アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
クリスマスが近付き、何だかんだ皆の気持ちも浮わついてます。
仕方ないね、高校生だもん。
千夏と夢佳の仲直りから、時間は少し遡る。
周りはクリスマスに関した楽曲が流れて、皆が何処か浮わついているように感じる。
そんな空気の中、私はと言うとー・・・
「いつの間に12月23日?!?」
「12月入った時も言ってたよ」
「どうしよう、クリスマスに彼氏居ないなんて、小5ぶり!?やばくない!?」
「マセ過ぎでは」
「余裕こいてるけど、匡くんも独り身でしょ?絶望しないの!?」
「しないけど。うちは毎年家族で過ごすから」
「へ?」
「うち4人きょうだいで、料理とか準備するの大変なんだよ」
「4人!?」
「去年なんてケーキ2種類用意してさ」
「ふーん」
「守屋さんも家族で過ごせば?」
「うちの姉は毎年予定がありましてねぇ・・・家族思いじゃないっ!」
そう話していると
「菖蒲ちゃん。明日の練習後、みんなでカラオケ行こうって話してたんだけど、一緒行こ?」
「ひなっち、・・・持つべきものは友達だよねー!!」
「雛のミュージカルすごいよ」
「何それ」
ふと大喜を見ると、西田部長に捕まっていた。
クリスマスイヴなんて関係ねーよな、皆で練習だーっ
って言って走り去って行った。
「大喜も来る?明日みんなでカラオケ行くんだけど」
「行きたいっ!、んだけどなぁ・・・さっきの見たろ?流石にあの先輩を置いて行くのはなぁ。“男で筋トレイヴだ!”とか言ってんだよ・・・」
「そっか、じゃ筋トレお化けはほっといて、パーっとやろー!」
「ひなっちって歌上手いの?」
「雛思い出すとステージ見えるよ」
「にいなちゃん、言いすぎー」
・・・行けないのは残念だけど、雛が楽しいなら良いか。
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練習前に廊下を歩いていると、梱包された荷物を持ち上げようとしてプルプルしている、力不足のトナカイが居た。
「あの~、良かったら手伝いましょうか?」
「えっ」
と、頭を上げたフードの中には雛の顔があった。
「あ、何そのトナカイ衣装・・・可愛いんだけど」
「////す、少しでもクリスマス感出そうって、新体操部は仮装してるんだよ」
「動きづらくない?」
「あったかくて良いよ」
「確かにクリスマス感はあるけど・・・」
「こういうイベントは楽しんでいかないと!カラオケでもクリスマスソングをメドレーで歌って。あ、その前にプ○クラも撮って、今日は特別にケーキも解禁しちゃって、別に彼氏居なくたって楽しめるんだから」
「!!それはそうだろうけど、そう言われたら何か複雑・・・」
「じゃあ、来年はよろしくっ!!」
「分かった!来年は必ず参加する!!」
「約束だからね、破ったら何して貰おっかなーw」
「雛っ、守屋さんにマライア・キャリー聴かせてやれよ」
「勿論セトリに入ってるわ。喉枯れるまで歌うから!」
「のど飴買ってけよー」
((付き合って初めてのクリスマス、ホント残念・・・))
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「あ゛ーっ、クリスマスイヴかぁー!クリスマスどう過ごすかって、何を大切にしてるか問われてる感じするよな」
「いや別に」
「家族とか恋人とか、世の人は大切な人と過ごす訳じゃん。そうつまり!俺には部活しかないっっ!!部活が1番大切なんだ!!」
「いいじゃん、それで」
「俺だってデートしたかった!」
「本音出てる」
「恋人いる奴が憎い!」
「居たら居たで大変だけどな。プレゼントとか何あげりゃー良いか分からんし、クリスマスなんて予約しないと店入れないし」
「それがやりたいんだ!ちくしょ~・・・」
「大喜も残念だったな、付き合って初めてのクリスマスだったのに」
「それさっき雛と話して、今年は残念だったけど来年は必ず一緒に、って約束しましたから!」
