ホグワーツ教師 ロード・エルメロイII世 作:木材
細かい設定はあまり考えていない見切り発車です。
ノリと勢いで書いてます。
File.1
「……お話は理解しました、ダンブルドア教授」
ホグワーツ魔法学校校長アルバス・ダンブルドア。現代において最も偉大な魔法使いと言われる彼の前には、長髪の不機嫌そうな男性。
「どうじゃ、わしの頼みは聞いてくれるかの」
「…今の私があるのは、貴方のお力添えが要因の一つだ。その恩を返すためにも良い返事をしたいところですが、今の私にも立場があります。簡単に返事をするわけにはいかない」
「わかっておる。
「無論、仰る意味はわかっております。日刊預言者新聞で先日報じられたことでしょう?」
男性は新聞を応接デスクに広げる。
そこには一人の少年と『嘘をついた男の子』という文字。
「先日、
不機嫌そうにため息を吐く男性は葉巻を取り出して火をつけた。一口煙を吸い込み吐き出すと、頭痛がするようにこめかみを指で抑える。
「全く…臆病な男だと思っていたが、まさかこれほどまでとはな。ここまで大々的に否定しては逆効果だろうに」
「ハリーを擁護したことで、わしもファッジから目をつけられておる。わしが魔法省大臣の地位を狙っていると考え込んでおるのだ」
「……それで私に声がけをしたと?」
葉巻の灰を灰皿に落とすと、鋭い視線をダンブルドアに向ける。
視線を向けられたダンブルドアは、ゆっくりと頷いた。
「うむ。おそらく来年度、ホグワーツに魔法省からの監視が入る。そしていつになるかはわからんが、わしはホグワーツから去ることになるじゃろう。一時的じゃがな。その時、生徒達の相談役兼指導者が必要なのじゃ。君の指導力は聞いておる。生徒達の力になってくれんか」
「…今の教師陣だけでは、不足だと?」
「本来なら不足ではない。しかし魔法省が干渉してきた時、彼らも大きく動きを制限されることになるじゃろう。そんな時、魔法省にもホグワーツにも縛られず生徒の力になれる存在が必要なのじゃ」
魔法省がどの程度干渉してくるかはわからないが、魔法省大臣であるコーネリウス・ファッジの強硬っぷりを見る限り、どんな手段も厭わないほどだろう。それこそ、平然とホグワーツ教師を解雇するくらいはしそうだと男性は頭を痛めながら考える。
暫しの沈黙の後、男性は口を開く。
「条件があります」
「うむ」
「まず、私がホグワーツ教師に加わるのはあくまで
「その心は?」
「貴方が直接私を雇えば、魔法省は私を貴方の手のものと考えるでしょう。貴方の目的を考えれば、私が貴方の手のものだと判断されるのは得策ではない。それに、私の本業は
「いいじゃろう」
普通に考えればカレッジの教授である男性に魔法省から声がかかるとは考えにくいが、ダンブルドアであればそのあたりの裏工作も可能だろうと判断してのこと。そもそも、この話は本来男性には何一つメリットがない。このくらいは自分でどうにかしてもらわなければ困る。
「もう一つは、私がホグワーツに赴く際に私の内弟子の同行を許可していただきたい」
「内弟子?」
「ええ、とある縁で内弟子にしまして。知っての通り、私は魔法使いとしての腕は平凡だ。闇祓いのように優れた戦闘能力は有していない。闇の魔法使いと戦う事になった場合、私が生き残ることは厳しい。私の内弟子は魔法使いとしての知識はともかく、戦闘においては無類の強さを誇る。仮に例のあの人が復活したと仮定するのなら、すでにイギリス全域に安全地帯などない」
「うむ、いいじゃろう。君の内弟子を編入生としてホグワーツで過ごせるようにしよう」
「この二つの条件を飲んでくださるのであれば、お受けしましょう」
「ありがとう、ウェイバー」
男性…ウェイバー・ベルベットは相変わらず不機嫌そうな表情をしながらも頷くのだった。
「あの、師匠」
フードを被った少女、グレイの言葉にウェイバーは重苦しく視線を上げる。
「先程の方は…」
「…私が通っていた魔法学校の校長だ。なかなか厄介な案件を持ってきてな」
「魔法、学校。拙がいる時計塔ではなく?」
「私や君が今いるのはカレッジだ。今話に出したのは、所謂魔法学校のグラマースクールだ。本来、魔法使いはグラマースクールを出た後に就職するかカレッジに進むかの二択になる。大半は就職だが、私のようにカレッジに進み魔法を研究する者もいる。ただカレッジの場合、ホグワーツだけでなく世界中から来るため、イギリスのハイスクールを知らない者も多い。君やライネスがカレッジにいるのは少々特殊な例だ」
ウェイバーは執務室のデスクに深く腰掛けると、真剣な表情をグレイに向ける。
「レディ、先日新聞で報じられた件は知っているかね」
「…嘘をついた男の子のこと、ですか?」
「その件だ。恐らく私は、来年度にそのハイスクール…ホグワーツで教鞭を取る事になる」
「教室は、どうなるんですか?」
ウェイバーは現在、カレッジで一つの教室を有している。その教室で講師となっている以上、ホグワーツで教師をやる場合はその教室を空けることになる。そうなった時、教室に所属する生徒はどうなるのかとグレイは考えた。
「シャルダン翁に代理を頼んできた。来年度最初からホグワーツに行くかはわからんが、いつ私が離れてもいいようにしてある。問題はない」
