アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
守屋家に集まり、手作りチョコレートを作る事になった女性陣。
彼女達の前に立ちはだかるのは、「何でも出来るあの男」の存在だった。
ー明日はバレンタイン!今からでも間に合う手作りチョコ特集!ー
そんな音声がテレビから流れてくる。
私、鹿野千夏は今幼馴染みの守屋花恋の家で花恋の妹である菖浦ちゃんとチョコを作っている。
ペリペリと銀紙を剥がしていく菖浦ちゃんだが、剥がれた銀紙の一部がチョコに混じっていた。
「菖浦ちゃん、銀紙混ざってる」
「ありがとう、ちーちゃん」
「だからバレンタインは市販に限るのよ」
「彼氏持ちが何サボってるの!健吾くんも手作りが良いんじゃない?」
「健吾とは合意に至ったから」
「それで、ちーちゃんはゆっきーにあげるんだよね?義理はどうするの?」
「・・・本命だけで良いかな」
「ゆっきーも部活に一所懸命!って感じだしね」
「そうだね、本当に雪からはまだまだ学ぶ所が多いかな」
「この前大会があったんだけどね。勝ちたいとか負けたら悔しいとか何となく想像できるけど、課題を見付けるのが楽しいなんて私には分からない感覚でさ。何かに取り組む人は、そういう人と惹かれ会うのかなぁって」
そう言ってあの日の事を思い出す。
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「大喜と望月くんの試合始まるぞ」
「応援行こうぜ」
「匡くんの応援は?こっちも呼ばれたよ」
「あ、そうか」
「じゃあ俺ら匡の方行くわ」
コートでは「お願いします」、と挨拶をしてる匡くん。
すごいな、ここで戦ってる人、皆すごい。
「優勝、栄明高校、猪股大喜くん」
パチパチと拍手が起きる。
「猪股くんってあんなに強かったんだな」
「2・3位は佐知川?」
「佐知川に勝つなんて、インハイも上位食い込んでくるんじゃないか?」
「よくやった!大喜!!栄明のエースだお前は!」
「針生先輩が居なければ、だけど」
「オイ」
皆いのたが優勝した事で盛り上がっている中、匡くんは電話していた。
「今から帰るから、うん。・・・優勝?は出来なかったんだ」
「えー、にーちゃ負けちゃったのぉ」
「だっせー」
「ごめんって、でも頑張ったからさ」
それを聞いていて思わず
「そうだよ!お兄ちゃん凄かったよ!スマッシュ、バシーンって!狙うところ良くて、相手着いて来れてなかったんだから。それで」
「ごめん、切れてる」
「へっ?な、なんだ、それならそうと言ってよね」
「ふ、ただ俺が慰められただけじゃん」
そう言って笑う匡くん。
「少し盛ったかも。相手着いて来れてたかも」
「手のひら返し。まぁ実際負けたんだけど」
「そういう事言いたいんじゃっ」
「けど負けてもやっぱり試合って楽しいんだよね。あんなに練習しても分からなかった課題が、次々出てきて新しい自分に会うみたいだ」
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匡くんがそう言っていた事を思い出していると
「菖浦の好きな人が、そういう人って事でしょ」
「好きじゃないっ!・・・ただ価値観とか、そーゆー」
「確かに。雪もそういう人だから説得力ないかも知れないけど、私菖浦ちゃんも好きだからなぁ」
ちーちゃんの言葉に、きゅんっとしてしまう。
「明るくて行動力もあってハッキリしてて見てて気持ちいいし、年下なのに面倒見も良くて女の子らしくて料理も上手で。
部活(目標)に生きるのが偉いとも私は思わないから。
大切なのは悲観しない事で、自分の為に生きてる人が惹かれ合うんじゃないかな」
「好きです!!」
「誰に告ってんだ・・・」
「あ、ラッピングのサイズ合わない」
「私の分けたげるー」
「お邪魔しました!」
「気をつけてー」
「ゆっきーにちゃんと渡してね!」
私がそう言うと、ちーちゃんは顔を赤くして帰っていった。
「余ったの頂戴よ」
「だめー」
別に好きとかじゃない・・・はず。
そう思うと同時に、匡くんとの今までのやり取りが頭に浮かぶ。
そして最後に、この前の大会後の笑顔を思い出す。
ーこんな顔で笑う事があるんだー
そう思うと何とも言えない気持ちになる。
「ぬわーっ!」
雑誌を読んでいると、部屋の外から妹の叫び声が聞こえてきた。
「あの子何騒いでんのかしら?」
グジグジ悩んでるなんて私らしくない!!
