ホグワーツ教師 ロード・エルメロイII世 作:木材
あと、略奪公のちょっとした解体。
「…本当に、復活したのね」
グリフィンドール寮に、三つの人影があった。
一つは、ハリー・ポッター。一つは、ロン・ウィーズリー。そして最後の一つはハーマイオニー・グレンジャー。
先ほどまで三人はグリモールド・プレイスにいるシリウスと極秘裏にやりとりをしていた。ただ、シリウスも状況は把握していても直接ハリー達の助けにはなれない。不死鳥の騎士団も状況としては芳しくない以上、ホグワーツの問題はハリー達自身で解決するしかなかった。
「信じてなかったのかよ」
「信じてたわよ!でも、そうね…ほんのわずかだけど、『復活していてほしくない』という思いがあったの。そういう意味では、100%信じられていたわけじゃないかもしれないわ。ごめんなさい、ハリー」
「いいんだ。僕も…逆の立場なら、多分そうなる」
「…ありがとう。あの人が復活したのなら…わたし達は身を守る術を身につけないといけないわ」
「防衛術の授業はあれだぜ?自主練するにしても、どうやって…」
「アンブリッジが教えない以上、他の先生が必要になるわ。今ホグワーツの中で完全に信頼できて、防衛術に長けている人…」
ハーマイオニーとロンはハリーに視線を向ける。視線に気づいたハリーは驚いたように声を上げた。
「ぼ、僕⁈本気⁈イカれてる僕に教わろうっていうの⁈」
「よく考えてみろよ。君とあのガマガエル、どっちがまともな教師役をできると思う?どう考えても君だろ」
「…それはどうも!でもハーマイオニーの言うことはわかる。確かに僕は、防衛術の腕はそれなりに自信がある。今の同級生の中だったら、そうそう負けることはないよ。教えること自体は構わない。でも、どうやるって言うんだい?」
「どうやるって、どういうことだ?」
「アンブリッジがホグワーツに来たのは、僕とダンブルドアを見張るためだ。そもそもアンブリッジがあんな授業をしているのも、僕らに戦闘訓練をさせないため。そんな中、僕らが集まって防衛術の練習をしているのを黙って見ているような奴じゃないのはわかるだろ?」
ハリーの言葉に納得したロンは確かに、と呟いて頭をかく。
アンブリッジはどんどんホグワーツに規律を作っている。すでに大広間前の扉には無数の教育令がぶら下がっており、違反した生徒に罰則を繰り返しているような現状だ。そんな中、ハリー達の自主練が見つかったら、罰則を受けるのはハリーだけでは済まない。
「ハーマイオニー、君ならわかってるだろう?」
「もちろんよ。だから、やり方を考えるわ」
「どうするんだ?」
「まずどこか…例えば、ホグズミードのどこかで私達と似たような考え方をしてる人たちを集めて、メンバーを募るの。もちろん、参加者には署名をもらった上でね。その後は…どこかで練習するの。さすがに場所はまだ目処を付けてないけどね」
「だってよ。ハリー、どう思う?」
「……概ね異論はないよ。でも、最初に集まる場所もちゃんと考えよう。僕らが思っている以上に、アンブリッジの監視の目は鋭い」
ホグワーツの管理人であるフィルチを懐柔し、ホグワーツ内部で監視の目を光らせている。さすがにフィルチの目もホグズミードまでは届かないものの、尋問官親衛隊という悪趣味な組織の一員がホグズミードにいないとも限らない。特にこの親衛隊は学生で構成されている以上、ホグワーツとホグズミード両方とも監視があると言って良い。出鼻から挫かれた場合、ハリー達の身動きは今よりももっと取りにくくなる。だから最初から可能な限り手を打っておくべきだとハリーは主張した。
「アンブリッジの奴は、気に食わないことがあったらすぐにそれを縛る教育令を出せる。魔法省からの教育令なんて言い方されてるけど、あれは全部あいつの一存で決められるんだ。そんな中で、初手から後手に回るのは得策じゃないよ」
「随分と考えてるなハリー…なんか、やたらアンブリッジへの理解が深くないか?」
「これはハリーが現状を私達以上に把握できている証拠よ。でもハリー、どうやって知ったの?」
「エルメロイ先生が教えてくれたよ。あの人、一応魔法省からの要請でホグワーツに来てるから、アンブリッジの情報もある程度持ってるんだ」
「いやそれはわかるけどさ…それを君に教えていいのか?一応魔法省側だろあの人」
「本当はダメだと思う。でも、あの人はあの人で思うところがあるみたいだ。立場があるから表立って動けないけど、あの人は僕らに情報をくれる。とりあえず敵ではないから、大丈夫。それで、エルメロイ先生が僕に『やり方を考えろ』って言ってきた。だから、多分もっとちゃんと考えないと、僕らの動きは全て潰される。なんとかして、集まれる場所と練習場所を見つけよう」
「そうね、そうしましょ。じゃあ場所の目処を付けてから、メンバーを募るわ」
そうして、ハリー達は防衛術訓練のために画策を始めるのだった。
「夜分遅くに失礼する、エルメロイII世」
その同時刻、エルメロイII世の部屋に一人の教師が訪れていた。
不機嫌そうな顔に黒いローブ、魔法薬学教授のセブルス・スネイプ教授だった。
「問題ありません、スネイプ教授」
「吾輩としてもこの時間に訪れるのはどうかとは思ったのだが…ダンブルドア教授がどうしてもと、聞かなくてな」
「なら、早速本題に入りましょう。如何なさいましたか」
「用件は二つ。まず一つ。先日、ドローレス・アンブリッジが吾輩の元を訪れ、授業の査定をしてきた」
「………なるほど、不適格な教師を消し去るためのものか」
アンブリッジは魔法省から派遣され、最近『ホグワーツ高等尋問官』という役職に任命された。この役職は端的に言えば『魔法省の意に沿わない教師を解雇する』役職である。恐らく、これからアンブリッジは何かと理由をつけてホグワーツの教師達を解雇し、魔法省の手の者を送り込むことを目論んでいる。最終的には、ダンブルドアを押し除けて自分が校長になるくらいのことは考えていてもおかしくない。
エルメロイII世は魔法省からの依頼で来た。さすがに解雇候補にはさせられていないだろうが、いつ巻き込まれるかはわからない。警戒はしておいた方がいいだろう。