ウェイバーは葉巻を取り出して火をつけた。
「恐らく魔法省からホグワーツへ行くように命じられる。その時、君にもついてきてほしいのだ。仮に、例のあの人が復活したのだとしたら…私だけでは自分の身を守るには不足だ。ついでに、君も魔法の基礎を学ぶ良い機会だ。ついてきてはくれないだろうか」
「拙でよければ、喜んで」
「ありがとう、レディ」
柔らかく笑うウェイバーに、グレイも優しく笑い返す。実際招集されるまで少し時間がかかるだろうが、グレイはまだ見たことのない魔法学校に少しだけ浮き足立つような思いになった。
「ところでレディ」
「はい、師匠」
「君は例のあの人について、どこまで知っている」
「拙が生まれた時には、既にいなくなったと…なので、あまり詳しくは知りません」
「だろうな。あれだけの僻地では、彼の影響もさして大きくなかったのだろう」
ウェイバーは杖を振ると、イギリスの地図を呼び寄せた。
「例のあの人…彼は、ヴォルデモート卿と名乗っていた闇の魔法使いだ。非常に強力な魔力を有し、多くの魔法使いを葬ってきた」
ウェイバーが杖で地図をなぞると、イギリス国土の一部が黒く染まっていく。どうやらこれはヴォルデモートが制圧したイギリス国土を示しているらしい。
「どうして、そんなことをしたんですか?」
「どうやら彼は非魔法族…マグルを毛嫌いしていたらしく、非常に過激な純血主義だったらしい。イギリス魔法界を彼の色で染め上げる。そんなフィクションのような思想を掲げて動いていたのだよ」
「純血主義…」
純血。それは魔法族のみの血を有する者を指す言葉。魔法族の両親から生まれた者は純血というカテゴリになり、中にはその事実を誇りに思う者もいる。
だが魔力を有する者は非魔法族の中からも生まれることがある。そういう者は『マグル生まれ』と呼ばれ、一部の者からは嘲笑の対象になることがあるとか。
ヴォルデモート卿はマグルもマグル生まれも心から嫌悪し、魔法族のみで世界を構築することを本気で実行する気だった。意に沿わない者は容赦なく殺し、その強大な魔力を持ってイギリス魔法界を支配しようと試みていた。抵抗する者も最初は多数いたものの、彼の強大すぎる力を前にたくさんの者が散っていった。
「そして最終的には、ポッター家の襲撃時にその身を散らしたというのが、ヴォルデモート卿の顛末だ」
「…でも、その人は戻ってきたと師匠は考えているんですよね」
「……ああ、恐らくだがな。ここまで魔法省が過激に反応しているのを見るに、間違いはないだろう。仮に違ったとしても、何も備えないよりはマシだ」
「その人が戻ってきたことと師匠がホグワーツに呼ばれるのは、どんな関連性があるんですか?」
「君には事情を知っておいてほしい。今から事情を説明しよう」
ウェイバーはグレイに事の経緯を説明する。
かつて存在したヴォルデモート卿。そのヴォルデモート卿が復活したとハリー・ポッターが広め、ダンブルドアがハリーのことを支持していること。そしてその事実を認められない魔法省大臣が二人のことを目の敵にしていることを説明した。
「それで師匠がホグワーツに…」
「一応、魔法省からの招集ということになるだろう。現状、魔法省とホグワーツの対立に我々カレッジは中立。権力としては魔法省が上である以上、ホグワーツに監視の目を出すことになるが…魔法省の人材も無限ではない以上、何かしらの理由で外部から講師を呼ばれることになるだろう。そこで私が呼ばれるかどうかは本来不明だが…ダンブルドア教授がそのあたりをどうにかするだろうな」
「…それで、師匠はホグワーツでどうされるのですか?」
「別にどうもしない。頼まれたことをやるだけだ。ホグワーツの生徒に魔法を教えるさ。どの科目になるかは…魔法省次第だろうが」
「大方、『魔法理論』か『錬金術』あたりだろうがな」と呟いてウェイバーは葉巻の灰を落とす。
「そういうわけでグレイ、ここまでの話を聞いて心変わりはあるかね?今ならまだ断れるぞ」
「大丈夫です、師匠。拙も師匠と一緒に行きます」
「毎度のこと助かる。では、詳細については追って伝えるとしよう。君は礼装の手入れに戻りたまえ」
「はい、師匠」
そう言ってグレイは礼装の手入れに戻っていった。
ホグワーツがどんなところなのかはわからない。だが自分の生まれた村と時計塔以外に長期間滞在したことのないグレイは、ホグワーツという魔法学校に行けることが少し楽しみだった。
*
「まさか、新学期からとはな」
ロンドンの街をグレイと歩きながらウェイバーは呟く。
ウェイバーの予想通り、ウェイバーは魔法省からホグワーツに行くように依頼された。ただ想定よりも早く、新学期からホグワーツに行くように依頼が来たため、様々な予定を前倒しで進めざるを得なくなった。
それらについても一通り済ませられたため、現在はグレイがホグワーツで過ごすためのものの買い出しに出ているところだった。
「師匠の想定よりも早かったですね」
「可能性としてはあると思っていたがね。このタイミングでホグワーツの魔法理論教授が退職になったらしい。これは魔法省云々は関係なく、元より決まっていたことらしいがな」
