アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
午前で練習が終わる土曜日、千夏が行きたいと言うカフェに向かった雪だが、そこで意外な人物と出会して・・・
更に千夏にとっても、雪と同じくらいに大切な思い出のある人物との再会がー
「そのカフェって前に渚と行ったんだけど、そこのアップルパイが私史上1番おいしかったから、雪にも食べてほしくて」
「へ~え、そりゃあ楽しみだ」
カラーン
「いらっしゃいませー」
「2名で宜しく」
そう言って店内に入ると
「1人なのー?」
「せっかくだし、お話しよーよ」
と、2人連れの女性に声を掛けられてるまっつんが居た。
「松岡くん」
「ナツー!こんな所で会うなんて運命的だね!ここ座んなよ、他空いてないし・・・あれ、鶴羽くん?何で一緒に・・・」
「何でも何もデートだよ。まっつんも合宿に居たんだから、俺と千夏が付き合い出したの知らない訳ねーだろーが」
「・・・とにかく座んなよ」
「あ、私お手洗いに・・・」
「おう、行ってら」
「鶴羽くん、今がチャンスだよ」
「は?」
「Go home(帰れ)」
へー、コイツわざわざ英語で煽って来やがる・・・面白れーじゃねーの、乗ってやるよ。
「You're the one who should get out(テメーこそ出てけや)」
「!?キミ、英語出来るんだ?」
「あぁ、6年程アメリカに住んでたんでな。
お陰さんで意志疎通に困らねーくらいにはな。
で?
わざわざ英語使ってマウント取りに来たは良いが、英語で返された今の気分はどうよ?」
「・・・正直舐めてた自分を恥じてるよ。
相手の事を碌に知らないのに、英語は分からないだろうと決め付けてた事もね。
でも帰って欲しいのは本音だよ」
「そりゃあ無理な相談だ。そもそも今日出掛けるのは前から決めてたからな。
千夏と出掛けたけりゃあ、俺の居ない所で予定聞くこったな」
「へぇ、彼女がデートしても良いんだ?」
「それはあいつがどう受け取るかだろ。少くとも恋愛感情が絡んでんなら、俺以外の男とデートなんかしねぇよ、千夏は」
「っ!」
「ただいま」
「おかえりナツ」
「また胡散臭い顔してる」
「ひどいなー。ナツ何頼む?」
「アップルパイと紅茶」
「ナツは紅茶派だよね、教室でもよく飲んでるし」
しっかしまぁ、あんだけ煽り返されてんのに懲りないメンタルの強さは大したもんだ。
大喜もこれくらい図太けりゃあ、ハリーさんにも勝てるだろうに。
「君は?何頼むの?プロテイン?」
くくっ、懲りねぇな、コイツも。
「オーダー良いっすかー?」
「ハイ、伺います、ご注文は?」
「プロテインありますー?」
「「「「「えっ!?」」」」」
はっ、隣のお姉さん2人も合わせて、5人揃って驚いた声出してやがるw
「あ、いえ、そういうメニューは当店にはございません」
「おっと、これは失敬。この腹黒イケメンがプロテイン頼めば?なんて言うもんですから。
じゃあ、ストレートティーとアップルパイお願いします」
「畏まりました」
「困っちゃうな~先ぱ~い?
