アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
前回のIFを書き終わった所で、ちょっとモチベーションが上がらなくて遅くなりました。
他の作者様の色んな小説読んでモチベーションも持ち直して来たので、少しずつ進めて行こうと思ってます。
「別に買い出しくらい、付いてこなくて良かったのに」
「俺も大会前に欲しいものあったし、ついでだよ」
「言ってくれたら買ってったのに、ついでに」
「そんなパシリみたいな真似、させらんないよ」
初めて2人で出掛けるには、色気ないわね・・・
「何だよ」
「べっつにぃ~」
そんなやり取りをしていると
「あれぇえ!?きょー兄じゃん!!」
「母さん。偶然だな」
「洗剤切れそうだったでしょ。それにこの子たちお菓子欲しいって」
「きょー兄もお菓子買って!」
と言いながら、じっと見てくる弟くん。
「彼女?」
ーんなベタな・・・
「そんな訳ないでしょ、こんな綺麗な人、きょー兄相手にされないわ」
「たしかに。女心のおの字もわからんしな」
「好き勝手言ってくれるじゃないか!」
「わぁ!」
「あー、つかまったー」
楽しそうに弟妹と話す匡くん。
ーこんな顔もするんだ。
「あなたもしかして、以前クッキーくれたマネージャーさん?」
「あ、はい・・・」
「えぇっ!あのクッキー作ってくれた人!?」
「大天才じゃん!」
「ほっぺた落ちたんだから!」
「おいしかったから、また作ってよ!」
そこまで言われちゃねぇ。
「よーし次は、クッキーのお城作ったげる!」
「「わあああい!」」
「やめとけ、本気にするぞ」
ふと気付くと1番下の子だけ、お母さんの陰に隠れている。
「ごめんなさいね、良は人見知りで」
「クッキーのお姉ちゃんだぞ」
「お城だぞ」
2人の声にも反応しなかったのに、いきなり走り出した。
お母さんが驚いて「あっ」と声を出すが、こちらに近付いて来た女の子に駆け寄って手を繋ぐ。
「きょーママ、ありましたよ、お風呂洗剤」
「咲季・・・」
「きょーちゃん」
ふと目が合う。
ーきょーちゃん??
「ありがとう、咲季ちゃん」
「いえ、お力になる為に着いてきたので」
「おさこちらお隣さん歴16年の、金石咲季ちゃん。
そしてのちらが匡の部活のマネージャーさんの・・・」
「守屋です!」
「マネージャーさん」
ーお隣さん・・・
「ーで、彼女さん?」
またそれか、と思い、ガクッとなる。
「それが違うんだってよ!」
「そうなの、?私てっきり」
「お前らそればっか・・・」
「きょーちゃん、今までそういう話なかったから、ついに春が来たかと思ったのに」
「余計なお世話だ」
ー感じる、感じるぞ。私 気にしてませんって風を装ってるけど、この子・・・私に嫉妬している!
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ブツブツと何かを呟きながらイラついた様子の菖蒲を、男バド部員たちは遠巻きに見ていた。
「誰だよマネージャーの機嫌、損ねた奴」
「マネージャーもピリピリしてるんだよ、明日から県予選だから」
女バドの同級生と話しながら歩いていると、バスケットボールが転がってきた。
足を捻挫した千夏先輩がハンドリングをミスったみたいだ。
拾い上げて千夏先輩に渡す。
「どうぞ」
「ありがとう」
「いえっ」
「綺麗な人だよね、千夏先輩」
「しかもバスケ部の部長だもん、かっこいいよね」
「私だったら遊び倒してるかも」
「でも千夏先輩、彼氏いるみたいだよ」
「えっ」
「?あかり、どうしたの?」
「いや、私・・・先輩が男の人におんぶされてるの見たんどけど」
「「ええっ!?」」
「何それ、いつどこで!?」
「昨日ランニング中に・・・」
「相手は!?相手は誰!?」
「遠かったから誰かは分からなかったけど、結構大きい人だったと思う」
「それって、もしかしてー・・・」
「うん、やっぱりー・・・」
「「雪先輩!じゃない!?」」
「そうなのかな?・・・うん、そうかも」
「体育祭でのお姫様抱っこなんて、物凄く様になってたし!」
「千夏先輩も恥ずかしがってたけど、嫌がってはなかったし!」
「あかり、あんた朝練の時一緒に居るし、聞いてみてよ」
「えぇっ!?そ、そんなプライベートな事、聞きにくいよ」
「でも、もしかしたら猪股先輩の相手も分かるかも知れないし・・・」
ーうん、いるよ