「その枠に師匠が?」
「ああ。ダンブルドア教授から話は事前に受けていたが、あくまで今回の私は魔法省からの監視ということになっている。カリキュラムについても魔法省指定のものになっているのだが…」
やや不機嫌そうにため息を吐くウェイバーにグレイは首を傾げる。
そんなグレイに気づいたウェイバーは首を振り、一つの店の扉を開けた。店は『漏れ鍋』と書かれており、中には店主と何人かの客が思い思いに過ごしていた。
「いらっしゃい。おっ、エルメロイの旦那じゃねえか!」
「二世だ、二世をつけてくれトム」
「まーだ言ってんのかい。ま、おまえさんがそのほうがいいならそう呼ぶけどよ。お、隣のお嬢さんは?」
「私の内弟子だ。諸事情でホグワーツに行くのでな。内弟子の買い出しに向かうところだ」
「じゃあダイアゴン横丁か。行ってきな、お嬢さんも楽しんでな!」
「はい、ありがとうございます」
店主に会釈をして二人は漏れ鍋を抜ける。
漏れ鍋を抜けた先は、たくさんの人が歩くダイアゴン横丁だった。たくさんの人を見てグレイは思わず目を見開いた。立ち並ぶ店もロンドンやグレイの故郷では見ることができないような珍しい風貌をしており、どの店も魔法に関連する道具を取り揃えている。たくさんの人に賑わうダイアゴン横丁を見て、グレイは思わず顔を綻ばせた。
「わぁ…すごいです」
「ここはダイアゴン横丁。魔法道具の買い出しはここが一番品揃えが良い。グレイに魔法道具の買い出しを頼んだことはなかっただろうが、今後買い出しに来ることもあるだろう。覚えておくといい」
「覚えておきます、師匠」
「さて…残り、買っておくべきものはなんだったかな?」
ウェイバーの問いかけにグレイはメモ帳を取り出す。
「えっと…ローブ、教科書、魔法薬学関連道具…です」
「薬学道具は数が多い。帰る前にしよう。ローブは既に注文してあるから取りに行くだけだ。そうなるとあとは教科書だけだが…レディ、君はフクロウなどの使い魔を持っていないだろう。フクロウも買っておくといい」
ホグワーツではフクロウを使って手紙のやり取りをする。使い魔としての用途云々もあるが、それ以上に情報のやり取りをする上でフクロウの存在は非常に役立つ。いたほうがいいだろうとウェイバーは判断した。
そこでふと、ウェイバーの視界に一つの店が入る。その店を見て、グレイの魔法道具について思い出した。
「そういえばグレイ、君の杖は確か…」
「あ、はい。母のお下がりです」
「…ふむ、この際だ。自分の杖を買うといい。自分の杖かそうでないかで大きく使い心地が異なる」
「杖、ですか」
「杖ならばオリバンダーの店で買える。ちょうど近くにあることだ。寄るとしよう」
ウェイバーについていき、オリバンダーの店に入る。
店の中は無数の箱が敷き詰められており、やや薄暗い。そして二人が入ってきた音に気がついて、店の奥から白髪の老人が出てきた。
「おや、これはこれは。ロード・エルメロイ二世ではないか」
「お久しぶりです、オリバンダー翁」
「久しぶりだね。今日はどうした。杖の修理かね?」
「いや、私ではない。今日は内弟子の杖を買いに来た」
グレイは老人…オリバンダーに頭を下げる。
オリバンダーはグレイの様子に人の良さそうな笑みを浮かべると、早速近くにあった箱を手に取った。
「なるほどなるほど。内弟子とはね。ならば、まずはこの杖を試してみてくれ。先日作ったばかりの新作でね。スギの木とユニコーンの鬣を使っておる」
杖を渡されたグレイはどうすればいいのかわからずウェイバーを見る。視線を向けられたウェイバーは杖を指差しながら言った。
「まずは振ってみるといい。呪文はいらない。とりあえず振るだけでいい」
そう言われたため、グレイは何も考えずとりあえず杖を振ってみた。すると飾ってあった花瓶が砕け散り、花が床に転がる。その様を見てグレイは唖然とし、どうすればいいかわからずオドオドしてしまう。
「おっと、合わんようじゃな」
オリバンダーは店の奥へと戻り、また箱を物色し始める。
杖を探してもらっている間にウェイバーは杖を振って砕けた花瓶と花を片付けた。
「すみません師匠…」
「気にするな。合わない杖だとあんなもんだ。私の時は窓ガラスが全て砕け散ったりもしたのだから、私に比べれば大したことではない」
「す、すごいですね…」
「お嬢さん、ちょっといいかね」
「は、はい!」
店の奥からオリバンダーの声だけが響く。
「お嬢さんはどこ出身だい。出身地と杖の材質に直接的な関係はないが、縁のある材料だと合うこともある。直感で探すよりもいいかと思ってね」
「あ…拙、拙はウェールズ出身です」
「ウェールズか!特徴的な訛りだと思ったよ。さて、ウェールズとなると…」
そうして少しの間を空けて、オリバンダーはいくつかの箱を持って戻ってくる。オリバンダーの中でいくつか杖を見繕ってきたのだろう。
「いくつか杖を持ってきた。試してみよう」
「どんな材質を使ってるのですか?」
「これはハシバミの木にユニコーンの鬣、こっちはカバノキにドラゴンの心臓の琴線、これはイチイの木にユニコーンの鬣で最後にこれはトネリコの木にドラゴンの心臓の琴線じゃ。さあ、どれから試す?」
