アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
11巻の表紙と本編を読んで、「夢佳が栄明に居たら千夏はかなり精神的に助けられただろうな」と思ったので書いてみました。
中学最後の試合が終わった。
私たち栄明中学は全国に行く事が出来なかった。
スカウトされて推薦で来たものの、小学生の天才なんて中学での1年や2年の経験の差を引っくり返せるモノじゃ無かったと思い知らされる事ばかりだった。
そんな時母親に告げられた「離婚」の言葉。
部活も上手く行かなかったのに、家族まで壊れてしまった。
家に居たくなくて飛び出してしまう。
誰か、たすけて・・・
そう思って走り続けた先は学校の体育館だった。
そこには悔しさを隠しもせず、泣きながらシュート練習をするナツが居た。
私は自信が無くなってきてどんどん後ろ向きになっているのに、ナツはそれでも前に進み続けている。
そう思ったらナツに詰め寄って言ってしまう。
「何でそこまで出来るの!?」
突然の事でナツが驚いている。
「私は調子も落ちてて負けて寧ろホッとして解放感すらあるのに、どうしてナツはそんな泣いてまで練習出来るの!?」
「・・・練習しないと夢佳に追い付けないから」
「っ!?私はそんなカッコいい人間じゃないよ。
サボりたいとかしょっちゅう思ってるし、才能が意味ないって気付いたらバスケから逃げたくなってる程度の人間なんだよ!」
「だからって、私が夢佳より上手い訳じゃない事に変わりはないよ?」
「そうやってサボる気なんて全く無く、やるべき事を黙々と熟すナツが眩しくて対照的な自分が恥ずかしくなって・・・嫌いになっていった」
「うそだ」
「嘘じゃないよ。私があんたの憧れの存在だって知ってたから、尚更自分が情けなくなってナツに嫉妬していったんだよ。
私にとっては寧ろナツが憧れだった!」
少しの間、体育館が静寂に支配される。
外の喧騒が聴こえてくる。
それを破ったのはナツだった。
「私 夢佳ともっと一緒にバスケがしたいよ。
夢佳が何かに悩んでる事には気付いてたけど、話したくないなら無理に聞かなくて良いと思ってた。
でも今の夢佳を見たら、愚痴でも文句でも良いから言って欲しい」
一方的に責めるような言い方をした私に、そんな事を言ってくれる。
その強さと優しさに我慢出来なくなる。
「推薦されてここ(栄明)に来たのに、小学生の頃みたいに上手く出来なくて期待を裏切るのが怖かった!
自分より上手い人が居て敵わないと思った!
それに親が離婚するって、“好きは最強だ”って言ってたのに・・・最強じゃなくなっちゃう!!」
そう言って号泣してしまった私に対して、ナツはそっと近寄って抱き締めてくれた。
「私には夢佳みたいな才能は無いし、本当の意味で夢佳の苦しさは理解出来ないんだと思う。
けど、辛い時や苦しい時に傍に居る事くらいは出来る」
ーだから、一緒に色んな事を乗り越えよう?ー
その言葉を聞いて私は・・・
4月、栄明高等部の入学式後。
「早く早くー!部活行くよー“夢佳”!」
「ハイハイ、初日から見学無しで参加とか、本当にバスケ馬鹿だね」
「諦めな、夢佳。ナツがああなのは分かり切ってたでしょ」
「渚も付き合わされて大変だね」
「そうね、“あんたたち2人”に付き合わされる、こっちの身にもなって欲しいわ」
「私も!?」
「同類でしょ。しかもあんたはスパルタが過ぎて嫌がられてる部分もあるって自覚しな!」
「2人ともー、何やってるのー!早く行くよー!!」
「「・・・ぷっ!仕方ない、行きますか!!」」
入部して暫く経ってインハイ予選が始まった。
私とナツはベンチ入り、渚はスタンド組だった。
「くそ~、私は及ばなかったか、悔しぃ~!」
「ま、インハイ以降に頑張んなさい」
「私も夢佳も渚を待ってるからね!」
「今回はこの悔しさを、全部応援にぶつけてやる!2人とも1年の代表として頑張ってよね!!」
「「任せなさい!!」」
私たちは順当に勝ち上がり、いよいよ決勝の舞台に立った。
相手はここ数年、勝ち負けを繰り返している籠原学院だ。
「さぁ皆!勝ってインハイ行くよ!」
部長の檄が飛ぶ。
「「「「おぉおおおおーーー!!」」」」
部員皆がそれに応える。
常に攻防が入れ替わる激しい試合展開になった。
ーナツっ
ー夢佳っ
私たちのコンビは上手く噛み合って得点を重ねていく。
が、流石に相手も地区最大のライバルで全国常連でもある籠原学院だけあり、リードを許している。
試合も最終4クォーター残り1分で3点ビハインド。
栄明ボールでプレー再開。
先ずは速攻で1本決める!
