アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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匂わせだけしといて本編に殆ど絡まないから、と放置していたカズとナギちゃん先輩のお話です。


幕間~相棒たちの思いと想い~

 

ーカズも何だかんだナギちゃん先輩の事を良いなーと思ってるみてーだしよ、ちょっとでもそんな気があるなら距離縮めても良いんじゃないかってなー

 

 

ナツが去年の夏祭りに雪くんを誘った時に、雪くんがそう話してくれた。

 

私と鷹尾くんは、お互いナツと雪くんの相棒ポジションに収まっていると思う。

 

その縁もあって他の男子部員より話す機会も多く、何より雪くんとはまた違う感じでコミュ力が高く、話のチョイスも上手い。

 

言葉にしにくいけど、雪くんが上から引っ張り上げてくれるタイプなら、鷹尾くんは隣で声を掛けてくれて一緒に歩いてくれるタイプかな。

 

私はナツみたいに、雪くんのいる高みにまで努力して食らいついていこうって程の気概は無い。

 

隣で一緒にちょっとずつ進んでくれる鷹尾くんの方が私は安心出来る。

 

そんな事もあって、少しずつ鷹尾くんの事が気になり始めていた頃に、さっきの言葉を言われた訳である。

 

正直驚いたと共に嬉しかったのも確かで、更に鷹尾くんを意識する様になった。

 

そして夏祭りに行った時、ナツと雪くんが皆と別行動してる時に色々と話す事が出来た。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「鷹尾くんはずっとPGだったの?」

 

「あー、そっすね、中学の途中まではフォワードもやったりしてたけど、ガードで人を動かすのが楽しくなってからはPGばっかりっすね」

 

「そうなんだ」

 

「渚先輩はずっとCを?」

 

「ううん、私も色々やってる内に背が伸びてきたから、Cメインになった感じかな。それでもプロに行くような人に比べたら身長もスキルも全然足りてないんだけどね。まぁ一般的な女子よりは高いのは確かだけど」

 

そう言って苦笑いをする私を見て

 

「あー、でも俺から見れば丁度良いくらいっすけどね」

 

丁度良い?何が?

 

そう聞こうとした所で

 

ドーン!

 

と花火が始まってしまった。

 

そこにタイミングを合わせたかの様に、ナツと雪くんが戻ってきた。

 

「お帰り2人とも、遅かったね?」

 

「あぁ、ちょいと人気の無い所にシケ込んでたもんでな」

 

「「「えぇーーーーっ!!!」」」

 

皆で大騒ぎである。

 

結局は雪くんのいつもの悪ふざけだった訳だが、私たちも高校生だから、そういった話に興味はある訳で。

 

「ねぇナツ?雪くんは悪ふざけって言ってたけど、ホントの所は?」

 

「本当に何もないってば!迷子の女の子を本部まで連れて行って、お母さんが迎えにくるまで待ってただけ!」

 

ふーむ、この反応を見る限り、どうやら迷子の件は本当らしい。

 

「渚こそどうだったの?」

 

「どうって?」

 

「鷹尾くんと話せたのかなーって」

 

「え、それは、うんまぁ・・・」

 

「おやおや~?渚にしては歯切れが悪いんじゃない?」

 

「普通にいつから今のポジションやってたのかって、バスケの話してただけだよ」

 

「いつも散々ヘタレだ何だと私を煽ってくるのに、渚だって消極的じゃない?」

 

「それは・・・だって、そんな経験無いしさ、どう接したら良いか分かんないから、当たり障りのない事話すしかないし・・・」

 

そう話している間にも花火は上がり続け、一際大きな花を咲かせた後、終了となった。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「さて、そんじゃあ帰るとしますかね。皆、ゴミは指定の場所に捨てたかー?」

 

「おー、ちゃんと分別しといたわ」

 

「まだ溢れる程じゃない内に捨てられて良かったよ」

 

「そっか、ならば良し!後は帰宅ルートなんだが、ナツ姉以外の女子はどうなん?」

 

「最寄り駅までは皆一緒で、その後は各々別れる感じかな」

 

「なら野郎3人は自分ちに近い女子を送ってやってくれ。俺とナツ姉は歩きだから駅までは一緒に行くわ」

 

「分かった、エスコート役は任せて」

 

「俺もちょっとは役に立てると思う」

 

「じゃ、取り敢えず駅に向かいますか」

 

 

駅に着き「またなー」と挨拶を交わし、中に入る皆を見送る。

 

「じゃあ帰るか、ナツ姉」

 

「うん」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ねぇ、雪くん」

 

「どした?」

 

「渚と鷹尾くんなんだけど・・・」

 

「あー、話はしたけどバスケメインで色恋の方はサッパリだったって言ってたな」

 

「渚も同じ様な事言ってた」

 

「こればっかりはなぁ。周りが関わり過ぎると、上手く行くもんも行かない事が多いんだよなぁ」

 

