アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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4月になり、進級した雪達。

千夏も最後のインターハイとウインターカップ優勝を目指す。

そして各部活にも新入生が入ってくるのだが、一筋縄では行かなさそうな者も・・・


EP52 進級と新入生

 

さて、今年もやってきました部活見学。

 

去年は千夏と雛の二大巨頭が人気を博していたが、今年も同じだろうなぁ。

 

あ、菖浦も見た目だけは“美人マネージャー(笑)”とか思われそうではあるな。

 

新1年については知らんよ?

まだ入部前だし、俺は外部生だから内部生の事まで把握してないからな。

 

 

ーどこ入るー?ー

 

ーバレーとかー

 

ー俺バスケー

 

 

 

「新体操部だって」

 

「あれが噂の蝶野雛先輩」

 

「キレイ・・・」

 

「去年全国3位だってさ」

 

「美しさと可愛さを兼ね備えているな・・・」

 

「あ、あっち!」

 

「バスケ部の鹿野千夏先輩!」

 

「かっこいい!」

 

「部長なんだよね」

 

「クールそうなのにあんなに動けるなんて、ギャップあるー」

 

「憧れるよなぁ」

 

新入生達のそんな声に気付いた千夏が、ふと中二階を見る。

 

それだけの事で

 

ーわあっ、こっち見たー!!ー

 

ーどうしようー

 

等の声が上がる。

 

 

 

「既に新入生に熱烈な人気を博してるな、2人とも。不安じゃないか?」

 

「今に始まった事じゃないから、気にしてられないよ。俺は俺で自信を持つしかない」

 

「2人とも彼氏いんのかな?」

 

「居そうだけど、分かんないよな」

 

「もし居ないんなら、俺アプローチしちゃおうかな」

 

そんな新入生達の声を聞いた大喜は、「ぐうぅ」と言ってうずくまっている。

 

と、そこへ雪が近付いてきて

 

「匡、どうしたんだ、こいつ?」

 

「あー、千夏先輩と蝶野さんが新入生から大人気の声を聞いて自信が揺らいでるらしい」

 

「はぁ、大喜よぉ、自分に自信が持てないのはともかく、自分の彼女は信じろよ。雛がお前以外の奴を相手にすると思ってんのか?」

 

「それはない!・・・と思う」

 

「いや、そこは蝶野さんの為にも断言しろよ・・・」

 

「ま、そうやって少しずつ自信を積み上げてくのがこいつ(大喜)のスタイルだからな。じゃあ俺は女バスの部長さんでも構いに行くとしますかね」

 

ーじゃあな、と言って雪はバスケ部の方へ戻って行った。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

新入生達からの視線を集めている千夏に近付き

 

「いやー、人気者ですなぁ、女バスの部長さんは?w」

 

と声を掛けると

 

「あーっ!あれってバスプリのMVに出てた鶴羽雪先輩!?」

 

「目白凛や矢部翔平と並んでも全く見劣りしてなかったけど、本物見たら納得しかないわ!」

 

「おー、観てくれてたのか。凛と翔平って滅茶苦茶カッコ良かっただろ?」

 

「はい!2人ともすっごくカッコ良くてファンになっちゃいました!」

 

「そうかそうか、あいつらも喜ぶだろうし伝えとくわ」

 

「でもでも、鶴羽先輩も負けてなかったです!」

 

「ははっ、そりゃ言いすぎだろw」

 

「うんうん、バスケのシーンは全部本当にやってるんですよね?」

 

「おう、俺の担当分はな」

 

「「きゃ~っ、凄い凄い、カッコいい~!!」」

 

 

 

むー、雪ってば新入生の女子に構いすぎじゃない?

キャーキャー言われて喜んでる様に見える。

彼女の前で他の女の子と楽しく談笑するなんて・・・

 

 

 

「流石高校No.1プレーヤーって言われてるだけあるよな!