「ダンブルドア教授は君の動き方を知っておきたいと言っていた。それで?エルメロイII世、君はどうするのかね」
「予定通り動くつもりです。アンブリッジから契約を無視し、私に向けて強権を振り翳してくるように仕向けます」
時計塔と魔法省の契約は3点。
『魔法省に反旗を翻そうとしているダンブルドアとポッターの監視』。
『魔法理論教師としてホグワーツに潜り込み、ダンブルドアとポッターの状況を報告する』。
『学校を試験のための場所と定義付け、試験のための授業にする』。
この契約を公式の記録に残した上で結んでいる。もしこれ以上のことを要求してきた場合、さらなる報酬の用意をしてもらうか、契約を破棄するかのどちらかになる。アンブリッジが時計塔を見下している以上、さらなる報酬を用意するとは考えにくい。契約が破棄されれば、契約を一方的に破棄された報復として動くことが可能になる。それを狙っていた。
ダンブルドアには予めエルメロイII世の計画については伝えてある。その通りに動くとエルメロイII世は告げた。
「本来なら穴だらけのプランですが、奴が相手であれば間違いなくこうなるだろうと想定しています」
「なるほど、時計塔で生き抜いてロードの地位を守り続けただけはある。他者への鑑識眼についても聞いてはいたが、聞いた通りのようだな」
「お褒めに預かり光栄です。これも依頼なので」
「では、君の動きについてはダンブルドア教授に報告しておこう」
あの程度すら手玉に取れないようでは、ホグワーツより、魔法省よりも魑魅魍魎揃いの時計塔でロードの地位を維持するなどできない。この程度は今のエルメロイII世にとって大したことではない。
そんなエルメロイII世を見て、スネイプは目を細めた。
「……君が、ロードとはな」
教え子といえるほどの関わりはない。それ故に彼の印象はダンブルドアから聞いた話がメインになるが、ダンブルドアから聞いた彼は正直あまり印象に残るタイプの生徒ではなかった。筆記試験の成績は良かったが、実技はあまり。総合すると平凡としか言えないような生徒だった。
時計塔に進んだ数少ない生徒だということはスネイプも知っていた。あまり多くない進学者ということもあり、そういう意味では印象に残っていたものの、その程度。ただ、どんなきっかけかまでは知らないが、彼がロードの地位についたことを知り大いに驚愕したことは今でも思い出せる。
「私はあくまでお飾りです。本来ならば、ロードと呼ばれるような人間ではない」
「……時計塔で何かきっかけがあったのだろう」
「ええ、そうですね」
今も瞼の裏に蘇る、王の背中。
「ウェイバー・ベルベットよ。臣として余に仕える気はあるか」
「生きろ、ウェイバー。すべてを見届け、そして生き存えて語るのだ。貴様の王の在り方を。このイスカンダルの疾走を」
あの大きすぎる背中を、今も夢に見る。
きっかけは本当に偶然だった。この偶然から、己の中の全てが変わった。王の背中に魅せられ、尊敬していた師を亡くした。
自らの未熟さが招いた結末に崩れ落ち、涙を溢すこともあった。己の未熟さと大きな才能の喪失の要因を作った自らを呪うこともあった。
だがそこで終わることはできなかった。
王の背中に魅せられた。未熟な己を臣として認め、王の在り方を語り継ぐという任を託された。
ならば、それに見合う己にならなければならない。
この与えられた『後払いの栄誉』に見合い、かの王の隣に並び立つに相応しい人物に。
「愚かで未熟な私を認めてくれた者がいた。共に歩むという栄誉を与えてくれた。ならば私は、その栄誉に見合う人物にならなければならないのです。犯した罪も、背負うべき責任も、目を背けたくなるような現実もある。だが私には、追うべき相手がいるのです。その者にまた会った時、心から誇れる己であるためにも…今こうして、ロードという地位を預かっているのです」
「……君は…」
スネイプはエルメロイII世がかつての師の後を継いだということは知っている。そしてその師が亡くなった理由の一つに、彼が関わっていることも。詳しいことは知らないが、犯した罪というのはもしかしたらこのことが関係しているのかもしれない。
だがエルメロイII世はその罪と向き合い、もらった栄誉に相応しい人物にならねばならないと言った。かつてのウェイバーのことに詳しいわけではない。だが、ここまで強い意志を持つ生徒ではなかったと記憶している。それほどまで強い出来事があったのだろう。
「罪、と言ったか」
「はい。魔術界において貴重な才能を失うきっかけを作ってしまった。直接的に手を下したわけではありませんが、私の愚かな暴走が要因の一つであることに違いはありません。ならば、その罪を背負いながらもその先にいる奴に並ぶ以外の選択肢はないのです」
「……君は、吾輩とは違うようだ」
「どういう意味で?」
「…いや、気にしないでくれ」
かつての想い人への罪。自分はそれに向き合うことを恐れ、さらに罪を重ねて最後は全てを喪った。自分とは違い、罪と向き合い先に進もうとするウェイバーの姿は、スネイプには眩しすぎる。
「…話が逸れたな。もう一つの用件だ。ダンブルドア教授が君の意見を聞きたいと言ってきた」
「ほう。どんなことですか」
「ヴォルデモート卿の不死の秘密についてだ」
スネイプの言葉を聞いてエルメロイII世は目を細める。
「…不死ときましたか」
「君も気づいているのだろう?闇の帝王は戻ってきた。今の世論は闇の帝王が戻ってきたことを否定しているが…仮に戻ってきたとしよう。何故、
死した者は蘇らない。それはどんな魔法であったとしても不可能。
だというのに、ヴォルデモートは戻ってきた。正確には死んでいなかっただけかもしれないが、誰も
「死の呪いは受けた者を問答無用で死に至らしめる。それから逃れる手段は、並大抵の方法では不可能です」
「ではロード・エルメロイII世に問おう。死の呪いから逃れる方法にはどんなものがある?」