「ナツッ!」
「ナイスパス、夢佳!」
ドリブルで崩した所で、フリーのナツが目に入りパスを出す。
ナツはそれを受けて冷静にシュート撃ち、決める。
これで1点差。
残り30秒以上残しているから、籠原は最低でもシュートを撃たないと時間残してこちらボールになる。
時間ギリギリ目一杯使って来るだろうから、その前にボールを奪って逆転してやる。
ナツも同じ考えなのか、アイコンタクトで頷いている。
そして焦った相手のパスをナツが弾いて私が取る。
残り15秒。
2年の菊池先輩にパスを渡す。
菊池先輩はドリブルからシュート、と見せ掛けてフリーの部長にパスを出す。
部長が撃ったシュートは飛び込んで来たディフェンスの指先を掠めてゴールに向かう。
決まった!と誰もが思ったそのシュートは、リングに嫌われてフロアに落ちる・・・
そこで
ビィイィイーーー!
終了のブザーが鳴る。
・・・負け、た?
周りを見るとシュートを撃った部長が呆然としている。
それはそうだ、あれは誰が見てもコースは完璧だったはずだ。
そこにディフェンスに跳んだ籠原の部長が近付いていく。
「・・・触ってたの?」
「ギリギリ爪だけね・・・」
そう言って血が流れている中指を見せてくる。
「~~~!ふぅ~、悔しいけど貴女たちの勝ちよ。インハイも頑張ってね!」
「ありがとう。貴女たちに勝った以上、情けない結果にしないよう全力を尽くすわ!」
そう言ってガッチリと握手を交わしていた。
皆が泣いている。
特に3年生は引退する人が多いから尚更だ。
「・・・悔しいね、夢佳」
「うん。来年は、いや、ウインターカップこそ勝って全国へ行こう!」
そうだ、負けたのは悔しいけど、悔しがってても結果が引っくり返る事はないんだ!
なら、次に意識を切り替えて練習しよう。
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夏休みが終わり、秋めいてきた9月末。
この日は最後の授業が自習になった事もあり、先生たちに了承を貰って私、ナツ、渚の3人で体育館で練習をしていた。
暫く3人で基礎練や1ON1をやっていたら、体育館の扉が開いて1人の男子が入ってきた。
背はかなり高い。180センチ半ばくらいあるだろうか。
「スイマセーン、俺も混ぜて貰えませんか?先輩方」
物怖じもせず、笑顔でそんな事を言ってくる。
千夏目的って訳でも無さそうだし、しかも今は授業時間のはず。
そう思ったのだけど、その男子は私服を着ているから転校生なのかも知れない。
そう思案していると渚が
「今は授業時間だけどキミ私服だし、中等生じゃないの?転校生?」
と、私の疑問と同じ事を聞いてくれた。
「あぁ、俺こないだまでアメリカに居たんすよ。
で、向こうは大体5月末から6月頭に卒業だから高等部入学まで間が空き過ぎるってんで、ここで中学の復習と高校の予習、後は部活も先行参加して良いって許可貰ってるんですよ」
「へぇ、じゃあ君は1コ下なんだ」
「って事は皆さん、現1年生って事っすね。宜しくお願いします」
「取り敢えず1ON1でもやろっか?」
「渚、夢佳、私がやりたい」
今まで黙っていたナツが真剣な眼差しでそう言ってきた。
「え?私たちは良いけど」
「あの子と何かあるの?」
「・・・まだ確証は無いんだけど、もしかしたらって事があるの」
そう言うナツの顔には、不安と期待が入り交じった複雑な表情が浮かんでいた。
「じゃあ、ちょっとアップの時間貰いますねー」
と、何処までもマイペース且つ呑気に言う後輩君。
そしてナツはと言うと
「こんな偶然、都合良すぎてまさかとは思う。けど、もし私が思ってる通りなら1ON1で気付いてくれるはず。期待、しても良いよね」
何かを確かめる様に呟いている。
そして後輩君もアップが終わって話し掛けてくる。
「お待たせしました、先攻はどっちが?」
「私から行くね」
「OK」
そして始まる1ON1。
・・・驚いた。
あのナツがあっさりと止められてしまった。
そして攻守交代で擦れ違う際に、後輩くんが何かをナツに囁いた・・・と思ったらナツが泣き出してしまった。