チョコくらいあげてやろう!
別に死ぬ訳じゃないし!悩んでる方が自分が死んでくっ!
「私を好きにならないなんて、向こうがセンスないんだから!」
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「ただいま」
「おかえり、千夏ちゃん!手洗いうがいはしっかりね!」
「はい」
「それでデキはどう?」
「私なりには良く出来たと・・・」
「そう」
ん?千夏帰ってきたのか・・・何か甘い匂いがするな。
匂いの元を辿ると、紙袋にラッピングされた包みが入っていた。
成る程、花恋さんちでチョコ作ってきたのか。
明日は期待するとしよう。
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明けて翌日、2/14日バレンタインデー当日。
そこかしこで、女子からの告白でカップルが成立しているのを見た。
そして体育館でもー・・・
「チョコもらった?」
「あー、まぁな」
「やっぱりバレンタインは数もらうより、心のこもったチョコ1つもらうのが大事だよな」
「言っとくけど、マネージャーに貰ったのはノーカンだぞ」
「えっ」
ーはいどうぞー
ーアザース
後ろではマネージャーが、列をなした部員に義理チョコを配っていた。
匡くんは居ないや・・・
特別大容量の箱入り用意したから渡したいのに。
これを渡せばそのチョコの美味しさに、私を意識し始めるはず!
自分から行動するのって、緊張するわね・・・
体育館の中をそれとなく歩いて探していて、壁の角に差し掛かると
「わっ」
「わぁ」
と、反対側から歩いてきた匡くんと出会う。
「何その心のこもってない“わぁ”は」
「つい、つられて。もしかして2階に行く?」
「そ そう、シャトル乗っちゃってて」
「俺も行くよ、取りたいものあるし・・・」
「あのさ」
「ん?」
「やっぱり何でもないっ!」
「?そう」
今渡したら部活に集中出来なくなっちゃうもんねっ。帰り際に渡そう!
別に渡すのが怖いとかじゃーっ。
そう葛藤している所へ
「菖浦ちゃん!」
「ひなっち!」
「「ハッピーバレンタイン!」」
「はい、チョコあげるー」
「私市販のだけど・・・」
じっと見ている匡くんに気付いたひなっちが
「なんだねその物欲しそうな顔は?」
「してないけど」
「しょーがないなぁ!」
「くれんの?」
「ん。妹ちゃん達にあげて」
「ふむ、総額が分かる内容だな。駄菓子詰め合わせ」
「うるさいっ!」
「おっと、私準備行かないとっ。チョコありがとー」
「うん、こちらこそー。働き者だねぇ」
ひなっちは義理だからアッサリ渡してたけど、私は・・・本命、だから渡せないのかな?
そう思うと頬が熱を持つのが分かる。
少し歩いた所で、出入口の階段で黄昏ている松岡さんが目に入った。
「松岡先輩?なんか哀愁漂ってますけど?」
「何でもないよ。チョコ1つももらえなくても、死にはしないから」
「松岡先輩スペックだけ見たら、チョコ貰えそうなのに」
「かつては貰えてたよ。“スポーツ出来る”でモテてた頃に女の子からチョコ貰ったら、友達の好きな子だったらしくて」
「わぁ、ふくざつ」
「友達の方が大事だったから女の子にチョコ返したんだよね」
「何故返す?」
「そしたら女の子たちに無視され始めて・・・」
「わぁ・・・」
「まぁ友達と仲良くやれたから良かったけど。
それから断ったりしてたら誰もくれなくなって。
本命に貰えないなら意味ないとかも思ってたけど、その人にも相手が出来たから今は寧ろ欲しいんだけど」
そう話している前を女子生徒が通りかかる。
「チョコ余っちゃったぁ」
「あ、松岡いるよ、あげたら?」
「松岡は笑顔胡散臭いから駄目」
「義理とか本命とか以前の問題そうですけど・・・」
「菖浦ちゃん、さっきバド部に配ってたの、もし余ってたらあげてくんない?
