アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~   作:お面ライダーよっしー

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去年は部の皆と一緒に行った花火大会だったが、今年は恋人になった事で2人きりで行く事にした雪と千夏。

大喜と雛も同じく2人きりで行くつもりだったのだが、体育館で花火大会の話が出たのを耳聡く聞き付けた菖蒲により、皆で行く事になった。




EP62 進路相談と花火大会

 

7月下旬、インターハイ本戦が始まる・・・前に花火大会がある。

 

去年は部の皆と行ったけど、今年は千夏と2人きりだ。

 

「千夏の浴衣姿か・・・」

 

ぼんやりと考える。

 

ただでさえキレカワな千夏である。浴衣を着て髪をセットなんかした日にゃあ、灯りに寄ってくる羽虫の如く野郎共が寄ってくるに違いない。

 

・・・許すまじ、羽虫ども。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

遂に答案が返って来たのだが、問題の3馬鹿トリオが何と平均で60点台と言う快挙を達成した。

 

「よっしゃーっ!赤点完全回避!!」

 

「くっ、大喜に負けた・・・」

 

「良かった、全教科で50点以上取れた!」

 

勉強会開いた身としては、ひと安心である。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ー進路指導室

 

 

「失礼します」

 

「鹿野か。今回のテストも満遍なく点が取れていて、学年1桁をキープしている。部活は・・・インハイは残念だったが、怪我の具合はどうだ?」

 

「はい、お陰様でもう完治しました。高校最後の大会であるウインターカップで全国目指して邁進中です!」

 

「そうか、無理してまた怪我しないようにな。現時点で大学からも好感触をいただいているから、この調子を維持すれば問題ないだろう。面接に関しては次から追々詰めていこう」

 

答案の返却後、推薦を受けている私は進路指導室で対策について担当教諭から話を聞いていた。

 

「ありがとうございました」

 

今日1日で終わる事でもないので、また改めて話に来る必要がある。

 

「もうすぐ終業式で、その日の夜は花火大会か」

 

雪と2人きりで・・・と思うと自然と頬が綻んでしまう。

 

と曲がり角に差し掛かった所で、反対側から来た人とぶつかりそうになる。

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「いや、こちらこそ・・・って千夏か、大丈夫だったか?」

 

「うん、大丈夫だけど雪は何でここに?この先は進路指導室だよ?」

 

「あー、ちょっと早いけど進路について聞きたい事が出来たんで、進路指導の先生に話聞こうと思ってな」

 

「そうなんだ・・・それって、この前の事?」

 

「まぁそうだな。まだ決定事項じゃないから、変に話す訳にもいかなくてな。っと悪い千夏、時間無くなっちまうからまた後でな」

 

そう言って雪は進路指導室に向かっていった。

 

「雪の進路、か。大学に行くのかBリーグに行くのか、それとも他に何かあるのかな?」

 

流石に高卒でNBAはあり得ないし・・・

 

うん、分からない事は考えても仕方がない!

雪が話してくれるまで待っていよう。

 

 

 

コンコンコンと進路指導室の扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

返事を聞いて中に入る。

 

「失礼します」

 

「鶴羽か、話は聞いてる。今から3年時のカリキュラムも熟す必要が出来たと」

 

「はい。来年の9月入学に間に合わせるには、それまでに卒業見込みになってなければなりませんから」

 

「・・・そこまで急ぐ必要はあるのか?

お前の成績なら普通に卒業して4月入学でも良いだろうし、アメリカの大学に拘らなくても一旦日本のバスケ強豪大学に入って、それから留学と言うやり方もあるぞ?」

 

「それも重々承知してます。

確かにそのやり方でも余程問題を起こさない限り、留学してNBAを目指す事は出来ます」

 

「ならー」

 

「でも、俺が目指してるのはあくまでも“最短でNBA入り”です。それを叶えるには来年の9月、いや、インハイ前後のタイミングで卒業見込みになってないと駄目なんです」

 

「ふーっ、分かった。本人の意向が大事だからな。

私から各教科の先生たちに話しておこう。

ただ、わが校にとっても前例がない事だし、草案が出来たら呼び出し掛けるから、取り敢えず今日はこれで終わりだ」

 

「ありがとうございました、宜しくお願いします」

 

そう言って進路指導室を後にしようとすると

 

「鹿野には言ったのか?」

 

「へっ!?・・・いえ、ここまで話しておいて何ですが、まだ確定した話ではありませんから」

 

「そうか、後悔だけはするなよ。ほら行った行った」

 

「えぇ、自分から話振っといてそれは無いでしょうよ・・・」

 

