アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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バド部では部内総当たり戦が始まり、その成績次第でインハイ予選に出場出来る選手が決まる。

大喜や匡はその座を勝ち取れるのか、そして性格に難アリだがビッグマウスに即した実力がある晴人はどうなるのか。

そして運動部の見せ場である体育祭も、間近に迫っていた。



EP53 バド部の総当たり戦と体育祭①

 

肌寒さを感じる事も減り新緑が芽吹く頃、インハイ予選が始まる・・・前にやってくるのが総当たり戦。

 

「今の所全勝は針生先輩だけかー」

 

「流石だな」

 

「やっぱり2・3年には敵わないよ」

 

「1年は応援かぁ」

 

「唯一メンバーに入れるとしたら・・・」

 

1年達が話しながらも目を向ける先にはー

 

「ペン貸してくんない?」

 

「えっあっ、どーぞ!!」

 

先日の物言いで、他の1年達から腫れ物に触るような態度で接されている遊佐晴人が居た。

 

 

「随分怖がられてるな、平気か?」

 

「いいっすよ、あぁいう姿見るのは愉快ですから」

 

「性格悪りぃな」

 

「褒め言葉ですね」

 

「晴人って佐知川の中学居たのに、何で栄明(ウチ)に来たんだ?」

 

「初日に言った通り、インハイで優勝する為ですよ」

 

ーそれだけじゃない、ってのは伝わって来るんだがなー

 

他にも理由があるんだろうが本人が言わない以上、しつこく聞き出す事でもないな。

 

晴人は大喜の方へ行き何かを話しているが、ずっとタメ口だったのを不思議に思い大喜に聞くと

 

「1年生だと思われてるみたいで」

 

と来たもんだ。

 

「あはははっ!」

 

「言うタイミング逃してるだけですよっ!」

 

「面白い奴だなー、晴人」

 

「でも1年の中じゃ少し浮いてるみたいで・・・」

 

「ハッキリ物言う奴はそうなりがちだよな。バド上手いから何も言えないし。とは言え去年の雪みたいに部全体の意識を変える程じゃないからな」

 

「いや、流石に雪と同列に語る事が出来る人なんて、そうそう居ませんよ。

さておき俺は好きなんですけどね、話してるとバド好きなの伝わってくるし」

 

「“猪股先輩”の腕の見せ所ですね」

 

「しばらくいじられる奴だ・・・」

 

「頼んだぞ。それと威厳無いのは良いけど、プレーで負けんなよ」

 

「勿論」

 

 

一方で晴人は他の部員の試合を見て、1人考えていた。

 

 

ー何でそこでドロップ?今のは攻める所だろ。完全にフォアで構えてるし・・・あー、ほら攻守交代しちゃった。

なんでー・・・

 

ー何でそんな事も出来ないの?ー

 

ーうるさいうるさいっ!俺だって柊仁みたいになってやるからなっ!ー

 

子供の頃の兄とのやり取りを思い出していた所で

 

「晴人、試合しよう」

 

声を掛けられる。

 

「身体冷えるところだったよ」

 

 

 

「大喜と新星の晴人か・・・」

 

「流石に大喜が勝つか」

 

「いやでも晴人も、2年に結構白星あげてるぞ」

 

「佐知川に居たのは伊達じゃないか」

 

 

 

「「お願いします」」

 

大喜からのサーブを普通に打つと見せかけ、手首を返して変則的に返す晴人。

 

「フェイント使いか!」

 

「打つ瞬間に面を変えるからコースが読みにくいし、速い位置で打つスピードの大喜に対してフェイント使う奴はタイミングズラしてくるから、大喜は苦手なタイプだろうな」

 

「前に落とすと見せて奥、奥と見せて前に落とす。前での勝負になるか?」

 

そこでコート奥を狙う晴人。

 

「まずいっ、コースが上手いっ!」

 

ーけど、大喜は届くんだよな。

 

 

まじかよ、こいつ強ぇじゃん。

 

 

「男バドは総当たり戦だって」

 

「遊佐くんじゃん、かっこいいよね。あ!」

 

「相手あかりが大好きな猪股先輩じゃない?」

 

「ふぇ!?そんなんじゃないよっ!!ただプレーが好きってだけで、それ以上は・・・」

 

 

 

・・・ふーん大喜め、1年の可愛い女子に好かれてんじゃん!

