アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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身近に同じ競技で全国優勝した人がいて、その人と一緒に練習したり教えて貰えるのって、相当運が良くて有り難い事だと思います。


EP56 お誘いと最悪のアクシデント

 

「あのっ猪股先輩っ!良かったら今週末っ、うちに来ませんかっ!」

 

周囲がざわめく。

 

晴人との1ゲームマッチが終わって話している所へ、兵藤さんからそう声を掛けられた。

 

俺と晴人、そして周りの視線に気付いた兵藤さんは

 

「違うんですっ!!あ、兄と練習する予定があるのでそれでっ」

 

「あー、兵藤さん家の近くの体育館ね。大喜先輩行きましょうよ。インハイ出場経験者に指導されるなんてもってこいですよ」

 

「・・・晴人くんもくるの?」

 

「あ゙っ?」

 

兵藤さんの指導かぁ・・・ワクワクするな!

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「晴人、口数少いな」

 

「兵藤さんに会うの久々なんで・・・」

 

晴人と話しながら体育館の入り口までくると

 

「あかりっ、シャトル」

 

「わかった」

 

と兵藤さんたちの話し声が聞こえてきた。

 

「こんにちー」

 

「きゃあ」

 

と言って、つんのめる兵藤(妹)さん。

 

「久しぶりだな」

 

シャトルの入っていたカゴを頭に被った人物から声をかけられる。

 

「すみません、どちら様っスか」

 

カゴを頭から外して顔を出す兵藤(兄)さん。

 

俺を見て

 

「少しでかくなったか。晴人も栄明行ったって本当だったんだな」

 

「・・・はい」

 

「そうか、俺は少し残念だが」

 

荷物を置き、先ずはシャトル拾いをする。

 

 

 

「それで今日はトリックショットだっけ?」

 

「はい」

 

「今から?確かに晴人のショットは一級品だから憧れるのも分かるが、予選まで3週間ないって所で付け焼き刃の事してミスする方が勿体ない。

 

聞いた事あるか?“バドミントンってのは、相手にミスをさせるスポーツ”だって。つまり、ミスする奴が負けるんだ」

 

「でも今のままじゃ“足りない”って感じるんです」

 

「・・・取り敢えず打ってみるか」

 

「え」

 

「今の猪股を知らないと始まらないだろ」

 

「じゃあ私審判するね」

 

唐突に始まった兵藤さんとの1ゲームマッチ。

 

花火大会の時一緒に練習した事もあったけど、改めて対峙してみると目の前に壁があるみたいだ。

 

強く打つが、フェイントで返される。

 

それを繰り返した所で、中途半端な位置に上がったリターンに対してスマッシュを打つ兵藤さん。

 

ドンッ!とシャトルがコートに突き刺さる。

 

雪との練習はあくまでもスマッシュのみで試合形式じゃないから反応自体は出来るし来ると分かっているから何とか返せるが、こういった試合の流れで隙を見せた時に打たれるスマッシュ、しかも全国一のスマッシュだから、おいそれと返せるものじゃない。  

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「私ね、あれを取れるようになりたいんだ」

 

「そんな簡単にゃいかないだろ」

 

「うん、だから朝練の時に雪先輩に手伝って貰ってるんだ」

 

「雪先輩って、バスケ部の?あの人バドも出来んの?」

 

「何かアメリカに居た時、住んでる街で優勝した事あるって言ってた」

 

「街の規模が分からんから、何とも言えねぇな」

 

「そうだね。でもスマッシュ単体の威力なら、お兄ちゃんのより上かも知れない」

 

「はぁ?マジで!?」

 

「うん、大喜先輩に聞いてみれば分かると思うよ」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「なるほどな、悪くないんじゃないか」

 

「え?」

 

「自分の武器は強打って思ってるかも知れないけど、君の1番の武器は“足”だよ。その足の速さが攻めには上手く活かせてる。身体が良い位置に入って、スマッシュにも体重がちゃんと乗せられるから。

ただミスを減らすには、武器を磨くより守りを固めた方が良い」

 

「スマッシュレシーブ」

 

「安心しろ。正真正銘強打が武器の俺のスマッシュが取れれば、日本中のスマッシュが取れるぞ」

 

 

それから暫くの間、兵藤さんのスマッシュを受け続けたが、ラケットに当てる事は出来るものの満足いくコースに返せなかった。

何よりかなりの数スマッシュ打ってるのに涼しい顔してるなんて、どんな体力してるんだこの人ー・・・

 

 

「そろそろ時間だよ!」

 

「そうか、じゃあ片付けて飯でも行くか」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

練習後に兵藤さんに連れられて来たのは、町中華だった。

 

兵藤さんが頼んだのは、チャーシュー麺チャーシュー増し、ライス特盛りに餃子だった。

 

これが体力の差・・・?