「まず、ハリー・ポッターが生き残った『犠牲の守り』。母の愛により形成された最高峰の守りだが、それには犠牲が伴う。母の命と引き換えに最強の守りを与えられ、ポッターは生き残った。次に死徒であること。これは厳密には違うかもしれませんが、死徒は補給が必要な不老不死。死の呪いを受けても即座に死にはしないが、急速に劣化が進行する。ああ、だがヴォルデモートほど強力な魔法使いならば、相当強力な死徒でない限り即死させられるかもしれませんね。あとは、不老不死を求めて秦の始皇帝が水銀を食したという記録もあります。これも方法としては不完全ではありますが、錬金術観点で言えば不老不死を実現し得る手法だ。ただし、これは星の如き肉体を形成しなければならない。例えヴォルデモートでもこの手法による不死を得られるとは思えませんな。錬金術による不死の再現も可能であり、それに必要なものは賢者の石。
「…不死は、人としての枠組みを超えたもの。故に、取るべき手法もまた犠牲や代償が付き物だ。肉体そのものにしろ、過程で必要となる道具であれな」
「教授には説明不要でしたな。ヴォルデモートは闇の魔法に傾倒した魔法使い。なら取るべき手段も、闇の魔法に準じたものですね」
スネイプは答えない。
「闇の魔法で不死を
「ダンブルドア教授はそう考えておられる」
分霊箱。自らの魂のカケラを物質に宿らせることで、肉体が滅びても現世に留まることができるための保険のような魔法。
人一人に対して魂は一つ。だが分霊箱は魂を分割し、物質に宿らせることで魂を物質界に留まらせることができる。魂の一部が生きている以上、滅ぶことはなくなるため擬似的な不死とも言えるだろう。
「分霊箱は不死を得るために最も手っ取り早い手段と言えよう。闇の帝王は分霊箱を作ったことで、跳ね返った死の呪いを受けてもなお辛うじて生き延びることができたのだろう」
「分霊箱は、確かに死を一時的に回避することができるでしょう。尤も、死を回避したとしても生きるということに全てを費やす以外ができなくなるそうです。ゴーストよりもさらに希薄な存在だとか」
「左様。分霊箱は無理矢理魂が現世から離れるのを防いでいるにすぎん。そして魂は本来、星幽界に存在する。その魂を無理矢理引き裂き物質に宿らせるのだ。死を回避できる以外はなにもできなくて然るべきだろう」
「それで?ヴォルデモートが分霊箱を作り上げていたとして、私にどんな意見を求めているのですか」
「エルメロイII世には、どんな分霊箱か、どこに隠したか。魔術界隈に身を置く君の視点から意見を聞きたいと」
「なるほど」
恐らくエルメロイII世とダンブルドアで、単純な知識量のみであればダンブルドアの方が上。しかし、魔術という魔法研究の最先端に身を置くエルメロイII世であればまた違った
(視点、か。オルロック老にも同じことを言われたな)
少し前に言われたことを思い出しながらも、頭を回す。
分霊箱は魂を引き裂き、引き裂いた一部を物質に定着させる魔法。定着させた物質が破壊されると、魂のカケラも一緒に破壊される。とはいえ、魂そのものは本来不滅の存在。星幽界に属する魂を引き裂き、無理矢理物質界に呼び出した挙句、物質に定着させるという明らかに常軌を逸した方法を取っている。代償は大きい。
「私も分霊箱に詳しいわけではない。なので、学問面からの視点による推測になります」
「構わん」
「では、私の推測を伝えましょう。まず分霊箱について簡単に。古代ギリシャの闇の魔法使い、腐ったハーポが開発した魔法です。技法が確立し、知識と魔法の腕さえあれば誰でも作成可能ということから、最も邪悪な魔法の一つとして知られています。そして時計塔にある記録でも、分霊箱を二つ以上作成した者はいないとされています」
「ならば、分霊箱は一つしか作れないと?」
「いいえ、記録がないからといってできない証明にはなりません。そもそも、作成事例が少な過ぎる。複数作れないという証明がされていない以上、複数ある可能性も大いにあるでしょう。彼が複数作り上げている、という可能性は高いと思います」
「何故、複数ある可能性が高いと」
「分霊箱は魂の一部を現世に留めることで、肉体が滅びても死なないようにする魔法。ただし、死なないだけ。それ以上のことは何もできない。当然でしょうな。無理矢理魂を留めているだけなのですから。しかし、ヴォルデモートは手下を使って肉体を呼び戻す手段を企て、間接的に実行している。つまり、
分霊箱は自らの魂の一部を物質に定着させることで現世に留まる。つまり、分霊箱という鎖で自らの肉体を現世に留まらせるという魔法になる。過去は分霊箱が一つしか作られた事例がなかったが、もし留めるための鎖が複数あったら留める力が強まり、会話する程度の力は残るのではないかとエルメロイII世は考えた。
「尤も、この考察も完全ではない。分霊箱の効力としても疑問が残ります。一つの分霊箱に定着させた魂の割合次第では留める力もまた変わるのか、魂を引き裂く際にできる魂のカケラはどの程度の割合になるか制御できるのか…これらについては、検証のしようがありません。魂という不滅の存在を引き裂くことに制御ができるとは考えにくいですが、留める力を強くすること自体はあり得るのではないかと考えられます。故に、複数あるという結果に至りました」
「吾輩も同意見だ。恐らく闇の帝王は、分霊箱を複数作り上げている。しかし、いくつ作り上げたかは吾輩にもダンブルドア教授にも予想がつかない」
「魂を引き裂く過程を繰り返していけば確実に元となる魂も小さくなり、存在そのものが不安定になる。感情の起伏が激しくなり、肉体から人間性が失われていく等の不具合があってもおかしくありません。10以上作れるとは思いにくいです。ならば、学問としての魔法という観点で少し考えてみました」
エルメロイII世は杖を振って一冊の本を取り出す。本の表紙には『カバラ数秘術』と記されていた。
「分霊箱について考察するのであれば、考えられる要素は4つ。分霊箱に使った道具、作ったタイミング、作った数、そして隠し場所。タイミングについては選択肢が無数に出てくるので今回は省略します。なのでまずは道具から。ヴォルデモートの行動原理の根底にあるものは、過激な純血主義…つまりは選民思考。かつてのサラザール・スリザリンと同じ思想だ。ダンブルドア教授から伺いましたが、ヴォルデモートはスリザリンの継承者として自らの思想を掲げていたらしいですね。自らの思想の源流として掲げるほどであるならば、スリザリン…ひいてはホグワーツそのものに何かしらの執着があると考えていいでしょう。それだけ執着のある存在に縁のある物品を使っている可能性はあるのではないでしょうか。ホグワーツ、またはスリザリンにとても縁のある物品に自らの魂を定着させるくらいのことはあると思われます」