ちょっとした嫉妬心と共にコートの中の大喜を見る。

 

いつも通り真剣な眼差しで息を切らせて相手と向かい合っている。

 

コートの中だとバドしか頭に無い、バド馬鹿の姿。

 

「それでこそ大喜、だよね」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ー見てろよ。俺は栄明(ここ)で、強くなってやる。

 

 

『やべーっ!今日から兵藤君と一緒に練習できんのかぁ!あんなにパワーもテクニックもある人、他に居ないよなぁ。学びたいことが山ほどー・・・』

 

『あ、噂をすれば』

 

『噂って何だ、遊佐?』

 

『こいつ兵藤さんのファンで、今年中等部に入学してきたー・・・』

 

『遊佐の弟か』

 

『はい』

 

『そう呼ぶと怒りますよ』

 

『そうなのか、スマン。今度是非お手合わせ願うよ』

 

『弟くん、入部してきたんだ』

 

『柊仁が入部した時はさぁ、いきなり当時中3だった兵藤さんから1ゲーム取って話題になったよな』

 

『そんな事ありましたっけ』

 

『あったあった、すげー新人入ってきたって』

 

 

ーいつも俺の1年先を行く柊仁が癪だった。

 

 

『遅い遅いっ』  

 

『はいっ』

 

『コース乱すなっ』

 

『見ろよ・・・またスマッシュの精度上がってる』

 

『どんどん上手くなるな』

 

 

 

『柊仁この前の大会優勝したって』

 

『当然だよな』

 

 

ー俺からしたら学年なんて関係なくて、ただ柊仁に負けたくなかった。

 

 

『遊佐くん、優勝おめでとうございます!昨年のお兄さんに引き続き、佐知川さんの優勝ですがー・・・』

 

『あ゙?』

 

『え』

 

 

 

『遊佐兄弟、強いですね』

 

『遺伝子ってあるんだな』

 

『兵藤さんのとこはないですもんね』

 

『ん?』

 

『兵藤さんはあの2人が同じ学年だったらどっちが嫌ですか?』

 

『・・・柊仁かもな』

 

『ですよね、!晴人もかなり強いけど、柊仁には予想を超えるプレーが!・・・』

 

ー言ってくれんじゃん!

 

ーあー、何か俺、間違ってたかもの。柊仁より評価されたいって思ってたけど、ここに居ても先はないのかも知れない。

 

ー俺の評価は俺がしないと

 

何かいつもと違うな、どうしたんだ?柊仁の奴・・・

 

すると高等部の先輩が

 

『栄明との練習試合で負けて、かなり悔しいみたいよ』

 

と、遠征先で柊仁が負けた事を教えてくれた。

 

ーなるほど、栄明ね。

 

ー何で栄明に来たかって、ぶっ倒す為だ。あのスカした顔して前を行く佐知川の遊佐を、その影に居る事に慣れ掛けていた自分をー・・・

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ネット際、打つと思わせて直前でラケットを返して裏面で打つ。

 

「あんなトリックショットも打てんのか!器用な奴だな」

 

「でも大喜も上手く対応してる!」

 

ーあぁいう羽根も、ちゃんと見れば取れない事はない。それに追い付く反射神経と足は、朝練で鍛えられてるはずー・・・

 

 

ー柊仁を倒そうと躍起になってたけど

 

「大喜もフェイント打ってきた!」

 

「いいぞ!」

 

ー一歩外に出れば、倒すべき人はまだまだ居るって知れる。

 

「ゲーム大喜っ」

 

ーナイスファイトー!

 

ーいい試合だった!

 

ー晴人やるじゃん

 

ーさっきの教えてくれよっ

 

「「ありがとうございました」」

 

 

「満足できねぇ!もうひと試合しようぜ!」

 

「晴人、兄貴と同じ様な事言ってんな」

 

「あ゙ぁ゙い?ーって、どういう事ですか?」

 

「去年、佐知川と練習試合した時、大喜に負けた遊佐くんも似たような事言ってたんだよ」

 

「・・・・・・あんたが柊仁に勝った人!?」

 

「う、うん」

 

「マジかよ!!って事は2年生じゃ・・・?」

 

「そうだよ!!他人に興味ないなっ」

 

「これまた失礼しました」

 

「いいよ。俺も常々学年なんて無けりゃいいのにって思ってるから」

 

「あはっ!じゃあ先ずは、大喜先輩から倒さないとですね」

 

ー先輩・・・

 

「オイッ、次試合しろっ」

 

「何だよ急に」

 

「俺と君との差を教えてやろう!」

 

「ほんと上からだな!」

 

1年同士のやり取りを見ながら、ふと新体操部の方を見る。

 

雛が真剣な顔で練習している姿を見て

 

ー疲労回復、滋養強壮・・・

 

ってそんな事考えてる俺って、何か変態っぽくないか!?