俺から見ても最近コイツかわいそうで・・・
ほら、鹿野さんと鶴羽が付き合い出したでしょ?だから尚更・・・」
「え・・・」
残ってるのは、匡くんにあげるつもりだった1つだけ・・・だけど
「特別ですよ?」
「いいの?」
「勘違いしないでくださいよ?ギリギリの義理ですから」
「うん!」
まぁいっか。
悩むのが私らしくないって思ったけど、ややこしい恋愛しようなんてのも私らしくない。
もっと気軽に生きないと。
「ホワイトデー、倍にしてくださいね」
扉の間から守屋さんが松岡さんにチョコをあげてるのが見える。
「手作りですよ」
「そうなの?」
最近の言動もあって、“もしかして?”と思った事もあったけど・・・
あぶね・・・危うく勘違いする所だった。
直ぐ後ろで見られていて、匡くんがそう思っているなんて事に、私は全く気付いていなかった。
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そんな事が周りで起きている事に全く気付いていないこの男は、また1つ騒動を起こす事になる。
「さぁて、部活もそろそろ終わる頃だし、用意するかね」
「何をだ?雪ちゃん」
「ん?女子から男子にってのは日本独自だからな、俺からも女バスの皆に差し入れだよ。余裕あるから1袋やるよ、ホラ」
「これ、トリュフ!?こんなもんまで作れんの?」
「あぁ、慣れりゃあ結構簡単だぞ。今の時代、幾らでも動画あるから、興味あったらやってみろよ」
「お、おう」
そんなことを言って、雪ちゃんは女バスの方へ歩いて行った。
「おーい、女バスの諸君!チョコは要らんかねー?」
「え!?雪くん、チョコまで作れるの?」
「おう、最近は作成動画も色々あって、参考資料に事欠かねぇからな。ほらほら1袋ずつ持ってきな」
「どれどれ・・・って、トリュフ!?とこれは?」
「生チョコ」
「うっそでしょ!?学校中の女子の立つ瀬が無いんだけど・・・」
「大袈裟だな。さっきも言ったけど色んな動画あるから、時間ある時に作ってみりゃあ良いんだよ。
時間無いのにいきなり作ろうとするから、テンパるんだよ」
「コソッ ねぇ、これだけ作れるんなら、ナツは・・・」
「コソッ うん、手作りするとは言ってたけど・・・」
「?まぁ遠慮すんな」
「うーん、じゃあありがたく・・・って、おいしっ!」
「ホントホント、トリュフも生チョコも市販品みたい!」
「いや、そりゃまぁ元が市販品だしな」
「確かに(笑)」
「でもでも、それを溶かしたりして自分で作るのって凄いよ!」
「んー、慣れたらそこまででもないんだけどな。
まぁ俺の場合は小学生の頃から“何があっても1人で生きていけるようになっときなさい!”って母さんに仕込まれたってのもあるからなぁ」
「小学生の頃から・・・」
「キャリアが違う・・・」
「そもそもこっち(日本)に帰って来られるかも分かってなかったからな。最悪向こうでグリーンカード取ってたかも知れんし」
「もしそうなってたら栄明にも来てなくて、ナツとも付き合ってなかったって事でしょ?」
「そりゃそうだろ、こっちに居ないんだから。
ま、俺と千夏には“縁があった”って事なんだろうよ」
「本当にその縁に感謝だよ。お陰で去年はインハイ優勝出来たんだし」
「そりゃあ皆が努力した結果だよ・・・って、もう良いだろこのやり取り。さて、女バスの皆には行き渡ったみたいだから他んトコ行ってくるわ」
「え?ナツには?」
「あぁ、別に用意してあるから後で渡すつもり。ほんじゃ」
