる。

 

「優花さんに報告しなきゃね」

 

「あぁ、驚くか喜ぶか・・・両方かな?」

 

「お母さんにもしなきゃ」

 

「なら、冬樹さんには俺から連絡しとくわ。ちゃんと節度あるお付き合いしますってな」

 

「え、大丈夫?お母さんから言って貰った方が」

 

「俺から言う事に意味があるんだよ。俺と千夏を信じてくれって意味でな」

 

「そっか・・・うん、そうだね!」

 

 

2人で話しながらだと、直ぐ家に着いた。

 

 

「さて、我がママ上はどんな顔しますかねぇ」

 

「優花さんなら喜んでくれると思うよ?」

 

 

 

 

「「ただいまー!」」

 

「お帰り、疲れたでしょう?お風呂沸いてるしご飯の前に入ってらっしゃい」

 

「あぁ、ありがとな。でもその前に報告がある」

 

「報告?何の?」

 

そこで千夏と目を見合わせ、肩を抱き寄せる。

 

「千夏に告白して、正式に付き合う事になった」

 

「雪からの告白を受けて、恋人関係になりました////」

 

「・・・・・・」

 

ん?無反応?

 

「母さん?ど「良かったーっ!」うぉい!ビックリしたー!」

 

「だって~。千夏ちゃん、ずっとあんたの事で悩んでたから~」

 

「優花さん、ありがとうございます。でも、雪もずっと悩んで迷ってましたから」

 

「あぁ、これで千夏ちゃんが私の娘になってくれるのね、何て幸せなのかしら。クソ生意気な息子より、やっぱり可愛い娘の方が良いわ~」

 

「クソ生意気な息子と来たか・・・」

 

「えっ!む、娘って////、優花さ「お義母さんと呼んで良いのよ!千夏ちゃん!!」ん?」

 

「諦めろ千夏。暫くはこのままだろうから、風呂入って来た方が良いぞ、俺ぁ取り敢えず部屋に戻るわ」

 

「あ、じゃあ私も。優花さん、また後で」

 

「は~い、待ってるわね、千夏ちゃん♪」

 

 

 

 

「は~、あそこまで浮かれるとは思わなかった・・・」

 

「流石に私もビックリした・・・けど、ちょっと嬉しいかな」

 

「あんまり滅多な事言わん方が良いぞ、あそこまで浮かれてんのは初めて見たからな」

 

 

着替えてリビングに降りた俺たちが目にしたのは、

 

「そうなのよー、やっとあの2人がくっついてくれて、私は本当に嬉しくて嬉しくて。

え?大喜くんにも彼女が出来たの!?じゃあ今度はウチでパーティーね!日程調整しなくっちゃ!さぁ忙しくなるわよー!!」

 

どうやら由紀子さんと、お互いの息子に彼女が出来た事を話している様だ。

 

「・・・こりゃあもう、止まらんな。話し終わったら次は春菜さんにメッセージからの通話になんのが目に浮かぶわ」

 

「私からしといた方が良いかな?」

 

「放っとけ放っとけ、好きにやらしときゃあ良いんだよ。準備自体は出来てるから俺たちは飯食おうぜ、腹減って仕方ねーよ」

 

「そうだね。優花さんのご飯、冷める前に食べなきゃ勿体無いし」

 

 

それから俺たちが晩飯食い終わっても、延々と話し続けてたよ、あの人たち・・・

 





ママーズは息子に彼女が出来た事を大喜びしてます。

由紀子さんは千夏の事しか知らないので尚更驚いて、雛の写真を見て喜んでます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。