並べられた杖を前にグレイは杖に視線を巡らせる。そしてそのうちの一つ…『トネリコの木』と『ドラゴンの琴線』を使った杖を手に取った。
すると周囲の空気が変わる。春風のように暖かい風が店全体を包み込み、草原のように爽やかな空気に満たされた。
「これは…」
「杖が君を選んだようじゃ」
「杖が、拙を?」
「誤解されがちだが、杖はただの道具ではない。杖には意志があり、杖が魔法使いを選ぶのじゃよ」
「レディ、君は杖に選ばれた。今から君がこの杖の主人だ」
微笑みながら言うウェイバーの言葉を耳にしながら、グレイは手にある杖を見つめる。母の杖とそう大きな違いがあるようには思えないが、確かに手に馴染むような感覚がある。
「思ったよりも早く見つけられたな。苦労する時は相当長引くんじゃが。のう、ウェイバー」
「…私の時は、一時間かけても見つからなくてな。結果、このアシの木とユニコーンの毛を使った杖が私を選んだ」
「もっとかかった人もおったがの。早く見つけられるに越したことはない」
「ご尤もです。では、会計をお願いします」
ウェイバーが料金を払う間もグレイは手に馴染む杖を見つめていた。この杖が自分を選んだという実感が少しずつ湧いてきて、なんとなく嬉しさが込み上げてくるのを実感する。
「気に入ったかね」
そうこうしているうちにウェイバーが戻ってくる。
ウェイバーの言葉にグレイは頷いた。
「はい。師匠、ありがとうございます」
「それは何より。だが私に礼を言う必要はない。代金は全て魔法省の経費として落とされる。私の懐は微塵も痛んでいないのだから」
「いえ、お金の話ではなく…拙をここに連れてきてくれたことです」
「礼を言うには、些か早すぎるなレディ。その言葉はホグワーツでの生活が気に入った時に聞かせてもらおう」
ウェイバーの言葉にグレイは頷く。
杖を自身の懐に仕舞うと、ふと一つのことに気づいてウェイバーに問いかけた。
「あの、師匠」
「どうした」
「ホグワーツはどんなところなのですか?その、概要は教えてもらいましたけど詳しいことは聞いてないので」
「む、そうか。うむ……どう、説明するか少し困るな」
グレイの問いかけにウェイバーは腕を組んで考え込む。実情を知らないグレイからしたらどういうことなのだろうと思うが、ウェイバーからしたら実に答えに困る問いかけだった。
「…そうだな、説明が難しいんだが……実に不可思議な場所だ。動く階段があるだけでなく、誰も知らない部屋もある。全ての部屋を把握している者は、おそらく教師陣を含めて誰もいないような場所だ」
「???」
「あまり大した説明ができず申し訳ないが、一言で説明するのは難しい場所なのだ。何、いけばわかるとも」
「…はい、楽しみにしています。師匠」
「さて、まだ買い出しは終わっていない。次のものを買いにいくとしよう」
ウェイバーの言葉に頷いたグレイは、ウェイバーと共にダイアゴン横丁の雑踏へと足を踏み入れていくのだった。
*
買い物を終えた二人は、荷物を持ってキングズ・クロス駅に訪れる。
グレイは買った物が多いこともありカートを押しているが、予め必要な物は粗方送っておいたウェイバーはやや大きめのトランク一つだった。
「さて…頃合いの時間だ。グレイ、そろそろ汽車に乗るとしよう」
「汽車……ですか?」
グレイは上からホームを見渡すものの、汽車は見受けられない。何せ現代では汽車はほとんど使われておらず、鉄道といえば電車が主体だ。そんな物珍しい汽車があればすぐに気づくだろうが、ホームを見渡す限りそのようなものはなかった。
「魔法使いが使う汽車だ。マグルの電車と同じホームにはない」
「あっ…そうですよね」
「ホームにはこれから向かう。これが切符だ、無くさないように」
手渡された切符を受け取ると、そこには『9 3/4線』という奇妙な文字が書かれていた。意味がよくわからずグレイは首を傾げるが、ウェイバーは気にすることなく足を進め始めた。
グレイはそのままウェイバーに着いて行くと、9番線と10番線を隔てるように立っている柱の一つの前で足を止めた。
「グレイ、あの柱に向けてカートを押すのだ」
「えっ…」
ウェイバーが指差したのは、どう見ても普通の柱。レンガ造りでとても何か細工がされているようにも思えない柱を前に、グレイは戸惑ってしまう。
「あの…師匠。柱…ですよね」
「ん…そうか。初めてだと怖いか。ならば、私が共にカートを押そう」
そう言ってウェイバーはグレイのカートに手を添える。ウェイバーが頷いたのを見ると、グレイは意を決してカートを柱に向けて押していった。
衝撃はない。
ただ一瞬だけ視界が暗転したと思ったら、すぐに明るくなった。周囲を見渡すと、先程までいたキングズ・クロス駅ではない場所にいることを理解する。汽笛の音が聞こえてきて、そちらに向けてグレイが足を進めると、そこには黒塗りの立派な蒸気機関車が停車していた。
「わあ…」
「ここが9 3/4番線。そしてあれがロンドンからホグワーツへ行く方法の一つ…『ホグワーツ特急』だ」
グレイも知識として蒸気機関車は知っている。しかしグレイの故郷に汽車はない。ロンドンから電車を乗り継ぎ最寄りのバス停まで行ってそこからさらに歩く必要があるだけの僻地だが、そんな僻地にすら電車があるのだ。汽車などほぼ絶滅したに等しい。(余談だが、ウェイバーはその距離を歩いただけで体力を使い果たしていた。)