 

辺りを見回して雪の姿が無い事でからかわれる事がないと分かり、心底安堵した。

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

男バド部の総当たり戦から暫く経ち、いよいよインターハイ予算が始まる・・・前に行われるのが

 

ー栄明高校 体育祭ー

 

「負けられない戦いがここにある。

良いか!1~3年のA組、いや、赤組の諸君!!

運動部強者の多い我が校で体育祭を制すると言うことは、学校を制するという事!

そして何よりー・・・優勝賞品“栄明特製体育祭限定デリシャス焼きそばパン”をー!食する為に優勝するのだー!」

 

「他の焼きそばパンじゃ満足出来ない体になるらしいぞ」

 

「任せてください。われわれ赤組応援団が!優勝に導いてみせましょう!」

 

オーーーッ!

 

「大喜何の競技出るんだっけ?」

 

「二人三脚とリレー」

 

「負けたらどうなるか、分かってるんでしょうね」

 

「応援団が圧掛けるな」

 

「ねぇねぇ、記念に写真撮ろー」

 

「こっちはコスプレ気分だし」  

 

「いいじゃんいいじゃん、思い出にさー」

 

「女子って写真好きだよね」

 

写真を撮ろうといつメンで集まった時、匡くんが隣で思いの外近くてドキッとした。

 

それを誤魔化す為に

 

「雛っち、もっと寄って」

 

「うん」

 

その際、「ゴスッ」といのたの顎に雛っちの頭が当たった瞬間、シャッターを切る。

 

「あはは、いのた変な顔ー」

 

「いい記念写真になったな」

 

「SNSにあげていい?」

 

「やめろ」

 

その時

 

「おー、どうした、楽しそうだな」

 

「あ、雪」

 

「ゆっきーが赤組なら、優勝確定だったのにー」

 

「負けないからね、雪!焼きそばパンは譲らないわよ!!」

 

「・・・何かえらい気合い入ってんな」

 

「雪はそんなでもないのか?」

 

「んー、焼きそばパンは去年食ったしな。

それに俺が全部出て良いんなら勝ち確なんだが、3学年全体での結果だから、そんな訳にもいかんしなぁ」

 

「出たよ、この自信しかない発言」

 

「でもそれ言われても“雪だしなぁ”で、納得しちゃうんだよねぇ」

 

そう話していると

 

「あれ?あれ晴人じゃん」

 

「ダルそうだね」

 

「あ、こっち気付いた」

 

「大喜先輩、匡先輩、こんちは」

 

「晴人は何出るの?」

 

「綱引きです」

 

「だけ?」

 

「苦手なんスよ、イベントだからって協力してはしゃぐ空気・・・あ」

 

雛達のやる気満々の応援団姿を見て

 

「これまた失礼しました・・・新体操部の先輩ですよね」

 

「うん」

 

「・・・よく知ってるな、俺が2年なの知らなかったのに」

 

「・・・そりゃあ、あのピチッとした格好には目が行くと言うか」

 

「はぁあ!?」

 

雛と島崎さんが、怒りとドン引きの視線で晴人を見ている。

 

「だっはっは!そりゃあ男として目が行くのは仕方ねーよな、後輩くん!」

 

「え、あー、はい。ってこの人誰すか?大喜先輩」

 

「鶴羽雪、バスケ部のエースだよ。名前くらい知らない?」

 

「あー聞いたことあります。何か滅茶苦茶凄いとか」

 

「あ、雪、こっちはバド部の1年で遊佐晴人」

 

「そうか、宜しくな!・・・って遊佐って佐知川の遊佐くんの弟?」

 

「あ!雪、それは!」

 

「あ゙?俺には晴人って名前があるんスけど?」

 

「あん?それはそれだろ。遊佐くんを知っててお前を後から知ったら、“遊佐くんの弟?”って聞かれんのは当たり前じゃねーのか?」

 

「それは・・・」

 

「逆にお前を知ってて遊佐くんを後から知ったら、兄貴の方は、“遊佐くんのお兄さん?”って聞かれるだろうよ」

 

「っ!?」

 

「まぁ何か事情があんだろうけど、それでいちいち突っ掛かってたらキリがねぇぞ?