雪くんはそう言って他の部活にも配りに行った。
バスケ部を後にした俺の目に入ってきたのは、雛とにいなちゃんだった。
「おーい、お2人さん。チョコ要らんかねー?」
「え?雪?」
「鶴羽くん、どうしてチョコ?」
「バレンタインに女子から男子へってのは、基本的に日本独自だからな。向こうじゃ当たり前に男が女に贈り物してたし。ほれ」
「あ、ありがとう」
「で、どんなの・・・ってトリュフに生チョコ!?あんた何ちゅうもん作ってんの!?女子の立場がないじゃない!」
いや、知らんがな。
たかがチョコ程度で、そこまで騒がんでも良かろうに。
「ま、良かったら味わってくれ」
んー、そろそろ無くなりそうだな。
そう思った所で匡が通り掛かる。
そういや匡って下にきょうだい多かったよな?
ガサガサと袋を確認すると、残りは5つだった。
確か匡入れて4人きょうだいと両親だから1つ足りんけど、そこは家族間で融通して貰うか。
「匡ー!」
「雪?どうした、そんな声出して?」
「もう残り少いから全部やるよ、下の子達にやってくれ」
「え、良いのか?こんなに」
「あぁ、女バスの連中に配った残りで悪いけどな」
「いや、嬉しいしあいつらも喜ぶと思う、ありがとう」
「おう、気にすんな。お返しも要らんからな」
じゃーなー、と言って戻っていく雪を見送りながら
「男友達から貰うってのも変な感じだけど、雪の優しさが伝わってくるな。あいつらも喜ぶだろ」
そこへ守屋さんが戻ってきて
「え!?匡くんチョコ貰ったの?誰に!?」
「雪から。何でも女子から男子へってのは日本独自らしくて、あちこちに配って回ってたみたい」
ホッ 「何だゆっきーか・・・って、え?それ手作りだよね」
「秋合宿の事を思えば、別におかしくはないと思うけど?守屋さんこそ松岡さんにあげてたみたいだけど?」
「いやいやいや、違うから!
一緒に居た人に、余ってたらあげてくんない?って言われてあげただけで、ギリギリの義理だから!!」
何だか妙に焦った感じで否定する守屋さんを見て
「ははっ、そんな必死に否定しなくても良いのに」
「だ、だって変な誤解されたくないじゃん・・・」
「分かってるよ。
松岡さんも本命だった人に彼氏が出来ちゃったし、普段の言動も相俟ってこの手のイベントは女子に避けられてるからね」
「うん、本人も言ってた」
「まぁ義理でもお返し貰えるなら良いんじゃない?
じゃあ俺は着替えて帰るからこれで」
「あっ・・・」
そう言って匡くんは部室へ行ってしまった。
「変に意識しすぎないで、普通にあげれば良かったかな・・・」
そう思っても、無い物はどうにも出来ない。
「・・・私、こんな感じじゃなかったはずなんだけどなぁ」
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菖浦ちゃん達と別れた後にいなと歩いていて、ふと外を見る。
「あ、見て。あれ新1年生じゃない?」
「もう直ぐ私たちも2年かぁ」
「早いねぇ。1年色々あったなぁ」
「そうだね、雛は彼氏まで出来たもんねーw」
「はわっ!・・・それはその通りなんだけど」
「きっと次の1年も、色んな事が起こるよ」
「何せ生粋のトラブルメーカーの問題児が居るからねぇ」
「確かに(笑)」
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さて、チョコも全部配り終わったし、俺も着替えて帰るとしますかね。
そういや千夏の姿が見えんけど、先に帰ったのか?