「ふむ…ホグワーツに縁のある品か。吾輩も詳しくはないが、いくつか関係のありそうな品は思い浮かぶ。例えるのであれば、グリフィンドールの剣のような、創始者に関係する品が近いのだろう」
「仰る通りです。私はその手の品に明るくない故、選択肢と言えるものをだせませんが。あとは…単純に思い入れのある品などがあるかもしれません」
「分霊箱はそれ自体が強力な闇の魔法で保護されているものだ。容易に破壊することなどはできないが、形そのものに捉われることはない。そこら辺の石ころに魂を定着させたという可能性は?」
「恐らくないでしょう。自らの名を変えて無数の人を殺し、多数の手下を集めて自らを顕示するような人物です。自らの魂を定着させるものに、凡百な品を使うとは考えにくい」
確かに、とスネイプは考える。
かつて死喰い人として活動したスネイプにはわかる。ヴォルデモートは非常にプライドが高く、己は全てにおいて特別であると本気で信じている。それ故に、あらゆる面で特別であろうと験担ぎをすることもあった。自らの魂という特別なものの中でも最上級のものを定着させるのに、石ころなどの凡百のものを使うはずがないだろう。ヴォルデモートの人柄を知るスネイプならともかく、人柄については何も知らないエルメロイII世が僅かな情報からここに辿り着いたことに内心で驚愕する。
「次に作った数。これについては、前提条件として10以下ということを念頭に置いて考えます。カバラでも数秘術が知られており、ホグワーツの授業でも数占いがあるように、魔法使いは古くから数字そのものに意味を見出してきました。マグルの間でも知られている黄金比のように、人類そのものが見出した『美』であり、その美しさから見出された魔法もある。また、黄金比以外にも宇宙の銀河星雲を形成する対数螺旋などに美しさを見出し、魔法の研究テーマにする者もいます。このように、数字というものは人類が見出して来た魔法そのものといってもいい。魔法円や工房も数字による調和が必要不可欠と言えるほどです。そしてこの数字による調和は西洋だけでなく東洋にもこの文化は根付いているため、真の意味で人類共通の観点と言えるでしょう」
数字は人類全体で見出した古くから存在する概念。魔法使いだけでなくマグルも含めた人類全体に浸透したものであり、調和を齎すために必要な要素といっても過言ではない。この数字という概念をヴォルデモートが利用するということは十分に考えられる。
「仮にヴォルデモートがこの文化を分霊箱の数に取り入れていると仮定します。考えられるのは2通り。シンプルに強力な力を持つ数字か、闇を好む者として不吉な数字を選ぶか。不吉な数字としては、東洋では4、5、9、西洋では13が忌み数として知られています。ただ、ヴォルデモートが東洋の文化を取り入れるとは考えにくく、前提条件から10以上は無い。つまり不吉な数字ではないと言えます。では、強力な力を持つ数字は何か。西洋では4、または7が縁起の良い数字だとされています。ただ、4は魔法的要因というより、宗教的な側面が強い。ヴォルデモートに信仰心があるとは考えにくいため、魔法的に強力な数字である7…私はこの数だけ分霊箱があると予想します」
「……7、だと?」
「本人を合わせて7なのか本人を合わせると8なのかはわかりませんがね。個人的には本人合わせて7…つまり、分霊箱そのものは6だと予想します。それにこれは私が把握している
7という数字は魔法的に大きな意味を持つ。数秘術や魔法において神聖な数字として言われており、宇宙のエネルギーや神秘を象徴しているとされている。宗教的にも『七大天使』などのように信仰の中にも組み込まれているため、大きな力を持つ数字として魔法使いだけでなくマグルからも信じられているものだろう。ヴォルデモートが自らの魂の数にする理由としては、一応筋は通っていると言えるだろう。
「あくまで7という数は私の予想でしかない。確証は何もないので」
「だが、吾輩の視点からしても筋は通っている。君の言うように、選択肢の一つとしてダンブルドア教授には伝えておこう」
「恐縮です。最後に、隠し場所についてですが…これは候補が多過ぎる。ただ、先の推測のようにヴォルデモートはホグワーツに対して何かしらの執着がある可能性が高い。故に、一つはホグワーツのどこかにある可能性もあるかもしれません。あとは、ホグワーツの次に安全と言われているグリンゴッツにも。尤も、一つはヴォルデモート本人が身につけている、または側に置いているでしょうが」
ホグワーツは固定の部屋の他に、流動的に部屋ができたり消えたりする神秘の砦。もしかしたら、ヴォルデモートだけが見つけた部屋があるのかもしれないし、誰もが知っているが決して触れることがないようなものに魂を定着させている可能性もある。こればかりは選択肢が多過ぎる故にエルメロイII世でも選択肢を絞り込むことができない。
「…なるほど。全て、筋は通る」
「一助になれたのなら、何よりです」
「手間をかけた。吾輩はこれで」
スネイプはそれだけ言って去っていった。
その背中を見送ったエルメロイII世は手に持っていたカバラ数秘術の本をパラパラと開く。今回は前提条件として分霊箱が10以下であるとしたが、もしヴォルデモートが10以上作っていた場合はこの理論は破綻する。この推理が正しいと言うにはあまりにも情報が少なすぎた。
「…ふう」
エルメロイII世は本を置くと、引き出しの鍵を開いて中の物を取り出す。引き出しには保護魔法がかけられた箱が入っており、その箱の中には赤い布切れが入っていた。
「……この未熟者、と笑いに来ても良いだろうに」
あの背中を追いかけるために走り続け、未だ道半ば。どれだけ走ろうともまだまだ足りない。だがそれでも、苦しくはなかった。
あの背中を追うための旅なのだ。
こんなに楽しいことが他にあるものか。