 

と思いながら隣のあかりちゃん(兵藤さんだと被るので区別の為)を見ると、チャーシュー麺(並)だった。

 

流石にこの体格差で同じものは頼まなかったかと、ホッとした。

 

俺と晴人の注文を待っている間、先に食べ始める兵藤兄妹を見ていると、ふーふーと息を吹き掛けてから口に運ぶが、はふはふアチチと猫舌なのが分かる。

 

こういう所を見ると、兄妹だなぁと思う。

 

 

「そう言えば針生は今日何してるんだ?」

 

「3年は体育館借りて練習してるみたいです」

 

「そうか、3年にとっては最後のインターハイだもんな」

 

「最後だろーと、俺は当たったら勝ちますけどね」

 

最後のインターハイ・・・確かに俺が感じてるのとは違うかも知れない

 

プルルル、と着信音が鳴る。

 

「すみません、ちょっと電話が・・・」

 

「あぁ、行ってこい・・・彼女か?」

 

「っ!」

 

「家族とかじゃないっすか?彼女いるとか聞いたことないですし」

 

「そうなのか」

 

お兄ちゃんと晴人くんの会話を聞きながら、ガラスの向こうの猪股先輩を見る。

 

何を話しているかは分からないが、笑顔で話している。

 

ーうん、いるよー

 

体育祭の時、一緒にいた子がお付き合いしてる人がいるかを猪股先輩に聞いた時の返事。

 

そう答えると言う事は多分隠してる訳じゃなく、相手が誰かを聞いたら教えてくれるんだろう。

 

私のこの気持ちが何なのかまだ分からないけど、猪股先輩を意識しているのは確かだ。

 

だから知りたいと思う反面、知りたくない思いもある。

 

 

 

「大喜先輩、家族仲良さそうな人じゃないですか」

 

「それはそうだな」

 

カラカラと引戸を開けて猪股先輩が戻ってくる。

 

「戻りました、夕飯の確認でした」

 

「お、タイミングバッチリ、お兄ちゃんお待ちっ」

 

「あ、どうもありがとうございます」

 

ーいただきます。

 

と言って食べ始める猪股先輩。

 

これから一緒に練習するうちに、私の気持ちも分かるんだろうか?

 

そんな事を漠然と考えている間に皆食べ終わり、お勘定して店を出た。

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

また季節が巡り、インハイ予選の時期がやってきた。

 

「強豪揃いの中、昨年は出場して優勝出来たとは言え、今年も簡単ではないと思います。

しかし自分達の努力は裏切らないとそう信じて、絶対インターハイへ行きたいと思います」

 

「ありがとうございました」

 

「いえ、失礼します」

 

「あぁいう姿を見ますと、大人よりも大人だなと思いますね」

 

「えぇ、立派ですよ学生は。ほんの少しの切っ掛けで、時に大人が思いもよらない成長をしますから。

それが指導者としての楽しみの1つでもあります」

 

 

 

「千夏、県予選トーナメント出たよ。初戦は梅原高校」

 

「で、夢佳とあたるのは3回戦だね」

 

「あ、彩昌の初戦の相手籠原学園だよ」

 

「籠原って去年2位じゃん、今年も上手い1年生入ったって」

 

「これはかなり苦戦するんじゃ?」

 

「勝ち残って戦いたいけど・・・」

 

パンパンと手を叩く。

 

「人の心配してる場合じゃないよ!さっ練習練習!」

 

「「「はいっ!」」」

 

  

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「そう言えば大喜、最近兵藤さんと練習してるんだって?」

 

「はい」

 

「ふーん、まぁ佐知川を倒すのには、そんくらいしないとな」

 

 

 

 