それを見た渚が
「ちょっと君!一体ナツに何言って泣かしたの!?」
「いやいやいや!別に変な事は何も!」
そう言って慌てる後輩君に、今度は私が
「じゃあ何でナツは泣いてんのよ!さてはセクハラね!?」
「ちょっと!?人聞き悪過ぎんだろ、夢ちゃん先輩!俺ぁただ、6年振りだけど上手くなったなって挨拶しただけだ!」
「え?もしかして君って、昔ナツが遊びに行ってバスケしてたって家の子?」
「!そうそう、そうなんすよ。そういや自己紹介してなかったっけ。最初に名乗っときゃあ良かったな。
改めまして来年の春、ここ(栄明)に入学する鶴羽雪です、宜しく!」
そう言う鶴羽君にナツが近付いて行き
「お帰り、雪くん」
涙は残っているが、心の底からの笑顔でそう言うと、鶴羽くんも
「ただいま、ナツ姉。約束果たしに来たぞ」
と返している。
「そう言えばナツが昔何か約束したって言ってたけど、何なの?」
「「栄明で全国大会アベック優勝!!」」
「え?」
「は?」
渚と共に呆気に取られてしまう。
「何呆けてんの?夢ちゃん先輩にナギちゃん先輩。当然2人にも目指して貰うからな?嫌とは言わせねーぞ」
「いやいや、そりゃあ全国は目指してるけど、いきなり全国制覇って言うのは・・・ねぇ、夢佳?」
渚にそう言われるが、私は全く違う事を考えていた。
この子は本気で全国制覇を目指していて、それを達成するって自信も持ってる。
多分、ナツと同じで努力し続けられる人なんだろう。
そんな彼の実力に興味を持った私は
「鶴羽君、私とも1ON1良いかな?」
と言っていた。
「勿論!どっち先攻でやります?」
「私からで」
さっきのナツを止めたディフェンスを自分は抜く事が出来るだろうか?
恐らく彼は私たちより上のステージに居る。
それを体験すれば、私ももっと上手くなれる筈だ。
「行くよ!」
正面から突っ込んで意表を突いて、フロントチェンジで左右に振る。
彼も落ち着いた様子で、スプリットステップでどちらにでも対応出来る様にしている。
一瞬油断を誘うつもりで上体を起こして、少し下がる・・・と見せ掛けて、一気に加速して抜き去る!
つもりだったが、完璧に読まれていて前に立ちはだかられる。
ならばと、次はユーロステップでフェイントを掛けて抜く!と見せ掛けて、バックチェンジからのバックステップで距離を取り、シュートを撃・・・ったところをブロックショットで弾かれる。
「嘘でしょ、男子相手だからってナツと夢佳がこんな完璧に止められるなんて、初めて見た」
渚がそう呟く。
「雪くん、ここまで上手くなってたの?」
ナツも知らなかった様で驚いている。
「ディフェンスが凄いのは分かった。次はオフェンスを見せて」
「りょーかい・・・気ぃ抜くなよ、夢佳」
鶴羽くんの雰囲気が変わると共に、呼び捨てにされる。
初対面の年下男子に名前呼びされて、ドキッとしてしまったのは秘密だ。
それを聞いたナツの表情が一変したのを見てしまったからね。
気を取り直してディフェンスにつく。
3Pラインの外でゆっくりとボールを突く鶴羽くん。
一瞬も目を離さない!
そう思って目を離したつもりもなかったのに、気付けば彼に抜かれてしまったいた。
気付いた時にはシュートモーションに入っていて、お手本の様なレイアップを決められてしまった。
「え?」
「は?」
「今、何が・・・?」
目線を切った覚えは無い。
にも関わらず、抜かれるまで気付けないなんて。
こんなショックは中学上がって直ぐ以来、いや、あの時より遥かに大きい。
男子だからで済まされる話じゃない。
ー圧倒的なまでの才能ー
勿論、それだけじゃないのは分かってる。
そこに至るまでに、一体どれだけの努力・・・練習をしてきた事か。
才能ある人がそれに溺れず、練習し続けて来たらこうなるって見本みたいな人だ。
「ふー、降参。抜かれてから気付いてる様じゃ、とてもじゃないけど止められる気がしない」
「そうは言うがよ、ナツ姉もそうだが夢ちゃん先輩もかなりレベル高いから結構マジでやったんだぞ?
