アオのハコ ~鶴は鹿の元に舞い戻る~ 作:お面ライダーよっしー
本当はEP63の後に投稿しようと思ってたけど、本編が上手く書けないのでこちらを先に投稿しときます。
来客があるから、今日は勉強会に出られないと大喜たちに伝えて帰宅した雪。
そして千夏にも家庭の話と言う事で、終わったら連絡すると断りを入れた。
鶴羽家を訪れるのは・・・
時は少し遡る。
さて、今日はウチに来客があると言う事で、勉強会には参加出来ない事を大喜たちに話した。
しかも俺の進路に関わる事なので、流石に現段階では千夏にも教える事が出来ないから終わったら連絡する旨を伝えた。
・・・しかしまぁ、連絡貰った時は本当にビックリしたわ。
一応中学は向こうでも名門/強豪と呼ばれる学校に通ってはいたが、高校は日本を選んだから俺の名前なんか覚えちゃいないだろうと思っていたんだがなぁ。
たまたま日本のインハイやウインターカップの映像を観た中学時代のバスケ関係者が、「あのユキ・ツルバが日本でも活躍していて、ハイスクール・チャンピオンになっている!」って大学側の知り合いに連絡したらしい。
それで高2の今の時期なら進路が決まってないだろうと言う事で先ず栄明に連絡が行き、学校から母さんに事情を話すと了承を得られたので、アポイントを取ったとの事。
その話を両親から聞いた俺は、バスケをやる為にアメリカの大学へ入学する方法を検索した。
結果から言えば、英語力に問題は無い・成績も学年でも上の方・部活で結果を出している、と条件自体はクリアしていると思っている。
とは言えあくまで簡易的なものだから、突き詰めればまた変わってくる所もあるだろうが。
まぁ、その辺は話を聞けば分かると思う。
「ただいま」
「お帰り。もういらしてるわよ」
取り敢えず荷物を部屋に置いてから、リビングに入る。
そこには現役でプロやれんじゃねーの?と思うくらいに体格の良いスーツ姿のアメリカ人と、中肉中背の日系人と思しき2人が揃っていた。
「初めまして、鶴羽雪くん。私は通訳兼、アシスタントのアラン菊川です。そしてこちらはスカウティング担当の」
『マイケル・ブライアントだ。宜しく、リトルモンスター』
『その通り名、まだ残ってんの?もうリトルじゃないから勘弁して欲しいんだけど』
『ハハハ、あの頃のキミのインパクトはかなりのものだったからね!今でも覚えてる人は沢山居るよ』
と、ウインクしながら言ってくるブライアントさん。
「雪くん、一昨年までアメリカに住んでいただけあって、会話は大丈夫そうだね?」
「えぇ。特に問題はないと思います。それで今回ウチに来られた理由なんですが」
俺がそう言うと、2人が目を合わせて頷く。
「単刀直入に言います。鶴羽雪くん、大学はウチに来ませんか?」
そう言いながら名刺を差し出してくる2人。
そこには“UNLA”と書かれていた。
「本当にUNLAからのお話だったんですね。
正直、似た名前の大学と聞き間違えたのかと思いましたよ。
そんな超名門校からのスカウト、と考えて良いんでしょうか?
確か向こうの大学でバスケやるには、色々と条件が厳しかったと記憶してるんですが」
『その辺の話もする為に私が来たんだ。
確かに色々な条件はあるが、こちらでキミの成績や実績、人柄について高校に質問リストを送り、返ってきたリストをチェックした所、各種条件はクリア出来ると判断した』
「そこで来年の9月に、こちらの新入生として入学する事を提案したいと思っています。
勿論これは最短ルートの話で、授業のカリキュラムの都合と日本の卒業時期を鑑みると、4月入学制度を利用した方が良いかも知れませんけどね」
・・・今から1年ちょっとで、高3でやる分の授業内容を終わらせる必要がある、か。
その辺の調整は学校に丸投げすれば、ある程度の補習と課題の提出、定期試験相当の試験で点を取れば出来ない事は無いのか?
そうなると勉強で時間が取られてしまう事になり、今年のインハイはともかくウインターカップと来年のインハイに出られるかは、微妙な所だな。
黙り込んで思案に暮れていると
「雪、考えるのは後にしなさい」
母さんに声を掛けられてハッとする。
「あ~、失礼しました。何分突然の事で驚いたってのが本音で・・・」
「えぇ、それはそうでしょう。我々としても今日の所はご挨拶と基本的な提案の為にお伺いした訳ですから」
『ユキ、さっきも言ったが私たちはキミの実力や人柄には、何の問題も無いと思っている。それ処か出来るなら今からでも来て欲しいくらいに惚れ込んでいる!』
『ブライアントさん、ウチの子はそこまでのものなんでしょうか?』
『勿論です!我が校でトレーニングを積めば、日本人初のドラフト1巡目1位も夢じゃありません!』
「お母様、私から見ても息子さんの才能、と一言で片付けるのは失礼かも知れませんが、彼のそれは日本では突出しています。いえ、もしかしたらアメリカでも五指に入るかも知れません」
・・・褒め過ぎじゃね?流石に照れるんだが。
「雪、あんたは今の時点でどう思ってんの?
