アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
MV撮影も終わった1月末、雪は誕生日を迎え16歳になる。
先に帰宅した千夏から贈られるプレゼントとは・・・
朝、目を覚ます。
ふと時計を見ると、時間と共に表示されてる日付は1/29とある。
そう、今日は俺、鶴羽雪の16歳の誕生日である。
起き上がり、くぁ~、と欠伸と共に伸びをする。
着替えて部屋を出ると
「おはよう」
「うぉい!ビックリしたー!何でしゃがんで声掛けてくんだよ」
「んー、出てきそうな気配がしたから出待ちしてた。お誕生日おめでとう、雪」
「ありがとな、千夏」
「プレゼント、夜に渡すからね。ほんとはどこかお出掛け出来たら良かったんだけど・・・」
「ま、部活もあるしな。また時間出来たらどこか行くか」
「そうだね」
そう言いながら、じっと見つめてくる。
何かこないだもこんな事あったな。面白そうだから放置してみるか。
俺もじっと見つめ返す。
ーお、気付いたなw
頬を膨らませて、ー見るなー と表情で訴えてくる。
「くはっ、ホントそう言うとこ可愛いよな、千夏は」
「////じゃあ、誕生日おめでとうのハグ」
「何だそりゃ?俺にじゃ無くて千夏への御褒美じゃないのか?」
「・・・嬉しくないの?」
「んにゃ、嬉しいよ」
そう言ってハグをしようとしたら
「もうっ、あの書類ハンコ要る奴じゃない!早く言ってよねー、もう。ハンコハンコ~」
と言いながら、母さんがドタドタと階段を上がってきた。
「あら雪おはよう、誕生日おめでとう」
「お、ありがとう」
そのままハンコを探しに行った。
幾ら両家両親の公認とは言え、流石にハグしてるトコなんか見られたら気まずくてしかたない。
ふと千夏を見ると、表面上は何でもない風を装っている。
しかし耳が赤くなっているのは、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「そんなに恥ずかしいなら、廊下でやろうとしなきゃ良いだろうに」
「だって優花さんが上がってくるなんて思わなかったし・・・」
「ま、夜のプレゼントに期待しとくから、あんま気にすんな」
と、ここでまたバタバタと母さんが部屋から出てくる。
「あ、雪、お父さんの妹の美星叔母さん覚えてる?」
「ん?あぁ覚えてるけど、どしたん?」
「美星ちゃん、今臨月で大変だから那月さんと様子見に行ってくるわ。そんなに遅くならないと思うし、帰りにケーキ取って来るからね」
「分かった。美星叔母さんに宜しく」
「コソッ 例の材料は用意してあるからね」
「はい、ありがとうございます」
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「あ、雪くん、誕生日おめでとう。はい、こんなもんで悪いけど」
「お、サンキュー テツ。10秒チャージ3種セットならありがてぇよ」
「じゃあ俺からはこれな。ほいよ、雪ちゃん」
「お、フルーツ味のシリアルバー5本か、サンキュー」
「僕からは実用品。スポーツタオルとフェイスタオル」
「おー、タオルは何枚あっても良いからな。流石はソーゴ、目の付け所がシャープだわ」
バスケ部の仲間から誕プレ貰ってたら
「えー、ゆっきー今日誕生日なのー!?聞いてない!」
「言ってねーからな」
「1月29日(皮肉の日)ねぇ・・・ゆっきーにピッタリ!」
「うっせーよ、前に千夏にも言われたわ」
「聞いてたら何か用意したのに」
「そうなると思ったから、わざわざ言わなかったんだよ。ま、気にすんな」
菖蒲も考え足らずな所はあるが、何だかんだ本質は良い奴なんだよな。
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千夏は「慌てないでゆっくり帰ってきてね」と言って、やたらと急いで帰ったから、お言葉通り俺はのんびり帰るとしますかね。
ブーッブーッとスマホが鳴る。
ん?母さんからか、どうしたんだ?
「もしー、どうしたー?」
「ごめん!雪。美星ちゃん陣痛来たから、帰るの遅くなるわ!」
「え!?美星叔母さん赤ちゃん生まれんの?大丈夫なん?」
「えぇ、こっちは大丈夫。あんたの夕飯は昨日の内に千夏ちゃんに頼んでおいたから」
「は?別に俺が自分で作っても良かったのに」
「あ・ん・た・の・誕生日だから、彼女の千夏ちゃんが作りたいって言ってたの!察しなさい、馬鹿息子!!」
「アッハイ」
「お祝いは帰ってからするから、じゃあね!」
言いたい事だけ言って切りやがったぞ、あのオバハン。
・・・ん?
って事は暫く家で千夏と2人きりって事か!?