小さく笑ったエルメロイII世は箱を戻して鍵をかける。大きく伸びをして明日の授業の準備に取り掛かるのだった。
*
「グレイ!」
エルメロイII世からの課題をこなすために図書室で調べ物をしていたグレイに声がかけられる。声をかけてきたのは、友人であるルーナとジニー。二人の姿を見て、グレイは小さく顔を綻ばせた。
「ルーナさん、ジニーさん」
「グレイ、調べ物は終わった?」
「はい、司書さんにいい資料を紹介していただいたので」
「良かった。じゃあさグレイ、今から少し時間ある?」
「え?あ、はい」
「良かった。少し、内密で話したいんだ」
ルーナの言葉にグレイは首を傾げる。わざわざ内密にしなければならないようなことが自分に関係するのだろうか、と疑問を持ちながらもルーナとジニーの真剣な表情を見て頷いた。
そのまま二人に連れられて、グレイは見たこともない部屋に訪れた。壁に突如として現れた扉に入ると、その先にはそれなりの広さがある部屋になっていた。それこそ、闇の魔術に対する防衛術の練習ができそうなくらいの部屋だ。
「ここなら、誰にも聞かれない」
「ここ…何ですか?」
「必要の部屋。
「本題に入るね。グレイ、あたし達と一緒に防衛術の練習をするクラブに入らない?」
「どういう、ことですか?」
グレイの疑問に対して、ルーナとジニーが説明を始める。
どうやら、ハーマイオニー、ロン、ハリーのグリフィンドール三人が中心となって、闇の魔術に対する防衛術の実践練習をするためのクラブ活動のようなものが発足したらしい。ハリーを講師役として、授業で学ぶことができない防衛術全般を練習するとのことだった。
しかし、目的としてはそれだけではない。ヴォルデモートを筆頭とする闇の魔法使いが増えてきている今、自分の身を守る術を身につけなければならないというのが本来の趣旨らしい。
「それでわたし達…ダンブルドア軍団は防衛術の練習をするの。それで、グレイも良かったらどうかなって」
「拙も、ですか?」
「うん。信用できる人しか誘えないもン。魔法省はあたし達に魔法の練習をさせたくないんだから、見つかったら絶対罰則。アンブリッジに報告するような人も駄目。なら、信用できる人じゃないとね」
「それにグレイ、防衛術はそれなりに得意なんでしょ?なら、ハリーのアシスタントにもなれるかなって。ハリー達にも許可はもらってるよ」
ルーナとジニーの提案を受け、グレイは少し思案する。
二人の提案は理解できる。確かに、今の授業では試験もパスできないだろうし、いざというときに身を守ることができないだろう。授業で防衛術を学べない以上、独学でなんとかするしかない。だが独学でできることには限りがある。なら、教えてもらうしかない。その結果のダンブルドア軍団なのだろう。
自分が一介の生徒ならば受けていただろう。しかしグレイは表向きは魔法省から派遣されたエルメロイII世の付き人という立場。故に、ここで下手に参加してもいいものかと踏みとどまってしまう。
「……お二人のお誘いは、とても嬉しいです。拙を信用してくれてるからの行動だと、わかりました」
「じゃあ!」
「でも、拙の立場は皆さんとは少し異なります。師匠の内弟子としてホグワーツに来ているので、簡単にお返事することはできません。最低でも、師匠と相談しないと…」
「あ、そっか…すっかり馴染んでたから忘れてたけど、グレイは一応先生の内弟子として来てるんだったね」
「表向きの立場は向こう側だし、簡単に参加はできないね」
「すみません、せっかくお誘いいただいたのに」
「気にしないで。ただ、このことはその…エルメロイ先生にはともかく、他の人には言わないでね」
「もちろんです。もし師匠から許可がいただけたら、参加させてもらいますね」
「ありがとう、グレイ」
それだけ話して三人は必要の部屋から出ると、グレイはルーナ達と別れてエルメロイII世の部屋へと急いだ。
その道中で、何やら騒ぎが起こっていることにグレイは気づく。やたら破裂音のようなものが聞こえてくるあたり、誰かが魔法を暴発でもさせたのだろうかと思い覗いてみると、そこにはグレイが探していた人物…ロード・エルメロイII世がいた。そしてその側には、赤毛の双子も。
「ほーら先生!言われた通り改良してきたぜ!暴れバンバン花火だ!」
「消失呪文対策してきたんだぜ!消失呪文に反応して、10倍になるようにしてきた!さすがの先生もこれなら…」
「アグアメンティ」
双子が投げつけてきた花火に対して、エルメロイII世は杖から呼び出した水で包み込み、消火してしまう。
「うえ⁈水はきついぜ先生!」
「なら次の手だ。ジョージ、あれ出せ!」
「わかってるぜフレッド!そらっ!」
ジョージは懐からインスタント煙幕を取り出して地面に叩きつける。何も見えなくなった隙に、フレッドは黒い玉を取り出して地面に放った。玉は地面につくと足が生えて一人でに歩き始める。そしてエルメロイII世の足元に辿り着くと破裂して刺激臭を撒き散らす…はずだったが、その破裂音はしない。
「あれ?失敗?」
「破裂がうまくいかなかったか?」
「いやうまくはいった。私が対処しただけだからな」
突如、煙の中から2本の縄が飛び出して2人の足を縛る。倒れることはなかったものの、突然のことで2人は動けない。そして目の前の煙が風によって一部が晴れ、そこからエルメロイII世が額に青筋を立てながら迫って来た。
「またふざけた道具を作ったなウィーズリー…!」
額に青筋を立てながら両手をワキワキさせて迫ってくるエルメロイII世を見て、双子はやばいと思ったものの、足が動かず逃げられなかった。
エルメロイII世の手のひらが双子の顔面を掴み、ギリギリと締め上げる。対フラット専用技であったアイアンクローが双子に炸裂し、双子が悲鳴をあげた。
「うげぇ!先生なにがダメだったんだ!」
「コンボ的には良かっただろー!」
「貴様らは…いつもいつも才能に物を言わせてふざけた道具ばかりつくりやがって…作るだけならまだしも、私で試すなと何度言えばわかる!」
「だって先生!アドバイスくれるじゃん!」
「俺らにとってプラスにしかならねえからー!」
「黙れ問題児共!暇な時に事あるごとに新作を持って来て試される身にもなれ!後始末をするのは私なのだぞ!」