分かっててわざと言ってんならともかく、そうじゃない相手にまで自分から喧嘩吹っ掛ける様な物言いしても、自分が損するだけだ」

 

「・・・はい、そうかも知んないっスね」

 

「ま、いきなりは無理にしても、ちょっとずつ直してきゃあ良いだろうよ。

心に余裕持てなけりゃあ、良いプレーが出来ないのはどの競技でも同じだからな」

 

「今すぐは無理だと思いますけど、ちょっと考えてみます、それじゃ」

 

「おうまたな、ハル!」

 

 

 

晴人を見送った後、雛たちに謝った。

 

「「すまん、うちの1年が」」

 

「どういう教育してるんだ!バド部!」

 

「「すみません!」」

 

「しかし流石雪だな、今まで皆“遊佐くんの弟”って呼んだら不機嫌になるから、それは言わない様にしてたのに」

 

「多分、兄貴に対して劣等感みたいなもん持ってんじゃねーか?だから“弟呼びされたら機嫌悪くなる”って感じに見えたし」

 

「・・・成る程、そうかも」

 

「ねぇ、ゆっきーは何に出るの?」

 

「借り物競争とリレー」

 

「玉入れは?去年大活躍だっただろ?」

 

「寧ろやり過ぎたから、玉入れ出禁にされた」

 

「「「あー」」」

 

「確かに玉全部入れてたし、そうなってもおかしくないか」

 

「まぁ千夏は出るみたいだし、玉入れはこっち(青組)の勝ちだな」

 

「何をぅ!?」

 

「はっ、まぁ精々リレーで決着するくらいまで、頑張り給え」

 

じゃーなー、と手をヒラヒラさせて雪は戻っていった。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ー第一競技、玉入れー・・・ー

 

『青組リードです!流石バスケ部エース率いる青組、次々と球がかごに吸い込まれていきます!!』

 

「凄いな千夏先輩・・・」

 

「敵チームだけど」

 

『しかし青組には男バスの鶴羽くんも居る筈ですが、何故出てないのでしょうか?』

 

『それはですね、2・3年生はご存じでしょうが、昨年の玉入れでパーフェクトを決めた事が原因で、教師と生徒会の話し合いの結果、鶴羽は玉入れ出禁と言う事になったんですよ』

 

『確かに彼は玉入れで1つも外さない処か、外れて落ちている球を拾って全部入れてましたから、致し方ないかも知れませんね』

 

「あー、教職員と生徒会、両方の協議の結果だったのか」

 

「それじゃ仕方ないな」

 

「それはそれとして、うちの赤組はー・・・」

 

『赤組やや遅れ気味かー!』

 

「あかりちゃんも頑張ってるけど、腕の筋肉が弱いんだよな」

 

「冷静な分析」

 

「がんばれーっ!」

 

 

兵藤あかりです。

私は玉入れに参加したけど、腕の力が弱くて球がかごまで届かない事が多くて足を引っ張っています。

 

そこに

 

ーがんばれーっ!ー

 

と、応援の声が聞こえたのでそちらを見ると、猪股先輩が応援してくれていた。

 

部活でも色々とお世話になっている優しい先輩の応援に頬が綻ぶ。

 

よしっ!ちょっとでも良い所を見せないと!

 

 

『おおっと赤組!怒涛の追い上げーっ!』

 

自分でも驚く程に、球を入れる事が出来た。

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ー次は二人三脚ですー!ー

 

 

「やぁ猪股くん」

 

「松岡先輩」

 

「焼きそばパンの為にも勝たせてもらうよ」

 

「俺も負けませんよ!」

 

ー位置について、用意・・・パンッ!

 

俺たちは息が合って上手く走れているが、松岡先輩は相手に恵まれなかった様で苦労している。

 

「松岡先輩、がんばれー」

 

「マネージャー、松岡先輩敵チームだぞ」

 

「だってあそこまで遅いと応援したくなっちゃうじゃん」

 

「あのさ、もしかしてなんだけど、マネージャーって松岡先輩のこと・・・」

 

「はぁぁ!?」

 

「いや、ほらバレンタインの時、俺らにくれたのと明らかに違うチョコあげてたから、そういう事なんじゃないかって、バド部内でちょっと噂にー・・・」

 

 

ーバド部内にってー・・・

 

思わず匡くんを見るが、同級生と話していてこちらを気にした素振りはない・・・けど

 

なんて噂流すのよ。

 

 

 

「猪股先輩がんばれー!」

 

「ゴールもう直ぐですー!」

 

ーセンパイ・・・

 