お付き合いしている人が居るって事を隠さないで教えてくれたって事は、その人が誰なのかも聞けば教えてくれるのかも知れない。
「・・・聞けるタイミングがあったらね」
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「大喜、出たぞ県予選シングルスのトーナメント」
部活中に声を掛けられる。
「見せて」
遊佐くんとは違うブロックか。
自分の名前を確認してなぞっていく・・・
「え」
「大喜がインターハイ2枠に残るにはー・・・」
「準決勝で針生先輩に勝たないと」
「あーあ、何となくそんな気はしてたんだよな。ついてなかったな」
針生先輩に勝つー・・・
「大丈夫か?」
「針生先輩との試合、考える事があるかも知れないけど、お前はお前の目標があるんだし、あんまプレッシャー感じるなよ」
3年間やってきた集大成の場である、最後のインターハイ。
そこに懸ける思いは、俺とは違うと言う事は分かる。
だが、俺だってインターハイに行きたい気持ちは負けると思ってない。
「サンキュ。よーし、やるぞー!栄明!!ファイトー!!!」
「うるせぇぞ!猪股!!びっくりするだろ」
「声出し大事っすよ!」
「気合い入ってるね、大喜くん」
「ありゃ“やるしかない”って時の咆哮だね」
よーし、なら私からも
「ファイト!バド部!!」
「頑張ってきてねー!」
雛たちの応援を皮切りに、体育館組からエールが飛び交う。
「てれるな」
「西田出んの?」
「え?俺部長なんですけど!?シングルスも出るし、ダブルスは針生となんですけど!?」
「実質ダブルス1択じゃん」
「ひどくね!?」
その一言で皆が笑う。
うん、良い感じで試合に臨めそうだ。
帰宅して暫くすると雛からメッセージが届く。
ー今電話して大丈夫?ー
ーうん、大丈夫ー
そう返すと直ぐに電話が掛かってくる。
「もしもし、どうした?」
「試合の応援に行ってもいいかな?」
「え?」
「ちーちゃんも雪や針生先輩の彼女と行くって言ってたから、一緒に行けば悪目立ちしないと思うんだ」
「勿論!雛が来てくれるなら頑張れるよ!」
「うん。一生懸命応援するね」
「耳すませてる」
「いや、そこは試合に集中しなさい!」
「あ、はい・・・」
「じゃ、また右手挙げて」
「パワー送ってくれるのか?」
「嫌なら良いよ」
「お願いします!」
「宜しい。じゃあ行くよ?ん~~~、はぁっ!・・・よし、雛さまの愛がこもったパワーが大喜に届いたからね!」
「うん、ありがとう雛。これで明日は誰が相手でも頑張れる」
「そっか・・・大喜、好きだよ」
「はぇっ!?」
「ふふっ、おやすみ。明日頑張ってね」
そう言って通話は切れた。
幾ら恋人とは言え、急に好きとか言われたらビックリしてドキドキしてしまう。
「心臓に悪い・・・」
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高校バドミントン インターハイ県予選大会
シングルスに於いて8月に行われる本戦に出場できるのは、この予選で勝ち残った2名ー
「大喜っ!バスに忘れ物してたぞ」
「えっ、ありがとうございま・・・」
と言った所で、バサバサとバッグから色々な物が零れ落ちる。
「緊張しすぎだろ、大丈夫かよ?」
「オイ来たぞ、佐知川だ」
遊佐くん・・・
「相変わらずスカしてんな、遊佐くんは」
「いや、あれはかなりテンション上がってますよ」
「そうかぁ?」
「右目の二重が深くなってたでしょ」
「兄弟でもないのに、分かるかぁ!」
「朝なんて鼻歌歌ってましたし」
「鼻歌ぁ!?何の曲を・・・」
「随分余裕なんだな」
「柊仁に緊張とかはないんですよ。ただ、楽しみなだけ」
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「足大丈夫?」
「うん、固定して貰ってるから」
「辛くなったら言いなよ?鶴羽くんが来る前に悪化させたら、私たちが何て言われるか」
「そうだよ、ちーちゃん。雪の事だから何を言われるか分かったもんじゃないんだから!」
「だ、大丈夫だよ、幾ら雪でもその辺はちゃんと分かってくれるし、私からも説明するから」
「まぁ、ちーがそう言うなら大丈夫なんでしょ」
「・・・競技が違うと大会の空気も違うね」
「そうなの?」
「バスケは“赤”ってイメージ。バドミントンは黄色っぽい」
「ちーちゃん、それってボールが赤いからじゃないの?」
「ボールはオレンジだよ」