「いぃででで!先生、今回は何が駄目だったんだ⁈」
「花火は水で消火できる。消失呪文対策ができても、火である以上水対策は諦めろ。だが消失呪文対策ができるのに何故足つき爆弾にもつけない!膨れ上がる仕組みはつけずとも、対策だけならできるだろう!」
「ぐうぅ、そりゃそうかぁ!煙幕はなんで⁈」
「あの煙幕は周囲の光を吸収する性質があるのは見ればわかる。光で駄目なら風で流せばそれまでだ。絶対に晴れないものにしたいなら、座標の固定くらいはしないと簡単に対処されるだろ!」
「座標固定ー⁈どうやんだよ先生いでででで!」
ギリギリと締め上げられるながらもやり取りをしている奇妙な光景も、少し見慣れてきた。
フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリーは魔法道具を作ることを趣味にしている。時折新作や試作品を作っては生徒に販売して効果を試したりしている光景をよく見かける。一応アンブリッジから禁止されているものの、この双子がそんなもので止まるはずはない。
この双子は最初、魔法省の依頼で来たエルメロイII世にイタズラをしかけてやろうと色々イタズラ道具を使ってやろうとしていたが、エルメロイII世は悉く対処して被害を回避してきた。そのたびに報復のアイアンクローが炸裂していたのだが、報復されながらも的確なアドバイスが来ることに気づいた双子は新作ができたり改良ができた物をエルメロイII世に試していた。尤も、現時点では一切被害を被っていないようだが。
「煙幕玉が炸裂した場所を起点に空間と煙の位置関係が固定されるように魔力を込めるくらいできるだろう!」
「でも先生!いでで、いで!室内とかだと、煙の広がり方が変わるじゃん!」
「環境設定も組み込め馬鹿者!周囲に合わせて広がった後に座標固定しろ!時差設定くらいやって見せろ!」
「その手があったかー!いでぇえ!!!」
最後に一際強く力を込めると、2人を下ろした。解放された双子は痛みに悶えてのたうちまわりながらも、楽しそうに会話している。
「いってぇ…いてえけど、また収穫があったなフレッド!」
「だなジョージ!空間固定系の魔法、また勉強し直そうぜ!ああ痛え!なあ、先生!この痛みを再現した道具作っていいか?」
「駄目に決まってるだろう馬鹿者共が!さっさと改良に戻れ!」
「わかった!またな先生!」
「できたらまた持ってくるからよ!」
「持ってくるなと言っただろう!!!」
楽しそうに去っていく双子に悪態を吐きながら顔を顰めるエルメロイII世にグレイは歩み寄る。相変わらず不機嫌そうだが、時計塔でフラットに折檻した時と似たような雰囲気になっていた。
「師匠」
「ああ、グレイか…どうした」
「…大丈夫ですか?」
「問題ない。全く…まさかホグワーツでフラットのような奴と出会うとは思わなんだ。それで、どうした」
「あ…ちょっとご相談がありまして」
「……わかった、場所を変えよう」
場所は変わり、エルメロイII世の私室。
エルメロイII世は自身のデスクチェアに深く腰掛け、グレイは応接用のソファに座った。
「それで、相談というのは?」
「実は、ルーナさんとジニーさんに…防衛術の自主練に誘われました」
「……詳しく話してくれ」
グレイは一連の事情をエルメロイII世に話す。ハリー達を中心として防衛術の自主練クラブができたこと、そして彼らはヴォルデモートに立ち向かうためにダンブルドア軍団と名乗っていることを。
一通り話を聞いたエルメロイII世は目を細めながら、煙草に火をつけた。
「なるほど、思ったよりも思慮深いようだ」
「え?」
「ポッター達だよ。最初の集会にも必要の部屋を使ったことと、署名式にしたことだ。ホグズミードで集会をしていたら、アンブリッジの手先が見つけていた可能性もある。そして恐らく参加者の署名を提案したのはミス・グレンジャーだろう。その署名には呪詛が込められており、誰かがアンブリッジに報告したらわかるようにしてある…そんなところだろうな」
この時のグレイは知る由もなかったが、エルメロイII世の推測は全て当たっていた。ハーマイオニーが用意した署名の紙には呪詛が込められており、密告した場合は誰が密告したかわかるように名前の色が変わる仕組みになっている。
「それでグレイ、つまるところ君はこのクラブに…ダンブルドア軍団に参加するかどうかを私に相談しに来たといったところか」
「はい。拙はその…師匠について来ただけなので、師匠の許可なく参加していいか…」
「そうだな、君の立場から考えれば簡単には参加できまい。一度踏みとどまって私に相談しに来たのは英断だったな、レディ」
「いえ…」
「それで、君の相談の答えだが…参加するといい」
「え…」
てっきりグレイは許可が降りないと思っていたため、驚愕して目を見開いた。エルメロイII世は表向きには魔法省側から派遣された者故に、表立って味方できない。その付き人として来たグレイが参加するのはまずいのではないかと考えていた。
「いいんですか?」
「ああ。ただ、私の指示を受けてもらうことになるがね」
「どういうことですか?」
「説明する。ただし、これは極秘で頼む。ルーナ・ラブグッドにもジニー・ウィーズリーにも話してはならない。いいかね」
「はい!」
エルメロイII世は一通り自身の計画についてグレイに話す。それを聞いたグレイは目を見開き、驚いたように口を抑えた。
「それが、師匠の計画ですか?」
「ああ。正直、君が誘われるとは思っていなかったが…この際だ、少し活用させてもらおう。彼らのためにもな」
「それって…」
「アンブリッジは、まず間違いなくポッター達…ダンブルドア軍団のことに気づく。ならば、見つかる前提で話を進めるべきだろう」
エルメロイII世の目から見たところ、彼らなりに見つからないように気を配っているのだろう。しかし彼らがどれだけ対策しようとも、できることは限度がある。権力によりいくらでも監視の目を広げられるアンブリッジとでは、相手が悪い。しばらくは見つからないだろうが、必ずどこかで見つかる。ならば、それを前提に動いて計画するべきだと考えた。