正直もう日本No.1プレーヤーじゃないか?って一部で言われてるし!」

 

「鶴羽先輩と鹿野先輩の2人が並ぶと、ハマり過ぎだろ!」

 

「鹿野先輩も、鶴羽先輩の彼女っぽい立ち位置でバスプリのMV出てたしね!」

 

 

 

現実は“彼女っぽい”じゃなくて“彼女”ですよー。

そんな事を思いながら雪に声を掛ける。

 

 

 

「だって。鶴羽先輩こそ男女問わず大人気だと思いますけど?どう?新入生の女子達に褒められた気分は?」

 

「意趣返しかよ、こんちくしょうめ」

 

そう言って人差し指でおでこをつつく。

 

「あうっ」

 

 

 

 

「もしかして、付き合ってるのかな?」

 

新入生のその言葉にドキッとする。

 

そこへ

 

「雪ちゃん、ここは目が覚める様な一発決めてやれよ」

 

と、鷹尾くんが提案してくる。

 

 

ふむ、新入生は部活見に来てんだから、ウチのレベルがどんなもんか教えとく必要はあるな。

 

「よっしゃ、5人ディフェンス入ってくれー!パス頼むわカズ」

 

ボールを受け取りダンダンと突く。

 

ディフェンスがポジションに付いたのを見てドリブルを始める。

 

1人目、加速して一気に抜き去る。

 

2人目、クロスオーバーでアンクルブレイク。

 

3人目、数回バックチェンジして身体の後ろから頭越しにボールを投げる。

 

4人目と5人目、加速して抜く!と見せ掛けてカズにパスを出す。

 

そしてゴール下に走り込んだ所で、カズから絶妙なパスが来る。

 

「相変わらず良いパスだぜ、相棒!」

 

そう言いながら空中でパスを受け取り、レッグスルーからダンクを叩き込む!

 

ガァン!とゴールが音を立てる。

 

見学している新入生が「ワァーッ!」と盛り上がる。

 

 

「去年、全国制覇した事でテレビで特集されてたけど、実際に見たらとんでもないぞあの人!」

 

「それに鶴羽先輩の陰に隠れがちだけど鷹尾先輩も全国で1・2を争うPGだし、陣先輩も全国大会ベスト5に選ばれてるから、ウチの男子バスケ部って本当に全国でもトップレベルなんだよな!」

 

「女バスだってインハイ優勝してるし、全国トップレベルだよ!」

 

「他の部活も全国出てる人がかなり居るし、スポーツ強豪校って言うだけあるよね」

 

 

 

おーおー、新入生がこぞってテンション爆上げですなー。

 

去年のカズやソーゴみたいな即戦力や、テツみたいに初心者でもやる気と根性のある奴が来てくれたら嬉しいんだが。

 

そう思いながら上を見渡すと、何となく雰囲気のある奴が目に止まる。

 

身長は俺と同じくらいか?セットした髪の分、俺より高いかも知れん。

 

ちょっとした勘だが、アイツが入ってくれたらチームとして層が厚くなりそうだ。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雪のデモンストレーションで盛り上がってる新入生達を横目に、匡と話を続ける。

 

「何かと気の休まらない1年になりそうだな」

 

「あっという間に4月で、もう直ぐインハイ予選も始まるしな・・・それに新入生も楽しみだな、早い人は今日から参加だって」

 

「あれ?あの子可愛くね?」

 

「女子バドミントン部の新入生?」

 

バド部の2・3年が話しているのでコートを見ると、1年生が打ち合っていた。

 

男子に可愛いと言われていた子がクリアを返そうと後ろに下がったのは良いが、コート外に置いてあったシャトルを入れてある籠に引っ掛かって転倒してしまった。

 

「あかり!大丈夫?」

 

「うん平気。こういうの慣れっこだから」

 

「それが心配なのよ。てか、そのラケットあんたのじゃなくない?」

 

「うん、間違えてお兄ちゃんの持ってきちゃったみたいで」

 

「重いやつじゃない!」

 

「そっか、どうりで・・・」

 

「ったく・・・」

 

 

 

「女バドは賑やかな子が入ったみたいだな。針生先輩、お疲れさまです」

 

「よう、大喜に匡」

 

「オイオイオイ、大変だあ!!」

 

「どうしたんですか、西田さん」

 

「今年の1年にとんでもないのが2人・・・」

 

 

「何だその態度は!ぶつかったのに睨み付けるやつがいるか!」

 

「目付きは元々、それに謝ったじゃないですか」

 

「“っす”のどこが謝ったって言うんだ!今朝も遅刻して入学早々悪目立ちしてるぞ、遊佐!」

 

「だってぶつかってきたのそっちじゃん」

 

ー遊佐!?ー

 

「また口答えを!」

 

 

「ってまさか佐知川の遊佐のー?」

 

