アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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ウインターカップ予選の最中、事ある毎に絡んでくる松岡に対し、1度力を見せ付ける為に1ON1をやることにした雪。

そして松岡は、カフェで煽った時の自分の言葉を後悔する事になる。


EP44 実力を認めさせる為の1ON1と諦観からの再起

 

ビィーーー!

 

ウインターカップ初戦を我が男バスはまっつんが復帰した事もあり、俺抜きでも危なげなく勝利した。

 

「暇が過ぎる」

 

「しゃーないだろ、雪ちゃん。今後を考えてエース温存は強豪なら何処でもやってる事だし」

 

「そうだね。松岡さんも流石アメリカ留学帰りだけあって、余所なら間違いなくエース張れるだけの力はあるよ」

 

「うん、俺もお手本みたいな綺麗なバスケしてると思う」

 

カズ達とそんな話をしていると

 

「いや~、嬉しいなぁ!後輩たちにそんな風に言って貰えるなんてー・・・1人を除いてだけど」

 

「あん?俺の事言ってんのか?

言っとくが、俺ぁまっつんの実力は認めてるぞ?」

 

「え、そうなの?その割には俺に対する当たりが強くない?」

 

「そりゃまっつんが懲りずにしつこく絡んできたり、煽ってきたりするからだろ。いい加減千夏の事でウザ絡みしてくんの止めろ」

 

「えー、だって自分が好きだった人が自分の知らない間に自分が知らない人と恋愛的に仲良くなってたら、気に入らなくても仕方なくない?」

 

「それこそ、フラれんのが怖くて告白処か保険も掛けずに留学行ったまっつんが悪いとしか言い様がねぇだろ。違うか?」

 

「この前もそうだったけど、ホント痛いトコ突くね。じゃあ1ON1で泣いて貰おうかな。まさか逃げないよね、鶴羽くん?」

 

「それで俺の力に納得したら、今後ウザ絡みしねぇってんなら相手してやるよ」

 

「それで良いよ、約束する」

 

「ならどうする?10本中6本先取で勝ちって事で良いか?」

 

「OK、それで行こう」

 

「とは言えまっつんは今日は試合したばかりだ。少しの言い訳も出来ない様に公平にやるなら・・・明後日だな」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、調子はどうよ?まっつん」

 

「ノープロブレム、絶好調だよ鶴羽くん」

 

「そいつは重畳、言い訳1つも出来ないってこったな」

 

「それで君が勝ったら今後俺はウザ絡みしないって約束だけど、俺が勝ったらナツにアプローチしても良いくらいの条件はあっても良いと思うけど?」

 

「似た前例があるから、勝手に約束すんな!って怒られるだろうなぁ。

ま、良いか、その条件飲んでやるよ。ただし相手にされなくてもそこは文句言うなよ?」

 

「OK、じゃあやろうか」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

改めて雪ちゃんの化物っぷりを痛感した。

 

松岡さんもアメリカ留学帰りだけあって、その辺の奴らじゃ太刀打ち出来ないレベルなのに全く寄せ付けてない。

 

そんな雪ちゃんに「相棒」と呼んで貰えてるってのは、選手として誇って良いんだろうな。

 

正直な所、インハイ時の籠原の澤登さんとトントンってのが俺の見立てだから、その澤登さんに勝ってる雪ちゃんに松岡さんが勝てる道理は無い。

 

「ウチのエースを甘く見過ぎたな」

 

 

「さぁこれで5-1だ。あと1本で俺の勝ちだが、まだやるか?」

 

「ふぅ、はぁ、勿論。まだ勝ち負けが決まった訳じゃないしね」

 

「結構、じゃあ次はまっつんの番だな、ほら」

 

そう言ってボールを渡す。

 

「行くよ!」

 

先ずは俺から見て左に突っ込んできて、突破を図るまっつん。

 

それに着いて行くとフロントチェンジで方向転換して逆を着こうとするが想定内。

 