「学生と役人だ。アンブリッジは愚か極まりないが、できることは学生よりも多いし、経験も豊富だ。どれだけ彼らが頭を回そうが、アンブリッジには敵わんよ」
「師匠は、手助けをしないんですか?」
「防衛術の習得そのものは手助けできん。彼らの方が強いのだから、私が教えられることはない。アンブリッジへの対処もできんことはない。だが、所詮対症療法だ。原因療法にはならない。奴が自ら契約を破棄し、表立って時計塔との対立を明確にした時、我らが動く。ホグワーツから魔法省を追い出すためにな」
「そのために、拙が…」
「そうだ。ポッターが防衛術の自主練を始めるのは予想通りだ。本来の予定では
「ですが師匠、その計画ですと…」
「ああ、君の予想している通りだ。この通りいけば、
エルメロイII世の計画が正しく遂行された場合、ダンブルドアはホグワーツを離れることになる。だが、それこそエルメロイII世とダンブルドアの間で交わされた契約でもあった。
「ダンブルドア教授は一時的でもホグワーツを離れなければならない。ヴォルデモートのことを調べるためにな。ただ、無闇に離れるわけにはいかない。少なくとも、事情が必要だ。魔法省をそれに利用する」
「拙は、その手伝いをすればいいと」
「そうなる。グレイ、手間をかけさせるが、君には話した通りダンブルドア軍団に参加してくれ。安心しろ、少なくとも…アンブリッジの奴には報告しない。ただ、折を見て指示を出す。それだけ覚えておいてくれ」
「はい、師匠」
「君達の友情を利用するような形になってしまう。すまない」
「いえ、最終的には皆さんのためです。きっと、わかってくれます」
エルメロイII世としては少し申し訳なく思える。最終的には彼らのためになるものの、一時的には友を売るような真似に近いことをさせるのだ。ルーナとジニーは間違いなく善意からグレイを誘っているのに、その善意を利用することになっているのだから。
「…そう願おう。それとグレイ、一応警告しておく」
「は、はい」
「我々の立場は一応魔法省側になる。そのため、アンブリッジが君に私を介さず接触してくる可能性は低いが、あり得ない話ではない。もしアンブリッジが君に接触してきた場合、決して何も答えないように。君が把握していて、私が把握していない情報を抜き出そうとしてくる可能性はあると私は踏んでいる。廊下などの立ち話程度なら逃げやすいだろうが、奴の私室に招かれる可能性はある。極力そうならないように振る舞ってもらうが、半ば強制的に連れて行かれても何も答えないように。特に、奴から出されたものは何も口にするな。毒はないだろうが、真実薬を使われる可能性はあるからな」
「真実薬?」
「聞かれたことに対して
何故かいきなり課題が増やされたことに驚愕しながらも、グレイは頷く。ここで自分がヘマをしてしまうとエルメロイII世の立場が危うくなり、ルーナ達にも危険が及んでしまう。それはあってはならない。師匠のためにも友人のためにも、自分にできることをしようとグレイは内心で決意した。
「決して友人を売るようなことにならないよう、私も尽力しよう。とはいえ、奴と2人にならないことを念頭に置いて行動することだ」
「はい、師匠」
「しかし、ダンブルドア軍団か。随分なネーミングだ」
煙草の灰を落としながらエルメロイII世は呟く。そんなに悪い名前だろうか、とグレイは首を傾げるが、その疑問にエルメロイII世は答えた。
「魔法省はダンブルドアが魔法省乗っ取りを企てていると疑っているのに、ダンブルドア軍団なんて名乗ったら本当に私設兵団ができたと誤解を受けるだろう」
「あっ!」
「彼らはシンプルにダンブルドア教授を尊敬しているからこそつけた名前なのだろうが、状況を考えれば不適切なネーミングだろう。見つかった時の被害が大きくなるだけだ。本来ならな」
このダンブルドア軍団という名称はハリー達が勝手に名乗っているだけであり、設立には関わっていない。この名前で見つかった時、どう考えてもダンブルドアが責任を問われるのは間違いない。
「…まあ、いいだろう。このくらいならば問題にもならない。そうだグレイ、君が参加するのなら私から許可を得たことはちゃんと彼らに伝えておきたまえ。彼らの中で疑心暗鬼になられても困るのでね」
「はい、師匠」
「私からは
グレイの防衛術の腕は相当高い。特に防御系統の魔法の腕は非常に高く、現役の闇祓いですら凌ぐ可能性もある。また、攻撃においてもグレイの持つ
奥の手を使わなければ、だが。
「あの、師匠」
「何かね」
「ハリーさん達のダンブルドア軍団は、隠し通すことはできないんですか?」
「さっきも言ったが、無理だろう。すぐに尻尾を掴まれることはないだろうが、確実にどこかで勘付かれる。なら、それを利用するまでだ。彼らが死喰い人と最低限戦えるレベルになるためには、圧倒的に時間が足りない。時間を確保するためにも、一度偽のゴールを作ってアンブリッジを油断させるのが一番だろう。こうすることで、ダンブルドア教授も心置きなく
グレイもエルメロイII世の計画が必要なことだとはわかる。だが、アンブリッジに見つかった場合は、みんながアンブリッジの罰則を受けることになる。しかもこの計画の場合、
「レディ、君の心配はわかる。だがここは、私に預けてくれないだろうか。君には私の事情でホグワーツに来てもらっている。故に、君の意思に反することはしないとここで約束しよう」
しかしそんなグレイの心境を見抜いたエルメロイII世はこう言葉にした。
本来、ダンブルドアからの依頼はエルメロイII世にのみ適用される。そこにグレイを付き合わせている以上、エルメロイII世としてもグレイに対して誠意ある対応をしなければならないと考えていた。
尤も、グレイはエルメロイII世がグレイの意に沿わないことをするとは思っていないのだが。
「わかりました師匠。拙は師匠を信じます」
「感謝する。何かあれば伝えてくれ。可能な限り対応しよう。無論、本件以外のことでも構わない」
「ありがとうございます、師匠」
「さて、ちょうど来てもらったのだ。今日の補習もやってしまおうか」
「お願いします」
グレイはバッグからノートとペンを取り出し、補習の準備に取り掛かるのだった。
Q.グレイはアッドと杖、両方とも使える?