深く考えなくて良いから、行きたいか行きたくないかで言ってみなさい」
行きたいか行きたくないか、だけで考えるなら
「行きたい。俺の目標はNBAプレーヤーだ。そこに行く為の道標になるなら、お世話になりたい」
「そう、分かった。細かい事はこれからの話し合いで詰めていくとして、行くと言う事で決めて良いのね?」
「あぁ、条件がクリア出来ない事があるなら仕方ないけど、基本行くつもりでこれからの事を考える」
「分かりました、私たちから大学側に対して来る意思があると伝えます」
菊川さんがそれをブライアントさんに伝えると
『ユキ!私たちは1度ステイツに帰るが、インターハイを観にまた来るから、良い所を見せてくれよ?
これからキミの学校にもアポを取って話しに行かなきゃならんし、忙しくなるぞ!』
『ハハッ、優勝メダルを掛けてあげますから、期待して待っててくださいよ!』
『楽しみにしてるよ、ユキ!』
「今日は良い話が出来ました。これからも良き関係が築ける事を願います」
「えぇ、こちらこそ宜しくお願いします」
「カリキュラムについては、俺の方からも聞いてみますね」
話し合いを終えた2人は帰っていった。
その後ろ姿を見送った後、千夏に連絡しようとスマホを手に取った時
「あんた、千夏ちゃんにいつ言うつもり?」
「・・・まだ本決まりじゃないからな。つっても余り遅くなると言いにくくなるし、どうすっかなぁ・・・」
「何にせよ向こう行く事になれば、また暫くは離れ離れになるんだから、後悔する様な選択だけはしない事ね」
「分かってるよ」
「千夏ちゃんみたいな良い子、そうそう居るもんじゃないんだから、あんたがしっかり捕まえときなさいよ?」
「それも分かってるし、他の誰にも渡す気はねーよ」
ーま、俺が愛想尽かされなきゃって話だけどな。
そう言って千夏ちゃんにメッセージを送る息子を見て
ーこの子も本当に大変な道を選んだものね。
でも、決めた事は必ずやり遂げて来たんだから、この件もきっとやり遂げて良い結果をもたらすだろうなー
と漠然と思った。
「来年にはまた日本とアメリカで離れ離れになると知ったら、千夏ちゃん大丈夫かしら・・・」
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ー話は終わった、今何処だ?ー
雪から「今日は来客があり、家庭の話になるから悪いけど帰宅は連絡あるまで待っててくれ」と言われていた。
“家庭の話”と言われて、そこに私が入る事が出来ないのは残念に思う。
勿論、雪も雪の両親も私を除け者にしてる訳じゃないのは分かってるし、私は鹿野家の人間であって鶴羽家の人間じゃないのも分かっている。
「でもなぁ・・・何か疎外感があると言うか」
「ん?疎外感がどうしたって?ナツ」
「雪の家に来客があって、家庭の話だから悪いけど帰るの待っててくれって言われててね。それでちょっとだけ寂しいなぁ、って」
「そっか。それで疎外感って訳ね。もしかしたら大学やBリーグからのスカウトだったりするかもよ?幾ら同居している恋人と言っても、そういう話はある程度決まってからじゃないと話せないとか、制約があるのかも」
「そうかも知れない・・・仮に大学からのスカウトなら、雪は何処に行くんだろう」
「ナツも推薦でしょ?秋に面接だっけ?」
「うん。成績や部活の実績に関しては問題は無いだろうって言われてる。後は面接での受け答え次第かな」
「しかし元治大学の推薦とはねぇ・・・」
「去年のインハイ優勝やウインターカップ出場なんかを評価してくれて、今年のインハイは県予選で負けたのに推薦してくれたみたい」
「じゃあ最後のウインターカップは、何がなんでも出場しなきゃね!」
「うん!・・・あ、返信しなきゃ」
ー今、図書室前で渚と話してた。そろそろ帰るねー
「これで良し、と。じゃあ渚、私帰るね」
「はいはい、愛しの旦那様の元に急ぎな」
「////だ、旦那様って・・・でも、いつかはそう呼ぶ事になるのかな?」
「お?奥手のナツにしては前向き発言じゃない?」
「そういう渚こそ、いずれは“鷹尾渚”になりたいんじゃないの?」
「っ!?////ちょっとナツ!」
「ふふん、いつもからかってくる渚へのお返しだよ。へぇ~?真っ赤になっちゃって、可愛い」
「も~、あんたこそ“鶴羽千夏”になりたいんでしょうに!」