まっつんは1度停まって少し距離を取り、ボールを突きながら思案している。

 

確かにまっつんは基本的にかなりの高レベルで纏まっちゃあいるが、テツが言った通り「お手本の様な綺麗なバスケ」だから、同等以下の選手ならともかく、俺にとっては与し易しなんだよな。

 

普段の胡散臭さや腹黒さを活かせばもっと上のレベルに行けるのに、何でバスケは素直なんだろうか。

 

まぁこればっかりは、直ぐに変える事は難しいから、今後に期待だな。

 

そう考えている内に腹が決まったのか、また突っ込んでくる・・・が、今度は奇を衒ったのか、さっきと同じと見せ掛けて、よりゴールに近付いた所で迷わずジャンプシュートを撃ってきた。

 

「あめーよ、まっつん」

 

そう言ってブロックショットで叩き落とす。

 

「くっ、これも駄目か・・・」

 

攻守交代。

 

「これを決めたら俺の勝ちだが、覚悟は良いか?」

 

「これを止めて、怒涛の5連続得点で勝ってみせるよ」

 

「はっ!面白れぇ、出来るもんならやってみな!行くぜ!!」

 

 

 

正直ここまでだとは思ってなかった。

インハイ優勝の立役者である彼、鶴羽雪くんとの1ON1をしている俺、松岡一馬は驚愕している。

留学前から知っている2・3年生の言葉を絵空事として半ば信じていなかった。

 

曰く、基礎レベルが頗る高い。

 

曰く、速さが尋常じゃない上に、0→100、100→0の動きが出来る。

 

曰く、動きが出鱈目のセオリー無視だから、バスケを知ってる程対処しにくい。

 

etc.・・・

 

しかしそんな疑いは彼のプレーを見て、誇張でも何でもない、ただの事実なんだと認めざるを得なかった。

 

アメリカにバスケ留学したと言う自負があったからこそ彼に1ON1を持ち掛けた訳だが、まさかこんなに手も足も出ないとは思ってなかった。

 

今までの自分の努力を否定されてるみたいで悔しい。

 

でも何だろう、彼とプレーしていると身体の中から何とも言えない感情が湧き上がってくるのを感じる。

 

自分のプレーが通じず負けていると言うのに、何故か笑みが浮かんできて“楽しい”とすら思ってしまう。

 

不思議な事に、ナツにアプローチするって条件すら頭の中から消えていて、ただ只管に彼との1ON1にのめり込んでいた。

 

 

 

「どうしたどうしたぁ!ボーッとしてんじゃねーぞ、まっつん!!」

 

その声にハッとして我に返る。

 

「これは失礼、何だか楽しくなってきたもんでね!」

 

そう言ってディフェンスの意識を高める。

 

「これが決まれば俺の勝ちだが、覚悟は出来たか?」

 

「いつでもどうぞ!」

 

その言葉を切っ掛けに、鶴羽くんがドリブルで迫る。

 

流石に速い、一瞬で抜かれたと思い全力で追い縋ろうとする、が、それを嘲笑うかの様に急停止してシュートモーションに入る彼。

 

それを止めようとジャンプしてコースを塞ぐ。

 

しかしそれすらも意味を為さず、上体を驚く程に倒してシュートを撃たれる。

 

バックボードに当たったボールは、ガン、ザッ、と言う音を立ててリングを通り抜けた。

 

「これで6-1、俺の勝ちだな」

 

「あぁそうだね、俺の敗けだよ。約束通り今後ウザ絡みはしない」

 

「ま、ウチ(栄明)が強くなるのは大歓迎だから、これからも宜しくな、まっつん」

 

「ああ!君とやってれば、俺はもっと上手くなれる!こちらこそ宜しく、鶴羽くん」

 

「雪で良いぞ。俺もまっつんって呼んでるしな」

 

「分かった、雪。ところでちょっと聞きたいんだけど、君アメリカの何処に住んでたの?」

 