「そういや目元似てる、うちのバド部に入んのか?問題児みたいだけど・・・」

 

「佐知川の中等部って噂あったぞ、わざわざ栄明受験してきたって事だよな」

 

「でも遊佐の弟だとしたら、相当強いんじゃ・・・」

 

「誰っすか、今“遊佐の弟”って言った奴。俺には晴人ってゆー、ハッピーな名前があるんで」

 

「俺は言ってないけどね・・・」

 

「って、あなた部長さんじゃないスか。部活紹介で見ました。失礼致しました」

 

ーあれ、意外と礼儀正しい?ー

 

「元木先生がお騒がせしてすみません」

 

ーいやいや!君も大概だからね?ー

 

「改めて新しく入部させていただく、遊佐晴人です。インハイで優勝する為に来ました、よろしくお願いします」

 

「口だけの奴はもう十分なんだけどな。また面倒そうな奴が・・・」

 

「誰が口だけですか!」

 

「だって俺に何回勝ったよ?」

 

「ぐぬ」

 

 

「1年の紹介はまたするから、取り敢えずネット立てろー」

 

「はーい」

 

 

準備しようと遊佐(弟)の横を通りすぎようとすると

 

「あ、ねぇ、トイレどこにあるか知ってる?」

 

「あっち」

 

トイレの方を指差す。

 

「さんきゅー、いやー広いよね、この体育館」

 

いそいそとトイレに向かう遊佐(弟)を見送る。

 

隣にいる匡が

 

「1年だと思われたな」

 

ー遊佐ってやつはー!ー

 

 

 

「そう言えばさっき2人って言ってなかった?」

 

「それがー・・・」

 

 

西田先輩の言葉を聞きながら休憩しつつコート付近を歩く。

 

と、雛が他の部員と話している。

 

「お疲れ」

 

「うん、お疲れ」

 

そんな少しのやり取りすら、嬉しく感じる。

 

が、そこへ

 

「いてっ」

 

シャトルが飛んできて頭に当たる。

 

「すみません!」

 

さっきの新入生がシャトルを取りに来るが、シューズの底が床に引っ掛かって転び掛かり、俺とぶつかるー直前で何とか踏ん張ってぶつからずに済んだ。

 

「あぁぶなかったぁ!もう少しでぶつかっちゃうところでしたっ!私よく躓いちゃって」

 

「そうなの?気をつけてね」

 

そう言って、じっと見てくる。

 

「?」

 

飲み物欲しい、とか?

 

「あっ別にっ、飲み物欲しいとかじゃっ」

 

「う、うん」

 

違う様だ。

 

「それじゃ シャトル ごめんなさいでしたっ!」

 

「あっ。打つ時、ひじ固定させた方がいいよ」

 

「ひじ、ですか・・・?」

 

「あかりー!」

 

「は、はい!」

 

 

 

「お前あかりちゃんと面識あったっけ?」

 

「あかりちゃん?名前呼びしてるんですか?」

 

「名字だと呼びづらいんだよ」

 

「何でですか?」

 

「あ、知らないのか。あの子兵藤さんの妹だぞ」

 

兵藤・・・って、え?

 

「えぇーーーーーっ!!どういう遺伝子なんですか」

 

「俺も謎だ。佐知川は男子校だから栄明きたんだって」

 

ーってことは・・・遊佐くんの弟(って言うと怒るけど)とー・・・兵藤さんの妹が栄明(うち)にー・・・

 

これは、気の休まらない1年になりそう・・・

 

 

 

ーひじ・・・

 

さっき先輩に言われた、ひじを固定する事を意識して打つ。

 

ひゅっ、とラケットを振ると、パァン!と音を立ててコートにシャトルが突き刺さる。

 

「ナイスショット、良いじゃん!」

 

 

わぁ、ほんのちょっとしたアドバイスでこんなに違うんだ。

 

あの人が猪股先輩・・・かぁ・・・

 

ふふっ、なんか嬉しいな。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お願いします」

 

朝イチで体育館に入ると、直後に千夏先輩が来る。

 

「今日は俺が一番乗りですね」

 

「私の姿を見付けた途端、ダッシュしていったくせに」

 

「走りたい気分だったんです、って雪は一緒じゃないんですか?」

 

「今日は鳴瀬くんに頼まれ事があるからって、そっちに行ったんだ」

 

「そうなんですか、鳴瀬くんの頼みならストバスのコートで何かやってるんでしょうね」

 

と言ったところで

 

「おはようございます!」

 

兵藤さんのー・・・

 

「おはようございます!」

 

「お、おはよう」

 

「あのっ!ひじっ!意識したらキレイに打てました!ありがとうございました!」

 

「あぁ良かった、余計なお世話かと・・・」

 

「全然っ、そんな事ないですよっ。猪股先輩の事は兄から話を聞いていて」

 

「兵藤さんが?」

 

「“栄明かぁ、猪股ってのが根性あって、面白い奴だ”、って」

 

ーモノマネ?

