アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
誤字報告ありがとうございます。
送り仮名に関して昔の読み方を敢えて使ってたんですが、検索したら今は使ってない様なので今後は今の読み方を使う事にします。
瞬く間に時は経ち、インハイを制したり文化祭を楽しんだ後、秋合宿が始まった。
栄明の秋合宿最終日前の夜にはキャンプファイヤーをやるんだけど、そこで告白して成立したカップルはラブラブになれるらしい。
そんな話を雪くんにしたら
ーは?告白が上手く行けばキャンプファイヤーなんか関係なく、ラブラブになって当たり前じゃねぇの?ー
と言われてしまい、確かに、と納得してしまった。
ところが、それで終わらないのが雪くんなんだよねぇ。
懸案事項が解決した事で吹っ切れたらしく、体育館組が殆ど揃った大人数が居るキャンプファイヤーの前で堂々とナツに告白して、告白を受けた千夏からOK貰った事で晴れて恋人関係になった。
ナツの気持ちを知ってた身としては嬉しいと思う反面、私は・・・と思ってしまった。
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雪ちゃんが鹿野先輩に告白してOK貰ってるのを見て、「は~、やっとかよ」と思ったのが正直な気持ちだった。
だって端から見れば、どう考えても両想いだったし。
まぁ、なんか事情があったんだろうけど。
ただ、それを見ていて「俺はどうなんだ?」とも思ってしまう。
渚先輩とはあれからも色々話したり相談したりしてるけど、プライベートで2人で出掛ける事はしていない。
何と言うか、中途半端なんだよな。
合宿終わってから、もうちょっと頑張ってみるか。
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合宿が終わったと思えば今度はクリスマスだ。
が、女バスはウインターカップが丸被りしている上に、試合後は部員同士で夕飯を食べに行くらしい。
流石にそこに割り込むのは気が引けるし、雪ちゃんと違ってそんな度胸も無い。
すると
ー1回戦勝ったよ(^-^)vー
と、メッセージが来た。
ーおめでとうございます。それとメリークリスマス・・・つってもプレゼントも何も無いんですけど(汗)ー
ーあはは、それは来年の日程次第だねー
それって、来年は一緒に過ごせる余地がある、と思って良いんだろうか?
ー女バスの皆でご飯ですか?ー
ーうん。ナツは雪くん探しに帰ったけどねー
ーあの2人、ラブラブ過ぎません?ー
ーそうなんだよねー。特にナツの方がバスケ一筋だった反動のせいか、雪くん命になっちゃっててさぁー
ー確かに鹿野先輩の方が何と言うか、飼い主に纏わり付く子犬みたいな感じですもんねー
ーまー、雪くんが絡まなきゃいつも通りなんだけどねぇ。付き合ってるとは言え雪くん自体はモテるから、アプローチ掛ける子が出てきたらどうなる事やらー
ーその手の話は止めときましょう、変なフラグ立ててとばっちりが来たら堪ったモンじゃないんでー
ーそ、そうだね、止めとこうか。って、席空いたみたいだから行くね、じゃあまた学校でー
ーはい、お疲れさまでしたー
ふぅ、人の色恋沙汰をネタに話してる場合じゃないんだよなぁ・・・
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そしてあっという間に年が明け、元日の昼。
冬休みの宿題もとっくに終えており、暇をもて余してゴロゴロしているとメッセージが届いた。
ー明けましておめでとう、去年は色々あったけど今年も宜しくね。ナツはお父さんの実家の長野に帰省したんだってー
ー明けましておめでとうございます。雪ちゃんから聞きました。何か元に戻っただけなのに不思議と違和感がある、とも言ってましたねー
ー何だかんだ言って、雪くんもナツにベタ惚れしてるからねー
ー本人に言ったら、“は?当たり前だろ?何言ってんだ”って返されそうですけどねwー
ーそれを照れもなく、素で言うのが目に浮かぶわー
ー渚先輩は初詣行きました?ー
ーううん、午後から家族で行くつもりー
ーそれってあの最寄り駅から少し行った所にある神社ですか?ー
ーそうだよ。ウチは毎年家族であそこに行くのが恒例行事だがらー
ーウチもあそこですね。もし良ければなんですけど、ちょっとだけでも会って新年の挨拶だけでも出来ませんか?ー
ーえ!?家族も一緒だし、変に思われないかな?ー
ーそこは初詣でたまたま出会った、って体で大丈夫でしょ。新年の挨拶するくらいで変に思われる事もないでしょうしー
ー分かった。じゃあ出る時間と境内に入るくらいにメッセージ送るねー
ー了解しました!それじゃあまた後でー
そう言ってメッセージを閉じた。