んー、ま、特に何も気にするこたぁ無いだろ。
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「たった今、ただいま」
「クスッ、何それ?おかえり」
「さっき おっ母から電話あって、帰んの遅くなるんだとよ」
「うん、聞いた。実は最初から今日の晩御飯は私が作る事になってたの。ささやかながら誕生日プレゼント」
「成る程、だから夜って言ってたのか。じゃあありがたくいただきますかね」
そう言って千夏の料理姿を見るが、丁寧が過ぎて工程が中々進まねぇ。
「なぁ、手伝って良いか?」
「え?でも・・・誕生日プレゼントなのに」
「なら、“千夏と初めての共同作業”って思い出を追加の誕プレって事で、俺にくれ」
「初めての共同作業・・・!////うん、分かった」
「で、何作る気なんだよ?」
「・・・オムライス」
「へぇ?千夏の中では親子丼カテゴリーに属してるオムライス作ってくれんのか?w」
「むー、雪はイジワルだ・・・けど、この前好きって言ってたから、オムライス作りたいなって思ったんだ」
「その気持ちだけで十分なんだけどなぁ」
「何より、私より料理が上手い彼氏に負けたくない!って気持ちもある!」
「あーハイハイ、本当に負けず嫌いだな千夏は。ま、良いか、じゃあこれ炒めるぞ?」
「お願い。本当に手際良いね」
「ガキの頃から仕込まれたからな、“何があっても1人で生きていける様になっときなさい!”って言われてな」
「優花さんらしいね」
その時、ズレたまな板がケチャップの容器に当たって倒れそうになり、それを抑えた千夏の手がフライパンに触れそうになる。
「危ねっ」
寸での所で千夏の手を取る。
「ふ~~~焦ったぁ、火傷してねーか?」
「うん、大丈夫、ありがとう雪」
その後は滞りなく工程は進んで行き
「じゃあ後は私がやるから、主役は座って待ってなさい!」
「そうか?そんじゃあ任せた、千夏シェフ」
「はい、任されました」
「出来たっ!はい、どうぞ!」
テーブルに出されたオムライス、それにケチャップで描かれているのは・・・何?
「メロンパンぶん投げてる、謎の少年?」
「ドリブルしてる雪」
「THE☆画伯www」
「えーっ!そんなに酷くないよ!」
「眼科行ってこい。まぁ大事なのは味と想いだしな」
「見た目もだよ」
「まだ言うか(苦笑)。じゃあいただきます!」
「どうぞ召し上がれ」
オムライスをスプーンで掬い口に運ぶ。
「・・・うま」
「ホッ 良かった」
「いや、マジで美味いわ、ありがとな千夏。最高の誕生日プレゼントだ」
「お口に合った様で何より・・・えー、16歳になられた訳ですが、今の心境は?」
「何でインタビュー形式なんだよ?まぁ、こんな風に祝って貰えんのも嬉しいもんだな。来年もまたお願いしたいもんだ」
「何か目標はありますか?」
「インハイ連覇、何なら在学中は全部勝つ!ってぇ所かな。そっちもだろ?」
「え?あ、うん、そうだね。夢佳の居る彩昌に勝たなきゃ全国行けないから、もっと練習頑張らないと駄目だと思う。私は部長だし、尚更」
「あんまり背負い込み過ぎんなよ?ナギちゃん先輩やお下げ先輩、それに俺も居るんだからな?」
「うん分かってる、ありがとう」
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「しかし遅せーな、まだ帰って来ねーのかよ」
「もう21時過ぎてたんだ。雪、お風呂入ってきたら?」
「ん?そうか、いつも入ってる時間だしな」
そう言った後にいつもの悪いクセが出て、ついからかってしまう。
「なぁ千夏」
「うん?どうしたの、雪?」
「ニヤ 何なら一緒に入るか?」
「なぁっ!?////」
思いっ切りそう叫んだかと思うと、真っ赤になってフリーズしてしまう千夏。
「あっはっは、悪い悪い、冗談だよ。じゃあ風呂入ってくるわ」
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ー何なら一緒に入るか?ー
夕食を食べ終わって一休みしている雪に、お風呂に入ってきたらと言ったらそう返された。
一瞬で鼓動が早くなり、顔が赤くなって変な声が出て固まってしまう。
そんな私を見て
ー悪い悪い、冗談だよ
そう言って雪はお風呂に入りに行った。
「もう~~~、何であんな事言うかなぁ!」
好きな人と両想いになって、恋人として付き合う事になった。
今はそれだけでも幸せだと感じている。
けど、いつかはそう言う事もするんだろうな、と漠然と思った事はあった。
それが「(お風呂に)一緒に入るか」なんて言われたら、嫌でも意識してしまう。
ただ、それを言った時の雪の顔はいつものイタズラした時や、からかう時と同じ顔をしていたから本気じゃないのは分かった。
「全くもう、人の気持ちも知らないで・・・私は雪とならそうなっても良いと思ってるんだから、からかいや冗談で言わないで欲しいんだからね」
聞こえる筈も無い事を1人呟いてみた。
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「一緒に入るか、か」
からかうつもりで千夏にそう言ったら、案の定真っ赤になって固まってた。
そうなるだろうな、と思って言った訳だが、もしあそこで「いいよ」と返されていたら、俺はどうしていただろうか。
ー冗談だよ、冗談。本気で捉えんなよ。
ーそんな事思い付きで出来る訳ないだろ?