「ま、家で顔合わすしな」
学校を出ていつかの公園に差し掛かった時、いきなり腕を掴まれる。
すわ、変質者か!?、と思ったら千夏だった。
「何だ千夏かよ、ホントちょくちょく脅かすの止めてくんね?」
「良いからちょっと来て」
そのまま腕を引かれて建物の陰に連行される。
「はい、バレンタイン。どうぞ」
「わざわざ外じゃなくて、家でも良かっただろ」
「うん、でもね、やっぱり2人きりで渡したかったし」
「そっか、そうだな。ありがとう千夏」
「うん・・・雪」
「どうした?」
聞くと同時にぐっと顔を引き寄せられる。
♪~バレンタイン・キッス 椎名真昼ver~
「ちゅ、ん、・・・ふぅ」
流石に突然の事で呆けていると
「きょ、今日はバレンタインだからね!女の子が気持ち伝える日だから我儘じゃないからね!!/////」
何も言ってないのに、真っ赤な顔で早口で捲し立てる様に言う千夏を見て
「くはっ、何も言ってねーだろ。何テンパってんだよw」
「だ、だって・・・」
そう言う千夏にキスを返す。
「え?」
「お返しだよ。さ、そろそろ帰るか」
「うんっ!」
満面の笑みで腕を組んでくる。
「千夏」
「何?」
「これから登下校は、何も気にしなくて良いからな」
「え?じゃあ行き帰りはいつも一緒で良いの?」
「おう。そもそも学校から了承貰ってんだし別に悪い事してないんだから、グダグダ考えんのも馬鹿らしくなってな」
「分かった!」
さぁ、帰ったら俺の作ったチョコレートケーキ(小)を振る舞いますかね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
部活終わりの帰り道、校門まで来ると雛が待っていた。
「お疲れ、大喜!」
「雛?待っててくれたのか?」
「そりゃそうでしょ、コレ渡してないんだから」
そう言って綺麗に包装されたチョコを渡してくる。
「あ、ありがとう!すっかり忘れてた!」
「全くもう。菖浦ちゃんの貰って受かれてたんじゃないの~?」
「いや、それはっ!」
「冗談だよ。大喜がそんな奴じゃない事は、この雛さまが1番分かってるんだからね!さ、帰るよ」
「お、おう」
少し歩いて公園まで来ると声が聞こえた。
ん?この声はちーちゃん?何か早口だけど・・・
「雛?」
「しっ、ちーちゃんの声がする」
声のした方をそっと見ると、ちーちゃんと一緒に居る雪の手にはチョコらしき包みがあった。
ちーちゃんわざわざここで渡したのか。
同居してるんだから家で渡せば良いのに
と思った時、私に、いや私と大喜にとって衝撃的なシーンが目に飛び込んできた。
雪がちーちゃんにキスしたーっ!?
ーお返しだよ。さ、そろそろ帰るかー
その雪の言葉に満面の笑みで返し、腕を組むちーちゃん。
2人が公園を出る時、雪がこっちを見た気がした。
ーまさか気付いてないよね?
そう思ったのも束の間、ちーちゃんと組んでるのと逆の手を挙げて、前を向いたままヒラヒラと振っていた。
ー完っ全にバレてんじゃん!
これじゃただの覗き魔だと思われる・・・だけならともかく、明日以降これをネタにからかわれるまであると思うと頭が痛い。
大喜はと見るとスマホを見ていた。
誰かからメッセージ?
スマホを仕舞った大喜が私を見る。
「ひ、雛!」
「は、はいっ!」
「あ、その・・・キ、」
「キ?」
「キスして良いですか!?」
「・・・え!?」
ーキス?
私と大喜が?さっきの雪とちーちゃんみたいに?
「~~~い、いいよ////」
うん、付き合ってるんだからいつかはするんだし、それが今なだけ。
それに今日はバレンタインだし、ね。
♪~KISS OF LIFE 平井堅~
大喜の顔が近い。
真っ赤になってるのが分かる。
私も同じなんだろう、顔が熱い。
そっと目を閉じる。
大喜の息づかいが聞こえる。
と、ふわっとした柔らかい感覚を唇に感じる。
~~~/////
私、今大喜とキス、したんだよね?