いたいけな後輩からかうなんて酷いっすよー」
「・・・鶴羽くん、性格悪いって言われるでしょ?」
「いえ?“良い性格してる”とは言われますけどねw」
「松岡くん、雪に口で勝とうなんて思わない方が良いよ。言った分、倍以上になって返って来るからね」
「失礼な。そもそも突っ掛かって来るのが悪い。普通に話しかけてくる相手には普通に返してるぞ、俺は」
確かに雪は、「礼には礼を、失礼には失礼を」で返している。
「・・・そう言えばさー。中学の時バスケ部で練習終わりに喫茶店行ったことあったよね。おしゃれな店行ってみようって」
「あったね。雪は知ってる?二丁目にある喫茶店」
「あぁ、こないだ雛たちが行ったって言ってたな」
「中学生にしては背伸びした値段で。渚がカッコつけてエスプレッソ頼んでー」
「それユメカだよ」
「あ・・・そうだっけ」
「そう。それで・・・」
んー?今千夏が「ユメカ」と言った瞬間、空気が変わったな。
「ユメカ」って確か子供ん時、ミニバス始めた千夏の同級生で凄く上手いって言ってた奴の名前だった様な・・・
そんな事を漠然と考えながら、アップルパイを口に運ぶ。
!!うっま、何だコレ!そりゃあ千夏史上1番ってのも納得だわ。
うーん、手が止まらねぇ。美味すぎだろ、このアップルパイ。
・・・レシピが知りてぇ。
雪がニコニコした顔でアップルパイを食べているのを見て、自然と笑顔が零れる。
「でさー・・・(今笑う所あった?)」
ふと鶴羽くんを見ると、幸せそうな顔でアップルパイを食べている。
それを見てナツが笑ったんだと思うと、面白くないと感じてしまう。
店を出た途端
「さて、何処行こうか」
「おい」
「お腹も満たされたし、ボーリングとか行こうか?」
「聞けよコラ」
「あ、忘れ物しちゃったみたい、取ってくるね」
「You don't have time for a relationship do you(キミ、恋愛してる暇なんてあるの?)」
「That's none of your business(余計なお世話だこの野郎)」
「インハイ優勝したってのは聞いた。
でもそれはバスケにだけ全力だったからじゃないの?
その点俺はバスケはチョー上手いし、両立もヨユーで出来るけど!」
「ハッ、そのセリフは1ON1で俺に勝ち越してから言ってみな」
「ふーん、そう言えばまだ本気でキミと1ON1やった事無かったしね。負けても泣かないでね、鶴羽くん?」
「You still have lots more to work on(まだまだオメーの力じゃ足んねーよ)」
「!?」
「おまたせ」
「ううん、待ってないよー」
コイツも本当にブレねぇな。一周回って楽しくなってきたわ。
「あのね、松岡くん」
「(ブブッ) 待って連絡が・・・丁度良かった!今、勇政大の先輩たちがバスケしてるらしいんだけど、ナツも行こうよ!」
「え?」
「勇政大ってバスケ強豪だし、勉強になると思うよ。気軽に人呼んで良いって言ってるしさ」
「でも・・・」
不安そうに見上げてくる千夏。
そんな千夏を安心させる為に肩を抱き寄せる。
「////」
「まっつんよ、喫茶店で最初に顔合わせた時に言ったよな?俺と千夏はデートだ、ってよ。
喫茶店でのやり取りはともかく、店出てからも余計な茶々入れてくんじゃねーよ。行くぞ千夏」
「!うんっ。じゃあ松岡君、またね」
「っ!あ、あぁ、またねナツ」
・・・そう言って2人を見送るしかなかった。
「しっかしまっつんも懲りねぇな。あのしつこいメンタルだけは称賛に値するわ。
なぁ千夏、まっつんは留学行く前、告白とかそれに近い事何も言わなかったのか?」
「え!?う、うん、別に何も言われなかったけど」
成る程ねぇ。
多分OK貰えるか分からないし他の奴も同じだと思ったから、日和ってなにも言わずに留学に行ったって所か。
それで帰ってきたら千夏の周りに俺や大喜が居て、それが気に入らないんだろうな。
「ま、自業自得だな」
「何が?」
「まっつんが保険も掛けずに留学行った事」
「ふーん?」
あー、こりゃ分かってねーな。
千夏がこんなんだからこそ、何かしら言っとけば良かったものを。
まぁ今更だし、だからと言って俺が千夏を譲る事も無いからな。
「まだ早いしウェアでも見に行くか?」
「そうだね、行こう!」
そう言って俺の手を取り、嬉しそうに笑う千夏。
その顔を見て、やっぱり俺は千夏にベタ惚れしてるな、と再確認した。
スポーツショップで色々と見て回ると
「お、コレ良いな」
と黒ベースに赤の差し色が入ったジャージが目に止まったので、手に取る。
「羽織って見たら?」
との千夏の言に従い、羽織ってみる。
「サイズも丁度良いな」
「うん、かっこいいよ、雪に似合ってる」
「んー、なら一応ワンサイズ上のにしとくか、まだ伸びる余地はあるからな」
「いいなぁ、おっきくて。バスケはやっぱり身長あった方が有利だし」
「千夏も後2センチくらいなら伸びるかもよ」
「む~、優花さんみたいに170近くは欲しかったー!」
「ま、自分でどうしようも無いことは諦めて、千夏も何か試着してみたらどうよ?」
「そうだね、じゃあこのTシャツ着てみるから、試着室の前に居てね?」
「はいよ」
サイズはピッタリ。雪に意見聞こう・・・
そう思ってカーテンを開けようとした時
「あれ?鶴羽じゃん!」
「ん?バレー部の横村か。お前もウェアでも探しに来たのか?」
「いやー、偶然だなぁ。って女物の靴?