「ん?西海岸だけど、それがどうした?」

 

「・・・もしかして“リトルモンスター”とか呼ばれてた、とか?」

 

「はぁ!?まだその2つ名使われてんの?何年経ったと思ってんだよ」

 

「俺が留学してた時、昔日本人で俺と同じくらいの歳の子が大人顔負けのプレーでストリートの大会で大暴れしてた、って話を聞いた事があってさ。

でも留学してるってプライドもあって、“所詮ストリートのお遊びだろ?”って何処か見下してたんだよね」

 

「そりゃあ思い違いってもんよ。

ストリートだろうが屋内だろうが基本は同じだし、お互いの良い所を取り入れれば、引き出しが増えるからな」

 

「本当にそれだよ。屋内に拘り過ぎてストリートを軽視した結果が、1ON1でのこのザマだからね」

 

「ま、ストリートを取り入れたら必ず上手く行くってもんでも無いからな。取捨選択で不要だと思えば無理にやる必要は無いし、あくまでオマケ程度で“上手くハマればラッキー”くらいで丁度良いんだよ」

 

そう屈託の無い笑顔で言う雪。

 

あぁ、この男は嫌味な態度を取っていた俺ですら、バスケ部の仲間として見ているんだ。

 

それに比べて真っ正面から向かい合わずに、嫉妬心から煽ったりウザ絡みしていた自分の何と小さな事か。

 

「これから宜しく、雪。当面の目標は五分に持ち込めるまでになる事かな」

 

「おう、楽しみにしてるぜ。ただ俺も早々に追い付かれる訳には行かねえから、簡単に行くと思うなよ?」

 

ふふっ、その強気な姿勢を慌てさせるくらいになれば

俺個人は勿論、チームとしてもそうそう負ける事はないだろうな。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

12月25日、女バスの2回戦の日を迎えた。

 

男女で日程が違う為、千夏はもう出ている。

 

俺は午後から部活の為、少し早目に昼食を摂り家を出る。

 

昨日はユメカちゃんと仲直りもしてたし、それで感極まってたのか、夜はあの調子だったからなぁ。

 

流石に今日に悪影響が出るとは思っちゃいないが、変に空回りしなきゃ良いが。

 

そんな事を思いながら歩いていると

 

「昨日はありがとね」

 

と、声を掛けられたので振り向くと

 

「お?ユメカちゃん、髪切ったのか。中々良い感じじゃないの」

 

髪を切ってサッパリしたユメカちゃんがそこに居た。

 

「この時期短いと寒いんだけど、バスケするのには邪魔でさ。ブランクあるけど、うちの高校のバスケ部に入れて貰おうと思って」

 

「へぇ、吹っ切れたみたいだな」

 

「まぁね。これからはナツが目標だと思うと、より気合入れないとね」

 

・・・こりゃあ千夏にとっては、相当な強敵になりそうだな。

 

「だからナツが私みたく時間をロスしない様に、ちゃんと支えてあげてよ?彼氏なんだからさ」

 

「おうよ、そこは任せな。天才ユメカちゃんにも負けない様に、しっかりと支えてやるからよ」

 

「あのナツが選んだだけあるわ、君。

・・・好きは最強の感情なんだよ」

 

そう言うユメカちゃんの顔には、もう先日までの陰りは見えなかった。

 

 

尚、まっつんとの1ON1での賭けが千夏にバレて

 

「彼女にアプローチする権利を本人に黙って賭けるって言うのは、一体どう言うつもりなのかな?

と言うか、そもそも賭けの対象にしちゃ駄目でしょ!」

 

と、正座させられた上にこんこんと説教された。

 





1ON1で力の差を見せ付けた事で、松岡くんの意識にも変化が出て来ました。

そして夢佳のバスケ復帰は、千夏の最後のインハイやウインターカップにどんな影響を与えるのか。

原作通りにやるべきか、オリ展開にするべきか・・・
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