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初詣で偶然出会った体を装えば大丈夫とは言ったものの、やはり好意を持っている相手の家族、特に父親と顔を合わせると思うと緊張する。
「ま、なる様になるだろ」
そう思った矢先にメッセージが来る。
ー今から出るねー
ー分かりましたー
そう返信して俺も家を出る。
暫くして神社に着くと
ーもう直ぐお参りだけどどうしようか?ー
ー俺は今入り口なんで、鳥居の付近に居ます。その方が入れ違いにも人の邪魔にもなりませんからー
ー分かった。また後でねー
そこで一度やり取りを終える。
数分経った頃、両親と弟らしき3人と一緒に渚先輩が拝殿から出て来るのが見えた。
自然を装い近付き
「あれ?渚先輩、ご家族で初詣ですか?」
「あ、鷹尾くん。明けましておめでとう」
「おっと、失礼しました。明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
「うん、こちらこそ宜しく」
「え、姉ちゃんこんなイケメンと知り合いなの?」
「おっと、嬉しいこと言ってくれるねー弟くん」
「初めまして、渚の母です」
「渚の父だ、宜しく鷹尾くん」
「あっと、ご丁寧にどうも。栄明高校1年、バスケ部の鷹尾一也と申します。渚先輩には部活でお世話になってます」
「鷹尾くん1人?ご家族は?」
「帰省した親戚一同と酒盛りっすよ。
ウチに居たら酔っぱらいに絡まれるんで付き合ってられないから、1人で来た次第です」
「お正月だもんね(笑)」
「ホント参りますよ。昼過ぎから初詣だって言ってたのに、久し振りに顔会わせたからって午前中から飲んで出来上がってんですから」
ヤレヤレと首を降って、お手上げのジェスチャーをする鷹尾くん。
「あ、甘酒振る舞ってるー!」
言うが早いかダッシュで貰いに行く弟。
「あ、コラ!1人で何処でも行かない!!」
「全くもう!知り合いの前で恥ずかしいったら・・・」
「まぁまぁ渚先輩、中学生ならあれくらい元気があって良いと思いますよ。
っと、ご家族の時間にこれ以上お邪魔するのもあれなんで今日はこれで失礼します。また部活が始まったら宜しくお願いしますね」
「あ、うん、またね、鷹尾くん」
「これからも渚を宜しくね、鷹尾くん」
「え?あ、はいこちらこそ宜しくお願いします。じゃあこれで失礼します」
そう言って鷹尾くんは帰っていった。
「渚、鷹尾くんでしょ?花火大会の夜、送ってくれたのって」
「え、うん、そうだけど、どうかした?」
「良い子じゃない、ねぇお父さん?」
「ん?あ、あぁ礼儀正しいし、こちらが家族連れだと言う事も踏まえて去り際も弁えていた」
「鷹尾くんなら、お母さん大歓迎だわ~」
「ちょ、ちょっと、鷹尾くんとは別にそんなんじゃ・・・」
「でもあの子、多分モテるでしょ?見た目も性格も良くて気遣いも出来るから、ちょっと仲が良いからって油断してたら、直ぐ誰かに取られるかもよ?」
「それは、そうかも知れないけど・・・」
「母さん、それは渚の気持ち次第だから、そんなに焦らせなくても良いだろう。まぁ父親としては複雑だがね」
「そうね、私たちもそろそろ帰りましょうか」
そう言って帰路に着く。
ー油断してたら直ぐ誰かに取られるかもねー
お母さんの言葉が頭の中で駆け巡る。
そうだよね、鷹尾くんが女子にモテるのはよく分かってる。
今の私は、他の女子よりちょっと仲が良いだけでしかない。
鷹尾くんの隣に他の誰かが居ると考えてみると・・・駄目だ、やっぱり苦しくなる。
もう間違いない、私は鷹尾くんが好きなんだ。
この気持ちを伝えるには・・・ふと顔を上げるとカレンダーが目に入る。
目に入ったのは2/14の日付。
うん、決めた!来月、2/14のバレンタインに気持ちを伝えよう、そう心に誓った。
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お正月にそう決意してから あっと言う間に時は過ぎ、バレンタインまであと数日。
「ナツー、バレンタインはどうすんの?」
「花恋の家で、菖蒲ちゃんと一緒に作るつもり」
「そっかー、どうしようかなぁ」
「え?渚、それって・・・」
「あはは、あーうん、鷹尾くんに気持ちを伝えようかな、って」
「そうなんだ!じゃあ一緒に作る?」
「それも良いかなとは思ったんだけどね。
今回は色々と見て回って、良いと思ったチョコを買おうと思って」
「そっか、上手く行くよう応援してるからね!」
「ありがとね、ナツ」
部活帰りにショッピングモールに寄ってみると、バレンタイン特設コーナーなるものが出来ている。
「んー、やっぱり良いと思うのって結構お高いよねぇ」