「すごい…!ちゃんと使える蒸気機関車って初めて見ました!」
「電気が実用化され、鉄道に電車が使われるようになった以上、コストパフォーマンスのいい電車が採用されるのは自明だろう。そうなると、現代において蒸気機関車を使っているのは恐らくテーマパークや歴史的価値のあるものだけと言っていい。現代においては、現存し実使用されている、希少な蒸気機関車の一つであることは間違いないだろう」
一つ講義しておこう、という言葉を挟みながらウェイバーは話し始める。
「魔法使いにとって、生活の中で最も重要視すべきものは何か。わかるかねレディ」
「えっと……神秘、魔法の秘匿です」
「正解だ。魔法というものは我々研究者にとっては追求するもの。根源に至るために研究するものが大衆に知られることで、より根源から遠ざかる」
話が逸れたな、と付け加えながらウェイバーはホグワーツ特急の側で立ち止まった。
「この研究者としての視点はともかく、魔法という存在はマグルに知られては困る。というのも、人は知らないものに対して過度に恐怖を抱く生き物だからだ。マグルにとっては御伽話…ひいては伝説に近い存在である魔法使いが現実に存在していたとしたらどうなるか?一部の過激な思想の者達が恐怖を扇動し、中世欧州であった『魔女狩り』が再開することすらあり得るだろう。つまり、我々が存在を秘するのは魔法使いとして生きて行くために必要なことなのだよ」
「…自衛のためってことですね」
「そうだ。それ故に、ホグワーツや魔法省、その他魔法の関係する施設には軒並みマグルには認識できないように認識阻害の魔法がかけられている。特にホグワーツのように巨大な設備は何重にも強力な魔法がかけられており、マグルはホグワーツの城はただの廃城にしか見えないようにされている。加えて強力な防護魔法結界もある。安全度でいえば、時計塔と同レベルだ。しかもアルバス・ダンブルドアという現存する魔法使いでは最強格の存在までいる。外部からの危害はほぼ不可能だ」
「…時計塔と同じくらい安全」
「あまり実感はないだろうが、一昔前に『例のあの人』の物理的被害が出なかったのは時計塔の他はホグワーツしかないほどだったからな。そしてそれだけの魔法結界が張られているような場所だ。電気や水道のような現代のライフラインが引かれていたとして…まともに機能するはずがない。つまりこのホグワーツまでの鉄道が電車だった場合、最後の方はまともに機能しなくなるのだよ。だからわざわざ蒸気機関車を使っているということだ」
「機関車なのも理由があったんですね」
「ああ。慣れ親しんだ電気を使う生活とはかなり異なるだろうが、あまり不便は無い。きっとすぐに慣れるだろう」
そう言ってウェイバーはトランクを持ち直して歩き始める。
グレイもその背中を追ってカートを押して行くのだった。
そんなグレイの背後では、メガネをかけた俯きがちの少年と赤毛の少年、癖の強い髪の少女が柱から姿を現したが、グレイが気づくことはなかった。
*
「皆、大いに食べ、飲んだことじゃろう!まずは皆の者、おかえり。そして新入生の皆よ、今日からここが君たちの家になる場所じゃ!」
新入生の組み分けが終わり、学期最初の宴が例年通りダンブルドアの言葉で終わりを告げる。ダンブルドアの言葉は大広間に響き、生徒達は皆ダンブルドアに視線を向けた。
ダンブルドアが生徒への言葉を発している中、ハリーの隣にいる少年、ロン・ウィーズリーが小声で声をかけてくる。
「なあ、ハリー…知らない教師が二人もいるぜ。ハグリッドの代理の先生は見たことあるけど、あのピンク塗れのガマガエルみたいな奴とスネイプ並みに不機嫌そうなロン毛は初めて見るぞ」
「…あのピンク塗れの魔女、僕の尋問の時にいたファッジの部下だ…どうしてホグワーツに」
「げっ、あいつ魔法省の手先か…じゃああのロン毛も?」
「……いや、あの人は知らない。少なくとも、僕の尋問の時にはいなかった」
スネイプ並みに不機嫌そうな表情とあの特徴的な長髪は印象に残る。少なくともあの魔法使いは尋問の場にはいなかった。誰なんだろうと考えているうちに、ダンブルドアは話を進めて行く。
「さて、わしの話はこのくらいにしておこう。今年は先生が三人変わることを皆に伝えておく。ハグリッド先生が不在の間はグラブリー・プランク先生が魔法生物飼育学を担当される。また闇の魔術に対する防衛術はドローレス・アンブリッジ先生じゃ。そして最後、魔法理論の授業は
「ロード⁈ロードって言った⁈」
ハーマイオニーが小声で叫ぶ。
そんなハーマイオニーの態度にハリーは首を傾げる。もしかしたらとても有名な魔法使いなのかと考えたが、それなら名前くらい知っていてもおかしくない。
「時計塔のことをあまり知らん者もおるじゃろう。時計塔は魔法を研究する機関のことで、エルメロイ先生はそこの現代魔術科のトップを務めておられるお方じゃ。あまり関わる機会がない方に来てもらっておる。魔法理論を受ける五年生までの生徒はもちろん、六年生やNEWT試験を控えておる七年生もお話しを聞くといいじゃろう」