へー、彼女か?秋合宿で何組かカップル出来たって聞いたけどお前もだったのか。
・・・ミーハーで悪いけど、相手聞いても良い?」
「何だ、まだそこまで広まってないみてーだな。
ま、良いか、俺の彼女は千夏だよ」
「えぇっ!あの我が校のマドンナと言われてる鹿野千夏先輩っ!?」
「おう」
「冗談っ、て訳じゃ無さそうだな」
「嘘でも冗談でもねーよ、何なら大喜にでも匡にでも聞いてみな」
「いや、お前がそう言うなら本当だろうからいいや。何にしてもおめでとう!じゃあまた学校で」
「おう、またな」
横村くんが去ってからカーテンを開ける
「どうかな?」
「うん、よく似合ってる」
2人で会計を済ませて外に出ると、日が沈み掛けていた。
電車に乗って少し遠出する。
「ここ大喜に聞いたんだが、抜群のロケーションなんだと・・・って、おぉ!確かにスゲーな、こりゃ」
「うわぁ、きれい・・・」
「良い時間帯に来られて良かったな」
「うん、時間がゆっくり流れてるみたい。ほんときれい・・・」
「千夏もな」
「/////」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「渚先輩ー、掃除してたら写真出てきたんですけど、4番の人って誰ですか?」
「あーこの子・・・木戸夢佳(きどゆめか)。
高校から栄明に来た子は知らないよね。ユメカのあのスパルタ練習に嫌味な態度・・・!!
けど、天才だった。バスケのセンスはピカイチ、栄明中学バスケ部の要的存在で!特に千夏とはミニバスからの付き合いで、息ピッタリだった」
「へぇ・・・」
「天才とか部の要って事は、男バスの鶴羽くんみたいな感じですか?」
「大きな括りで言えばね。
流石に雪くん程人間離れはしてなかったし、練習もキツい事させるのは同じだけど、雪くんみたいなフォローや理論で納得させるのが苦手だから、嫌がられてた面はあったかな。
要するに、雪くんから面倒見の良さを取っ払ったのがユメカだと思えば、分かりやすいと思う」
「確かに鶴羽くんは、理論と感覚が同居してますもんね。感覚だけで説明されても理解出来ない方が多いし。でも今居ないのは・・・」
「そ。
中学で辞めちゃったんだよね、何の相談も無しにさ。栄明(うち)も、バスケも」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「くしゅんっ」
「寒いか?」
「ううん、平気」
「さっき買ったコレ着るか?」
そう言うと、じっと俺を見てくる千夏。
「ん?どうした?」
「去年帰って来てからずっと、そうやって気遣ってくれてるよね」
「そうか?取り立てて気遣ってるつもりはないんだが・・・」
「もう会えないと思ってたのに6年振りに再会して、その間ぜんぜん話してなかったけどバスケを通して見てたら分かった。
ふざけてる様に見えて実直で努力家で、本質はきっとあの頃のままの真っ直ぐな人なんだって思ってたから。
次は何を持たせたくれるのかな、彼氏くん?」
笑顔でそう言う千夏に見惚れてしまって居た時
「ナツ?」
「夢佳・・・」
って、さっき喫茶店で名前出た人か。
「え?何何?なぁに?ナツにも彼氏出来たんだ?」
「おう、宜しくな」
「へぇー、バスケ以外興味無かったのに、あのナツが恋愛ねぇ・・・
じゃあ全国制覇(バスケ)はもう、諦めたんだね」
・・・何だコイツ。
不穏な感じで次回に続きます。
地元だからインハイ優勝したのを知らない筈ないだろって?
それも次回にて・・・