A.使えます。状況に応じて使い分けられます。魔法の腕もエルメロイII世より断然上です。防衛術関連は、墓守り候補時代にベルサック・ブラックモアに教え込まれたため、防御関連はハリーよりも上。守護霊の魔法はまだ使えません。
Q.聖杯戦争があったみたいだけど、英霊ってどんな扱い?
A.型月世界同様の
世界に記録された英霊(時間軸は問わない)の情報を、魔力で形成した肉体に降ろすイメージ。そのため、召喚するだけで多大な魔力を持っていかれる。どの英霊の記録が降ろされるかは、触媒に左右されるが、触媒がない場合は召喚者の気質に近い英霊が呼ばれる。
降霊術、召喚術自体がホグワーツでは教えられていない科目であるため、ハリー達には馴染みがない。教えられていない理由は、危険性が高いこととシンプルに難しすぎて学生に教えられるレベルのものじゃないから。属性としては『無』に属する魔法であるため、学生レベルでまともに成功させられるものではない。
とある極東の魔法儀式では、この英霊を7体呼び出して
Q.死徒っているの?
A.いますが、出す予定はないのであまり考えて無いです。
Q.ダンブルドア軍団の初回集会ってホッグズ・ヘッドじゃなかった?
A.その通りですが、あんな寂れたパブに学生が集まってたらどう考えても不自然でしょう。見られていないならともかく、見られる前提なら必要の部屋を使うべきだとエルメロイII世は遠回しにアドバイスしました。
Q.エルメロイII世は娯楽のゲームできてるんですか?
A.できてません。電子機器全般が使えないので。加えてウィーズリー双子に懐かれて胃をやられてます。
Q.マーリンはホグワーツ出身?
A.ハリー・ポッター原作同様、スリザリン出身です。ただ、人物としては型月のマーリンになるため、夢魔との混血で今もアヴァロンの幽閉塔で世界を眺めています。
Q.スネイプはウェイバーのいる時に教師になった?
A.ウェイバーが7年生の時にスネイプが魔法薬学の教師として赴任してきました。なので実際の関わりはあまりない。普通の生徒と先生の関係。
Q.分霊箱出るの早くない?
A.早いですが、分霊箱のこと自体は秘密の部屋の段階から出ていました。なのでダンブルドアはお辞儀様が分霊箱を作っていること自体には(多分お辞儀様がいなくなったくらいから)気づいているが、どんなものか、いくつあるかまではわかっていないという状態です。不死鳥の騎士団ではハリーを遠ざけようとしたことでハリーへの共有がまだできていませんが、本作ではこの段階で既に気づいていたということにしております。
Q.お辞儀様ってもしかして分霊箱作ったせいで第三魔法の実現ができなくなったの?
A.正解。読者諸君に50点。
ロード・エルメロイII世
ダンブルドアの依頼を遂行し始める。立場があるためハリー達の活動を表立って支援することはできないが、活動そのものにはかなり肯定的。ハリー達が防衛術を身につけるためには圧倒的に時間が足りないと考えており、ハリー達(後から参加する者も含む)がちゃんとした防衛術を身につけるための時間稼ぎができ、なおかつダンブルドアな一時的にホグワーツに縛られないようにするための計画を遂行中。的確すぎるアドバイスをしたせいで双子のウィーズリーに懐かれてしまい、胃へのダメージが増した。
グレイ
ダンブルドア軍団に参加が決定。ただ、防衛術はベルサック・ブラックモアに教えてもらっていたことと本人のセンスがいいこともあり、決闘の腕はハリーと同等以上。また、
セブルス・スネイプ
魔法薬学教師。ウェイバーとの関わりはほとんどなかったが、ロードとなったことをダンブルドアから伝えられて驚愕していた。かつて最愛の人へ犯してしまった罪に向き合うことを恐れ立ち止まってしまったことの負い目からか、ウェイバーのことは心から認めていると同時に眩しく思っている。
フレッド・ウィーズリー
ジョージ・ウィーズリー
悪戯魔法道具を作り始めており、『暴れバンバン花火』を完成させた。失神呪文をぶつけて爆発する仕組みは本人達が思いついたが、消失呪文を使われた時に増えるのはエルメロイII世のアドバイスによるもの。『おとり爆弾』の試作品を試したが、見事に消された挙句必殺アイアンクローの餌食になる。このアイアンクローを受け続けたことで新しい魔法道具を思いついたらしい。ズル休みスナックボックスはさらに使い勝手が良くなり、すでにアンブリッジの授業をズル休みするための口実として使われている。
エルメロイII世の解体をやってみましたが、うまくできたかわかりません。彼ならもっとうまく解体するかもしれません。