だから今年は筋トレを頑張ろう・・・
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ー通常練習後。
「さぁ!やってまいりました!クリスマスイヴ!キリストの誕生日!つまり生命を祝う日!筋トレにピッタリの日だ!」
「そういえば雪が、“クリスマスはキリストの降誕/生誕(聖誕)を祝う日であって、誕生日じゃねーぞ”って言ってましたよ」
「へ!?」
「何でもキリストの誕生日って候補が幾つかあって、厳密には今の所は不明だって。
序でにイヴは前日って意味じゃなくてイヴニングのイヴで、クリスマス当日の夕方って事らしいです。その意味では、今の時間は正にその通りですけど」
「・・・ま、まぁその辺の細かい事はともかく、俺たちは筋トレに励もうじゃないか!」
「じゃあ甘いものは要らないですかね?菖蒲サンタからクッキーのプレゼントがあるんですけど」
それを聞いた西田先輩たちは膝をついて
「サンタさまっ、くださいっ!!」
と、ドン引きする勢いで貰っていた。
「はいっ、どーぞ」
「・・・多くない?」
「妹さんたちの分!材料余ってたし、せっかくだから」
「そんな気を遣わなくて良いのに」
「気を遣ったわけじゃないよ!そこは大人しくお礼言ってよ」
「ありがとうございます」
「よしっ」
マネージャー俺にもー・・・
はーい
「あ、蝶野さんお疲れ様、今日残念だったね」
「うん、まぁ仕方ないよ、でも来年はもう予約済みだから!」
「そう、それなら良かった」
「ひなっち!にいなちゃん!先輩がカラオケのクーポン持ってるって!」
・・・楽しそうな雛たちを見て、これから筋トレだと思うとブルーになる。
「さぁ筋トレするぞ!ケン○ッキーの代わりにサラダチキン。ケーキの代わりにプロテイン用意したからな!」
「せっかくのイヴなのにっ」
「俺たちタンパク質が恋人だろ?」
ふーっと一息つく。
「よしっ、やりますかっ!」
「おっ、その意気だ!」
・・・仕方ない、今日はもう筋トレを楽しもう!
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気付けば雪はいつの間にか居なくなっていた。
ーあの子にチケットのお礼言っといて。何だか苦労して手に入れたみたいだからー
「千夏ー、これから皆でご飯行くって」
「うん」
ーうぉぉい!びっくりしたー。千夏かー
ーあー、ちょいと野暮用でなー
そう言って微笑む雪の顔を思い出す。
「ごめん渚、私用事あるから帰るね。また明日」
「え?・・・あぁ!うん、分かった行ってきな。彼氏によろしくね」
「ただいま帰りました」
「あらお帰り、先ずは1勝おめでとう」
「靴がないって事は、雪はまだ帰ってないんですか?」
「メッセージ来て、学校に寄るって」
「ちょっと行ってきます」
「気を付けてね。帰りは雪と一緒に帰って来ること!」
「はい!」
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学校に着いて雪を探すが中々見付からない。
人が居る教室を覗くと西田くん達が居た。
「あれぇ?鹿野さんじゃーん!今日試合じゃなかった?」
「ちょっと忘れ物を取りに」
「あ、そういや鹿野さんの試合、鶴羽の友達来てた?」
「え?」
「チケットあげるって言ってたけど。その為に松岡くんと勝負してさー」
「シャトルランな」
「あんな汗だくになるまで走って。そこまでしてチケットあげたいって、どんな友達だよって気になってたんだよー。もしかして共通の友達?・・・あれ?」
「用事済ませてくるって」
ああいった賑やかな場所が好きな筈のに、あそこには居なかった。
何処に居るんだろう・・・会いたいよ、雪。
そう思いながら体育館の前まで来ると、歌声が聴こえる。
そっと覗くと、ツリーを眺めながら1人で鼻唄を歌う雪が居た。
明かりが消えた体育館で1人なのに、楽しそうなその顔を見て色んな感情が湧いてくる。
「ふんふふふーん♪」
ガタッ!