 

「だからアドバイス頂いて、やっぱり凄い先輩なんだなぁって思いました!」

 

「別にそんな凄くは・・・」

 

「あ、邪魔しちゃ悪いですね、失礼しますっ・・・わっ」

 

 

またシューズが引っ掛かって転けそうになってる。

 

「賑やかな子だな・・・」

 

ふと視線をし感じたのでそちらを見ると、千夏先輩がじっと見ていた。

 

「デレデレしてる・・・これは雛ちゃんに報告を・・・」

 

「違いますっ!」

 

ブンブンと首を振ると千夏先輩は、ふっと笑いながら

 

「冗談だよ」

 

と言ってくれた。

 

雪と再会してからと言うもの、やっぱり凄く変わったよな。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「やったー!みんな同じA組だぁ!!」

 

「一緒に思い出作れるね!体育祭に文化祭、秋には修学旅行!」

 

「落ち着かない1年になりそうだ」

 

「なにおう・・・」

 

「おーい菖浦、同じクラスじゃん!」

 

「おっ、加藤ー」

 

「菖浦ちゃんは顔が広いねぇ」

 

「人見知りしないもんな」

 

「そういやもう1人の、人見知りとは無縁のコミュ力魔神が居ないな?」

 

「確かに、どこ行ったんだ雪の奴・・・」

 

 

 

「きゃー、蝶野せんぱーい!」

 

「おはようございまーす!」

 

「雛も人気者じゃん。新体操部?」

 

「知らない子」

 

1年生の声に手を振って応える雛。

 

きゃー、かわいいー、と声が上がる。

 

「ファンクラブとか作ったら入る子居るかな?モテモテ?」

 

「自分で作るのかよ」

 

そう話していると

 

 

 

 

「コラーッ、遊佐っ!!窓から入ってくる奴がいるかー!」

 

「やべ、見つかった。こっちの方が早かったんスよ、許してください」

 

「ダメに決まってんだろ!」

 

「でももう入っちゃったし」

 

「やり直しだ」

 

「じゃあここから出てー・・・」

 

「ダメだ!」

 

 

 

 

「あれバド部の新入生だよね」

 

「匡、仲裁してこいよ」

 

「我関せず」

 

「問題児が入ったみたいね。あれを仲裁できるとしたら・・・」

 

「「「雪」」」

 

「だよねぇ。鶴羽くん見当たらないけど、ホントどうしたんだろ?」

 

島崎さんがそう言った時、ふと気付く。

 

「あれ?そういや雪のクラスって誰か確認した?」

 

「私してない」

 

「私も女子の方しか見てなかった」

 

「俺も笠原までしか確認しなかったから、上にある猪股しか見てないな」

 

そんな事を話しながら丁度B組の前に差し掛かる。

 

開いた引き戸から中が見えるーって、え、雪!?

 

あいつA組じゃなかったから居なかったのか?

 

「なぁ、あれ」

 

俺がそう言うと皆が中を覗く。

 

「「「えーーー!!雪/ゆっきーB組なのー!!!」」」

 

その声に気付いた雪がこちらを見る。

 

「おう、賑やかだと思えば皆さんお揃いでどした?」

 

「いや、雪の姿が見えないなって話してたら、B組の出入り口から雪が見えたから・・・」

 

「えー!ゆっきーB組だと、私たち皆と一緒に思い出作れないじゃん!」

 

「ん?多少減るかも知れんけど、別に違うクラスでも思い出なんか幾らでも作れんだろ」

 

「雪ってそういうとこ、ドライと言うか達観してるよな」

 

「自分でどうにか出来る事ならともかく、どうにもならない事ってのはあるからな。

日本とアメリカくらい離れてる訳じゃねーし、ほんの10秒で顔合わせられんだから大したこっちゃねーよ」

 