アメリカでも女子相手にここまでやった事無いからな。2人中心でやりゃあ、少くとも全国出場は固いだろ」
何故だろう、彼にそう言われたら本当に出来そうな気がしてくる。
ふとナツを見ると
「む~、この天然女たらし!」
「はぁ!?何でそうなるんだよ!」
2人でわちゃわちゃしていた。
「渚、あの子と一緒に練習したら私たち、もっと上手くなれるよ」
「そうだね、私もレギュラー獲って2人と並ばないと!」
渚も触発された様で、やる気に満ち溢れている。
先ずはウインターカップ出場だ!
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結果から言えば、ウインターカップも本選出場は叶わなかった。
夏冬共に、あと一歩届かなかった私達には何が足りないのか。
そして春が来る。
「今日から本格的に参加する鶴羽雪です!宜しくお願いします!」
彼の入部は、男女バスケ部にとって転換点と言えた。
初めは強気且つ先輩に対しても引く処か突っ込んで行く態度に反感もあったが、彼の言葉を裏付けるだけの実力と練習量を見せ付けられては何も言えなくなり、部員の意識が変わっていったのは確かだ。
今では技術的な事は勿論、メンタル的な事、果てはプライベートな事までも彼に相談しに行く上級生も男女問わず居て、それに嫌な顔1つせず真摯に向き合ってくれるので「無自覚天然人たらし」とまで言われている。
それを見て、彼に特別な感情を抱いているであろうナツの機嫌が悪くなったりするのは、ご愛敬だ。
そして始まるインハイ予選。
順当に勝ち上がり、決勝の相手は去年破れた籠原学院だ。
「去年負けた相手にまた負ける訳にはいかない!勝つよ、夢佳、渚!!」
「勿論!勝って全国行きだよ!」
「そして全国制覇、でしょ!?私たちなら出来る!」
春以降、もっと言えば雪くんが帰ってきた去年の秋から色々教えて貰ったり、1ON1の相手をして貰ったりで、私たちはかなり上手くなっていると自負している。
私と夢佳を中心に攻める。
相手は研究している様だが、そのデータに意味は無い。
試合前、雪くんは「今の女バスなら20点差以上つけて勝てんだろ」、と淡々と言っていた。
以前の私なら「そんな簡単に行く相手じゃないよ」と、弱気とも取れる発言をしていただろう。
でも今は「私たちを鍛えてくれた雪くんが言うなら、そうなるだろう」と、思えてくる。
試合が始まって暫くは一進一退が続いていたけど、私と夢佳はマークしていた相手を翻弄していた。
相手は疲れからかミスを連発するようになり、最終Qになる頃には相当へばっていた。
そして勝負処を感じ取った私が勝負を掛けると、相手は耐え切れずアンクルブレイクでコートに倒れ込む。
夢佳の方も同じ様で、サブの選手と交代していた。
が、スタメン程の力は無く、結果は雪くんの予言通り20点以上の差をつけて勝ち、遂にインハイ出場を決めた。
「やったーっ!」
「これでインハイ出場だーっ!」
子供の頃の約束に1歩近付いたよ、雪くん。
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インターハイ開催の地、九州にやってきた栄明バスケ部一同。
中でも男子の開会式直後の第1試合が、栄明男バスの全国大会初戦と言う普通なら緊張してしまう所で
「はっ、俺たちがどれだけ強いかってのを参加校全てに見せ付けて、コイツらには勝てないって意識刷り込んでやろうぜ!」
と言う、いつも通りの雪くんの姿があった。
その言葉通り実力を見せ付けて悠々と初戦突破を決めた男バス。
私達も続かなきゃ!
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初戦を突破した私達の2回戦の相手は、前回優勝校の湊崎だった。
監督は私達なら勝てると言っていた。
夢佳も居るんだから、私だけが過度に背負い込む必要は無い。
苦しい事があっても、夢佳となら乗り越えられる!
勿論、渚や部長、他の部員が居てこその話だけどね。
そして夢佳にも言えない事は、雪くんに聞いて貰える。
こんな恵まれた環境なんだ、インハイ優勝くらい出来なくてどうする!