失礼しました、と言って 今度こそ進路指導室を後にする。

 

 

「千夏は当然として、大喜たちやカズを始めとした部の連中には言わなきゃな。

言うとしたら、インハイ終わったタイミングかねぇ。

はぁ、自分で決めた事とは言え気が重いぜ・・・」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「雛、何してんの?」

 

土下座の様な体勢をしている雛に声を掛ける。

 

「伸びをしながら感謝している。赤点回避、夏休み突入、呼吸の素晴らしさ感謝」

 

「これでインターハイに集中出来るね」

 

にいなの言葉に笑みが漏れる。

 

「その前に!今日の花火大会だけどね!!」

 

「夏の始まりだねぇ」

 

 

 

「ファイト大喜っ!!」

 

「一本一本集中しろっ、インターハイまであっという間だぞ」

 

「はいっ!」

 

 

 

ダムッ

 

「ダッシュダッシュー!」

 

「千夏止めろー!」

 

 

「千夏、足回復したみたいね」

 

「雪くんのお陰で色々吹っ切れたみたいだしね。こりゃ冬も待ち遠しいね」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「はいっ、片付けはキビキビ動く!!匡くんもノロノロしない!」

 

「何で急いでんの?」

 

「何でって、今日花火大会だからに決まってるでしょ!女の子は忙しいの!1回帰ってシャワー浴びて髪乾かして、浴衣着たらメイクして・・・」

 

「浴衣着るの?」

 

「何!?見せないわよ!!」

 

「いやそれは忙しいなと思って」

 

「そうなのよ!ひなっちと になになと集まって着付けするんだから。匡くんはいのたと行くの?」

 

「いや、今年は家族と」

 

「良いね!でも迷子とか心配だね、チビたちが3人もいると」

 

「それがさ、最近芽がしっかりしてきて、集まって遊んでる子達のリーダー的立場になってるって」

 

 

相変わらず弟妹たちの話する時が、1番いい顔するな。

 

 

「じゃあやっぱり急がないと!妹ちゃんたち待ってるよ!!」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「匡ー!行くわよー!」

 

「きょーにぃー早くー!」

 

「はいはい、色々準備があるんだよ」

 

「きょーちゃんは昔から用意がいいからね」

 

「・・・何でいんの?」

 

「あー、ひどい言い方ー。中学生くらいまでは、毎年一緒に行ってたのにぃ」

 

「でも・・・」

 

彼氏に変な誤解されたくないだろ。

 

そう思った時

 

「ほら行くわよ、咲季ちゃんの両親が先に場所取りしてくれるって言うから」

 

家族ぐるみなら良いって訳ね。

 

 

 

ー今年は家族と

 

ーいいね!

 

何か嘘ついたみたいになっちゃったな・・・

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

さて、千夏の着付けがあるから先に行けと母さんに追い出された俺は、着流し姿で1人屋台を見て回っている。

 

祭り特有の雰囲気に当てられて、ついつい普段なら買わないであろう狐のお面を買ってしまった。

 

「ま、同居していていつも一緒に出てるし、普通にデートの待ち合わせなんてした事ないから何か新鮮だな、こういうのって」

 

しかしやっばり人多いな、千夏からはもう出たってメッセージ来たけど、何処に居るのやら。

 

 

もう少し探して見つからなかったらメッセージ送るか、と考えている所に

 

「なぁ、さっき金魚すくいの屋台の前にいた子、めっちゃ可愛かったな!

 

「どう見ても待ち合わせだったけど、あんな可愛い子の相手ってどんな奴なんだろ?」

 

「いや、女友達ってセンもあるぞ」

 

そんな声が聞こえてきた。

 

もしやと思い金魚すくいの屋台を探してみると、千夏っぽい後ろ姿の女性が佇んでいた。

 

「・・・千夏?」

 

そう声を掛けると、振り向いた千夏に目を奪われた。

 

「雪・・・どうしたの?」

 

黙り込んだ俺を心配したのか、そう聞いてくる千夏に

 

「・・・俺の彼女が綺麗過ぎて言葉が出ねぇ」

 

そう言うと真っ赤になって狐のお面を奪い取り、顔を隠す。

 

「おい、俺のお面返せ」

 

「ダメ。私今、凄く恥ずかしいの」

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あっ、かき氷食べよう!」

 

「雪、何味にする?」

 

「あー、何でも良いけどレモンにするか」

 

「レモン!」

 

「千夏は?」

 

「私はブルーハワイ」

 

それぞれ頼んだものを受け取ると

 

「わぁ!」

 

と、目を輝かせる千夏。

 

「「いただきます」」

 

「夏を感じるねぇ」

 