「うぉい!ビックリしたー!・・・ってまた千夏かよ」
「ごめん」
「体育館の亡霊でも出たのかと思ったぜ」
「そこはサンタさんじゃないの?」
「千夏サンタは何かくれんの?」
「・・・改めてチケットありがとう、お陰で夢佳と仲直り出来たよ。チケット手に入れる為に沢山走ってくれたから、あんなに汗かいてたんだね」
「誰だよ余計な事言ったの。こういうのは黙ってるから格好良いのによー」
「私ね、ずっと気付いてたの。夢佳が何か悩んでるって。だけど本人が話さないからって何も言わなかった。それを凄く後悔してた。その苦しい後悔を、今日少し受け入れられたから、だから雪には本当に、本当にありがとう」
「・・・そんな礼を言われる事じゃねーよ。千夏がユメカちゃんから色んな影響受けたみたいに、俺も千夏から色んな影響受けてるからな、ちょっとしたお返しだ。
ま、日が日なだけに、クリスマスプレゼントだと思ってくれりゃあ良いよ」
そう言って微笑む雪。
と、ツリーの飾りがポロッと落ちたので拾って雪に渡す。
「お、サンキュ・・・ん、どうした?」
ツリーからオーナメントが落ちたのを拾って渡してくれたのは良いが、手を離そうとしない千夏を不思議に思った時
「ごめん雪、ちょっとだけギュッとさせて」
そう言って抱きついてくる。
いつもの軽いハグじゃなく、言葉通り「抱き締める」が相応しい。
「・・・」
何かを言おうと思ったが、今は何を言っても違う気がしたから、俺もただギュッと抱き締め返した。
時間にすれば、ほんの1分にも満たなかったかも知れない。
が、俺にとっては数分以上に感じた千夏との抱擁。
どちらからともなく抱擁を解く。
そして真っ赤になった顔を上げた千夏を見て、愛おしさがこみ上げてくる。
無意識のうちに右手を千夏の頬に添えていた。
千夏もじっとしたまま俺を見つめてくる。
「改めて言う。千夏が好きだ」
「私も・・・好き」
そう言うと目を瞑る。
吸い寄せられる様に顔が近付いて行く。
そして・・・
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「「ただいまー」」
「お帰り千夏ちゃん、ちゃんと雪を連れて帰って来てくれたのね」
「はい!ちょっと目を離すと直ぐ何処か行っちゃうので大変でした!」
「待て待て、人を糸の切れた凧みたいに言うなよ」
「だって試合観に来てくれてたのに、いつの間にか1人で帰っちゃうし。家に居るのかと思ったら学校に居るし」
「そりゃあ女バスの皆とご飯行くって話だったから俺が居ても邪魔になるし、学校には大喜達も居るんだから、暫く学校でクリスマスって非日常の雰囲気を味わってみようと思ったんだよ」
「そのお陰であちこち探し回ったんだけどねー」
「雪、あんた千夏ちゃんにプレゼント無いの?」
「あー、まぁ、あるっちゃあるんだが・・・」
「何よ、歯切れ悪いわね」
「優花さん、雪からは形じゃない、とても大事なものを貰ってるんです」
「え、そうなの?何か聞いても良い?」
「疎遠になってた友達との仲直りの切っ掛けです」
「この子にそんな気の利いた事が出来たの!?そっちに驚きだわ」
ホントこの人、俺の事を何だと思ってんのか。
世話焼きおばさんのあんたの息子だってんだよ。
「ふふっ、優花さんの知らない所で雪も成長してるんだと思いますよ」
「それは嬉しいけど、少し寂しいかな、親としては」
「で、晩メシは?」
「ちゃんと腕によりを掛けて作ったわよ、ケーキもあるからね」
「私、手伝います!雪もお皿並べるくらいしなさいよ?」
「はいはい、分かりましたよ」
「あらあら、もう千夏ちゃんの尻に敷かれてるみたいね、雪は」
「物理的には敷かれてねーけどなw」
「雪?そういうのは駄目って言ってるよね」
「アッハイ」
そんなやり取りをしながら母さんの料理を食べて、クリスマスイヴの夜は更けていった。