瞑っていた目を開ける。
直ぐ近くに大喜の顔、真っ赤になって眼を逸らしてる。
私も少し恥ずかしい。
でも顔を逸らされてるのが何か面白くない。
「大喜、ちゃんと私を見て」
そう言うと、おずおずとこちらに顔を向ける。
「・・・とは言っても、何か恥ずかしいね」
「うん・・・急にこんな事言って嫌じゃなかった?」
「嫌だったら、そもそもOKしてないよ。でもどうして急に?」
「実はさっき雪から
ーバレンタインは女が気持ち伝える日だっつってもお前らはもう付き合ってんだから、男見せろよ大喜。
俺と千夏のキスシーン覗いてないでなwー
つてメッセージが来たんだよ」
「はぁ~、やっぱりバレてたんじゃん~。あいつの察知能力どうなってんのよ!?」
「でも、だからこそ俺も腹が決まったって言うか」
「それはそうかもね。大喜は考え過ぎるトコあるから、切っ掛け作ってくれた雪に感謝しなきゃ。
・・・でもいつまでも誰かに切っ掛け作って貰う様じゃあ、雛さまに見限られるかもよ?」
「!っ、そうならない様に頑張る!!」
「しっかりしてよね、彼氏なんだから!・・・じゃあ帰ろっか」
「あ、うん、そうだな」
まだドキドキしていて、鼓動が早い。
雛も同じ気持ちでいてくれてるんだろうか?
隣を歩く雛に目をやると、ニコニコとしていて嬉しそうに見える。
ずっとこの笑顔でいて貰える様にしないとな。
そう心に決めたバレンタインだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「ただいまー」」
「おかえりー。あら?腕なんか組んじゃってまぁ」
「何だよ、別に良いだろ。
悪い事してる訳じゃないんだから同居バレした所で学校側は了承してんだから、もうグダグダ考えんの止めたわ」
「そ。あんたがそれで良いならそうしなさい。ただ、千夏ちゃんの事はちゃんと守ってあげなさいよ?」
「分かってるよ」
「私も大丈夫ですよ、優花さん。渚や雛ちゃん始め、助けてくれる友達も沢山居ますから!」
「はい、それじゃ手洗いうがいしてきなさい、ご飯出来てるからね」
「おう/はい」
相変わらず優花さんのご飯は美味しい。
いつかは私もこれくらい作る事が出来る様になるだろうか?・・・雪の為に。
そんな事を考えていると
「ほら千夏、デザートでござる」
!?
雪が出してきたのはチョコレートケーキだった。
「ゆ、雪?これはどういう?」
「どうもこうもバレンタインのチョコケーキ。向こうじゃチョコって訳じゃないけど、男から贈るのが当たり前だからな!さぁ食べてくれ」
笑顔で勧めてくる雪。
「じゃ、じゃあいただきます」
フォークを入れてひと口食べる。
「!?なにこれ、凄く美味しい!!」
「そうか、そりゃあ良かった。作った甲斐があったわ」
美味しいし嬉しいんだけど、何と言うかこう「負けた感がある」と言うか・・・
食べながら雪を見ると、やっぱりニコニコしてこちらを見ている。
雪が私の為に作ってくれたと言う事実があればそれで良いか、と思い直した。
やっぱり私は雪の事が大好きなんだなぁ。
これからもずっと一緒に居てね、雪。
危なかったー!
書いてる途中で変なとこ触ってしまい、殆ど書いてないページしか表示できなくなって滅茶苦茶焦った。
自動保存を開いたら残ってたので、事なきを得ましたが。
さておき、大喜と雛もバレンタインデーを機に、関係が一歩前進しました。
菖浦も匡の事が気になってきた様で、これからどう接していく事になるのか・・・