「構えが下がってきてるぞ、もっと前で構えないと。今のも45%ってレベルだ。このくらいはしっかり返してくれんと」

 

「はい」

 

「けど難儀っすよねぇ、昨今“1つ強みがあればそれを大切にすれば良い”みたいな風潮あるじゃないっすか。けどバドってスマッシュ打てれば勝てる訳じゃなくて、攻めも守りも戦略も1人で全部出来ないと勝てないなんて大変なスポーツっすよ」

 

「1つを極めるのも、大変なプレッシャーだぞ」

 

「それはそうなんすけど」

 

「それにそこが面白い所だしな。全部をやらないといけない中で1つ特化したものがあっても、自分より上の奴と当たったら終わりだ。

逆にこれと言った武器がなくても自分の平均点を上げておけば、どんな相手とも戦える。

それは誰でも正しい努力で身につけられる世界の話だ」

 

「ドンドンお願いします!!」

 

 

 

自分達の努力は裏切らないと、そう信じて。

 

「腹減ったなぁ。今日も飯行くか?」

 

「いえ、今日は帰ろうかと」

 

「そうか」

 

「猪股先輩っ」

 

「どうしたの?」

 

「あ、あのっ、良かったらこれっ!!」

 

「え?えーと?」

 

「はっ、これお兄ちゃんの試合映像です!去年のインハイの映像とかあったので、参考になったらと思って・・・」

 

「マジ?!参考なりまくりだよ。予選終わったらちゃんと返すよ」

 

「あ、ダビングしたものなので差し上げます」

 

「ありがと!」

 

 

 

帰り道、猪股先輩の笑顔のお礼を思い出してホクホク顔で歩いていると、お兄ちゃんがじっと見ていた。

 

?、どうしたんだろ?

 

「猪股なら、まぁ良いぞ」

 

「ふぇっ!?・・・そんなんじゃないんだよ」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

公園のフープの前でダムダムとボールを突き、シュートを撃つ・・・が、外れてしまう。

 

その転がっていくボールの先に人影が現れる。

 

「相変わらず練習熱心で」

 

「そこを夢佳に褒められたしね。夢佳も頑張ってるみたいだね」

 

「見習わせて頂いてますよ」

 

しゅるしゅるとボールを指先で回しながら言う夢佳。

 

「ありがとう。またバスケ出来て良かった。空いた時間は勿体なかったって思う日もあるけど、その時間があったからこそ、今夢中でバスケが出来てる。

千夏たちのお陰だよ」

 

「それは私にとっても凄く嬉しい事だから、お礼は要らないよ。雪もきっとそう言うから」

 

「あの子にもホントに感謝してる」

 

「雪にそう言っても、“は?2人の縁が繋がってたからだろ。俺は精々縺れてたのを解しただけだ”って言うだろうね」

 

「そっか、それでも感謝してる。

でも不思議だね、ずっと仲間として一緒にやってきたのに、今度は敵なんだから」

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「先ず1勝!」

 

「良い感じなんじゃない?皆調子良さそうだし」

 

「この勢いでいけば、行けるよインターハイ!」

 

 

 

ー先ずは1勝!ー

 

ーお、勝ったか。でも油断はすんな、これからが大事だぞー

 

ーうん、分かってるー

 

 

雪に結果報告してから、学校戻って練習しようと皆に声をかけた時

 

「ねぇねぇ、サブアリーナでやってる試合、凄いから見に行こうよ!」

 

「凄いって何よ?」

 

「上手い選手が居るんだよ!籠原学園も圧倒するくらい!」

 

 

そんな声が聞こえて来たので皆でサブアリーナの試合を見に行くと、そこにはドリブル・パス・シュートの全てが高いレベルで纏まっている夢佳の姿があった。

 

ピーーーッと試合終了の笛が鳴る。

 

「彩昌、勝った・・・」

 

「夢佳が凄いのは知ってたけどブランクある筈だし、それに相手去年の県2位だよ?」

 

 

ー夢佳が帰ってきた・・・憧れの夢佳が。

 

ーだけどそれは仲間じゃなく、敵として・・・

 

今はコートに居る夢佳と顔を合わせたくなかったので、気付かれる前に外へ出る。

 

 

 