「そうなんだよね。いっその事“協力して!”って言われた方が、こっちも楽なんだけどね」

 

「どっちも性格的に言いそうにないな、何か切っ掛けがありゃあ良いんだが」

 

「んー、暫くはインハイに集中しなきゃだし、インハイ終わってからかな」

 

「確かに」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

帰り道、自宅から最寄り駅で降りた私は鷹尾くんに送って貰っていた。

 

「ごめんね、わざわざ送って貰っちゃって」

 

「気にしないで良いっすよ、ちょっと方向は違いますけど、俺もこの駅使ってるんで」

 

「遠回りじゃないの?」

 

「そこはノーコメントで」

 

そう言って、雪くんと同じ様な人好きをする笑みを浮かべる鷹尾くん。

 

「そういうトコ、雪くんと似てるよね」

 

「え~、そうっすかぁ?雪ちゃんみたいなバケモンと俺みたいな一般人を、一緒にしないでくださいよ~(笑)」

 

「それ、本人が聞いたら怒ると思うよ~?w」

 

「ちょっ、渚先輩、言わないですよね?

つってもまぁ、そんくらいでマジギレする様な小さい男じゃないっすけど」

 

「へー、よく分かってるんだね、雪くんの事」

 

「相棒ですから・・・とは言え正直な話、あのバケモン染みた雪ちゃんにそう言って貰えるだけの価値が俺にはあるのかな?って、考える事はありますけど」

 

私から見ればかなりレベルの高い鷹尾くんにすら、そう思われてるんだから、雪くんの規格外さがよく分かる。

 

「そう、だね。何となく分かるかも、その気持ち」

 

「鹿野先輩ですか?」

 

「うん。雪くんみたいな超人じゃないけど、ナツはずっと努力し続ける事が出来るんだよ。

凄いと思うし尊敬もしてる。

けど、同じ様に出来ない私や他の子にとっては、それが苦しく感じる時もある」

 

「雪ちゃんに聞いた事があるんです、“サボりたいと思った事はないのか?”って」

 

「雪くんはなんて?」

 

「“好きでやってる事だし楽しいからなー。体育館が使えないとか出来ない理由があるならともかく、自分からサボりたいと思った事はねーな”、ですよ(苦笑)」

 

「あはは、流石雪くん(汗)」

 

「鹿野先輩もそこまで出来るのは、何か理由があるんじゃないですかね?

雪ちゃんと子供の頃に約束したってのもあるだろうけど、それだけじゃない気がするんで」

 

「思い当たる事は1つあるんだよね。

ウチ(栄明女子)にも昔居たんだ、“天才”ってのがね。ナツはいつも言ってた“これくらいやらなきゃ夢佳に追いつけないから”って」

 

「その夢佳って人に追いつく為に、って事っすか。

言っちゃなんですけど、天才って括りの人に追いつくなんてそうそう出来る事じゃありませんよ?

ウチのエースになんか、追いつく処か差が開いたまま着いていくのがやっとですし」

 

「それはまぁ、雪くんだからねぇ。

でもナツは諦めないんだよ。端から見ていて“もう良いじゃない”と思っても、それでも続けて少しずつでも追いつこうとして差を縮めていくからね」

 

「・・・俺思うんですけど、“天才”って便利な言葉ですよね。相手をそうカテゴライズしてしまえば、

“アイツは天才だから俺たちとは違う”とか、

“天才相手なんだから勝てなくても仕方がない”って勝手に諦めて“天才のせいにしてしまえば自分はラクになれる”んだから」

 

そう言う鷹尾くんの表情には、悔しさが浮かんでいた。

 

「・・・鷹尾くんは才能を言い訳にしたくないんだね」

 

「そりゃそうですよ。確かに才能ってモンはあると思います。でもそれは磨いてこそだと思うんですよね。雪ちゃんにしたって才能だけでやってるなら男バス皆があれだけ変わりませんよ。

あいつは才能がある上で俺たちより遥かに練習したから、あんなバケモンになったんだろうし」

 

「才能・努力・環境・根性その他諸々、色んなモノが噛み合ってこそ、なのかもね」

 

「ま、才能はともかくウチ(栄明)は環境は整ってるし、努力と根性は自分次第って事っすね」

 

「そうだね、やらない言い訳は幾らでも作れるんだから、やれる事はやらなきゃね。

相棒だけが先に行っちゃって、置いてけぼりにはなりたくないし!」

 

「お互いデキの良過ぎる相棒持って、苦労しますね(苦笑)」

 

「ホントだよ(笑)」

 

そんな事を話しているうちに家が近くなってきた。

 

「じゃあもう直ぐ着くからここで良いよ、今日はありがとね」

 

「はい、じゃあここで・・・」

 

そう言いながらも、何か逡巡している鷹尾くん。

 

どうしたんだろ?いつも明るくてハキハキしてるのに。

 