2回戦は最後まで苦戦したものの、最後に回ってきたパスを受けて撃ったシュートが決まり、逆転勝ち。
試合後に悔しいであろう湊崎の皆さんが挨拶に来てくれた事で、更に「負けられない、優勝する」って気合いが入った。
そして迎える決勝戦。
同じく決勝にコマを進めた男子も、同時刻に試合開始だ。
「皆!ここまで来たんだ、勝って帰るよ!!」
「勿論!」
「当然!」
「男子だけ優勝なんて、カッコ悪い所は見せられません!」
「よし、行くよ!勝つぞ栄明ー、ファイッ!!」
「「「「オオーーー!!」」」」
決勝の相手も強いけど、それでも湊崎程じゃない。
私達は湊崎に勝った事で、チームとして1つ上のレベルに達している様だ。
「・・・夢佳、あの時栄明に残ってくれてありがとう。目標が傍に居てくれたから、私はここまで来る事が出来た」
「お礼を言うのは私の方だよ。あの時ナツがああ言ってくれなきゃ、多分私は引っ越して転校していたと思う。だからここ(栄明)に残る事が出来たし、今インハイ決勝の舞台に立つ事が出来てるんだから」
2人でそう話していると
「ハイハイ、何もう終わったみたいな話してんの?試合はこれから、感謝したり感傷に浸るのは優勝してからにしときな!」
渚にそう言われてしまう。
夢佳と2人顔を合わせて「ぷっ」と吹き出してしまった。
「そうだね、渚の言う通り!」
「話したい事もいっぱいあるけど、先ずは試合に勝って優勝してから!」
「2人とも、頼りにしてるからね!」
そして試合が始まる。
最初から全力で動き回る。
私だけならそうも行かないだろうけど、隣には夢佳が居る。
目標であり憧れていた夢佳。
でもそれだけじゃ駄目なんだ。
同じチームでも、1人の選手として負けたくない。
お互い切磋琢磨して強くなっていく、そんな存在。
だから私はミスを恐れず挑戦して行ける。
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決勝戦も最終盤に差し掛かる。
74-70と4点リードして残り1分、まだまだ油断出来ない。
そう思った矢先、相手にスリーを決められて差が1点になる。
「さぁ、1本決めてくよー!」
部長の言葉に奮起して攻めに掛かる。
時間は後40秒、これを普通に決めても3点差。リスタートでスリーを決められたら同点で延長になる。
延長になったら・・・と考えた所で
「ナツっ、キッチリ終わらせるよ!延長なんて真っ平ごめんだからね!!」
夢佳にそう言われる。
そうだ、時間内に終わらせるんだ、延長なんて弱気な事を考える必要なんてない。
この状況なら雪くんだって、「はっ、延長なんか冗談じゃねぇ!スリー決めて止め刺してやらぁ!!」
って言うハズだ。
「分かった、やろう夢佳!」
ドリブルしながら進む夢佳とは逆サイドから中に入る。
夢佳も私の意図を察して中に入って来て交差する。
そしてDFが釣られた所で、外に居る菊池先輩にパスを出す夢佳。
相手DFが慌ててチェックに行くが、それすらフェイクで菊池先輩から私にパスが来る。
ここで中に入ると見せ掛けて後ろに下がる。
そして3Pラインの外からシュートを撃つ。
ボールは私の理想そのままに放物線を描き、ザッと言う音の後にコートに落ちる。
「ナツっ、ナイッシュー!」
「完っ璧!さっすがー!!」
「まだ終わってない!ディフェンス1本、止めるよ!!」
ビィイイイー!
試合終了のブザーが鳴る。
ー試合終了ーーー!今年度インターハイ女子バスケットボールを制したのは、栄明高校ーー!!ー
「「「「「やったーーーっ!!!」」」」」
「勝った、優勝だよ、夢佳ー!」
「うん、うん、ホントにあの時栄明辞めなくて良かったー!!」
「皆、よくやった、私はお前達を誇りに思う!本当におめでとう!!」
そして
ーおっと?別コートの男子決勝の情報が入ってきましたが・・・何と!男子も栄明高校が優勝です!栄明高校、男女アベック優勝達成ーーー!!!ー
更に盛り上がる私達と会場。
「雪くん、約束果たせたね」
「ナツ、やったね」
「うん、試合前にも言ったけど、夢佳が居てくれたからこんな最高の結果になったんだと思う。本当にありがとう」
「それは私も同じだよ、ありがとうナツ」
2人でお礼を言い合っているのがおかしくなって、笑ってしまう。
いつまでこうやって夢佳と一緒に笑って過ごせるかは分からないけど、せめて残りの高校生活は笑って過ごして行きたい。
心からそう思った。
何かIFにしては本編並に長くなっちゃったし、駆け足感が否めなくて雑になった気がする。
千夏は夢佳が居たら、ダンゴムシにはならないと思うんですよ。
中学の引退試合の時には夢佳は転校した後だったんじゃないかなぁ、と。