幸せそうに食べる千夏をじっと見ていると

 

「一口食べる?食べ比べしよっ」

 

「なら遠慮なく」

 

「どう?」

 

「感想は後でな。ほれ、あーん」

 

「あーん、うん、これはこれで」

 

「さて、感想なんだが」

 

「うん」

 

「ぶっちゃけ市販のシロップなんて、味はどれも同じだぞ」

 

「え?」

 

「色と香りが違うだけで“その味だと誤認する”んだよ。人間の脳なんて簡単に騙されるからな」

 

「・・・雪、雰囲気台無しにしてるって分かってる?」

 

「へ?」

 

「それが本当だとしても、お祭りでそんな蘊蓄聞かされて楽しい訳無いでしょ!」

 

・・・ご尤も。

 

んー、俺の悪いクセだな、つい雑学ぶっ込んじまうのは。

 

「悪かった、次からは気をつける」

 

「分かればよろしい。!!牛串!牛串も食べよ!」

 

牛串の屋台の前で

 

「カルビ・・・タン・・・やっぱりカルビ・・・」

 

「ったく、両方買って半分こすりゃ良いだろ」

 

「美人のお姉ちゃん、優しい彼氏さんだねぇ。ロースも買ってくれるとお店にも優しいんだけどねぇ」

 

「ははっ、乗せられてやるよ!おっちゃん、ロースも1つ!!」

 

「お、毎度!太っ腹だねぇ、男前の兄さん!!ハイどうぞ」

 

「ほら、先ずはカルビからな」

 

「うん・・・美味しい!」

 

「どれ、じゃあタンはと・・・うっま!おっちゃん滅茶苦茶美味いぞ、これ!」

 

「ありがとね!またご贔屓に頼むよ、お2人さん!」

 

「はいよー、じゃあまたな、おっちゃん」

 

 

それからも色々と屋台を回り楽しんだ。

 

そんな時、ふと聞き慣れた声がすると思い目を向けると、西やんが他の3年たちと来ているのが見えた。

 

「西やん、野郎共だけで来てるみたいだな」

 

「・・・離れる?」

 

「構うこたぁねーよ。秋合宿に居た2・3年は皆知ってんだし、隠してる訳でも無いからな。

見られた所で、千夏に懸想してる奴が絶望するだけのこった」

 

「雪が良いんなら、私も良いよ」

 

「ま、鉢合わせたらそん時はそん時だけど、気にする必要も無いだろ。何なら手ぇ繋ぐか?」

 

そう言って手を差し出すと、迷わず繋いでくる。

 

そこへ

 

 

 

「雪先輩と鹿野先輩?」

 

「ん?おぉ、あかりんか。浴衣似合ってるな、1人か?」

 

「いえ、バド部の友達と!」

 

「そうか、あかりん可愛いんだから、なるべく1人で居ない方が良いぞ?」

 

「ふぇっ!?」

 

「・・・彼女の前で、またナチュラルに女の子口説いてるの?」

 

膨れっ面のジト目でそう言ってくる千夏。

 

「はぁっ!?何でそうなるんだよ!先輩として後輩を心配してるだけだろーが!!

てか何だよ“また”ってのは。俺がいつそんな事したよ?」

 

「去年も花恋に声掛けてた」

 

「あれはぶつかったからだろうが・・・」

 

「あのぅ・・・お2人はお付き合いされてるんですか?」

 

「ん?あぁ、去年の秋合宿からな」

 

「そうなんですね・・・あの、お2人は猪股先輩のお付き合いされてる方ってご存じなんでしょうか?」

 

おっと?これはまさか・・・と思い、千夏と顔を見合わせる。

 

「兵藤さん、それって・・・」

 

「はっ!?ち、違うんです、体育祭の時一緒にいた子がお付き合いしてる人が居るか聞いたら、“居るよ”って言われたので・・・」

 

赤くなってあたふたして答えるあかりんを見て、恋愛かどうかは置いといて好意はあると見て間違いないだろう。

 

そんな事を考えていると、千夏につつかれたので耳を寄せると

 

「どうする?彼女が居る事は知ってるみたいだけど」

 

「そうだな・・・なぁあかりん、今俺から聞いて良いのか?」

 

「その、1年女バドの中では誰なんだろうと噂になってしまってると言いますか・・・恋愛話なんてものは、私たちの年頃には興味のある話題ですし、それが部でもかなり強い先輩にそんなお相手が居ると知ったら格好の的になってしまって、事ある毎に話題になっているので・・・」

 

「そうか、ちょっと待ってな」

 

そう断りを入れてメッセージを送る。

 