「あの、渚先輩!良かったら連絡先交換して貰えませんか?」

 

「えぇっ!?」

 

「あ、いや、ほらお互いエースの相棒って立場だし、ちょっとした相談なんかも出来たら良いかな、なんて思ったもんで。あっ、勿論無理にとは言いませんから!」

 

いつも相棒の雪くん宜しく、飄々としていてあっけらかんとしている彼のこんなあたふたしている姿を見るのは初めてだ。

 

それに何より、私も彼と連絡先の交換がしたかったのは同じ気持ちだ。

 

「うん良いよ、ハイ」

 

そう言ってスマホを出して連絡先の交換をする。

 

「ありがとうございます、渚先輩!家まで近いとは言え、気を付けて帰ってくださいね!」

 

ーそれじゃ

 

そう言って帰っていく鷹尾くんを見送る。

 

これって雪くんが言ってた通り、少しは脈アリと考えて良いのかな?そうなら嬉しいんだけど。

 

少し緩んだ頬のまま家路に着く。

 

 

 

「ただいまー」

 

「お帰り渚、帰り大丈夫だった?」

 

「うん、途中まで男バスの後輩に送って貰ったから」

 

「え、もしかして彼氏?あぁ、遂に浮いた話の1つもなかった我が子に春が・・・」

 

「いや、違うからね!部活の後輩だって言ったでしょ!?」

 

「年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せって言葉もあるんだから、今のうちにツバつけときなさい!」

 

「えぇ・・・聞く耳持ってないよ、この母親・・・」

 

 

サッとシャワーを浴びてから部屋に戻ってベッドにダイブすると、途端に通知が鳴る。

 

見ると

 

ー今日は色々話せて楽しかったです。これからは部活だけじゃなく、他の事も話せる様になれたら良いなと思ってます。それではお休みなさいー

 

彼らしくシンプルに伝わる文章だ。

 

私も部活以外の他の色んな事を話したり聞いたりして、もっと仲良くなれたら良いなと思っている。

 

なので

 

ーうん、今日は送ってくれてありがとね。これから少しずつお互いの事を知っていけたら良いなと思ってる。じゃあお休みなさい、鷹尾くんー

 

と送信した。

 

 

返信は来なかったが時間も時間だ。その辺の気遣いは流石だと思う。

 

「・・・私、鷹尾くんに恋してるのかなぁ」

 

つい口からそんな言葉が出た自分に驚き、ガバッと頭から布団を被る。

 

ドッドッと鼓動がうるさい。

 

けど、嫌な感じはしない。

 

そんな事を考えているうちに、私は眠りに就いていた。

 

  

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーこれから少しずつお互いの事を知って行けたら良いなと思ってるー

 

感謝とお休みのメッセージを送ったら、渚先輩からの返信にそう書かれていた。

 

え?これってもしかして、渚先輩ってマジでちょっとは脈アリなのか?

 

雪ちゃんが花火大会の予定を鹿野先輩に聞かれた後に

 

 

 

『あー、悪りぃカズ。ナギちゃん先輩にカズが気になってるみたいだって言っちまった。

ナツ姉と仲直りの切っ掛け作ってくれたからって勝手に言っちまって本当にスマン!』

 

『はあぁぁああ~~!?何言ってくれてんだよ雪ちゃん!?顔合わせづらいにも程があんだろ!』

 

『いや、うんマジで悪いと思ってる。ただ!ただナギちゃん先輩も全く脈ナシって感じじゃなかったぞ?いっぱい話してみる、って言ってたから』

 

『・・・マジ?』

 

『マジマジマジーロ。花火大会の日に連絡先の交換くらい出来るんじゃねーか?勿論、カズにその気があれば、だけど』

 

 

 

雪ちゃんがそんな事を言ってたけど、花火大会の帰り道、お互いの自宅が最寄り駅から割と近い事が分かったので、途中まで送る事になった。

 

その時お互いの相棒の話や才能云々の話になり、気付けば渚先輩の家の近くまで来ていたらしい。

 

ありがとうとお礼を言って帰ろうとした姿を見て咄嗟に、「連絡先の交換して貰えませんか?」と言っていた。

 

我ながらもっとスマートに言えなかったのかと思っていると、「うん良いよ」と言って交換してくれた。

 

思いの外あっさりと交換出来た事で肩透かしを食った気分だが、過程はともかく大事なのはこれからだ。

 

俺はそこそこデキる方だと思っちゃいるが、雪ちゃんみたいに数段跳びで駆け上がる様な人間じゃない。

 

「慌てず1歩ずつ、ゆっくりでも確実に、ってね」

 

でもまぁ、切っ掛け作ってくれた相棒には、感謝しねーとな。

 

  





付き合うまでは行ってませんが、1歩前進した2人でした。

本当は付き合うまで書こうと思ったんですが、思いの外長くなったのでここで分けました。

次で答えが出せると思います。
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