そんな事を考えながら特設コーナーを回っていると、特徴的な髪型の女子が目に入った。
「蝶野さん?」
「あ、渚先輩、お買い物ですか?」
「うん、バレンタインのチョコをね」
「と言う事は、遂に鷹尾くんに?」
「え!?蝶野さんも知ってたの!?」
「知ってたと言うか、バレバレだったと言うか・・・」
「そうなの!?もしかして他の人にも?」
「えぇっと、まぁ少し鋭い人なら多分」
「うわー!恥ずかしいんだけど」
「と言っても、それは鷹尾くんも同じですけどね」
「そ、そうだったんだ。って蝶野さんは手作りじゃないの?大喜くんに渡すチョコ」
「あー、私あんまり料理得意じゃないんで、取り敢えず今年は市販品でって事で・・・」
「良いと思うよ。気持ちが大事なんだし、大喜くんも手作りだとか市販品だとかに拘る子じゃないでしょ」
「そうですよね!うんうん、やっぱり渚先輩は分かってらっしゃる」
「でも色々ありすぎて、逆に迷っちゃうんだよねぇ。予算の都合もあるし・・・」
「義理より豪華で、更に高価すぎない・・・!これなんてどうですか?」
蝶野さんが指差したのは、複数の味や形のある所謂「アソート」と呼ばれるものだった。
「確かに義理よりは豪華且つ、色んな詰め合わせでお得感もあるし、これをベースに探してみようかな」
「私もそうします」
2人で見て回って、お互い気に入ったものがあったのでそれを購入した。
「ありがとう、蝶野さん。お陰で良いものが買えたよ」
「こちらこそです、渚先輩。上手くいくと良いですね!」
「うん、じゃあこれで。今日は本当にありがとね、また学校で」
「はい、さようなら渚先輩」
お互い笑顔で帰路に着いた。
2月14日 バレンタインデー当日
昨日はドキドキして中々眠れなかった上に、今日はいつもより早く目が覚めた。
机の上には、放課後に買ってきたチョコレートの包み。
着替えて今日の準備をして、最後にチョコレートをバッグに入れる。
「よしっ!今日ちゃんと伝えるぞ!」
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朝の勢いは何処へやら、部活の時間が近付くにつれてドキドキが収まらず、意味もなく何度も鞄の中のチョコを確認したり触ったりして落ち着かない。
「渚、落ち着かない様子だけど大丈夫?」
「あ、ナツ・・・今日チョコ渡して気持ち伝えようと思ってるんだけど、いざその時が近付いてくるとね」
「次6限だし、終わったら直ぐだよ?」
「分かってる、分かってるんだよ。でもいざとなったら、どう声を掛けたら良いのか・・・」
「渚、お節介焼いても良い?」
「どういう事?」
「本当に声を掛けづらいなら、雪に頼んでみるよ?」
「それは・・・うーん、でも自分でってのも難しい、しなぁ」
「渚が渡す場所さえ決めてしまえば、部活終わった後に鷹尾くんにそこへ行ってもらう様に雪に言ってもらうけど、どうする?」
「・・・分かった、じゃあお願いする!場所は部活中に考えて終わるまでにナツに言うから、雪くんに伝えて」
「うん、頑張ってね、渚」
部活前に千夏に声を掛けられたので どうしたのか聞いたら、ナギちゃん先輩がカズにチョコを渡して気持ちを伝えるつもりらしい。
ただ、カズにどう声を掛けたら良いか悩んでたので、千夏がお節介焼いてナギちゃん先輩が渡す場所を決めたら千夏経由で俺からカズに伝えて欲しい、と言われたので勿論二つ返事で了承した。
去年の夏くらいからカズが何となくそんな素振りを見せてたし、ナギちゃん先輩も満更でもなさそうだったからな。
練習の合間の休憩中、千夏がサッと寄ってくる。
「雪、校舎南側の昇降口にだって」
「分かった、言っとく」
業務連絡が終わった千夏が、いそいそと戻っていく。
さて、カズの奴は・・・と、おー居た居た。
「おーいカズ、ちょっと良いか?」
「ん?何だ雪ちゃん?」
「部活終わった後、校舎南側の昇降口に行ってくれ」
「何でそんな所に?」
「はぁ・・・今日は何の日だ?カズよ」
「今日・・・14日の」
「バレンタインだよ」
「あー、確かに義理は沢山貰ったしな。どう見ても本命っぽいのは流石に断ったけど」
「何で?」
「何でって、そりゃあ・・・って、雪ちゃん分かってんだろーが!」
「ははっ、悪い悪いw」
「ったくよー。自分は学園の聖女様と付き合ってるからって、フザけすぎだろ魔王様」
「うっせーよ、魔王様は止めろ。
で、だ。その本命からのたってのお願いだから、お前に伝えてんだけどな?」
「・・・マジ?」
「おう。今日は女から思いを伝える日だとは言え、お前も腹括ってキッチリ決めろよ?」
「分かった、ありがとな雪ちゃん」
「フッ、気にすんな相棒。じゃ、結果報告よろ~」
そう言って雪ちゃんは練習の続きに入った。
渚先輩からの呼び出しって事は、そういう事だって期待して良いんだよな?