ー今あかりんに出会って大喜の彼女が誰か知ってるか聞かれたんだが、話して良いのか?ー

 

ーえっ!?あ~、まぁ彼女は居るって答えてるし、バド部の2・3年は皆知ってるからなぁ。本人が聞きたいんなら言っても良いよ。判断は雪に任せるー

 

ーそうか。てかお前ら今何処に居んの?来てるんなら、顔合わせた方が手っ取り早いんだがー

 

ー射的の屋台の前に居るけど、沢山あるしどの辺かはー

 

 

「あれ?千夏・・・と鶴羽くん?」

 

「ほんとだぁ!髪もいつもと違うから、一瞬分からなかったぁ」

 

「皆っ」

 

「私たちも、さっきたまたま西田たちと会って」

 

「ってか、浴衣可愛いー!」

 

「ありがとう」

 

「髪も巻いてるの似合ってるよー」

 

「せっかくだし写真撮ろう!」

 

「いいねいいね、撮ろう。

 

 

 

おっふ、男子だけじゃなく女子にも人気だな、千夏の奴は。

 

 

「2人一緒に居るってことは、花火大会デートか?鶴羽」

 

「おう、そうだ。西やんは・・・さっきの女性陣の言い方だと、デートのデの字もなさそうだなw」

 

「そうだよ!悲しい野郎共が集まって来てるんだよ!!」

 

「な、なぁ西田。その2人がデートって本当なのか?

つまり鹿野さんと鶴羽が付き合ってるって事?」

 

 

おや?どうやらこの先輩は千夏に好意を持ってる様だ。

 

チラッと俺を見て、目で問いかけてくる西やんに頷いて返す。

 

「体育館組じゃない奴らは知らなかったな!鹿野さんと鶴羽は去年の秋合宿から付き合ってるぞ!!」

 

いや、西やんよ。言っても良いと返したけどさぁ、そんなデカい声で言う必要はないだろうよ・・・

 

さっきのあかりんの話じゃないが、この場でそれを言ったら

 

「えぇーっ!?」

 

「千夏の態度見てたら、何か良い事あったんだろうなって思ってたけど」

 

「まさか、年下の幼馴染みと付き合ってるのが原因だったとは」

 

「そんな面しr・・・大切な事、早く言いなさいよ!」

 

・・・こうなるよなぁ。

 

って最後の奴、面白いって言おうとしたな?

 

「女子は盛り上がってるけど、男子はお通夜状態だね。これから大変だよ?鶴羽くんは」

 

「ま、しゃーねーわな。“栄明のマドンナ”って他校にまでファンクラブがある相手が彼女なんだからよ」

 

「そんな鶴羽は、一部から“栄明の魔王”と呼ばれてるけどな」

 

やめろ西やん、それを言ったらまた俺への風評被害が。

 

「くっ、やはり魔王には勝てないのか」

 

「勇者は、勇者は居ないのか!?」

 

やっぱりか。

 

と言うか他力本願じゃなくて、せめて自分が勇者になるとか言う奴はいねーのかよ。

 

そんなアホなやり取りをしている所へ

 

 

「雪に先輩たち?」

 

そう声を掛けてくる大喜を振り返って見ると、雛と手を繋いでいた。

 

 

「おう、丁度良かった。あかりんよ、こういうこった」

 

大喜と雛が手を繋いでいる所を見て、呆けているあかりんにそう声を掛ける。

 

「え、あ、はい、蝶野先輩だったんですね」

 

動揺してんなー、まぁ仕方ないか。

 

「あ、いたいた、あかりー!」

 

そこへ一緒に来ているであろう女バドの1年ズがやってきた。

 

「あれ、先輩方も揃い踏みしてって、え?猪股先輩と蝶野先輩、手を繋いで」

 

「じゃあ“居る”って言ってたお相手って言うのは・・・」

 

「うん、蝶野先輩だって」

 

「「えぇーっ!?」」

 

うん、こっちはこっちで大騒ぎだな。

 

「つーか、去年の秋合宿にいた2・3年は皆知ってんのに、何で今まで聞かなかったんだ?」

 

「あ、雪先輩。和装もお似合いですね、じゃなくて、やっぱり先輩の恋愛事情なんて聞きにくいですし」

 

「いや、バド部のマネに聞けばすぐ答えてくれたと思うぞ。ってそういやその菖蒲とにいなちゃんはどうした?菖蒲に聞かれて皆で来る羽目になったって言ってただろ」

 

「場所取ったらもう動く気ないって守屋さんが言うもんだから、2人でそこで花火上がるの待ってる」

 

「なら早々に戻ってやった方が良いだろ。あの2人も可愛いから、変な奴らに絡まれない様にな」

 