後輩女子からの応援に、思わずそちらを見てしまう。

 

「猪股ー、浮かれてないで足動かせー」

 

「やってるわ!」

 

 

「雛ちゃん、彼氏人気者だね」

 

「ちーちゃん・・・それこそ雪も同じでしょ?」

 

「お互い付き合ってる事隠してる訳じゃないけど、1年生は知らない子の方が多いからね」

 

「そうなんだよね。わざわざ言うのも変かと思って流れに任せてるんだけど・・・」

 

「2人ともそれで良いのか?」

 

「針生くん」

 

「針生先輩、どういう事ですか?」

 

「雪も大喜も良い奴だし、部活でも結果出してて男女問わず後輩にも慕われてる。そんな2人に付き合ってる相手がいるって知らない奴らには“フリーに見えてる”って事だよ。それを知らない女子達がワラワラと・・・」

 

針生くんの言葉に、2人でむーっとしてしまう。

 

「いじる為に話しかけてきた?」

 

「バレた?」

 

「確かに複雑な所もあるけど、後輩に慕われるのは良い事だし、雪は元々そんな人って分かってるから」

 

「大喜も同じです、針生先輩」

 

「なら良いけど、何かあれば相談くらいには乗ってやるよ」

 

「・・・ありがと」

 

「ありがとうございます」

 

「特に大喜を気持ちよく倒すには、絶好調でいて貰った方が良いから」

 

ー針生先輩も大喜のこと好き過ぎでしょ(苦笑)ー

 

「ゴールッ」

 

ー1着、赤組ー!ー

 

1着になり喜ぶ大喜と後輩ちゃんズを見て

 

ー喜ばしい事ですよ、彼女としましては。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「いい勝負してんなぁ」

 

「最後のリレーが勝負の決め手かもな。大喜頑張れよ」

 

「あ、猪股先輩ー。二人三脚見てました!」

 

「ありがと」

 

「あかりなんて声割れるくらい応援しちゃって」

 

「なっ!」

 

「そうなの?」

 

「やっ、焼きそばパンの為にっ」

 

 

「あのぅ~、猪股先輩」

 

「うん?」

 

「1つ不躾な質問なんですが、猪股先輩って付き合ってる人とかいるんですか?」

 

「え!?」

 

「高校に入ってから周りが色めきだしまして、先輩は居るのかなぁって」

 

その言葉を聞いて周りを見渡す。

 

確かに、ツーショット撮影してるカップルらしき人たちがチラホラ見られる。

 

ふと雛が目に入る。

 

ーそうだな、隠してる訳じゃないし、体育館組の2・3年生は皆知ってる事だしな。

 

「うん、居るよ」

 

「「え!?」」

 

「大喜戻るぞー」

 

「おう。じゃあ引き続き赤組頑張ろう!」

 

「はいっ!」

 

「居るんだって、誰なんだろうね・・・」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ー次はー借り物競争です、選手入場ー!

 

「赤組ファイトー!!」

 

「借り尽くせー!!」

 

「匡ー!1位じゃなかったら、宿題提出前に貸して貰うからねー」

 

「私は長期休みの英語課題ー」

 

 

「熱のこもった応援だね」

 

「松岡先輩!まずいですよ、一緒に居るところ見られたら」

 

「え、なんで?」

 

「バレンタインの一件で、変な噂が流れてるみたいで」

 

「そっかぁ」

 

「何ヘラヘラしてるんですか!」

 

「噂は噂でしょ」

 

「そうですけど」

 

「本人たちに気がないなら、どうにもならないんだし、言わせておけばいいよ」

 

 

 

『さぁ、それぞれ何を借りるのか』

 

 

 

「それとも俺の事・・・」

 

「ナイですね」

 

「でしょ?」

 

「でも・・・」

 

「もしかして勘違いされたくない人居るの?」

 

「それはーっ」

 

言い淀んだ所で

 

「マネージャー来てっ」

 

匡くんに腕を引かれる。

 

「えっちょっ、何っ!?何なの!?」

 

「1位取らないとだろ」

 

ー何て書いてあったのよ、隣に雛っちも居たのに・・・どうせ碌なお題じゃないんでしょ。

 

-赤組1着ー

 

「確認します・・・“ツインテールの人”、OKです!」

 

「やっぱりね」

 

「何が?」

 

「とてもキュートでクールでエレガントで素敵な女の子って書いてあるかと思ったのに」

 

「無駄な情報量。そんな主観なお題、ある訳無いだろ」

 