「MVの時の鶴羽くんを見てたら、赤くもあるし青くもある様に思えたけどね」
「雪は冷静に見極めてる時は“青”で、果敢に攻める時は“赤”って感じだからかな」
「今の人たち可愛かったな!」
「何処の高校だ?」
バド部の皆で応援席に向かっていると、そんな声が聞こえて来た。
「あれ?鹿野先輩じゃん」
「蝶野先輩もいる」
「何でバド部の大会にー?」
「何でも、もう1人の人が針生先輩の彼女さんで、その彼女さんの親友だから一緒に応援に来たみたいだよ」
「しかも彼女さんはモデルで、そんな彼女さんと栄明のマドンナ鹿野先輩。2人に応援されるなんて針生先輩ズルすぎる!」
「それなら蝶野先輩は?」
「普段から鹿野先輩と仲良いみたいだし、特に予定が無かったから一緒に来た、とかじゃない?」
「猪股先輩と笠原先輩と同じクラスってのもあると思う」
「へぇー」
そう話していると、マネージャーである守屋先輩が3人に近付いていく。
「お姉、ちーちゃん、ひなっち。あまり目立つのやめて貰えますぅ?視線集めてましたよ」
「そんなつもり無いわよ」
「ゆっきーが一緒なら皆ビビって目を逸らすのに、来てないの?」
「後から来るって」
「そ。じゃあボディーガードとして離さないでね・・・って、ちょうど今から栄明(ウチ)の試合がー」
ーコールします。栄明高校、猪股くん。椎名高校、永山くん。
「あ、呼ばれたから、お姉たちも応援に行こう」
コートで相手と対峙する大喜を見る。
うん、変に固くなってはいないみたいだ。
「千夏と蝶野さんはバドミントンの試合見た事は?」
「私は公式戦は初めてかな」
「私は去年のインハイ予選を」
「そう。公式戦って、こっちまで緊張するのよね」
試合が始まり、大喜も相手も必死にシャトルを追い、打って打ち返してを繰り返している。
「何してるの、2人とも。ちゃんと声出して応援してあげなよ!」
花恋さんのその言葉とコートの大喜を見た私は
「一本っ!」
と声を出していた。
ちーちゃんも
「ナイスプレイ、もう一本!」
と応援していた。
試合している猪股くんは勿論、声援を送っているちーや蝶野さんを見て思う。
ー私は部活をやった事が無いから分からないけどさ、皆すごいよ。
この一瞬一瞬の貴重さを知ってるんだもんー
「ゲーム、2ー0で栄明高校猪股くん」
「先ず1勝だね」
「ナイスファイト!」
「何だか調子良さそうじゃない?私たちの応援のお陰ね」
「すごい集中力!」
「あの子・・・蝶野さんが居るの、気づいてないんじゃない?声掛けに行く?」
「いえ、良いんです。今日はバドミントンの日なので」
「ねぇ蝶野さん・・・」
「はい?」
「聞いてる?このまま勝ち進むと、健吾と大喜くん当たるって」
「・・・はい」
「その時は私、大喜くんの事 応援出来ない・・・いい?」
「勿論です。その気持ちは分かりますから」
「ありがと。でも、ちーは健吾の応援してね」
「いやいや、ちーちゃんには大喜の応援して貰わないと」
「うわ、板挟みだ!」
そんな事を話している所に
「ねぇ君たち、何処の高校?」
「3人とも可愛いから、気になってたんだよね」
と2人組に声を掛けられた。
「そういうの迷惑だから止めてください」
そう返すも
「そう固い事言わないでさぁ」
「ちょっとくらい話してくれても良いじゃん?」
余りにしつこいので、係員に対応して貰おうと周りを見た時
「はーい、この3人は彼氏持ちだからナンパはご遠慮くださーい」
鶴羽くんがそう言いながら、2人組の後ろから肩に手を掛ける。
「「え?」」
2人が振り向くと、頭1つ高い所から見下ろす笑顔の鶴羽くん。
「だからこの3人は彼氏持ちだからアンタらの出る幕じゃねぇって言ってんの。迷惑行為で心象悪くしない方が良いと思うぞ?」
「そ、そうだな」
「じゃ、じゃあこれで失礼します!」
そう言って2人組はそそくさと去っていった。
「ったく、あぁいう手合いは何処にでも湧いてきやがる」
「雪、ありがとう」
「本当に助かったわ、鶴羽くん」
「ま、気にすんな。
自分と先輩と親友の彼女がナンパされてりゃあ、止めに入んのは当たり前だしな」
「それでも礼儀として、ね?」
「はいよ。で、どうなん?」
「それが、ね。準決で大喜と針生先輩が当たる組み合わせになってて・・・」
「って事は、どっちかはシングルスでインハイには行けないって事か・・・難儀だな」
「本当に厳しいよね、でも・・・」
「こればっかりは仕方ない、と割り切るしかねーよ。