1度学校に帰って軽く練習をして、今日は終わりだ。

 

「うわ、降ってきたよ」

 

「帰り際に最悪~」

 

「千夏まだ残るの?」

 

「も少し練習してく」

 

「程々にね」

 

「うん、ありがと」

 

床に座って雨音を聞きながらボーッとしていると、プルルルとスマホの着信が鳴る。

 

『はい』

 

『元気か?』

 

『元気だよ、珍しいねお父さんから電話なんて』

 

『雪くんから、インターハイの予選が始まったと聞いたから。 

頑張れよ、その為に日本に残ったんだから。

千夏、お前は頭の良い子だから、自分で選んだ道がどれだけ困難なのかも分かっているだろう。

しかし私達は勿論、鶴羽夫妻も見守っている。

そして何よりお前には雪くんが傍に居てくれるのだから』

 

『うん、分かってる。お父さんもお母さんも、優花さんも那月さんも私達を見守ってくれてるって事は。

それに雪が傍にいてくれる、それだけで私は頑張る事が出来るから』

 

『しっかりやりなさい、出来るなら去年の様に一緒に出場出来る様に』

 

『ありがとう、お父さん』

 

ピッと通話終了ボタンを押す。

 

そこへ

 

「あー、やっぱり居残りしてやがる。試合したんだから程々にして切り上げろってんだよ、このバスケ馬鹿」

 

雪が傘を持って体育館に来た。

 

「どうしたの?練習終わって帰ったんじゃ・・・」

 

「帰ってから雨降ってきたから傘持って来たんだよ。千夏が傘持って出てないのを知ってたからな」

 

「そっか、じゃあ帰ろっか」

 

「・・・千夏、何があっても俺はお前の味方だからな。吐き出したい事があればいつでも言えよ」

 

あぁ、やっぱり雪には見透かされてる。

 

ちょっとくらいなら甘えても良いよね?

 

ぎゅっと雪に抱きつく。

 

何も言わずに抱き締め返してくれる。

 

言葉は要らない、この抱擁だけで私は救われる。

 

「よしっ、充電完了!もう大丈夫!!」

 

「さいで」

 

「さぁ、帰って優花さんのご飯食べなきゃね!」

 

考えるのはいつでも出来る。

 

今は勝ち進む事だけを考えよう!

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

3回戦が始まる。

 

ー栄明高校 対 彩昌高校ー

 

さて、千夏は夢佳ちゃん超えを果たせるかね?

 

第1Q残り2分で4点差か、去年のインハイ出場校がベスト8がやっとだった高校相手にこの点差ってのは流石に想定外だった筈。

 

「こりゃあ、ちょっとヤバイかもな」

 

「夢佳を復帰させたのが、悪い方に転ばなきゃ良いけどね」

 

「おぉ、まっつん。ま、千夏もそれは覚悟の上だったろうよ。インハイへの道が厳しくなったとしてもな」

 

とは言え、夢佳ちゃんがここまでやるとは俺も思ってなかった。

 

千夏やナギちゃん先輩が「天才」って言うのも分かるわ。

 

 

 

「やるなぁ、彩昌11番!得点力もあるし的確なパス出しも出来るセンス!」

 

「確実にあの11番が試合の流れを作ってる。これは下克上あるんじゃないか?」

 

 

 

バスが回って来るが、夢佳がディフェンスについている。

 

そのディフェンスをかわしてシュートを撃つが、リングに弾かれる。

 

が、そのリバウンドを渚が取りシュートを決める。

 

「ガンガン撃ってこ!」

 

「うん」

 

 

ー何1つ、後悔したくない。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

最初はほんの少しの興味だった。

 

ーかっこいい

 

ー自分もあぁなりたい

 

それが生活の一部になった。

 

ご飯を食べたら歯を磨くみたいに、やらないとモヤモヤする・・・私の一部。

 

 

「ホント上手いなあの11番、元々栄明にいた子なんだろ?」

 

「今の栄明男子で言うなら鶴羽・・・ってのは流石に言い過ぎだが、昔から凄いセンスだったよ」

 

「今は強敵になっちまったな」

 

 

 

『ナツもくる?栄明中。中高一貫校だから受験勉強しなくて済むよ』

 

『夢佳勉強したくないだけでしょ』

 