「なーんだ、2つのお団子ヘアだったら雛っちだったのにね」

 

「そうだね。マネージャーがツインテールで、丁度良かった」

 

「それってどゆこと?」

 

「分かんなくて良いよ」

 

「何その言い方ー」

 

 

 

いよいよ俺の出番が来る。  

 

ー借り物競争第2組、スタート位置へ

 

「さぁ待たせたな、皆の衆!千両役者の登場だぜぃ!!」

 

ワァッと歓声が上がる。

 

「鶴羽先輩、ファイトー!」

 

「雪ぃ!、あんまフザけて負けんなよーっ!」

 

「「「雪センパイ、カッコイイー♡」」」

 

 

「おう!サンキューな、後輩ちゃん達!」

 

 

・・・ふーん、雪センパイは後輩女子に大人気ですねぇ。

それにニコニコ応えてるし、これは後でちょっとオハナシしなきゃだね。

 

 

ー位置について、用意・・・パァンッ!

 

ピストルの音と共に飛び出し、後続に差をつける。

 

「あいつ反射速度も半端ねーな」

 

「少くともスポーツに関しては苦手分野無さそうだしな」

 

 

よっしゃあ、お題は何だ!

 

テーブルに置かれている紙を取り中を見る。

 

「はぁ!?」

 

「どうしたんだ雪の奴?」

 

「何か声上げてたけど・・・」

 

「あ、頭抑えてる」

 

 

誰だよ、借り物競争のお題にこんな変な補足つけた奴は!?

 

「えぇい、仕方ねぇ!」

 

バッと見渡し相手を見つけ、青組の待機所に駆け込む。

 

「千夏、行くぞ!」

 

「え、え、雪?お題は?」

 

「それはゴールしないと教えらんねーんだよ、良いから行くぞ!」

 

そう言って千夏の手を取り、ゴールに向かって走る。

 

ーあー、鶴羽先輩、鹿野先輩と手繋いで走ってるー!

 

ーくーっ、鶴羽先輩、羨まし過ぎるーっ!

 

残り15m、後続とはかなり差がある。

 

「悪い千夏、暫く我慢してくれ」

 

「え?何・・・」

 

「あらよっと」

 

千夏の返答を待たずに抱え上げる、所謂お姫様抱っこだ。

 

「キャッ////」

 

「しっかり掴まってろよ」

 

その言葉を聞いて、俺の首に腕を回して顔を体に押し付ける千夏。

 

『おーっと?これは一体どうした事だ、青組鶴羽ーっ!いきなり鹿野さんをお姫様抱っこで走り出したぞーっ!!』

 

全学年の女子から、「キャーーーッ!」と歓声が上がる。

 

男子からは「鶴羽テメェ、フザけんなーっ!」「非モテに対して見せつけてんのか、コノヤローッ!」と、ここぞとばかりに罵声が浴びせられる。

 

 

いや、知らねーよ!お題出した奴に言え!!

 

 

そう思いながらも1位を獲る為に走る速度は緩めない。

 

『青組鶴羽、鹿野さんを抱えながらも圧倒的1位でゴーーール!!』

 

「確認します、学園の人気者、残り15mで相手をお姫様抱っこする事・・・はいOKです!」

 

そう言う係員の頭をガッと掴み

 

「はいOKです!、じゃねーよ、誰だこんな補足つけた奴!?男女逆ならどうする気だったんだよ?

せめて誰でも出来る事にしとけ!

オイコラ運営、後で犯人特定すっからな!覚悟しとけ!!」

 

ったく・・・あーあー、千夏は真っ赤になってんじゃねーか。

 

 

借り物競争終了後、青組の待機所に戻るとハリーさんに

 

「雪、あれはお題だったからやったのか?」

 

と聞かれたので

 

「当たり前だろ、何でわざわざ人前であんな真似しなきゃなんねーんだよ。まぁ文句言ってた奴らにお題のせいだって分かって貰えたのが、せめてもの救いだわ」

 

そんな事を話している内に競技は消化されていき、昼を迎える。

 

青組がリードしてるとは言え点差は微妙、午後の競技の結果次第で逆転負けも有り得る。

 

さーて、どうなりますかねぇ。

 

 




総当たり戦だけでも体育祭だけでも短くなりそうだから一纏めにしようとしたら、逆に思いの外長くなってしまい分ける羽目に・・・

そして彼女の有無を聞かれた大喜は原作と違い、居るとハッキリ答えました。 

これも今後の展開どうしようかなぁ。
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