「!っ、そうか、雪は小学生の頃アメリカ行って千夏先輩と離れ離れになったから・・・」

 

「まー、残念っちゃあ残念なのは確かだけど、お前らみたいな目立つ奴らと居たら俺まで同類だと思われちまうしな」

 

「「「「「いや、よく言えたね!?」」」」」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

放課後になり部活が始まる。

 

ノックを受ける晴人の姿を見て

 

「上手いな、全然ぶれない」

 

「新1年生の中では間違いなく1番上手い」

 

「でもあんだけ打てりゃ佐知川でもやれたろうに」

 

 

「晴人くん上手いね!どうやったらそんなに打てるようになるの?後で一緒練習して教えてよ!僕もインハイ狙えるくらい強くなりた「無理なんじゃない?」・・・え?」

 

「君のノック見てたけど、“必死ーっ”て感じでバタバタして、あんなコースじゃあ相手に“スマッシュ打ち込んでどうぞ”って言ってるようなもんよ。もっとー」

 

「俺から見たら、お前もまだまだ甘ぇよ」

 

「あい?じゃあ1試合しましょうか?」

 

「今はノックの時間だひよっこ」

 

「ひよっこ!?」

 

 

「んだよあいつ・・・せっかく仲良くなろうと話し掛けたのに強くない奴には興味ないみたいな。上手いからって好き勝手言ってさ」

 

「協調性無いと困るよなぁ」

 

 

 

「“もっと試合を意識してやれば上手くなるよ”って、言ってあげれば良かったんじゃない?わざわざあんな喧嘩腰な言い方しなくても・・・」

 

「うわっ、だるいだるいっ。俺はあぁいう言い方しか出来ないし、分かんない奴は一生そのままで居れば良いよ」

 

「でもチームで上手くなった方が上手い人と練習出来て良くない?」

 

「俺は俺が強けりゃ良いんだ!仲良しこよししたいのか知らんけど、それよりやる事一杯あるだろって思っちゃうんだよな。

それに少くても君はちゃんと意識したノックしてたじゃん。そういう自分なりに考えてやらない奴見ると、もっとしっかりやれーって、ムカついてこねぇ?」

 

 

「・・・別に。自分にも欠点あるし、出来れば教えて欲しい・・・」

 

「お前もムカつくな!良いか!人を強くするのは怒りなんだよ!そんなお人好しなこと言ってっと、足掬われるからな!」

 

そう言って晴人は出て行った・・・って、また先輩だって言いそびれた!

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おはようございます!」

 

「おはようございます、早く来て偉いね」

 

ビクッ「わあっ!!」

 

「ごめん驚かせるつもりは・・・」

 

「いえ、話し掛けられると思ってなくて。早起きは慣れっこなんです!」

 

「慣れっこ・・・?」

 

「我が家では早朝から家族で走るのが習慣で・・・」

 

ー兵藤さんが家族で!?ー

 

「でも今はバドミントン上手くなりたくて、早々に切り上げてこっちに来ました」

 

ー走ってきた後なんだ・・・ー

 

「いつか兄の本気スマッシュを取れるように、特訓あるのみなんです!」

 

「やっぱり偉いね」

 

「そ、そんな事はないです、えへ」

 

 

 

また千夏先輩がじっと見ている。

 

ーだから違うんですって・・・!ー

 

ん?雪が千夏先輩に近付いて何か話して・・・ってこっちに来る?

 

「よー猪股先輩おはようさん!千夏から聞いたけど1年の可愛い女子にデレデレしてんだって?」

 

「んなっ!?」

 

「え、えっ!?」

 

「ほう、確かに可愛い子だし、その慌てっぷりは満更嘘でもなさそうだなw」

 

「いや、待ってくれ雪。全然そんなんじゃ!・・・あ、そうだ雪、ちょっとスマッシュ打ってみてくれないか?」

 

「あん?何で俺が?」

 

「去年遊佐くんと軽く打ってた最後に打ったスマッシュ、あれは兵藤さん・・・この子のお兄さんと遜色なかったから」

 

「え!?鶴羽先輩ってバドも出来るんですか?」

 

「俺の事知ってんの?」

 

「インハイとウインターカップ制覇したバスケ部のエースを知らない人なんて、この学校に居ないです!