「…ねえハーマイオニー、あのロードって人そんなにすごいの?」
「ハリー貴方知らないの⁈ロードって言えば、魔法研究において最高峰の実績を持つ人のことよ⁈」
「ハリーはマグルの世界で育ったし、知らなくても無理はないぜハーマイオニー。ただでさえ魔法を研究として見る奴なんて少ないんだから」
「そうなんだ…僕、全然知らなかったよ」
時計塔、カレッジのことはホグワーツに来てからハリーが知る機会はなかった。いや、あったのかもしれないが、ハリーとしては魔法を研究するという発想がなかった以上、あったとしても見逃していたのだろう。
「時計塔についてはこんなところかの。では皆で先生方のご健闘を祈るとしよう。さて、例年の通り管理人の…」
「エヘン、エヘン」
わざとらしく大きな咳払い。それはピンク塗れの魔女から発せられていた。大広間にいる全員がそちらに視線を向けると、魔女…ドローレス・アンブリッジは立ち上がりダンブルドアの前に立って大広間の生徒達を見下ろす。
「ありがとうございます校長、歓迎のお言葉恐れ入ります。みなさんの幸せそうな可愛い笑顔がこちらを見上げているのは、素敵ですわ。みなさんとはとても良い…お友達になれそうですわ」
わざとらしく甘い声に思わずハリーは顔を顰めて視線を逸らす。すると例のロード・エルメロイII世と呼ばれた男が目に入る。ロード・エルメロイII世は先程よりもさらに不機嫌そうに顔を歪めており、手に持ったゴブレットを砕き割ってしまいそうなほどだった。
(…なんであんなに不機嫌そうなんだろう)
「魔法省は常々、若い魔女や魔法使いの教育は非常に大切だと考えてきました。この歴史ある学校に、歴代校長は何らかの新しい改革を取り入れてきました。しかし…進歩のための進歩は奨励されるべきではありません。保持すべきものはもちろん保持し、正すべきものはしっかりと正し、禁ずべきと判断したものは切り捨てようではありませんか。断固として」
それだけ言ってアンブリッジは席に戻っていく。その背中を見ながらダンブルドアが拍手をすると、それに後押しされるようにまばらながら拍手がおこった。空気を読むような拍手ではあったが、アンブリッジは満足そうに頷いている。
「さて、アンブリッジ先生がこうしてわしらにお言葉を下さったのじゃ。もう一人の新たな先生からもお言葉をいただこうかの。ではエルメロイ先生、頼んでも良いかね」
「………承りました、校長」
恐らく完全にアドリブだったのだろう。エルメロイII世は今にも大きなため息を吐きそうな表情をしながらも立ち上がり、ダンブルドアの隣に立った。
「たった今、校長からのご紹介に預かったロード・エルメロイII世だ。諸君が私のことをどう呼ぶかは自由だが、もしエルメロイの名で私を呼ぶ時は必ずII世をつけてくれ」
「…なんでII世なの?」
「普通に考えれば…二代目ってことだと思うけど…」
「さて、特段話すことを考えていたわけではないのだが…私からは魔法を学ぶ意味について話しておこう。諸君が魔法のことをどのように認識しているかはわからないが、魔法というのは技術であり学問だ。君らが普段学んでいる内容は先人達が試行錯誤してきた結果だ。どのように学び、どのように使うかは自由だが…学ぶこと自体を無駄だと思わないでほしい。たくさんの先人達の歩みを無為だと断じず、まずは何事も知るところから初めてほしい。それが将来、君らにとって大切だと思える者達を守ることに繋がるかもしれない。そのきっかけを少しでも諸君らに伝えられればと考えている。以上だ」
それだけ言ってエルメロイII世は戻っていく。
そんなエルメロイII世にダンブルドアだけでなく多くの生徒が拍手を送った。アンブリッジの時のように空気を読んだものではなく、心からの賛辞として多くの生徒が拍手を送っている。
その様子をグレイはレイブンクロー寮の机の端で嬉しそうに見ていた。
「ねえあんた」
師であるエルメロイII世が席に戻りダンブルドアが再び話し始めた時、美しいブロンドの髪を携えた少女がグレイに話しかけてくる。
「見ない顔ね。新入生でもないみたいだけど、どういう事情?」
「あ、えっと…拙はさっきお話ししてたロード・エルメロイII世の内弟子でして…」
「へえ、内弟子。あの人がホグワーツに来たから一緒に来たってこと?」
「はい」
「ふうん。それで、レイブンクローで過ごす感じ?」
「あ、いえ…まだそこは決まってません」
「そっか。じゃあもしレイブンクローになったらよろしく」
少女はグレイに手を差し出した。
「あたし、ルーナ・ラブグッド」
「拙は、グレイです。よろしくお願いします、ルーナさん」
「よろしく、グレイ」
グレイはルーナの手を取り、握手した。
早々に友達ができたことを嬉しく思いながらグレイは師匠であるエルメロイII世に目を向ける。相変わらず不機嫌そうな表情をしているが、グレイの視線に気づくとほんの僅かに口角を上げるのだった。
***
「はあ…」
闇の魔術に対する防衛術の授業を終えたハリーは非常に重い気に引っ張られるように重い足を引き摺りながら次の授業へと向かう。
「やってくれるよな、あのガマガエル」
