アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
雪と千夏が再会した日、それぞれが帰宅して再会した事を報告した時の母親たちの反応です。
渡米直後の雪くんの様子も、お母さん目線で出ます。
ーナツ姉に会った、スゲー可愛くなっててビビったわー
息子が帰宅するなり、開口一番そう言った。
親の都合であんな別れ方をさせてしまったから、もう会う事すら諦めていた千夏ちゃんに再会出来て嬉しかった気持ちが滲み出ていた。
一時は「ナツ姉を思い出すから」と言ってバスケから離れた時期もあった。
何をさせてもソツなく熟す我が子ではあったが、そこに千夏ちゃんとバスケをやってた頃の熱量は無かった。
そんな息子に転機が訪れたのは、隣街で開催された3ON3の大会だった。
当日の参加者の中から戦力が片寄らない様に、主催者側がランダムに振り分けてチームを作っていく。
途中で飛び入り参加もありと言う事なので、もしかしたらと言う気持ちもあって息子を無理矢理引っ張って会場に向かった。
最初は「やだよ行かねーよ、もうバスケなんかナツ姉の全国制覇の報告待ってるだけで良い!」と言っていた息子だが、私が頑として譲らないのを分かっているから、諦めて渋々と会場に入った。
そこは熱狂が渦巻いていた。
私自身がやっていた屋内のオーソドックススタイルばかりではなく、ドリブルやシュートのタイミングも何もかもが出鱈目、良く言えば自由奔放なストリートスタイル。
見ていて私自身もやりたくてウズウズしてくる。
そう言えば、とあれだけ拒否していた息子に目をやると、新しいオモチャを見付けた時の様に目をキラキラさせて食い入る様に見ていた。
しかもストリートのリズムでドリブルやフェイントを自分がやっている様に、無意識に身体を動かしている。
口ではあれだけ拒否を示していても、やっぱりこの子は心底バスケが好きで堪らないんだと嬉しく思う。
そしてコートではどうやら子供が1人足りないらしく、「飛び入り参加してくれるキッズは居ないか~!」と実況の人が叫んでいる。
ー今しかない!ー
そう思った私は息子に向かって「どうする?」と聞いた。
ーこれでダメなら、この子はもうバスケをやる事は無いだろうー
と言う、諦めにも似た確信があったから。
祈る様な気持ちで返事を待つ。
ーやるよ!今まで見た事ない、こんな楽しいバスケがあるならやらなきゃ勿体ないじゃんー
ーそれにいつか日本に帰る事があれば、これをモノにして“俺はこんなに強くなったぞ!”ってナツ姉に見せつけてやるんだ!ー
と、弾けんばかりの笑顔で答える息子。
あぁ、この子のバスケに対する想いの根っ子には千夏ちゃんが居るのね。
それがどんな感情かはまだ分からないけど、少くとも悪いモノじゃない。
「よし、行っておいで」
「うん!ハイハーイ!俺が出るー!」
「OK!サンクス、ボーイ!」
それからは見ているこちらが呆れるくらいに縦横無尽に動き回り、ドリブルもパスもシュートも完全にストリートスタイルを身に付けていた。
我が子ながら正直、「化物かな?」と思ってしまった。
何故なら私や実況はおろか、「Oh!リトルモンスター!Yeahーーー!!」と会場中を魅了して歓声が挙がってたし。
まぁやる気は取り戻してくれた様で、本当に良かった。
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「って帰ってくるなり言うもんだから、ビックリしたわ~」
「へー、雪くんがそんな事をねぇ」
「あの子の芯には千夏ちゃんが居るんだと思うわ。それがどんな感情なのかは分からないけど」
「それは千夏も同じだと思う。あの子も雪くんを意識してるフシがあるけど、それが愛情なのか友情なのかは分からないし」
「まぁ暫くは見守るしかないでしょうね。2人が付き合うか違う誰かを選ぶかは当人たち次第だし」
「ただ、あのバスケ馬鹿2人が恋愛に傾くかしらねぇ」
「高校生だから周りにも感化されるでしょ、これからこれから」
「あ、そうそう、千夏も帰ってくるなり“雪くん帰ってきてくれた!それに背も高くなって凄くカッコ良くなっててドキドキした///”って言ってたから、やっぱり愛情の方が強いかもw」
「私としては千夏ちゃんが娘になってくれたら嬉しいんだけどね」
「私も雪くんが息子になってくれたら良いと思ってるわ」
どちらからともなく、「「はぁ~」」と溜め息が零れる。
「「あの2人だと、いつになる事やら」」
流石親友、今でも息ピッタリだわ。
お母さんたちが親友で歳の近い異性の子供を持ってたら、実現するかは別にして、こんな感じの会話してる所もあるんじゃないかな~、と。