『それに、一緒にインターハイだっていけるよ』

 

『いいね、私が部長やるね』

 

『私でしょ?』

 

『夢佳は協調性ないって』

 

『オイッ!』

 

 

仕方ないのかもな、って思った。、

 

歯磨きをしないと虫歯になってしまうけど、バスケは何の問題もない。

 

ずっとやってきた事だからなくてはならないって思ってるだけで、実際はそうじゃないって何となく分かってた。

 

 

『珍しいね、お父さんがこの時間に帰ってくるなんて。何の話・・・?』

 

『あのね』

 

話そうとしたお母さんを、お父さんが手で制す。

 

『実は海外への転勤が決まった。来年の春から2~3年かそれ以上か。この家も引き払ってみんなで・・・』

 

それを聞いた私は頭が真っ白に、目の前が真っ暗になった。

 

『・・・ごめん』

 

『千夏っ』

 

ベランダで膝を抱えて踞る私に、お母さんが声を掛けてくる。

 

『突然驚いたわよね、友達とも離れちゃうわけだし。でも千夏なら向こうでもきっと・・・』

 

『分かるよ、きっと直ぐ慣れる。勉強になる事だって沢山あるだろうし、何だかんだ楽しく過ごしてたまに皆と連絡取っても少し胸は痛むだろうけど、“仕方ない”って納得できちゃう。

でも、私はそれがイヤだ・・・イヤだよ』

 

ーなくてはならないなんて、十数年生きてる中での思い込みみたいなもの。

だけど、その“思い”がなくちゃ、何の意思で行動するの?

私はそれに執着したい。

 

ーだから後悔はしない、夢佳とまたバスケしたいって言った事。

たとえ今苦戦する事になっても、何度あの時に戻されても同じ事を言う。

 

ーあとは勝てば良い。

 

そう思いボールを受け、周囲を見渡した私の目に飛び込んできたのは、帰国してきたあの頃からずっと私を助けてくれた雪が応援してくれてる姿だった。

 

「決めろ、千夏!」

 

「分かってるよ、雪」

 

そう言って撃ったシュートは、ザッと言う音を立てて決まる。

 

「よっしゃあー、ナイススリーッ!!!」

 

 

 

そこからは、取って取られてのシーソーゲーム。

 

流石夢佳、簡単には勝たせてくれそうにない。

 

 

「ほらここ、栄明対彩昌。去年の県予選1位の栄明と、2位を降した彩昌の試合。決勝並みの戦いだよ!」

 

 

栄明コールと彩昌コールが鳴り響く。

 

こんな試合見せられたら応援したくなるし、そりゃあファンもつくわな。

 

そして千夏にボールが渡り、シュートにいこうとした所で相手選手と衝突してしまう。

 

「あぁっ!思いっきりぶつかったけどナツは大丈夫か?・・・あ、立ち上がって相手と話してる、平気そうだな」

 

ガタンッ!と音を立てて立ち上がる。

 

「雪?」

 

まっつんの声を尻目に駆け出す。

 

あれはぶつかった所に怪我がないと思ってるだけだ。

 

今は気が昂ってるから気付かないだけで、多分・・・

 

そっとコートの壁沿いに監督に近付く。

 

「監督!」

 

「鶴羽?どうしたこんな所まで・・・」

 

「1回千夏を引っ込めてくれ!」

 

「何?どういう事だ?」

 

「本人も気付いてないかも知れないけど、さっきの接触で多分足首やってる。せめてテーピングだけでも」

 

そう言った時、コート全体がざわめく。

 

ーまさか

 

そう思い、振り返ってコートを見た俺の目に飛び込んで来たのは

 

 

ー足首を押さえて膝をつき、息を荒らげる千夏の姿だったー

 

 

 





去年の県2位が新光ってのを見て、あれ?と思ったので単行本読み返しても、原作でも1年前のインハイ予選決勝の相手は籠原だったから去年の2位が新光と言う意味がよく分からなかったので、拙作では彩昌の初戦の相手を籠原にしました。

総当たりのGLなら勝ち負け分けと得失点差で籠原に勝ってインハイ出場決めて、最終結果で新光が2位になったってんなら分かるんですが、負けたら終わりのトーナメントですからねぇ。
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