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部屋に戻って枕を抱えてベッドに横になった私は、体育館での事を思い出して見悶えていた。
~~~~雪と、キス、しちゃったんだよね////
夢佳と仲直りの切っ掛けを作ってくれた事・・・ううん、それだけじゃない。
今まで雪がしてくれていた事、全部が嬉しくて頼もしくて体育館で1人で居る雪を見付けた時、感情が込み上げてきて抱き着いてしまった。
いきなりだったのに雪は受け入れてくれて、何も言わずにただ抱き締め返してくれた。
そして
ー改めて言う。千夏が好きだー
2度目の告白。
ー私も・・・好きー
そう返した時、雪の手が私の顔に触れてきた。
驚いたけど嫌じゃない、寧ろ嬉しいと思ってしまう。
じっと見つめ合う。
いつもは部活で騒がしい体育館も、今は私と雪の2人きり。
灯りは窓から差し込む淡い月明かりだけ、少し幻想的にも感じる。
そっと目を閉じると、雪の息遣いだけが聴こえる。
数瞬の間を置いて唇が触れ合う感触。
「~~~////」
今までに感じた事の無い、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてくる。
唇を離して目を開けると、雪の白い顔も真っ赤になっているのが分かる。
あぁ、雪も同じ事を感じてくれているんだと、ますます嬉しくなる。
「・・・もう1回、して」
そんな事を言いながら雪を抱き締めると、また抱き締め返してくれる。
2回目のキスは少し長く、抱き合ってるからお互いの鼓動が聴こえるんじゃないかな?ってくらいにドキドキした。
1度離れて息を整えると
「は~、嬉しいけど、何かこっ恥ずかしいな」
「うん、そうだね・・・でも」
「でも?」
「いつかは、も、もっと凄い事もするんだよね?////」
「!?・・・あ~、まぁそうなる、のか。
とは言え、流石にこれ以上はまだ何の責任も取れないウチはなぁ。
“節度あるお付き合いをする”って、冬樹さんにも言ってあるし」
「そうだね、そんなに慌てる事じゃないから、私たちなりに進んで行けば良いよね」
「じゃあそろそろ帰るか?母さんも今日の為の準備してくれてるだろうから」
「雪と一緒に帰ってきなさいって言われたよ?」
「そりゃそうだろ、もう暗いからな。
同居バレについては・・・そん時ゃあそん時だな。
学校には話通してあるし、疚しいこたぁ何もねーんだしよ」
「じゃあ、手繋いだり腕組んだりしても良いよね?」
「仰せのままに、お姫様」
恭しくそう言って、執事モードで礼をする雪。
帰りは手を繋いでー恋人繋ぎで帰った。
今年のクリスマスプレゼントは、今までで1番嬉しかった。
夢佳との仲直りに雪とのファーストキス・・・って、あれ?雪もそうだよね?
アメリカって進んでそうだから、向こうに居る時に綺麗な金髪美女としてたんじゃ・・・確認しなきゃ!!
はい、雪と千夏はクリスマスイヴにキスするまでに至りました。
これも作者にとっては構想外でしたが、書き進めるウチにこんな事に・・・
クリスマスについては厳密にはそうだってだけで、日本は日本なりの楽しみ方をすれば良いと思ってます。
それと、昔は日付が変わるのが日没が基準だったからって理由もあります。
ーオマケー
コンコンコン!
「んー?どーぞー」
ガチャッ!
「雪っ!」
「お、おう、どうした、千夏?」
「雪も初めてだったよね!?」
「は?」
「・・・キス」
「あ、あ~、それが聞きたかったのか。おう、俺も千夏が初めての相手だよ」
「本当に?」
「本当だよ、信じろ」
「分かった、信じる。おやすみ」
そう言って部屋を出・・・ないで戻ってくる千夏。
「どうした?」
「お、おやすみのキス、して欲しいなぁ・・・なんて」
上目遣いで顔を真っ赤にして言う千夏。
可愛すぎんだろぉ~~~!!
スッと立ち上がり千夏にハグして、軽く口付ける。
「////おやすみ」
そう言って今度こそ俺の部屋を出て、自分の部屋に戻って行った。
・・・俺より千夏に我慢させた方がよくね?