何だかんだ「本気じゃなかった」って言って逃げるんだろうな、俺は。
そりゃあ俺だって健全な高校生男子だからそう言った事には興味はあるし、何ならしてみたいってのが本音だ。
でも千夏と今、そう言う事をするのは違うと思ってる。
「よく分からんけど、負担は女の方がデカいんだろうしなぁ。そんな事考えんのはまだまだ早いってな」
あー、やめやめ、余計な事を考えてないで、今は今年のインハイとウインターカップで勝つ事が最優先だ!
風呂から上がると母さんたちも帰ってきてんだろ、と思っていたんだが
「雪、結構長風呂だったね」
千夏が1人、こたつで待っていた。
「は?まだ帰ってきてねーの?逆に心配になるな」
「そうだね。でも今はそれよりここ座って」
千夏に言われるまま座ると、ドライヤーで髪を乾かしてくれる。
「これも誕生日プランの1つね」
「そこまでしなくても直ぐ乾くだろ」
「良いの!私の為でもあるんだから」
「?まぁ深くは聞かねぇし好きにしな。何だかんだ自分でやるより気持ちいいのも確かだからな」
「そう?なら良かった。やってみたかったんだ、人の髪乾かすの」
「言ってくれりゃあ、俺の頭くらいいつでも貸したのによ」
「ううん、いつもだと雪の事ばかり考えちゃいそうだから。こうしてるのは楽しいけど、一緒にインハイ行けるのは今年が最後だから」
「そうだな、去年いきなり約束を果たせたのは良かったけど、それはそれとして今年も一緒に行かないとな」
「うん、だからたまにこうやって御褒美ちょうだい」
「こんなもんで御褒美になってんのか?」
「そうだよ。雪の髪存分にわしゃわしゃ出来るのは、私だけの特権」
「ほーん、なら俺にも千夏の髪わしゃわしゃさせろよ」
「えっ!?やだ。私がやるのは良いけど、されるのは駄目」
「何っだ、そのワガママ屁理屈は!」
「それに今は部活してそのままだし」
「汗まみれの夏じゃあるまいし、真冬だから気にするこたぁねーだろーが。おら隙アリ」
「だめーっ」
パシッと俺の手を受け止める千夏。
視線が絡み合う。
ヤバい、この流れは非常にマズい、主に俺の理性の面で。
今まで何度かキスした事はあるが、それはあくまで人から見えない場所ってだけであって、今みたいに家で2人っきりってシチュエーションじゃなかった。
それが今は自宅で2人きり、このまま流れに任せてキスしようもんなら、理性を抑えきれるか自信がない。
が、その思いとは裏腹に千夏に吸い寄せられて・・・
ガチャッ
「ただいまー!」
と、寸での所で両親が帰ってきた。
あっっっぶねー、あのままだと流れに任せて千夏に手を出してたかも知れん、グッジョブ両親!
「おう、お帰りー」
「ごめんね雪、誕生日なのに遅くなっちゃって」
「お詫びに美味しいケーキ買ってきたぞ」
「センキュー」
「美星ちゃん、安定したから良かったわ。でももうそろそろ産まれそうだから、母さん手伝いに行く事が増えるかも」
「こっちは千夏と2人で大丈夫だから、父さんも一緒に叔母さんの事助けてやんなよ」
「そう?そうなったら頼むわね」
「おうよ」
「千夏ちゃん、夕飯作れた?」
「はい、材料ありがとうございました。それに雪も手伝ってくれましたから」
「あらあら、新婚さんみたいね」
「雪にも“千夏との初めての共同作業の思い出をくれ”って言われました////」
「あ~、真冬なのにあっついわー」
「母さん、フォークはこれで良いかい?」
「あ、はいはい、ナイフはこれ使ってね」
テーブルに置かれた誕生日ケーキのデコレーションを見て、改めて16歳になったんだと言う実感が湧いて来た。
あれだけ千夏に自重しろだ何だと言ってきたけど、実の所俺もいっぱいいっぱいの所はあるんだよなぁ。
はーやれやれ、俺もあんまりそっち方面でからかわない様にしないとな。
そう思いながら部屋に戻ると、ドアノブに何か掛かっている。
ふむ、千夏からのプレゼントか、オムライスとドライヤー掛けるだけじゃなかったんだな。
開けてみると、靴下とメッセージカードが入っていた。
ー雪のプレースタイルだと足への負担が大きくて、靴下も直ぐ駄目になりそうだからこれにしました。
また一緒にインターハイ行けたら良いね 千夏ー
幼馴染みから恋人に、そして同居している事もあり、精神的にも物理的にも以前より距離が近くなったからこそ、やるべき事をキッチリやらなきゃならねぇ。
叶えたい目標に向かって。
アホみたいに暑い日が続いています、皆さん体調はいかがでしょうか?
私は暑さで疲労困憊していて、中々思う様に筆が進んでません(言い訳)
大雨も酷い様ですし、当該地域の方に被害がない事をお祈りします。
さて私はと言えば、単行本読みながら、ここでこんな風に出来るか?とか、雪ならこう対処するだろうな、みたいなネタが色々浮かんでくるんですが、点を線にするのが中々に難しい訳でして・・・
もう数話したら、2年生編に入ると思います。