まぁあの2人の事だ、勝負に情は持ち込まねぇだろうし、どっちが勝っても恨みっこ無しだと思ってるだろうよ」
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試合の合間に休憩していると、色んな声が聞こえてくる。
針生先輩の試合を見た他校の人の中には
「やっぱり栄明の針生くん、強ぇ!」
「去年よりも更に強くなってるし、インハイ出場は固いんじゃない?」
「今年は針生くんと、佐知川の遊佐くんだろ」
その声を聞き、中3で高等部の練習に参加した時の事を思い返す。
当時から栄明高等部でも頭1つ抜けた存在で、上級生にも勝つ実力を持っていた。
他の中等部の部員の中には畏れ多くて話しかけるのもやっとで、アドバイスを貰う事すら出来ない奴も居た。
俺はそういった事を考えずに気になった事はどんどん聞きに行っていたから、もしかしたらそんな所を気に入ってくれたのかも知れない。
それからよく試合をしてくれたり、アドバイスをくれるようになった。
目標だったその背中を見て尊敬の念を抱く、そんな存在だった。
「コールします。栄明高校、猪股くん、針生くん」
そんな存在と、インターハイ出場を掛けた試合が始まる。
「「よろしくお願いします」」
「なぁ、これって俺たち(チームメイト)は、どっちの応援すれば良いの?」
「そりゃどっちもだろ」
「そうだけどっ」
「・・・正直、3年の針生に肩入れしたくなる気持ちもあるんだよな・・・」
「それはー・・・、分かるけど」
「大喜には申し訳ないけど、来年もチャンスはある。けど、針生は今年が最後なんだよ」
部員同士でそんな話をしている間にも、2人の試合は次第に熱を帯びてくる。
「熱戦だな」
「お前の言うことも分かるけどさ。俺は針生とここまで戦えるくらい成長した、大喜の事も応援してやりたいよ」
その後も一進一退の攻防は続いて行く中、大喜がリードを得る。
「大喜がリードしたぞっ!!」
「今の切り返しうまかった!」
「大喜やるじゃねーか!」
しかしハリーさんも簡単には譲るつもりは更々無く、即取り返してきた。
「ここは針生が取り返したな」
「あぁ。大喜中心戻って前警戒してたから、またバック奥は重心移動的にもキツいんだよな」
それからもハリーさんに前後左右に振られながらも、食い付いていく大喜。
「・・・にしても、よく動くな大喜の奴」
「フットワークのスピードもあるし、体幹もしっかりしてパフォーマンスを保ってる」
「ほら大喜って、ほぼ朝イチに来てるじゃん。ショットは勿論だけど、フットワークとかサーキットとか、体育館使えない時は走りに行ったり、そういうの誰よりもやってるんだよ」
「そうだな、それは才能とかセンスとか1日で身に付くものじゃない。大喜の努力の成果だ」
大喜の努力を見てくれている人は、私たちの他にこんなにも居てくれる。
その事実を知って驚くと共に、嬉しさも込み上げてくる。
そして第1ゲームは終盤に差し掛かる。
「また大喜のリード!」
「おい」
「まさかー・・・」
そう誰かが言った時、パンッ!と大喜のスマッシュが決まる。
「・・・大喜が、1ゲーム取った!」
会場が一気にざわめく。
「おい、おいおい、マジかよっ!」
「大番狂わせ。優勝第1候補の針生が取られた!」
「あの2年やるじゃん!」
1年生大会で優勝した子だよな?
「こりゃあ針生敗北もあるかー?」
大喜に1ゲーム目を取られたと言う事実を噛み締めるが、ふいに口角が上がる。
兵藤さん、余計なことしやがって。
お陰で今までの大喜と違って調子狂っちまった。
・・・いや、単純に大喜が強くなった、って受け止める所か。
1年前はただ返すので精一杯って感じだったのに、成長しやがって。
けど、俺にも俺のやってきたことがある。
バチィッ!と、ハリーさんのスマッシュが大喜のコートに突き刺さる。
「流石にこのまますんなりと大喜に勝ちを譲る訳が無いわな」
「・・・どっちが勝つと思う?雪」
「それが分かりゃあ苦労しねーよ。ただ・・・」
「ただ?」
「最後の最後まで縺れるだろうな」
その鶴羽くんの言葉通り、第2ゲームは健吾が取った。
そして泣いても笑ってもこれで勝者が決まる、最後のゲームが始まる。
数話バド部の話と花火大会書いてから、男バスのインハイ書こうかなー、と思ってます。
作者の貧弱なバスケ知識で、何処まで書ける事やら・・・
まぁ、色んなバスケ漫画の描写のごった煮になりそう。