あ、私、兵藤あかりと言います、宜しくお願いします!」

 

「おー、あかりんだな、こちらこそ宜しく。俺の事は雪で良いぞ。で、大喜は何で俺にスマッシュ打てってんだ?」

 

「兵藤さんがお兄さんのスマッシュ取れるようになりたいって言うから、雪のスマッシュ取れたらいけるんじゃないかと・・・」

 

「んー、別に良いけど専門じゃない俺のスマッシュで役に立つのかね?」

 

「体験すれば分かると思うから、1回打ってみてよ」

 

「わ、私からもお願いします。兄のスマッシュの再現なんて中々出来ませんし、猪股先輩が言うなら本当にそうなんだと思いますから!」

 

「ほんじゃラケット貸してくれ、大喜」

 

そう言って鶴羽せ・・・雪先輩は猪股先輩と軽く打ち始める。

 

ー凄いー、率直に思った。

 

経験者だと言うのは直ぐ分かったけど、フォームが全くブレない。

 

数度打ち合い肩が暖まったのか、徐々にラリーが強くなっていく。

 

「じゃあ、そろそろクリア上げてくれー」

 

その言葉に猪股先輩がクリアを上げる。

 

雪先輩は落下地点に入りスマッシュを打つ体勢になる。

 

そして私は今までにない衝撃を受ける事になる。

 

 

さて、大喜と可愛い後輩ちゃんの頼みだから、全力全開でスマッシュ打ちますかね。

 

大喜からクリアが打たれ、その落下地点に入り体勢を整える。

 

狙うは大喜の利き手と逆側コートのライン際。

 

ここだ!

捻りを意識して力がラケットに伝わるように全力で振り切る!

 

ズッパァアーン!!、と音を立ててスマッシュが決まる。

 

「あ、相変わらずえげつない威力だな・・・」

 

「え、こ、これ、お兄ちゃんのより凄いかも・・・」

 

「次、あかりんの番な」

 

「え!?無、無理です無理です!」

 

「何言ってんだ、インハイ優勝した兄貴のスマッシュ取りたいんだろ?練習あるのみだ!」

 

「あー、雪のスイッチ入っちゃったか。ごめん兵藤さん、1回だけでも体験しないと雪の気が収まらないからコート入って貰えないかな?大丈夫、雪なら体に当てる事は無いから」

 

「は、はぃ~・・・」

 

そう言って恐る恐るコートに入る。

 

先ずは普通にラリーをするが、私が変な所に打っても本当に打ちやすいところに返してくれるし、体勢も殆ど崩れない。

 

この人、本当にバスケ部?と言いたくなる。

 

「じゃああかりん、そろそろ良いか?」

 

雪先輩が聞いてくるので

 

「はい、お願いします!」

 

クリアを打つ。

 

「先ずフォアなー」

 

その声に身構えるが

 

スパァーンッ!と、ラケットを振る前にコートにシャトルが突き刺さった。

 

「・・・え?」

 

お兄ちゃんのスマッシュも、返せないまでも当てる事は出来た。けど雪先輩のスマッシュはそれ以上だった。

 

勿論、バドミントンと言う競技に於いてお兄ちゃんが負けるとは思わないけど、ことスマッシュに於いては雪先輩の方が上だと感じてしまった。

 

「次バック」

 

さっきと同じ事の繰り返し、ラケットを振り切る前にスマッシュが決まる。

 

「どうだー、あかりん?」

 

「凄いです、雪先輩!お時間ある時だけで良いのでスマッシュ打って貰えませんか!?」

 

「そっか、やる気があって善哉善哉。そうだな、朝練の今時分に10分前後でどうだ?」

 

「はい、是非お願いします!」

 

「大喜、何か問題ありそうか?」

 

「いや、大丈夫。朝練は殆ど自主練メインだから」

 

「よし、じゃあ俺は自分の練習戻るからまたな」

 

そう言って雪先輩はバスケ部へ戻って行った・・・けど

 

あれ?鹿野先輩に詰め寄られてる?じりじりと後ずさって・・・あ、逃げていった。

 

どうしたんだろうと思ったけど、それよりもあのスマッシュを相手に練習出来ると思うと、怖さもあるけど返す事が出来たらお兄ちゃんのスマッシュも返せるだろう。

 

よし、頑張ろう!と心の中で決意した。

 





晴人に対して「遊佐くんの弟か」って話して突っ掛かって来る所のやり取りも入れたかったけど、それはまた次回かな・・・
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