そう言うと、無言で千夏が俺の腕をつねってくる。

 

「痛ってぇな!何でつねるんだよ、一般論言っただけじゃねーか!!」

 

「それは分かってるけど、雪が他の女の子を可愛いって言ってるのを見ると、やっぱり面白くないんだもん!」

 

 

 

「ねぇあかり、これって・・・」

 

「うん、雪先輩と鹿野先輩もお付き合いしてるんだって」

 

「やっぱりそうだったんだ!」

 

「部活中とかでも、何となくそんな雰囲気あったしね!」

 

「しかしそうなると、学校の全男子が落ち込むだろうね」

 

「え、どうして?」

 

「あのね、あかり。鹿野先輩と蝶野先輩は学校でトップレベルの人気者なんだから、その2人に彼氏が居ると知れたら大騒ぎな上にショック受けるに決まってるでしょ!」

 

「なるほど・・・」

 

 

 

何かあっちもこっちも大騒ぎになってんな、それより・・・

 

「なぁ、取り敢えず邪魔になるから移動した方が良いぞ。じゃあまた部活でな」

 

そう言って千夏の手を取って、さっさとその場を後にする。

 

「皆またね。雛ちゃんたちも、菖浦ちゃんたちの所に戻らなきゃだしね」

 

「あ、はい」

 

「じゃあまたね、ちーちゃん」

 

 

大喜と雛も、菖蒲とにいなちゃんのいる場所へ戻っていった。

 

 

さて、これで体育館組の1年と体育館組じゃない生徒にも俺と千夏、大喜と雛が付き合ってるのが広まるだろう。

 

俺の場合は体育祭の焼きそばパンの件があるから、寧ろ何で今まで広まってなかったのかが謎なまである。

 

ふと隣の千夏に目をやると、じっと何かの屋台を見ている。

 

そこにはオモチャ以上、本物未満って感じのアクセサリーが売られていた。

 

「何か気になるモンでもあったのか?」

 

「えっ!?あーうん、ちょっと。でも別に気にしなくて良いよ、行こっか!」

 

そう言いつつも目線は屋台を向いている。

 

「お姐さん、ちょいと見せてくんな」

 

「雪!?」

 

「はいよ、いなせなお兄さん!彼女さんへの贈り物かい?」

 

「ま、そんなとこ。で、何が気になってんだ?千夏」

 

「えっと、こ、これ」

 

おずおずと指差す先には、8月の誕生石をあしらったシルバーのリングがあった。

 

「これかい?どれ、手を出してごらん」

 

千夏の手を取り、サイズ違いのリングを嵌めていく姐さん。

 

「うん、このサイズだね」

 

よくよく見ると“左手の薬指”に嵌めていた。

 

「ちょいちょい、俺たちまだ高校生だぜ?お姐さんや」

 

「何言ってんだい兄さん!学校では兎も角、外にいる時は虫除けって言う周りに対するアピールになるんだよ!!」

 

・・・成る程、外で千夏が1人の時にこれをしていれば、少なくとも「パートナーがいます」ってアピールになるのか。

 

「よし、じゃあ俺も1つ貰うわ。1月ので宜しく!」

 

「はいよ!じゃあこれだね、手を出して」

 

千夏の時と同じ要領で嵌めてくれた。

 

指輪なんてした事ないから何か変な感じだな、と思いながら千夏を見ると、指に嵌まった指輪を見て嬉しそうにしていた。

 

まぁ、喜んでくれた様で何より。

 

 

  

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーヒュ~~~、ドッ、パァ~~~ン!!

 

「始まった・・・綺麗だね」

 

「音が身体に響くな」

 

「分かる」

 

 

高校生で見る最後の花火かぁ。

 

左手薬指のリングに触れ、隣に居る雪の顔を見てそっと手を握る。

 

 

 

この花火を一緒に見られるのは、多分来年を最後に暫く無いんだろうなぁと思って見ていると、千夏がそっと手を繋いできたので握り返す。

 

 

一瞬で消えてしまう花火、願わくば ““あなた””の隣は何卒、永遠に。

 





リングは雑貨店とかに売ってる様な、高くても五千円くらいのものです。
祭りの屋台に売ってる代物だから、リングの石は勿論レプリカです。

かき氷のシロップについては、かなり有名な話なのでご存じの方も多いと思ってます。

ちなみに作者は子供の頃、「トロピカルサイダー」なる屋台を横から見ると某メーカーのサイダーが置いてあり、それとかき氷のシロップと同じ様な物をブレンドしてるのを見て世界の真実に気付いてしまいました(笑)

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