「へっ!?・・・////」
渚のその一言でそうなった自分を考えたら、想像以上に恥ずかしく、そしてそれ以上に嬉しさが込み上げてきた。
「・・・やめよう渚。心臓が保たない」
「言い出しっぺはあんただけど、同意するわ・・・」
そして2人で出した答えは
「「よし、帰ろう」」
だった。
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「ただいま」
「おう、おけーり」
「お帰りなさい、千夏ちゃん。ごめんね、家の用事だからって除け者にしたみたいで」
「いえいえ、流石にそんな事は思ってないですから、気にしないでください(;゚∀゚)ノシ」
「ありがとね。部活もテスト休みで帰りが早いから、まだ夕飯の準備出来てないの」
「あ、じゃあ私手伝います!」
「良いの?テスト勉強あるんじゃないの?」
「図書室でしてきましたし、後は寝る前に見直しするくらいなので大丈夫です」
「そう?それならお願いしようかしら。雪はどうする?」
「ん~、ちょっと考える事があるから部屋に居る。出来たら声掛けてくれ」
「・・・そう、分かった」
母さんの問いに対し、そう言って部屋に戻る。
「UNLAか、NBA目指すならこれ以上無い選択だよな。ただそうなると最低4年・・・いや、それでNBAに行くとなったら何年向こうに居る事になるか分かんねぇ。
その間ずっと千夏を待たせる事になるのか?
いや、待たせて良いのか?
そうなったらそれだけの期間、千夏の人生を無駄にさせる事になる。
それなら千夏の卒業か、俺の渡米に合わせて・・・」
そこまで考えた所で、ハッとする。
「いかんいかん、何考えてんだ俺は」
・・・でも、俺の進路についてそれを伝えた時、千夏はどう思うんだろうか?
親の都合で渡米した子供の時と違い、今度は俺が自分の将来の為に俺自身が決めた渡米になる。
6年ぶりに再会して、今では恋人関係にまでなれたけど、また日本とアメリカで離れる事になる。
それで「待っててくれ」なんてのは、あまりに俺にとって都合が良過ぎるんじゃないのか?
そんな簡単に答えが出ない事が、ぐるぐると頭の中で渦巻いていた時
コンコンコンと、ドアがノックされる。
「雪、夕飯の準備出来たよ」
千夏が晩飯が出来たと呼びに来てくれた。
「あぁ分かった、今行く」
ドアを開けると千夏がドアの横で待っていた。
じっと俺の顔を見つめてくる。
「ど」
うした?と口を開く前にふわ、と風が吹いたと思うと抱き付かれる。
「顔・・・向こうでの事が吹っ切れてなかった時と同じ様に見える。今日の話で何かあった?」
・・・本当にスゲーな、この女(ひと)は。
「ま、あったっちゃあった。まだ言えねぇんだけど、なるべく早いうちに話したいと思う」
「そっか・・・分かった、待ってる」
そう言うが早いかパッと離れて
「ホラ、ご飯行くよ」
そう言って俺の手を引いてリビングに向かう千夏。
そうだな、未来(さき)の事は今考えても仕方ねぇ。
1つだけ言えるのは、俺はこの手の温もりの持ち主を、何があっても手放したくないって事だ。
これから先の事を考えるあまり、一瞬不穏な考えが頭を過った雪ですが、流石に思い直した様です。
そして何も知らないのに、千夏は雪のほんの些細な表情の変化にも気付いてしまうくらい、雪の事をよく見てます。
見てたからって、分かるか普通?ってレベルですが。
そして3年時の夏に前倒しで海外の大学に入学と言うのは、弱ペダの巻島さんを参考にしてます。
現時点で雪を行かせるつもりではありますが、本当に行くかどうかは今後の展開(作者の思い付き)次第で変わるかも知れません。
スカウトの名前の元ネタは・・・まぁ安直だし、直ぐ分かりますよね(笑)
おまけ
ー鷹尾渚になりたいんじゃないの?
たまたま偶然、図書室から出ようとした時、鹿野先輩のその言葉を聞いて固まってしまった。
鹿野先輩、何言ってんのぉおお~!?
渚さんも真っ赤になってるしぃ~~~っ!!
ふと周りを見渡すが、誰もこちらに気付いてない様でホッとした。
でも、やっぱり恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよおぉおおお~~~っ!!////
流れ弾くらって真っ赤になって悶絶する鷹尾くんでした。