それからは、部活が早く終わる事ばかり考えていた。
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部活修了後、さっさと着替えて昇降口に向かう。
急いで来たつもりだったが、既に渚先輩が待っていた。
「スイマセン、遅くなりました!」
「大丈夫だよ鷹尾くん、私もさっき着いたばかりだし」
「なら良かった。冬の寒空の下に、女性1人を待たせる訳にはいきませんからね」
ちょっとおどけてそう言う鷹尾くんを見て、「そういう所、やっぱり雪くんに似てるよね」と思った。
「それで、ね。ここに呼び出した訳なんだけど・・・」
ドッドッと、鼓動が高鳴る。
喉もカラカラだし、上手く声が出るだろうかと心配になる。
でもナツや雪くんにここまでお膳立てして貰ったんだ、えぇい、女は度胸!!
バッグからチョコを取り出し
「鷹尾一也くん!私は貴方が好きです、OKならこのチョコを受け取ってください!!」
頭を下げて目を瞑り、両腕を伸ばした先の手の中にあるチョコ。
緊張で指先が震えている。
鷹尾くんにもバレてるかな?
そう思った時、手の中から重さが無くなった。
顔を上げて目を開けると、そこにはチョコを手に取りそっぽを向いて、頬を赤く染めた鷹尾くんが居た。
「え、あれ?これって・・・」
そう言った時
「渚せんぱ・・・いや、船見渚さん!」
「は、はいっ!」
「俺、鷹尾一也は渚さんの事が好きです!俺と付き合ってください!!」
その場を静寂が支配する。
ー渚さんの事が好きです!俺と付き合ってください!!ー
~~~/////
ホントに!?
私の片想いじゃなく、両想いで良いんだよね?
夢じゃないよね!?
ほっぺをつねってみる。
「・・・いたい」
「プッ、何やってんすか渚さん。夢じゃないっすよ」
ほら、そう言って手を差し出す鷹尾くん。
おずおずと手を取ると
「ね?夢じゃないでしょ、渚さん」
「うん、そうだね鷹尾くん」
「あ~、その、チョコを受け取った事で俺の返事は分かったと思いますけど、俺の告白に対しての返事をいただきたいな、と」
あ!そうだった。
自分の告白を受けて貰えたからって舞い上がってて、鷹尾くんの告白に返事してなかった。
「はい、勿論お付き合いしたいです、これから宜しくお願いします、鷹尾くん」
「じゃあ先ずは鷹尾くん呼び止めますか」
「え?」
「一也かカズで」
「あ、え、いきなりそんな名前呼びなんて」
「えー、雪ちゃんの事は“雪くん”って呼んでるじゃないですか。男友達は名前で呼ぶのに、彼氏は名字で呼ぶんだー」
「そ、そんなつもりは・・・じゃ、じゃあカズくん、で」
「ふーむ、まぁこれから徐々に慣れて貰えばいいか。これから宜しく、渚さん」
「うん、宜しくね、カズくん」
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ー渚さんと付き合う事になった。色々とありがとな、雪ちゃんー
ーカズくんと付き合う事になった。千夏たちのお陰、本当にありがとうー
俺と千夏のスマホに、ほぼ同時に来たメッセージ。
それはお互いの相棒たちから、気持ちを伝え合って付き合う事になったと言う報告だった。
「そうか、上手くいった様で何より」
「うん、本当に良かった」
「さーて、明日どうやってからかってやろうかねw」
「雪?茶化しちゃ駄目だよ、そんな事したら怒るからね!」
「へーへー、分かりましたよ」
そう言ってスマホに目を落とす。
シンプルだけど思いが伝わってくる一文を読んで、頬が緩む。
ー良かったな、カズ。
長かった・・・
まさか幕間で2話に分ける事になるとは、思いもしなかった。
余計な事は書かない方が身の為だと、痛感した。