「…そうだね」
隣にいる親友、ロンもうんざりしているのか声のトーンは低い。まさか魔法省が杖を使った講義を一切せず、座学のみ。しかもその座学も教科書の内容をひたすら書き写すだけ。とてもまともに教える気があるとは思えない。
加えて、ヴォルデモートに関する話もだ。セドリックが事故で死んだことにされ、政府から否定されるというのは思いの外しんどい。既にハリーのメンタルは大きく疲弊していた。
「今年はOWLもあるのに…あんな授業じゃまともな点数取れないわよ。試験には実技もあるのよ?あのガマガエル、それをわかってるのかしら」
「わかっててやってんだろ?かましてくれるよ、ほんと」
「次の魔法理論の授業はまともだといいんだけど…まあ、魔法理論はOWLにはないし、そもそも座学だけの科目だからそこまで気にすることじゃないかもしれないわ。それにロードの授業だもの。ちょっと楽しみだわ」
「でもあのロードもタイミング的に考えりゃ魔法省の手先だろ?期待していいのか?」
「それは……とにかく、受けてみないとわからないわよ」
ハーマイオニーとしてもやはり不安はあるらしい。だがまだ受けていない授業にとやかく言うことはできない以上、まずは受けてみようと判断した。
「あ、ハリー。ハーマイオニーとロンも」
「…やあルーナ」
ハリー達の進行方向から歩いてきたルーナがハリー達に気付き、声をかけてくる。その隣にはローブのフードを被った少女。みたことない少女だが、ローブにはレイブンクローの紋章がついている。
「ハリー達はこれから魔法理論?」
「うん。ルーナは?」
「あたし達は呪文学。さっきは魔法理論受けてきたよ」
「ねえルーナ。魔法理論の先生…その、どうだった?」
ハーマイオニーに問いかけられてルーナはちらと隣の少女を見る。少女はルーナの視線に気づくと小さく頷いた。
「すごく教え方上手いよ。それに、
「…え?魔法理論だよな?」
「うん。ちょっと杖使ったよ」
「……どういうことだ?」
「とにかく、受けてみよう。それしかないわ。それでルーナ、隣の子は?」
ハリーはルーナの隣にいる少女に目を向ける。少女は目深にフードを被っているが、整った顔立ちをしている。何故フードを被っているのかはわからないが、何か事情があるのだろうとハリーは勝手に納得した。
「この子はグレイ。次の魔法理論の先生の内弟子で、特例で編入してるの」
「あ…拙はグレイといいます。師匠…ロード・エルメロイII世の内弟子で、師匠がホグワーツに来るから一緒にホグワーツに来ました。しばらくレイブンクロー寮でお世話になると思いますので、よろしくお願いします」
「はじめまして。私、ハーマイオニー・グレンジャーよ。こっちはロン・ウィーズリーで、こっちはハリー・ポッターよ」
「よろしく、グレイ。それで…師匠って…」
「…説明が難しいんですが、時計塔で拙の指導をしてくれてるんです。初めての授業だと思うんで不安かもしれませんけど…その、師匠はすごく教えるの上手いので…えっと…」
精一杯エルメロイII世の指導力をアピールしようとしているが、うまく言葉が出てこないのかグレイは少し口籠る。だがこれだけでハリー達はグレイが悪い子ではなく、それに教え方が上手い人なのだということは理解できた。
「とりあえず受けてみるよ。ちょっとだけ期待しておく」
「うん。じゃ、あたし達行くね。教室遠いしグレイはまだ道覚えてないから」
「うん。またね、ルーナ」
そう言ってルーナとグレイは去って行く。
「…とりあえずアンブリッジより酷いことはないだろ」
「そうね。とりあえず行きましょ」
ロンとハーマイオニーに続いてハリーも教室へと歩いてく。
少しだけ気が軽くなった気がした。
「さて、グリフィンドール五年生の諸君。改めて…ロード・エルメロイII世だ。これから魔法理論の授業を担当させてもらう。君らが魔法理論を受けるのは今年が最後になるが、私にできることは精一杯やらせてもらおう」
ロード・エルメロイII世はそう挨拶をすると、杖を振って羊皮紙を全員のもとに配る。そこに記されている内容に目を通したハリーは少しだけ気が重くなるのを感じた。
「これが魔法省より与えられた五年生が学ぶ魔法理論の内容だ。『魔法使いの持つ属性の特徴と属性ごとに相性のいい魔法』、『魔術基盤と歴史の結びつき』、『神代と現代での魔法の在り方』…大きくはこんなところになる。魔法史と関連する内容もある以上、魔法史の内容も同時に復習することになるだろう」
内容から察するに、ほとんど理論しか関係のないこと。魔法理論の授業は基本的に実践はないためあまり期待はしていなかったものの、ここでもずっと座学になりそうだとハリーは半ば諦めたような気持ちになる。
「さて…大まかに授業の内容について説明したが、何か質問はあるかね」
「はい先生」
「ではミスター・フィネガン。質問を述べたまえ」
「先生が魔法省から雇われたって本当ですか?」
その質問内容に何人かの生徒がぎょっとしたように目を剥く。確かにそういう憶測はあったものの、これだけ不機嫌そうな顔をしているエルメロイII世にそんな質問ができるフィネガンの精神力に何人か驚愕していた。
だがエルメロイII世はそんなことを気にする素振りも見せず答える。
「ふむ…アンブリッジ先生が魔法省から来た先生だから私もなのではないか、と考えているのだろう。隠しても仕方ないから答えるが、私は魔法省からの要請でホグワーツに来た」
それを聞いて教室がざわつく。つまりこのロード・エルメロイII世もアンブリッジと同じなのだろうと一気に落胆してしまう。
しかしエルメロイII世は気にすることなく続けた。
「魔法省は『学校は試験のためにあるもの』と定義して、私の指導内容を今配った内容にしてきた。魔法理論はそもそも座学メインの科目だ。あまり指摘することもなかったのだろうが…『試験のためにある場所』であることを念頭に置いて授業をしろと強く念を押された。だが、君らも知っての通り試験には実技もある。試験のためと念を押された以上、実技をやらないわけにはいかない。ここでの実技が直接試験に関係することはないが、他の科目に応用できるような基礎的な魔法の使い方を教えていく。諸君らの一助になれるよう力は尽くす」
この言葉を聞いてグリフィンドールの生徒達は評価を一変させた。
アンブリッジはただひたすら『試験のため』と言いながら生徒が学ぶことを阻害していた。だがエルメロイII世は『試験のため』と定義されたのなら、試験のためにできることを精一杯やっていくと言った。この時点でアンブリッジと大きく異なる。
「じゃあ先生は、魔法省の見解はどう思っているんですか?魔法省の見解に肯定的だからホグワーツに来たんではないんですか?」
「魔法省の見解というのは、某闇の魔法使いが復活したということかね?ミスター・フィネガン」
「はい」
「どちらとも言えない。復活していない証拠も復活をこの目で見たわけでもないのだから。だがその魔法使いが復活していようがいまいが、闇の魔法使いはいる。そんな者達から身を守るために、最低限自衛の手段を学んでおくことは必要だと考えている。私も本来の立場がある以上、下手なことは言えない。今はこの回答で勘弁してくれたまえ」
あくまで自分の立場は中立だということを貫いているが、言葉の節々から『復活していてもいいように備えておけ』と言っている。この時点でアンブリッジとは全く異なり、ちゃんと生徒である自分達のことを考えてくれていると理解できた。
(…この人の授業は、何か違う。ルーナが言っていた通りかも)
そんな期待をさせられるような言葉を聞いて、ハリーは少しだけ期待を膨らませた。
「他に質問は?無いのであれば、授業を始めよう」
ホグワーツでのロード・エルメロイII世の講師生活が始まる。
ロード・エルメロイII世(ウェイバー・ベルベット)
ヴォルデモートが猛威を振るった時期はホグワーツの在校生でレイブンクロー生として過ごしていた。それなりに影響はあったが、ダンブルドアの存在がホグワーツ侵攻を阻害していたためあまり大きく影響はなかった。
ホグワーツ卒業後は時計塔に進み、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの教室で魔法を学ぶ。Fate原作通り辛辣な対応を受けて、とあるきっかけで極東の儀式に参加。幸運にも生き延び、呼び出した英霊の影響で世界各地を回ってからケイネスのエルメロイ教室を買取り、運営。実用的かつ非常にわかりやすい教え方をするため、居場所のない新世代魔法使いの拠り所となる。没落したエルメロイ派のライネスに捕縛され、原作通りロードの地位を維持するべく働いてきた。
ダンブルドアには少し目をかけてもらい、エルメロイ教室を買い取る際に少し力添えをしてもらった。
魔法使いとしての腕は下の上〜中の下。闇祓いと比較したら正面切って戦うことはほぼできないに等しく、単純な戦闘能力は現時点のハリーにすら劣る。だが周囲のものを利用して生き延びることだけはかなりの実力。また、魔法に対する知識に関して言えば非常に多岐に渡る。相手の魔法を分析、解体する能力は非常に高いため、『略奪公』のあだ名を持つ。
杖はアシの木にユニコーンの毛。
使い魔として茶色いフクロウを飼っている。
グレイ
ロード・エルメロイII世の内弟子。フードを目深に被った少女。
単純な戦闘能力はエルメロイII世を遥かにしのぎ、杖を使った戦闘も得意。だが閉鎖された村で過ごしていたこともあり、魔法に対する知識は少ない。魔法使いとしての常識すらもやや抜けている部分がある。
ホグワーツに来るにあたり編入生として受け入れられ、レイブンクローの四年生と共に行動を共にしている。現時点の友人はルーナのみ。
杖はトネリコの木にドラゴンの心臓の琴線。
使い魔としてカラスを飼った。
時計塔
魔法を研究して根源へと至る道を探す探究者達の組織。言うなれば魔法大学。ホグワーツから進む生徒は多くないため、就職先を考え始める六年生以上の生徒でないとその存在はほとんど知られていない。また、かなり閉鎖的で所属者は基本的に研究成果を公表しないため、研究成果が外部に知られることはほぼない。ニュート・スキャマンダーは魔法生物飼育学において大きな功績を残したため
各学部のトップは
魔法省の干渉を基本受けないが、一応窓口は存在しているため時折互いにやり取りすることもある。